Coolier - 新生・東方創想話

土曜は長く日を不知(しらず)

2006/01/01 09:00:30
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(ならばいずれにせよ)
 今日には判ぜられることだ。
 今日こそが終わりであり、明日こそが始まりなのだから、判らないことは明日までには解る。
 果たして明日が来るかどうか――明日こそは明日が来るのか、という煩悶への諦観。
 ひょっとすると、明日など来ないのではないか。
 一巡りは、働き詰めのままに遂げるのではないか。
 それもすぐに解る。
 判る筈だ、けれど。
 けれどもし、失敗してしまったら。
(してしまったら?)






  **  師走晦日 土曜 朝






 こけこっこー。

 極めて腹の立つことに、私はすっきりとした気分で覚醒した。
(――なかなか、上手くいかないものだ)
 何がだろう、と起き抜けの意識を訝りながら、私は並列乱立する考慮の内にまた思う。
 嘆息を禁じえない色相には、確かに、退屈を忘却させる潤いが満ち足りている。
 そこに潤沢な景色を見るということは、つまり私が日々を退屈に見ているということに他ならない。
 そこに満足を感じてしまうということは、即ち私の日々が節制に過ぎているということを意味する。
 何故だろう――いつからなのだろう、こうしたことを考えてしまうようになったのは。
 昔はものを思わざりけり。
 夢指向にして霧嗜好にして務志向にして無死講であった私、矛たる思惑と盾たる真理の対消滅を信じ、位の階を逆立ちで昇っていた私にとって、書を読み進める事は自分が生きる事だった。
 書を捨て町に出れば、一つと他の目につかず浮かばぬうち、芥となって散り消え失せる。
 私をつくるもの。原初の時点で既に持ち合わせていた。グノーシス。
 それは、純粋幻想より生じ、血肉を得て堕落したパチュリー・ノーレッジという一節切の魔女に対し、ただ一つ世界から明渡されたフィールドだ。
 私が古くより長らく戴冠するそれ、知性に埋没せず翻って智慧をも見捨てた意思の塊たる精霊冠は、五つ七つと輝くけれど一つ所に留まらず、たゆたい惑って三々五々、勝手気侭に色を彩なす。
 派手なのは好みでない。私の力は派手過ぎるから、余りおおっぴらに使うのも憚られる。
 本でも読んで、座って、じっとしているくらいで丁度いいのだ。
 いざ使うとなれば、何がしかへの配慮など一考に、一顧だにしないのも、事実なのだが。
 そうでないのなら、いつも通りの――静かな世界。
 私にクラスタを譲渡したその不干渉主義者、或いは無関係主張者が何であるかについて思考した経験のあるものは凡そ世に限りないことと思う。
 が、少なくとも私に於いてのそれは、とっくのとうの過去問という奴だ。
 『世廻』の三手目である魔法を負い、新展幻想七種の大分類のうち放逐より歩行を経て操作へと進んだ私にとって、この世は遠い日の門松に知れている。
 そうでなくとも百年、馴れも通り越そうというものである。
 懐かしむほどの旧跡にあるわけでもないが。
 世はこの郷。
 私の生きる夢の邦を内包した広大無辺の銀河宇宙を、金輪際の果てまで続くテーブル。
 世は腐食の板のなれの果て。
 界の差を次元の間を問わず中心軸から縦横に広がりゆく波紋。
 世は暗夜を往く鴉。
 その羽のように唐突でお仕着せがましい煌き。
 世は洞穴。
 荒れ果てた野に咲くも哀れに枯れ落ちる草花が去り際に崩す一片の砂塵。
 聴こえてしまう隻手の声。見せ付けられる壷中の天。
 示す姿の一つではあるが、その実、そこには一つとして正解が無い。
 本当の世界は、広いだけの舞台ではなく・・・そこに生きる全ての者と同じく生きており、同時に、そこに生きていない全ての物と同じく生きていない。
 公平と言えるだろう。全てと等価値に在り、また何者からであろうと、少なくとも世界の内に身を置くのであれば、その存在を完全に無視して生きることは出来ない。
 世界存在を抜け出した幻想種超越類の彼女らにしたところで、出自であるところのこの世界を全く無比に忘却するなどということはないだろう。
 親孝行したい時に親は無し、有と無で比した場合、これほど肯定的で、冗談にならない表現というのも珍しいか。
『いずれ消えゆく定めにあらば、いかで別れに涙のあらん』、散人が寂莫とそう口ずさむ心情も、人ならぬ身である私に判るときが来るのであろうと思うと、ワビサビの発祥にこうして居住まうのも、また一つの運命か。
 或いはそれも、不気味な魔法の仕業なのか。


 そうして瞑った世界の中。
 こけこっこーという不気味な音が図書館の静寂を一人歩きしてゆくのを、のんびりとした気持ちで聴いている。
 こけこっこーと来れば朝を告げる音だが、私は起きた意識を働かせず、瞳を閉ざしたままで居る。そうした類のチャイムを鳴らすような親切な、言い換えればはた迷惑な動物が自分の周囲にないと気付いているが故に、断続的に鳴り続けるこけこっこーを不気味と感じる。
 不気味。また不気味だ。
 こけこっこーと始めに表記したのが誰かを知っている自分と比べ、どちらが不気味だろうか。
 こけこっこー、こけこっこー、こけこっこー。
 五月蝿くもしつこくこけこっこー五月蝿い。
 けれど掲げられた虚偽ならぬそれに異議を申し立てる気分でもなかった私はそのままに捨て置く。実際朝であるし。
 つられてこけこっこーと騒ぐ必要などどこにも見当たらなかったのだ。
 耳を跳ね回るこけこっこーを、無理矢理に心から、心から、閉め出す。
 起き抜けの異状など既に一昨日使い古されているのだし、何よりも、どれよりも。
 何事が巻き起こった所で、何事かが起こるという時点で予測済みである。
 いつよりももう、今日は土曜日なのだから。
 雉も鳴かずば撃たれまいなどと、落ち着き無い態度では世も末。
 正に世紀末、と来れば、暦のことは暦、私の専門外であるから、書に拠らず史に縁って知恵を備えた歴史の体現、人間好きの“変成始原”に投げやりたいところだ。
 世界だか何だかが、私か或いは上白沢慧音にそうさせてくれるかは知らないが。

 開いた本と両腕を枕にして眠ったフリを続けていると、椅子から垂れた両足が、冷やされて自然、ぶるりと震える。
(また、この本を枕にしている・・・何度目だったろう?)
 寒風の染み込む朝、ということらしいが、少し私は意外に思う。
 これは冬なのだから当たり前、数日前暑い冬空に悪態を吐いた事を思い出しつつ言い聞かせる少なからず面倒な性格を自認するけれど、しかし寒いなと反復される思考を、何処の誰が止められよう。
 どちらが正常であるかは然したる問題でもない、この場合は私が望んでいるかどうか。
 夏ならばまだ納得もいくが、冬の熱波には苦笑も溶ける。
 それは冷笑の純化作用だ。
 違う。寒さはどうでもいい。
 私が気にしているのは、気温などではなく、小さな矛盾である。
 記憶が正しければ、昨夜は遅く、掛け物もせず椅子を寝床にし、こうして今も腰掛けたままで、起きたのが今、どうやら朝であるというのなら、睡眠時間は平生寝過ごした時の半分程度ということになる。
 だが、私の記憶は書き留めている。
 昨晩得た未見の知、金の星の小さな蛇から聞き出した興味本位の役立たず情報を、検分し、大半を無益と下して捨て去った。
 作業量は、大幅に寝過ごした木曜の、その夜に見た夢を遥かに上回るものである。
 本来、睡眠時間と夢機能の作業量は比例するはずが、今日の作業量は睡眠時間に比して多すぎる。
 仮に夢機能が普段の数倍の効率を叩きだしたのだとしても、何故そうなったのかが判らない。
 確かに、ここ数日は体の調子、いや『私』の調子はいい。風邪を引いていても、魔法を使う余裕さえあった。
 その理由もはっきりしたものではない。
 単に、季節の変わり目も終わり、安定期に入っただけのことだろうと思っていた。
 だが――流石に。一日ばかりでこうも様子が変わるのは、見過ごせないものがある。
 木曜夜から金曜にかけての時間感覚は当てにならないかもしれないと一瞬思考して、直に思い直す。
 わたくしの来訪と撃墜は金曜正午前のことにございまする、ミニマムコァトルは静々とそう供述した。
 疑問をとば口にして考える、これもまた、年末の異変とやらの一つなのだろうか?
 だとしたら、妄りに解き解すものでもないのかもしれない、と思う。
 何にせよ調子がいいのは歓迎すべきことで、徒に端倪すべきことではないはずである。
 それすらも不気味に思うのは、何者かの思惑通りという気がしたのだ。

 不意に、
「起きてるくせに、止めない奴も珍しいぜ」
 がちゃきん、金属を叩く軽い音がすると、朝の思考を掻き乱すこけこっこーが止み、続いて、耳慣れた小憎らしい口利きが聴こえてきた。
 私は瞼裏の世界にいながら、そいつが音の仕掛け人であると気付く。
 蓋を開ければそこには居るだろう、何の苦楽かにやにやと、嫌らしくも爽やかに笑う莫迦が。
 そう知るが故に、私は月を肥らせない。朝を見ない。
 刷り込みを考えるまでもなく、朝から見たいような顔ではないし、昼も夕も夜も見たい人物でない。見えなくとも居るだけで腹の立つ奴であるから、せめてもの慰みの意味を込めて暗闇に甘んじる。
 人間は、目の毒だ。自他の勘違いを助長する力を持っているから。
 それだけならまだしも、勘違いを助長し、計算違いに昇華する霧雨魔理沙なんて。
 英雄温床など、生き物の見るものではない。
 いっそのこと、このまま再び寝入ってしまおうか――

「それ。何かしら? 綺麗ね」

(・・・)
 こつ。
 本日の私が意識を復帰させてから初めての靴音が鳴り、不届き者が色めき立つ気配を醸した。
 唐突に迫った背後の音へ過剰に反応した為だろう、演じない戯れない素直な仰天が現れている。気色ばんでいる。
 この馬鹿がそういう空気を出すのは実に珍しいことだと思い、私に背を向けている筈のそいつへクスリと笑う。
 まだまだ付き合いが浅いことだ、まだまだ接触が軽いものだと微笑んで、それから私は思う。
 私にしたところでその交流は数年、僅差にすら笑みのタネを含むのは、この馬鹿の引力と私の重力、そして彼女の斥力のどこかに力点があるということであり、それは自然、私のいつぞからかの変化のヒントとなるはずである。
 不気味な魔法は、彼女がキーポイント。その名の通り、鍵であり点である事は確かだ。
 関係性の破壊と変化、その次に訪れる拡大膨張の全てを引き起こす“王手”。
 成り銀が裏切ることで生まれる世界観、燻し銀の共存――とと、待った待った。
 楽しく美しく優雅な今の思考を一旦の所据え置き、現在の私は新情報を受け入れるべきだ。
 その驚きは、私の笑いは・・・一つの靴音は、現状を揺るがす鮮烈な事実なのだから。
 何故ならば。

「何だ? 足音はどこに忘れてきたんだよ」
 今更に驚き終わってから、平坦に言うのが嘘吐きであるならば。
「ええちょっと、大好きな絵の中に。
 その石、綺麗ね。なんていうのかしら」
 綺麗綺麗と年頃の娘のように、平然と言う奇術師は。

「馬鹿お前、それは触らん方がいいぜ。危険かもしれないからな」
「危険じゃないかもしれないのに。名前を訊いてるのよ、私は」
「メイドって客に高圧的に迫る職業か?」
「少なくとも媚びるお仕事ではないわ。
 それに、客なんて十キロ四方見当たらない。ほら、名前」
「名前なんてどうだっていいけど、視力とお客様は大切にな。
 どうしても教えて欲しければ、こいつを起こすといい。私は失敗した」
「ざまぁ見さらせ、ね」
「お、そういう口の利き方っていいのか。お嬢様が怒りそうだけど」
「今は、そういう気分なのよ。
 しかし残念。名前も分からないものじゃ、使えないわ」
「分かる。私はもう聞いたからな」
「あれ? 魔理沙が知ってるのか。じゃあ教えなさい」
「どうせこんなの、危なすぎて道具にならないと思うけどな。
 これはクリプトン鉱石といって、全てを与え、全てを奪う程度の能力を持っている、そうだ」
「益体も無いねぇ・・・ここもお客が増えたし、ロビーにでも飾ろうかな」
「そりゃいいや。客が減る事請け合いだぜ。
 しかしなんだ、しぶといなこいつも。大人しく起きれば静かにするのに」
「減るつもりがあるなら、お客扱いしますけど。
 そういえば貴女、変わったもの持ってるのね。置時計?
 って、それより、この方ってこれで起きてるの?」
「阿修羅かお前は、ああ二枚舌だっけ。
 面白いだろ、これ。こうやって時間をセットすると、朝寝の邪魔をする。
 悪戯にもってこいじゃないか、用途はわからんが」
「そういうのは、あの店に相応しいと思う。
 きっと・・・そう、二束三文で引き取ってくれるわ。文字盤の無い時計。
 それとパチュリー様。起きてるなら瞼ぐらい動かしてください。てっきり死んでるのかと」
「香霖の所はゴミ捨て場じゃないぜ。廃品処理場だ」
「何が違うの? あ、託児施設かしら。この方も置いてきていいかなぁ」
「そりゃ神社の方が適当だ。
 知らんのか、廃品処理場は、廃品を処理しないんだよ」
「廃品処理場を処理する人が必要ね、それは」
「葬儀屋だろ?」
「また残念――」

 メイドの仕事かと思ったんだけど。
 彼女の言葉が細波となって、砂場に立つ私の二本足が、無数の砂粒を巻き添えに浚っていく。
 心地良い脱力感だった。
 朝からテンションの高い阿呆、ではない方。
 落ち着きと茶目ッ気が五分に混ざった超然の感性、そして私にとっての日常の感触。
 紅魔館のメイド長、六ツ星のルチル・クォーツ。
 十六夜咲夜が、悪魔の根城に帰っていた。
 
 声を聴くまで存在に気付かなかったのは、仕方のない、溜息をつく訳すらもないことだ。彼女はこのヴワルの平たい床板でなく、ぬらぬらと滑る時計の玻璃を歩いてきたのである。世の外縁をなぞる如き異能が為す、事もなき悪戯の一つ。
 時を操る力は、一見何の変哲もない反則技で、ともすれば私にもこなせる魔術にも見える。
 だが彼女の時空操作は、宇宙操作と言い換えても全くの役不足。
 私がこれまで聞いてきたその悪名の中で、最も相応しく思えたもの、“没することなき彼女(ミズ・メリディアン)”は、彼女の力の性質を極めて正確に捉えている。
 区切りをつけるということは、見切りをつけるということで、なるほどこの郷に来るわけであると、妙な関心を覚えたのは記憶に新しい。
 ――こう知った風に言っても、実の所、正体を探る洞察の基点は流動する会話だ。
 まぁしかし、改めて見れば認知度の上昇と不安の償却のみが結果したのだから、大同小異といって差し支えない範囲と思う。
 私は分かっている。
 他のメイドならば気付くことに頓着しない。気さくに気兼ねなく声を掛けるだろう。あるいはそっと毛布をかけるか。
 だから私にはわかる。
 私の寝たふり程度、気付かないのは咲夜ぐらいである、と。
 それが証拠に、私を通り越して魔理沙を脅かす。
 瀟洒なメイドはそもそも周囲に誰がいても気にしない性質であるし、気にかけていなくとも、気付いた次の瞬間には一千年前から知っていたかのような態度を取り、それが極自然に、誰の目にも自然であるとしか観察できないという所こそが、彼女の無駄な人望の由縁なのだから。徳こそ無いが。
 一を聞いて十になり、二から九をその後に知る。
 過去の栄光に驕り昂ぶる人間の常なる性とはかけ離れた“許諾螺旋(トップオブザワールド)”。
 悪戯を仕掛けてきた馬鹿者の対極――いや、どうなのだろう?
 何となく、故にこそ何よりも強く優先的に、全てへの返事を忘れ考える。
 霧雨魔理沙ごとき、十六夜咲夜ごとき放っておいても構わないけれど、今此処にその両名が並んで居るという事に、私は何かの意図を感じる。
 ほんの少し、パチュリー・ノーレッジごとき存在のことは忘れ置いて物思う。
 少なくとも一つの異変、十六夜咲夜の不在がここに解決を見たのだ、一時の安全もまた然るべきことである。
 更けよ更けよ、更けろよ思考。
 沈み落ちて深く、淵に因りて永く、朝をして、夜を忘れさせるほどに。

「――白を切ってもいい事は無いわ。
 最近の異変ったら、日常と入れ替わるぐらいに頻繁じゃない」
「そうか?
 一月前ぐらいから変わらん気がするけど、ってここんとこは篭りっきりだったような」
「一月。一月って言ったら、神社の異変があった頃ね。
 細かいけど、そういえばあの時も貴女は居なかったわ。奇妙な符合だけど」
「失礼な奴だぜ。普段から何も企んでない人間なんて、あいつぐらいしかいないだろ」
「お嬢様もパチュリー様も矢鱈に忙しそう。貴女も半霊の子も忙しそう。
 私たちメイドもてんやわんやよ。他が忙しくなっても、館全体、幻想郷全体が忙しくなるなんて」
「まぁ、師走だからな。皆師匠ぶるのに大変ってわけだ」
「知っている事を速やかに話す。勿体つけるのは魔理沙らしくないわね」
「待て待て。らしさは私が決めるぜ、お前の分も。
 はいそうですかと話す前に、する事があるだろ?」
「そうか、魔理沙は磔になるほうが自分らしいと言いたいのね。
 私も、魔理沙を磔にするのが私らしいと思うけど、偶然の一致かしら」
「誰もそんな事言ってないぜ」
「はいそうですか」

 刃物の擦れ音と箒が床を掃く音が同時に伝わるという、実に顕著な危険の徴候を感じ、思考の渦から抜け出た。
 私はそのまま薄目も開けず、話し込む二者の気配を読み、その隙をうかがう。
 これは断じてそこに割り込んで会話に参加するためではない。
 またその真逆に、会話の聞こえる場所付近から本人たちに知れること無く立ち去る為でも、ない。
 彼女らのこういった口調、喧嘩腰に言葉遊びの混じるそれは、十中八九、無意味な決闘を知らせる鐘の音か、戦時に上がりはためく旗か、さもなくば自分の存在を顕示する狼煙となる。
 すると自然、とばっちりは御免だと不平を口に出すよりも、すすんでその場を離れるべきと考えるものだが、ここにおいては君子危うきを見ず知らず、何が起きても存ぜぬ気付かぬに徹底するのが先決であり、一番である。
 下手に動けば標的にされるから。下手に喋れば犯人にされるから、下手を撃てば動かれるから。
 ただでさえ領域の動的な確保は危険を伴うのに、ここまで寝た振りをした後で動き出したら、まるで黒幕だ。
 この様式で第三群が真っ先に狙われるのもまた必定、一方に肩入れなどしようものならまとめて卑怯者よばわりは避け得まい。
 会話の内容自体には興味を惹かれるのだけれど、私も私らしく眠り続けるべきである。

「ああそうかい。言っとくけど、私は何もしてない。無駄に抵抗させるなよ」
「何も出来ないならいざ知らず、何もしてない人間なんて巫女ぐらい。
 どさくさに紛れてこんな所にいる時点で、貴女は私に囚われている」
「か弱い乙女には何も出来ないぜ。何も」
「あの腐海も、外の道具も、場違いな子供も、低い空も、消えた神社も、出かけたフランドール様も、人形師の懐郷も、多すぎる塩分も、歩く虹も、夜の魔理沙も、明るい家族計画も、知らない歴史も。
 全ての異変は私が解き明かすわ。邪魔しないで、解決されなさい」
「余計なもの混じってないか?」
「さぁ。まずは、貴女の時間が私のものよ」

 ・・・本当に、興味を惹かれる話題だ、と思う。
 伊達に数日家を空けたわけではないらしい。咲夜の言葉は私にとって意外な真実、新事実でありすぎる。
 ここのところの異変の連続は私にのみ降りかかるものでは無いという点、だけではない。
 巫女がここに顔を出さないわけだ。赤貧洗うが如く暇無し。奔走か放浪かはわからないが。
 咲夜の(自信満々の割に外れる事の少なくない)言が確かなら、既にして現在進行形、年の瀬にあって未解決、掃除前の事件が山ほど残っているということになる。
 その上、異変一つ一つが意味不明。
 腐海? 外のアイテム? 子供? 低空? 神社消失? 世界の危機?
 ホームシック? 高血圧? 虹の散歩? 莫迦? 管理? 新世界譚?
 どれをとっても、正体不明である。幾つかは咲夜なりの冗句だとして、どれがそうなのか判然としない。
 私には――やはり、その連続こそが最大の異変、紅紫の揃って差し向ける指の先のように思える。
 どうもこの二人は目の前の事件に惑わされてその事に気付いていないようだ。
 愚かしいのは人間の特質だから、責めるのは筋違い。
 判らないのなら、判る者が解けばいい。パズルは平等に開かれていない。
 とはいえ。

「待てって言ってるだろ?
 私に光にされるより、お前は先ず寝た子を起こすべきだ」
「勿論、そんなことは分かってるわよ。
 パチュリー様を叩くついでに魔理沙も叩くの」
「んな。叩かずに起こす努力もしろよ」
「無駄なことはしない」
「無駄口叩きまくりじゃん。
 大体、こいつ起きてるって。訊けば答えるかもしれん」
「逃げ腰ね。それとも急いでるのかしら。何をそんなに急ぎ足で?」
「勇み足にはしないつもりだけどなぁ。私のする事といったら、探し物に決まってる」

 私としては、彼女らがそうして露払いしてくれた後、本物の異変をさっくりと解決するのが望みなのだけれど、そうは問屋が卸金で連続殺人という按配らしい。
 好事魔多し、悪事もっと多し。私自身が悪魔好きな好事家なのがいけないのかもしれない。
 そういえば、ここの悪魔はどうしたのだろう。
 彼女らと私の様子を見れば、図書館の内装がまたぞろエキセントリックになることは予想できるはずである。
 不変のヴワルに安住する赤毛の悪魔なら、無謀と分かっても止めに入るなりなんなりしそうなものだが。

「家を探しているのね。迷子」
「家より見つからないのが二つあって、そっちが先。なんだか分かるか?」
「信頼と実績かしら」
「残念、両方NG」
「どっちも足りないじゃない」
「そりゃあ忘れ物だ。
 ま、どっちみち。こんなのは隠し立てしてもしょうがないからな」

 段々と口数が減っていくのは、タイミングを見極める為の手段。実に危険な徴候である。
 小悪魔は――止めようとして失敗した後なのか。
 何となく何気なく探るだけでは、小悪魔の無邪気はここに届いてこない。
 あれは二次元支配の文字悪魔、紙とインクの海に浸かっている私が、その所在に気付けない道理はないのだから・・・恐らくは、恐るべきは、先手を打つ前に王手を打たれてしまったのだろう。
 手作りの菓子を差し入れる時とお手製のナイフを差し入れる時の精神に一切の差異を認められない、十六夜咲夜。
 入られる前に邪魔を潰すぐらい、嗜みの一つ。
 私は哀れな悪魔、図書全識者に黙祷する。途絶した意識のうちに年明けを迎える無念への慰労だ。勝てない相手と戦うのは構わないが、『負けない人間』に歯向かうのなら線を一本増やしてからにすべきである。
 良いお年を。

 そんな、投げ遣りな祈りが明日の日の出に届く暇も無しに。



 「一つは、くすんだ灰色のキノコ。
  もう一つは――神社と一緒に消えた馴染みだよ」



 霧雨魔理沙が、その一言を口にした。

「な、」
 何を、と。
 思うと同時に目を見開き、沈黙を破って問いかけようとした、その時。
 

 開封直後の定まりきらない視界が、がくん、と強く揺らぎ。





  ** 師走晦日 土曜 ?





 博麗が消えた。
 その事実を知った時に、パチュリー・ノーレッジは甦る。

 (消えた? 消えないものが消えた? それはありえないことが起こったということ、今起こらないことは何も無いということ、何も得ない者は誰もいないということ、消えゆくものが蘇えるということ、幻が顕わになるということ、表が裏になるということ、紅が白に白が紅になるということ、それは)

 極大の疑惑が保たれたのも束の間。
 陥穽に落ちた、という雑感を受けつつ。
 何かが一斉に飛び出すような明文化できない雑音が耳腔を満たし、開けた瞼から外気の冷たさを瞳に感じながらも闇に包まれ、一瞬の内に視聴覚の一切を奪われた私は、地面から弾き出される爆動を躰全体に受けると共に、世界を認識できなくなった。
 要するに気絶したという事である。
 だが私は夢を夢見ることはないし、昨夜は存分に情報を処理した。遠い星の小人から得た無用すぎる知識のうち、必要事項だけを選り抜く作業は、それとなくいつになくどことなく、楽しく感じられるものだった、と思う。
 思うというのは、夢が朧なものだからだ。
 何をどうしたかは忘れている。明確に、作業をこなしていたという記憶だけが残っている。
 夢であることを、夢のうちにしっかと認識しているというだけなのだ。
 それにしたって、そういう夢を見ているだけなのかもしれない。
 私がどれほどに無駄なものと思いこんでも、眠気は強制的に訪れる。
 明々白々と。
 毎日毎日、情報は全くにして整頓されねばならないのだと、物分りの悪い私に、語って聞かせるように。
 正々堂々と。
 私はその全てを覚えている事ができる――だのに、この肉体は私の精神とは別の作為を以って忘れようとする。
 それが器に宿るということだ。無意識に無表情に制限をかける。
 対等であるためのハンディキャップ。個性を際立たせる、あるいは埋没させる為のルール。
『かみさまは、なんでもしっているじぶんがきらいになりました』と絵本にすらある。
 万能全知は食い潰されるだけ。

 (ありえないことが起きている? そんなの、とっくに判っていたことじゃないのか。パチュリー・ノーレッジは、この終いの月が始まるまでも無く、この幸せの年が生まれるまでも無く、知識の魔女が住み着くまでもなく、何かが何かになるまでも無く、判っていたことじゃないか。今更何をとおどけて言うのは、その時、その一瞬、その瞬間に限ってみれば、良いことなのかもしれないけど、だからといって、絶対的に変えてはならない部分が、確実にある。それは、嘘を、ついちゃ、いけないだろう、という単純な)

 それに――必要性も無く途絶した起き抜けの意識では、夢を片付けることもできない。
 ネタ不足という、ある種の人間にとっては切実な、そして慢性的な悩みである。
 種も仕掛けも空回りしていて、もういっそカラクリごと片付けてしまうべきではと思案するほど。
 埋まる空白を生産するだけの装置。
 不純物を糧に生きる者を殺す兵器。
 真の害毒は、本当にクリーンな器械が排出するものである。
 夢機能はこのマイナス要素によって均衡を保っているのだ。
 マイナス寄りがノーマルなら、瑣末事にも喜べるのだから。

 (大体だ、今日おかしいとか、今週おかしいとか、何かがおかしいとか、全てがおかしいとか、何を、何をそんな、ふざけたことを、真面目くさって、本気みたいに、真剣に、親身に愚痴っているんだ、この私は、この私は誰、私を誰と思っている。知らないことなどいくらでもあるのに、いくらでも知らないことがあるのに、何をそんなに不思議がる、たった一つの館の知識に、たった一つの世界の方程式に、全ての全ての全てを諳んじる、そんな許容と優遇の占有が、あるとでも、思っているのか、どうなんだ?)

 私はそんな毒を吸わずにいる為、空白を読み飛ばす。そのうちに、普段なら考えないことを考える。
 そう考えることすら夢ならば、どうせ何もかもを忘れてしまうのだからと、考えてはならない事まで考える。
 どうせいつかは目覚めてしまうと、生きていてはならない時まで死んでいる。

 (どこまでも行けるつもりでいるのはお前じゃないか、パチュリー、パチュリー・ノーレッジ、動かざるもの、動き終えたもの。往き終えたと思っているんだ、史を負えたと思っているんだ、そう思い上がって、もういいやと思っているんだ、ろう? 甘いんだ、どうしてそんなに甘えを赦せるんだ、赦せると思い込んでいるんだ。あっさりと自分を騙したつもりでいるんだ、だけど)

 結論、つまり私の終わりを見て取れば、至極それはあっさりとしたものだ。
 私の知識は完成しない。
 どれだけの書を追っても、どれだけの書を記しても。
 五芒は欠けマナもアラヤも掴めず、車を回す鼠のように、既知の事実を習得しつづけるだけなのだ。
 知識の完成は全知。
 全て識るものは何も知らぬもの。
 それはいつまでもどこまでも続き、闇雲に情報を吐くだけの媒体になることを示す。
 私が単なる知の体現でなく、この世に生きる一介の魔女、ひ弱で自堕落なパチュリーであるのは、非生産的で自己中心のパチュリーであるのは、そうした概念のみの高尚さを見ても、単純に惨めなことだと思ってしまうからだ。
 猥雑に混ざり合うものは、その有り体が優れたることでなく、部位の一つ一つに優劣を見出せることをこそ誇るべきである。
 頭でモノを考える生き物ばかりではないのだから。
 そうした未遂の私だからこそ、物語の主に据えられる。
 『人』の範疇にいることができる。
 償却をつづける夢、肉体が、増産を止めない私、無窮精神を縛り付ければ。

 (お縄についただけじゃないかそれは、それは、それは私で無くなっただけじゃないか。妥協を赦せ、後悔を止めるな、あきらめることをあきらめろ、そんな声が、喉の痛くなる甘味が、嫌になって、鬱陶しくて、耐えられなくなって、自分でいようとして――)

 そこに、自分とそうでないものが綯交ぜになった固体が出来上がる。
 枷。鎖。楔。縄。境。囲。柵。どのように喩えても同じ事。
 追い縋るのは自分の影法師だけ。言いなりに動き、言いざまに失せる闇人形だけ。

 (そのまま、自分のまま、パチュリーのままで、今まで、いる事が出来た、なのに!)

 私はパチュリー・ノーレッジである。
 私はパチュリー・ノーレッジである。
 私はパチュリー・ノーレッジである。
 百も承知の出来事に、温故知新して再び悟る。
 縛り手が自分だと気付いたのは半世紀を遡る時。
 私は私であることに満足している。
 全て実らぬものと知っても、在る事にさえ感謝できれば、世界は世界のまま、私は私のままでいられる。
 いられる、というよりは、いてやろう、というか。

 (こんなのが、パチュリー・ノーレッジなのか! こんな、言い訳を言い訳に言い訳するばかりの化生が、堕落する運命に抗って追放された怪異が、私になってしまったのか!)

 でも私はパチュリー・ノーレッジである。である。
 知識の魔女は本を読む。なお改変を追う。増進を続く。
 全知の無意味を知る身の上で私が書を追い続けるのは、至極単純自然普通、当ったり前の鍵の穴。
 ジト目で本を睨む私を、いつも不機嫌そうだと言う奴がいるが、それは全く、全うした的外れである。
 本を読むのは、楽しい。
 どんな不気味な魔法に罹ったとしても、私の中でそのルールが揺らぐ事は、絶対といって無い。
 掻き混ぜられる前から、私にはこの刻印が焼きついている。
 癒えない傷、それは癒されざる験。
 私の最初だ。精神と合った肉体にもまた、同着と同時に刻まれている。

 (そんな最初は知らない、嘘をつくなと言っただろう! 重ねた虚偽は裏返る! その重みがお前を逆向きにへし折る!)

 だからか。
 今の私は、綯交ぜになった私は、逆向きに逆順に、書を置き紅いお茶を嗜む事も、楽しみの一つとなっている。
 あらたかな形が内に納められたなら、全反射の完璧が揺らいだのなら、乱反射の模倣が済んだのなら。
 光が外へ、外から光が。
 目視できるようになったのなら、それはブラックホールではない。
 全ての色を、正しく元居た場所へ弾き返す定理、パーティカラートルマリン、中央管制塔。
 密室の答えは、『色遊びの電気屋(反動体)』、パチュリー・ノーレッジだったのだ。
 追い求めるべきものは、いつまでも、いつまででも、私の手元にある。
 ならば。
 一番の楽しみは、最後に取っておく、最高のとっておき。
 ならば。
 入ってくる光線に目を向けることを、興の一つと見れるようにもなる。
 最優先すべきは次善以下。
 最低限すべきは最善のみ。

 (気付きなさい! それが歪められた自分だという事に、気付きなさい、って、言ってるだろうに!)

 閑話休題。
 さっきから判りきったことをグダグダと叫んで人の興を削ぐ奴がいるが。
 私は何も、こいつに気付いていないわけではない。
 気にしなかったのは、判ってないのはお前だ、と明言するのが、どれだけ愚かしいことかを知っているからである。
 けど、いつまでも無視しているのも不味いだろう。これ以上、どんな“本当のこと”をでっち上げてくるか、それこそ判ったもんじゃないのだから。
 第一こいつが居ては起きる事も出来ないのだ、自分の中で自分を起すというのも妙だが、やるしかない。
 落ち着きなさい、ええと、倣って言うなら、ねぇ、私?
 私は、その、私が何を言っているかを、私、ややこしいから括って『私』が本当は私ではないのに、私であるかのように錯覚しているという事にまで気付いているの。
 『私』を私というなら、気付くべき大前提を見損なっているよ。どんな時にもうろたえぬ事。
 そんなのは、私から何かになった私であっても、ありえないことでしょう。
 その程度の攻撃で私を揺らすのは不可能。あなたは、じゃないか、『私』は、私と比べて動きすぎている。
 違いに気付けない、それは不思議であるという、そんな当たり前の感覚を、失って、いや。
 あなたは、自分を制されていると、気付けない。
 
 (何が自分かを証明、できる、つもりでいるのか、この私は! 私の癖に、どんな問題でも答えられるというか! 全てをバラバラに破壊するあの紀元答弁、QEDの悪魔のように!)

 自己疑念というには少し乖離しすぎ。思うだけで伝わるなら確かに自分かもしれないけれど。
 しかしてしかし、今の純粋な私なら、ピリオドを打たれていない無限の魂なら、“事情飽食(ガストロインフォ)”の塊になら、偽りであるとしても、紛い物であるにしても、出任せであっても、嘘吐きと知った上で、言い切れる。
 この年末の異変は、確かに、私にうってつけである。
 私が解くしかない。
 こいつにしても、異変の規模としては巨大なことだろうと察することができるが、こと私に対しては無力。
 破綻を自覚した壊れ物に幾ら説教しても、馬の耳に念仏というやつだ。精神攻撃は最適であるがゆえに無効化される。
 結果、映し鏡を見ることになるのは、術者一方のみとなる。
 さぁ『私』、覚悟はいいかしら。
 全てが終わった後、最高だけが残っていればいいの。
 土曜だからといって無理矢理安息に導こうとしても、徒労に終わる。心配無用。
 常に動きつづける不動こそ、私の原点なのだから。
 言われなくても解決してあげる。
 途絶の焉を待つ時よりも。
 空白は只管に読み飛ばし。
 私は形無き精神だけで、ありったけの意思を込め、その一言を、口ずさむ。


【土曜よ】


 (あ)

 唐突に、
 鮮明に。

『あら、地獄へようこそ。十二年ほど早かったみたいね。ああ気にしないで、独り言。
 まぁ私のほかには何も無い城だけど、何かがあるから来たんでしょう。
 貴女に似合いなのは本の針山かなぁ。ところで頼み事があるんだけど、どうかしら、一つ私と友達にならない?』

 私の本意によって、奥底から掘り起こされた次善の履歴が、映画のように甦る。

『ここに住むんですか。それは、えーっと、その、何というか。
 結構不便かもしれませんよ、うたた寝してるうちに異次元ランデブーしたり・・・平気?
 なら、私に断る理由は無いです。だってお姉さん、本好きに悪い人はいないんですもの』

 私は情報の渦を走馬燈のようだと思い、同時に、私のようなものも気付く。
 カラカラと回るそれは、その名は、正しくこの郷の名であるが。

『この雨、貴女でしょ。五月蝿いから止めて欲しいなぁ。っていうか、止めて欲しいなぁ。
 っていうか、貴女が誰だか知らないんだけど、誰って訊くのも癪だから、勝手に名乗れば?
 あー雨が五月蝿くて聞こえない。第一、私は本を借りに来ただけなの。邪魔しないで欲しいなぁどかーん!』

 最善の時間と比べればほんの僅かな小節であるそれらに対して、次善であるが故の希少性を差し引いた上でも、そこに確かな価値を見出している自分の意志、私の実在。
 今やそれが己の性質を支える屋台骨となっているという、遅すぎる認識。私には判っているけれど。

『居候。確かにそんな顔ね。失礼、私はただの召使ですよ。ちょっとお時間借りますわ。
 こちらには昨日。何だかお嬢様に取り敢えずの一言でお屋敷の一切合財をそっくり任されました。
 まさかメイドさんがこんな大変な仕事だとは。当分ご厄介になるので、厄介事を起こされませんよう』

 謄写の連続が、同じようなものばかりを繰り返す。
 全ての彼女たちとの出会い、その断片。
 そこに――閉ざされた一人称は無いのだ。

『邪魔してるぜ。って、別にお前の邪魔をするつもりは無いんだけどな。
 大体、ここって司書の一人もいないのに、何で図書館なんだ? 賃貸表も無い。ただの倉庫じゃないか。
 倉庫なら何処だって変わらないだろ。うちの倉庫に置いてやろうか。なぁに礼は要らない。だからよこせ』

 対面する者を常に据え、言の葉は喉元で朽ちる前に愚痴として出される。
 ここ紅魔館に来るまでの私が何者であったのかと思い返せば、お笑い種であると改めて気付くまでもなく冗句。
 書を追い詰めたところで、識者に問い詰めたところで、私という怪奇について、私よりも深く、詳らかに述べるものなど、ありはしないではないか。
 『私』は思い出したことだろう、いや、思い出した。まだどちらも自分であるから、その心が伝播してくる。
 自分がいつの間にか不気味な魔法に罹り、パチュリー・ノーレッジになっていたということに。
 それは直ちに、私にも適用される。
 私はいつの間にやら不思議な魔法に罹り、パチュリー・ノーレッジになっていたということに。
 忘れていたのだ、と思い出された。
 私自身について――私以外の誰も知る事が無い真実について、これ以上の昔が、取り出せない。

 (ああ、私は、私は――)

 そしてそれは忘却の淵に、澱としてすら残らず、どこかに消えてしまっている。

 (私は、違うか、あたしは、ああ、もう、パチュリーが消えていく)

 さてかくも機能的な整頓。
 従属する肉体の高性能に驚嘆するのは何度目だろうか、よくよく検討すればなるほど、主に気付かれぬよう悪事を働くというのは、実に俗っぽく、からだというモノの定義として至極相応しく感じられる。
 あれをしたいこれをやりたいなどというのは所謂我侭、所詮横暴で、血税で生きる上なるものは、それを搾り取られる骨肉の事情など一顧だにしないものだ。
 ゴミを分別しろといわれても、発言の真意が肉に伝えられることは無い。
 第一、本当に分別されているかどうか確認するのも骨のすることで、迅速な処理を求める心が現場に立ち会うこともまた無いのだから、それはもういくらでもまとめて粗大ゴミ行きと相成るわけだ。
 私以前の私は――とっくの昔に、どこかへ消えていた。
 捨てられていた。
 だが、絶望は無い。
 ないでしょう?

 (そうだったの、か)

 そう。自分を見失っているのは貴女よ、私、っと、もう貴女でいいか。
 私は、自分が見失った私を知っているの。
 心配してもらう必要なんてないよ、ほら。
 はじまりの一瞬の連続が、こうも鮮やかに蘇える。
 失う無念があるのは、それを得ていたことが幸福であったと、確固として思える場合だけ。“瞼の裏の現実(ファンタズマゴリア)”が今もこうして続いているのは、死に絶えた幻想、その生前が、幸せなものであったことの証左である。
 ふむ、思考はいつだって外向きに逸れていく。

 (七つ星を操り自然を超過するパチュリー・ノーレッジに真似るなら、うってつけの存在、か。ふん、ミスキャストじゃない?)

 言ってくれる、が、その通りである。どうして、他の生物と比較にならないキャパシティを持つ彼女を、わざわざ私のような汚れ役に割り振ったのか、この年末の異変の首謀者に対して疑心が募るばかりだ。
 さて、余計な荷物も外れ、微妙に本題が復古した所で、話を戻そう。
 私がココに居ること、それは、友に頼まれたことを成そうというだけの話だったはずだ。
 魔法に関したありとあらゆる書物を秘める、ヴワル魔法図書館、今現在の我が根城こそ、二度と得られぬ幻想の行方にして、全き知識の所在、普く偏りの大図書館であり、そこには答えがあるという。
 一つの可能性、選択の余地に思い当たる。
 私の“答え”は図書館にある――もしかすれば、それが境界幻想の言った“答え”なのかも知れない、という想定だ。
 論拠もまた一つ。
 私の身体は記憶している。
 昔の私は、己の来歴を一冊の書物として著した事がある。
 自分の昔を忘れないように、否、忘れてもいいように、と。
 ああ、仕組まれたご都合主義、ある程度まで働くヒーローセンス。
 しかし過去を消すことも出来ない身の上かと嘆くような自分でもなかった。
『永劫を数週した外法の輩、自壊幾百幾億に及ぶとも心涼やかなり』と聞くし、最近に実例も見れた。
 自らを失うことすら適わぬ呪いゆえのことではないかと指差すのは、簡単で、不粋で、不快だ。

 (あたしは、天動ノア、二元の摂理、今日も元気に自転している私の、太古の自論)

 私だったものが、自分を取り戻したようだ。ならこの途絶も、そう長くもつまい。
 これが終わるまでに、身体つきのパチュリーにも伝わるよう、考えを表面化しなければ。
 故事からすれば、ヴワルには私の敵となる何者かが存在している。
 答えは図書館、とだけ言うのならば、己のみならず敵すらもそこに共存していなければならない筈である。
 敵は、このノアとかいう神ごとき妖怪ではなく、また、こいつが瞬間だけでも私であった以上、私自身でもない。
 アレが怪しいこれが危険と幻惑するでなく、八雲紫は『それが答え』という結界を張ったのだ。
 あの紫線が。
 そして、私はそれを必ず見つけなければならない――というより、必然的に見つけざるを得なくなるだろう。
 誰かが何かをしている、貴女何かしてない、でなく、レミィは『貴女がそうする』という運命を導いたのだ。
 あの紅帝が。
 ただ結界を引き直すことは易い。ただ運命を覆すことは容易い。
 だが円と線を用意された限定状況に於くなら、世界以内の操作に留まる事が前提の私には抗う術が無い。
 この途絶を終えれば、私は、私自身の為に解決を望み、恐らくはそれを成し遂げる。
 二種の線が織り成した陣、即ち、引かれた仮初の神は伝えている。

 火水曜の途絶においては、日曜に得た道程の情報だけで手探るしかなかった。
 木曜に目的地がわかったことで、この思考を得る条件は揃っていたのだ。
 単に、真理に届かない一介の魔女のままでは気づく事が出来なかったというだけで。
 皮肉か予定かは知らないが、異変多発現象の一幕が私をその解答へと近付けた。
 
 (こんなの、私たちみたいなのには、どうしようもないわ。まないたのこいー、よ)

 今だけの私であるこいつも、今だけなら真実を知ることができる。
 けれど、ここからが本題という奴である。
 例えではなく正に、私はようやく問題用紙を手にしたに過ぎない。
 急がねばならないだろう、解を出すまでにもう一日を切ってしまっている。
 レミリア・スカーレットは言った。年末の異変は全て私が解決すると。
 先だっての咲夜の言葉が確かなら、それだけの数の事件を一日で解くには、全ての元凶を断つより他無い。
 魔理沙の言葉に嘘が無いのなら、新年の新たな神を出迎える為に、そいつを呼び戻さねばならない。
 彼女たちの力を使ってでも。
 私の本来の力を使ってでも。


 (お邪魔したわ。願わくば、起きた後に情報が伝わっていますよう。貴女の濾過機はいい性能だから)


 やはり、あの神社には、神無しといえど、巫女だけは居なくてはならないのだ。
 昔風に言えば、光あれ。





  ** 師走晦日 土曜 朝
 
 
 
 

 (意識の立ち昇り、日の昇り、光の甦り、ん?)

 立ち直った私は何故か、今日の魔法を始めていた。
 一瞬の気絶の内に、精神だけの私に何かがあったのだろう。

 がぁん。
 銅鑼を叩くが如き乾いた音色の破裂が空間を一息に走り抜け。
 響き渡った私の言葉が、世を襲う衝撃さえ、押し込め、満ちる。
 土曜の制御。
 この魔法ですんなりと収まるのだから、あれは地震、激震だったのだろう。

【七道を走り 七賢を謳い 七面を叩き
 なおざりに六法を読み耽る日々が嘆かわしくとも
 なおもなおも我 つちくれ 土刳れと聞こし召す】

 正常な記憶の整理作業とは異なる気絶時の精神操作が私の意識を混乱させているけれど、始まっているものを途中下車するわけにもいかず、私は魔法を継続する。
 そうして言葉を口にする度、肉体と精神が融和し、魔力の流れが交じり合い、気絶時の心が受け入れられていく。

 断片的にではあるが、私の純粋な精神に起きたことを知ることができた。
 偽りの失神は解けた。
 己が内の神を見失うというその文字通りに、意識を呼び戻すという事は、神性を取り戻すこと、存在を取り返すこと。
 既に、本日の異変――より正しく言うなら、私に対する本日の異変、は解決しているらしい。
 安息の週末曜日、界面を伝う地母神の起した、激しくも優しい目覚まし装置。
 とある妖怪の引き起こす、癇癪のような波動の警告。
 天を操る程度の能力を発揮した無指向の、否、この星の全ての生き物へ向けた攻撃。
 だが、私の偏屈な精神のせいで、真正直な激情は弾き返され、結果相手は自爆した。

 私の魔法、七極世界は継続して顕現し、世は全て七色に綴じられ、継ぎ接ぎのステンドグラスと化している。
 その中で、
「ほら言ったとおり、起きてるだろ?」
 手前勝手にガラスを渡る不透明で不気味な恋色と、
「貴女はどこを見てるのかしら。まだ目を閉じてるでしょうに」
 自分本位にガラスを割る透過色で無頓着の銀嶺と、
「起きてるわ。べらべらぐちぐち喋ってるの、全部聴いてたわよ」
 個人主義にガラスを操る不機嫌で無愛想な紫紺、私が、その三者だけが動いている。
 
 私の制する界を勝手に渡れるのは、世界超越の証。そう、紅し。異端の証拠。
 けど、自意識の在する夢想を越え、私はその不定分子たちを、さほど不愉快とも思わなくなっている。

【中原無限 心室無縁 安危不定
 あってなきが如き空白 俊足のうちに過る黄
 怨瑳の渦動 辰巻き 三獣を呑む太陸の星輪】

 言葉一粒吐くごとに、私は私の精神を判っていく。
 あの不気味な魔法、信ずることという不安定な概念に端を発するそれが、私の法則を乱した。
 その時が――その空が。
 パチュリー・ノーレッジ、知識の魔女の誕生の瞬間。
 魔法の使い手は誰だったのか、今抱く疑問がまた一つ増える。呪い。
 そう、解けば解くほど謎は増えるのだ。謎は拡大再生産されるもの。
 更に、謎を生産するのは、それを疑問に思う私自身なのだから、そも、この魔法は、もしかすると、もしかしなくても。

「そう――そういうこと」

 頓悟するというほどでなく、自然に、極自然に、私はそれを理解する。
 私の魔法は、世界を彩る七色。
 歴史を紐解くまでもない。

 私は、私に魔法をかけた。

 或いは単純で気軽な挑戦。
 一度でいい。この世界とかいう、失敬で無礼な独り善がりに身を委ねてみようと。
 そのうねりに身を投じてみようと。
 信じてみようと、呼びかけた。
 沁みる理解。
 それが判ったのなら、もういい。
 この私は、これ以上私を知る必要が無くなった。
 過剰なヒントは誤誘導でしかない。

 こんな異変はすり抜けて、今こそ本を読むべきだ。
 それは、それなりに楽しい読書となるだろうし。
 何よりも私は、読むべき本を知ったのだから。

「なんだ独り言か、怪しい奴。あそうか、地震で起されたのが不服なんだ。
 本棚の一つでも消し炭にしてやればよかったんだな、うん。失策だぜ」
「違うんじゃない? そんなにエネルギーを無駄遣いしては駄目。
 もっとこう、一冊一冊、一頁、一文字ごと、ねぶるように刳り抜くとか」
「あー、メイドってシュレッダーだったんだ?
 って、そりゃ労力の無駄だろ。一人でやってろって」
「そうね。んしょ」

 思考から得たものの興味深さに襲われ、(だがどうして彼女はそんなことをしたんだろう?)、と更なる懐疑に沈まんとする私を他所に、私と同じく光を跳ね返す力を持つ二人の人間が、音さえ色と化す筈の世界を奔放に喚き散らしている。
 地震に揺られる病弱を放り、悠々と小競り合うような彼女たちの気侭に、けれど今の私は怒り一つ覚えない。
 全ては、不気味な魔法の所為なのだ。こんなものが信頼なのだと、果たして――第三者に信じられるものだろうか?
 反語。
 故に、止めろ莫迦どもと言う代わり、私は金と銀とへ指を向け、

【水に浮く扁平のΘ 帰還する終焉の灰 思惑する鉛色のアレフ
 麒麟児の魂天を翔け 変わり目の空は鎮まり
 幾千幾億の改元を通じて 源夜が吹き返す その 只中を】

 一節を、一息に告げる。
 途端、抽象の七極世界が黄の一色で染まり、異端の金銀が覆い隠される。
 空間がどよめき、人間が色めき立ち、甲高い少女の悲鳴、冗談交じりに漏らしたのであろうそれが聞こえてきた。
 色の表現だけではわかりづらい、といって今の私の行為は現実で観測するほうが難儀である。
 吸収した地震をエネルギーに転化せず『地震』のまま目標に与える、実に地味な攻撃。
 存在の結合が弱い妖精や何かなら一撃で最小の構成単位に分解される物騒さだが、すっかり人間離れしている奴には脳震盪一つ起せない。
 その証拠に、程無くして、一面の黄色が、金色の暴力と銀色の丁寧に食い破られ、世界の色が七に戻る。
 あぶないな、とか、物騒ねぇ、とか言いながら。
 強すぎる人間。
 彼女たちは、自身の最強を微塵も疑っていない。
 どうすれば、自分が最強で居られるかを、知っている。
 魔理沙は本能的に。咲夜は自覚的に。
 魔理沙は自虐的に。咲夜は理性的に。
 魔理沙はそのために嘘をつき、強さで弱さを隠すつもりでいる。
 咲夜はそのために手品を使い、弱さを全て強く見せかけていく。
 魔法使いと奇術師の関係は対偶であるがゆえに真である。
 私の操る、中途半端に徹底し、徹底して中途半端な七色の世界など、眼中に無いのだ。
 
 異変は既に解決し、ツールは害虫駆除の役にも立たない。
 魔法は使い捨ての道具であるから、捨てる前に使いきらなければならず。
 困ったものである。
 折角の今日の魔法なのに――このままでは無駄死にもいいところだ。日に一度と決めているわけではないけれど、自家中毒に二匹目の鰌を掬うほど雅を解さないわけではないのに。

 気絶時の私が何を思ってのことか道具を無駄遣いしようとした。
 それは、私がそもそも道具を無駄遣いする生命だったという証明だけど。
 しかしこうして手に持っているものが無益なままに消えていくというのも酷くつまらない出来事に思えて。
 さてこの魔法、どう決着したら美しく映えるだろうと、悩んでいた、正にその時。


【掻き乱せ 希望】


 ふと見上げた恋色の彗星の、眩いばかりの金色が、何だか少し翳っているように見て取れたものだから。
 その金言を、つまり、解決への答えを、私は思い出し。
 ならその輝きを、いつも通りの虚飾を取り戻してやろうと思った。
 
 土。
 安息、肥沃。全てを表す語彙。
 五の真ん中であり、七の外縁。
 全てが通り全てが通い全てに通ず。
 そこに居るなら全てを見、聞き、知れ。そこに居つづけるなら何物をも得ず。
 
 そんな属性の類似を以って、この道具を転用する。
 七極世界、ステンドグラスワールドを、見えない星への望遠鏡にして。
 どこかへ消えたあの巫女を、最高に素敵で不気味な少女を召喚する。
 それは今日の異変ではないが、年末の異変だ。
 本日は土曜。
 光が走り、一本の地平が無数に増え、一面のラスタが大地を形作る――




【 ― パンドラツウィスト ― 】




 ――紅白の彼女が、地面の上に戻れるよう。





  **  師走晦日 土曜 昼






 七極世界と恋色魔砲と完全時空が治まった後。

「そりゃお前」
「無意味ですわ」
「・・・やっぱり無理だったか。けど矢鱈悔しい」
「第一な、霊夢は行方不明なんであって、消息不明じゃない。
 ちゃんと書置きがあったんだよ。まぁその、妙な文面だったが」
「用事の有無なんて関係無いわね。今ここに巫女が居ないのは、それがもう異変だからに決まってる」
「そうなんですか? 霊夢がいないことぐらい、しょっちゅうかと思いましたわ」
「神社に居ないことじゃないわ。幻想郷に居ないこと」
「ああ? 何で知ってるんだ、そのこと」
「別に・・・そのぐらい、判らない方がどうかしてるの」

 私の魔法、七極世界の実行が、紅魔の館周辺を取り巻いていた異変の内の一つ、低空現象を、空を支える巨大な地龍を幻想郷に帰って来させるという形で解決に導き、意図する成果を残さなかった件について、私と咲夜と魔理沙は、ナイフと光線と中性子爆発とその他諸々の破壊現象でずたずたのがたがたになった図書館を一時間前の状態に戻すことでさっくりと完治させた後、何事も無かったようにお茶を運んできた小悪魔同伴のもと、割合と真剣な口調で、雑談に興じていた。

「霊夢なんて、いつもいないようなものなのに、よく気付くなぁ」
 私ぐらいだと思ってたぜ、と口笛を吹く魔理沙は、他者の嘘を見抜かない嘘吐きである。
 パチュリー・ノーレッジはその異変に気付いていなかったのだから。
 あいつを殊のほか気に入っているレミィは言うに及ばず、八雲紫の他にも、幻想郷の実力者と認識されているような存在なら皆、巫女の不在に気付いていて然るべきだ。無論、その行方や理由までも含め。
 それらさえ飛び越えるようなこの子たちが、どうして伝聞によってしかその事に気付けないのか、私には、年末の異変などよりよっぽどそっちの方が不思議である・・・いや、テーブルに不安定に寄りかかった彼女の箒ほどは気にならないが。 
 
「あー、魔理沙は鈍いものねぇ。というか、霊夢がいないことぐらい、異変でもなんでもない気がしますけど」
 咲夜は給仕役を小悪魔にとられた所為か、眼こそ確りと私を捉えているものの、座りの悪い椅子(の代わりに積み上げた本)に腰掛け落ち着き無くそわそわとしている。
 それを見ると、館に来たばかりの頃の彼女が少し思い出されて、少し面白い気分になった。
 どんなレトリックを以って表現した所で、人間は人間である。
 20年生きた程度で、可愛気を殺せるなら、彼女はここに来る前に死んでいるだろう。
 まあ確かに、繋がりが薄い私などが、巫女の不在についてどうこう言うべきではないのかもしれない。
 それが、更に私との繋がりの薄い、今週の日曜の主役によることであると判った上で思う。

「それで、メイド長はどちらへお出でだったんです? 晩までには帰るって仰ってましたよねぇ、確か」
 小悪魔の、シルバーのお盆を両腕に抱えたままの小首が傾ぐ。
 自然な疑問系で言葉が発せられた。自分のすべきだった発言を肩代わりしてくれた彼女に、少々の感謝。
 しかし、悪魔の癖にメイドが似合いすぎである。本分を離れすぎているとも言えるか。
 そこにはお盆でなく、本が挟まれているべきだろうに。
 彼女の生活がメイドのそれとどう違うかといえば、盤と判の差しかないというのにだ。

「小悪魔こそ、何やってたのって感じだけどね。まぁ、いいか」
 私。私にとってはそれほど意外でもない、正に意中の状況である。
 小悪魔は寝かしつけられていた、と言い切れる。
 咲夜が給仕役を代わらないのも、その辺りに理由があるのに違いない。
 こぞって無遠慮な癖に、思慮の程度では一切の遠慮が無い。
 立っているものは親でも使えという言葉にしたって、いつまで元の意味を保ったままでいられるか。

 とはいえこれも、赤の二元の小さな悪戯の一つ。寝かし付けられていたというよりは、事実の所、寝かしつけるように仕向けた、或いは、すすんで寝かしつけられに行った、なのだろう。
 これもというのは――勿論私が、彼女の本命の悪戯に気付いているから言える事である。
 その真意がわからない以上、危険人物二名の居る前で真相を明かそうとは思わないが、後できっちりと聞かせてもらう必要があるだろう。実際、その動機の方はというと皆目見当が付かないのだから。

「で、遅くなったけど、図書館に何の用? 大金星は掴み損ねたようだけど」
「んにゃ、大した用は無いな。いつも通りに、正々堂々と本を借りに来た」
「ですので、私もいつも通りにとらまえに参りました」
「然るに、私はいつも通りにのされたのです。ぐー」
「ああなんだ、誰かと思えば入り口にいた奴か。あれだな、お前はぼーっと立ち読みしてる所が悪い」
「いい記憶力ねぇ」

 これだけヴワルに立ち入りしているというのに、霧雨魔理沙にとって、名も無き小悪魔という怪異は、未だにもって空気以前の存在感であるというのだ。
 酷い話である、が、致し方ないと思うよりあるまい。
 赤い髪の全識者が持つのは、凄まじければ凄まじいほど、想像を絶し構造を逸するほど、裏の裏の裏をかいて表裏を転変させればさせるほど、普通の人間に対する影響は弱化するという性質の力である。
 彼女にしてみれば自分が図書館に住み暮らすのは必然であり最善であり生活であるけれど、魔理沙にも咲夜にも、小さな悪魔がそうしてそこに在る理由を知ることは出来ない。
 まあそれはいい。

「そう。暇なら、ちょっと仕事を頼まれるといいよ」
「もちろん私は暇じゃない。探し物中だって言ったろ?」
「だからそのことについて。頼まれてくれるなら、私が巫女を呼んであげるわ」
「あー、仏の顔も三度までだろ。懲りない奴」
「それは三度までに必ず成功するという意味でしかないという説もあったりするのです」
「はい薀蓄ありがとう。そもそも仏なんかとはまるで関わり合いが無いし、ひとっ走り頼みたいんだけど」
「よく判らんが・・・それで霊夢がひょっこり戻ってくるんだな?」
「まぁ多分」
「多分か」

 なら十分だぜと言って急に黙る魔理沙は気の無い様子に見える。
 けれど本当は裏腹に、こいつはやるべき事が見つかったことを純粋に喜んでいるのだ。
 実に判りやすい虚飾で、まるで見破られる為にあるようである。
 私は、キノコの方は自分で探しなさいと言って、差し当たって考えられる魔理沙を追い出す為の口実に思いを巡らせる。
 向こうの都合で勝手に助けてくれるなどという出来事が先ずもって異常事態で、実際にはそれが昨日の異変だったのではないかと思うぐらいの霧雨魔理沙であるから、本心から手伝いを頼むわけでは決して無い。
 ばれても後で困らず、また今日明日にはもう邪魔が入らないような、何か。
 そこで私は咲夜が言っていた異変のいくつかを思い出し、その中の何れかの解決を適当に割り振ろうと思い立って何となく咲夜を見遣ると、丁度彼女と目が合う。
 それが引き金となったのか、私が魔理沙にそのことを提案するよりも早く咲夜の口が動いた。

「というかパチュリー様、何か判ってるのなら教えていただかないと。
 お嬢様もそろそろお帰りのご予定みたいなので・・・お夕食の時間まで、もうあんまりありません」
「レミィが?」
「お二方ともです」
「フランドールも――それは良かった」

 その言葉は館主の不在という異変を解決するものだ。
 齎された安心感に、魔理沙はほうと感嘆でもするかのように息をついて、小悪魔はにっこりと邪気無く微笑んだ。
 私はといえば、少し複雑な気持ちである。が、仕方あるまい。
 紅魔館に紅い悪魔が居ないのは空を飛ぶ不思議な巫女が幻想郷に居ないのと同じ程度に不自然、不整合と言えることだし、友人関係という約定を持つ私自身、何より安堵すべきことで、考えていた魔理沙追放案のいくつかを棄却せねばならなくなる等という下らない問題が発生することについて咲夜に恨み言するのは愚行にあたる。

「何なら、その用も私がいたしますけど」

 暇なのだろう、咲夜は自分がどれだけ仕事を抱えていても暇だと思う人間だし、その生にどれほどの暇を持て余してもああ忙しいと思う人間だから、今彼女は忙しさへの克己心など皆無な上で私にそう言う。

「ああ、咲夜には別の用があるから、いいわ。これは魔理沙の方が向いてる仕事だし」
「そりゃ興味深いぜ。私に何をして欲しいんだか」

 何もしないで欲しいのとは当然言わず、「ここに居ないで欲しいの」とも不承不承ながら言えず、まぁ待て今言うからと私が言うと、既に魔理沙は居ても立ってもいられない心境らしく、いつものニヤニヤ顔を浮かべて紅茶を啜ると、黙った。
 霧雨魔理沙はべらべらと喋る口の化身のようなものだが、ここ一番の集中を高める際は意外なほどに静かである。いい加減何遍も人の書斎で古書の熟読などされると嫌でも気づくというものだ。つまり普段は集中するまでも無く最強の人間であるという意味で、空恐ろしく感じないでもないが、それは魔理沙の本質とは大きくかけ離れている。霧雨魔理沙が出鱈目交じりに本気を出していない時など無く、生きている限りはフルパワーで、その全力でもって嘘をついているに過ぎない。こいつが知らないのは手加減だけだ。
 手加減どころか箍も忘れる人間でないことをせめてもの幸いと思うより無いだろう。悪いことをすれば、痛い目に遭う。

「私に御用でしたら、まずそちらから伺いますわ。何でしょう、取り敢えず珈琲かしら」
「麦酒だろ」
「今日はとびっきりの食卓をプロデュースするつもり。悪くは無いけど合わないわ」
「咲夜の用も後で言うから、取り敢えずはそっちをお願い」
「任されますわ。ええ」

 それではと紡がれた言葉を残し、音も無く咲夜の姿が掻き消えた。時在は如何にも見慣れたものだが、思い切りの良さにはいつまでも驚かされるものである。
 去り際に腰掛けていた本の山さえ片付けていっているところなど、私には永遠に真似の出来ない完璧さだ。
 それを見てすぐ、魔理沙が行儀悪く紅茶を飲み干し、席を立って箒を持つ。

「あぁー、勿体無い呑みかたをっ」
「美味いぜ。
 さて、レミリアが戻ってくるなら、そうそう落ち着いてもいられない。私の仕事が家事手伝いじゃないことを祈る」
「平気よ、魔理沙は何も考えずに外を飛び回っていればいいだけだもの」
「何だ本当に楽だな。その間に色々やっていいのか?」
「というより、色々せざるを得なくなるわね」
「あー? ちゃんと説明しろよ」
「私にも良く判らないけど――多分、それで外の異変は解決するわ」
「外の? って、幻想郷のか」
「紅魔館の外。幻想郷の外のことは、巫女にでも任せておきなさい。外に居るんだから」
「そりゃそうか。それで、ぐるっと外回りしてきたら、パチュリーは何をくれるんだ?」
「勿論、日が暮れるなんてことは言わないわ」
「ほう。すると」
「先に言ったら面白くないと思うけど?」

 今教えるつもりは毛頭ないと言外に伝えると、魔理沙は浮かべた笑みを一層に強める。また後でなという意味だろう。残念ながら、もう来るなという風に曲解してくれなかったようだ。本当に残念なことに、報酬など何も用意していないということにも気付いてくれなかった。
 その笑みのまま、黒白の魔法使いが私と小悪魔に背を向け、珍しくも、歩いて図書館から去っていく。
 後ろにぱたぱた手を振る魔理沙へ、私は口には出さず、よいお年をと儀礼だけの挨拶をし、少しくらい多めに本を貸してやってもいいか、と思う。

 そして、図書館には私と小悪魔が残った。
 寝起きから現在まで引き続いていた待った無しの展開が、ようやっと静止。
 ようやく、私の時間になったのだ。
 もう邪魔は入らない。
 さあ。
 まずは今週の異変を解き明かそう。

 
 その犯人が、目の前に居るのだから。





  ** 師走晦日 土曜 昼





 実際、私が魔理沙に言った事は、突き詰めれば幻想郷に起きている全ての異変に遭遇しろという事であって、それ以下の無駄な動きを指してはいない。
 先ほど咲夜が言っていた全ての異変を解決することは、如何に魔理沙が人外の化け物を超越した発展途上であっても容易くない。
 しかし、それらが魔理沙の存在に端を発するものでなく、重ねて、私に起こる連日の異変のように、他の何者かによって困った出来事に相当するのなら。
 その異変を解決したいと思っているものの思惑と、魔理沙の思惑は共通することになる。
 ならば――自他の勘違いを、全ての世界超越まで昇華する霧雨魔理沙は、他の誰よりも、この異変の解決に向いている。
 独力でその全てを解決するなら十六夜咲夜の時空を遊ぶ程度の能力より勝るものは無いのだが、しかし現実問題、誰かと誰かがその関係性を用い、共通の問題を解決しようという場合、それぞれに必要なのは壁を破る力である。
 十六夜咲夜の完璧を突き破れる者はいない。彼女と共に動けるのは、巨大で堅牢な壁ごと包み込む紅い霧ぐらいなのだ。逆順に羨ましく思える話ではあるが・・・これも不気味な魔法か。

「あ、おかわりいります?」

 お盆を持ったままの小悪魔が訊いてくる。
 なるほど私のカップは既に空だ。
 だが私は首を横に振って言う。

「先に、足してきた方がいいわ。言い訳するのに喉が渇きそうだから」

 え、と言葉を詰まらせる彼女を見ながら考える。
 無窮精神の奥底で私は、材料不足故に保留した紅と紫の指す“年末の異変”を除き全ての異変の原因を知った。
 それは、何も外で起きているものに限ったことではない。
 精神の強靭と肉体の脆弱が、いつもより強く結び付いている。
 火曜の私には判らなかった――否、本気で不思議に、不気味には思っていなかった、その謎が、今の私には判る。
 不思議は節操の無い懐疑から、別件での確実な疑惑へと至った。
 ヴワル魔法図書館を、紅魔館の内に含めたのは、一体誰だったのか。
 簡単な事だ。
 紅い館の主は、紅いものを好む。
 紅ければいい。
 彼女もまた『紅い悪魔』。

「余り時間が無いけど、そのぐらいは良いと思うよ」
「パチュリー様、何かしたんですか?」
「言い訳するのも、紅茶を飲むのも、貴女」

 毎日の異変は、それぞれが全く関連性をもたないものであるのに、何故か他の紅魔館住人でなく、私を狙って起きている。
 ただの偶然のように思える月曜の異変。歪みを制御する咲夜が廊下を掃除していれば起こる筈が無かった。
 誰かが、彼女を引きとめていた。
 紅魔館全体を騒がせた火曜の異変。魔理沙が変な気を起さなければ何も起こらなかった。
 誰かが、魔理沙に気の利便性を説いた。
 想定外の状態を利用した水曜の異変。それは悪魔の妹の外出でなく、私が風邪を引いたという事実。
 私は、図書館の環境変化に気付いていなかった。いつもは気付かなくても平気である筈が。
 更に長らく眠った木曜の異変。神木の夢の後、友人から受け取った手紙に起きた、それ。
 枕元に置いたものが、いつの間に、誰によって、何故動いていた?
 決定的な証拠となる金曜の異変。彼女は、既に隔絶していた筈の私と、間違い無く会話していた。
 その後、同じ意味である筈の図書館が残り、彼女が消えた。そんな事は起こり得ないというのに。
 考えが真実味を増す土曜の異変。彼女は、図書館の入り口にいたという。
 私はそこにどんな書籍が置かれているかを知っている。彼女の出自も、そこにあると。
 
 であれば。
 今週の犯人は。


「――ぅ、お気付きでしたか」


 この子以外に、考えられない。

 答えは自ずと。
 彼女の持つ力、字を操る程度の能力と。
 彼女の在る由、書に因るその存在が、何よりの証拠。
 私に対して何かを起すような理由があるのは、彼女だけなのだ。

「気付かれてないと思ってたのなら、随分と幸せものじゃないの」
「あのぉ、怒らないでほしいんです。やったのは私だけど、ちゃんと理由があって」
「ほら、言い訳は後で聞くってば。お茶が飲めないじゃない。早く足してきて」

 意図して睨んで言う。喉が渇いているのは私も同じである。
 話を先に進めるにしたって、そういうゆとりを忘れてはならないのだ。
 故に、紅茶を省かず、小悪魔を急がせる。

「わわわ、判りましたよぅ」

 既に涙目になっている。
 私の凝視というのはそこまで危険なものなのだろうか。理解に苦しむというか、むしろ、泣きたいのはこちらの方である。
 そんな風に小悪魔は、金曜の時と同じく、あの時よりも慌てた様子で翼を羽ばたかせ、図書館の空を飛ぶ。
 怒ってるよう私の所為じゃないんだけどなぁブツブツとか呟きながら。

 だがそんなことは、私にも分かっている――はっきり言って、彼女の悪戯にしては、意味がありすぎる。
 どれも、何となくそうしてみたと言って言い切れないものなのに、その結果が、彼女にとって功を奏しすぎているのだ。
 私は彼女の悪戯を見破れなかった。
 それが彼女の突発的な動きによるものでないなら、初めから彼女を疑いはしない。
 その傾向は間違い無く小悪魔の姦計である。
 では何故、私はそれを見破れないまま、土曜まで嵌っていたのか。

 悩むまでも無い簡単な事だ。
 “私には見破れた。見破れないなら、それは私ではない”。
 私ではないといっても、今朝襲った擬似性格の私、過去の星の意思である天動説の怪物は違う。
 今日、正確には気絶するまでの私は、私未満だったのだ。
 私は今、私以内である。なら、何故気絶を逃れた後の私は、未満から昇格することができたのか。

 それは『私の魔法を使ったから』だ。
 金曜の事例が顕著なものである。私と私の魔法はこの世界と密接な関係を持つ。
 私が私となるのに、この魔法は最重要の要素。
 この身体のことでも、強靭な精神のことでもない。
 精神と肉体の関係そのもの。私の魔法――私の能力――私の存在力。
 つまりは世界との関係性、意図の糸、その存在を意識し、広げ、強める。魔法、不気味な魔法。
 その強度は、友人関係と同じように。
 確かめ、結び合い、ほつれ、ほどけ、撚り合い、因り合い、時に切れそうになることで、強くなる。
 私の魔法は、使えば使うほど、私を強くする。
 本を好み、それに付随する要素に過ぎないそれ以外の全てをそれなりに好む、私にしていく。

 肉体は他動する依代で、精神は自動する燃料。
 人間のような被造物とは違い、私のような幻想の存在は、その性格をどちらにも有さない。
 能力そのものが、私の性格を造り。
 性格を大元にし、私の能力が在る。

 だから、私に起きていた異変、真の今週の異変は、小悪魔の手によって起きていたものとは違い。
 月火水木金土、六日間を絶えずその日の魔法を行使する事でようやく本来の私に戻れる、それだけの手間と時間を要すほどに、私が私でなくなっていたことである。

 では、何故私は、そこまで私でなくなっていたのか?
 それが何者かによるものであれば、何故そうしたのか?
 これが、この一週間の最後の問題に繋がるだろう、中間の難題である。

 小悪魔の言い訳にその答えが隠されていることを祈り、私は彼女の帰りを待って、暇潰しに図書館の天窓を見上げた。
 そこはまだ閉まったままだが、ほんの少し開いた隙間から漏れる光が、昼の陽射しをの強さを教えてくる。
 長い日である。
『人生の帳は、嫌に遅く。幕開けはあれほど早かったというのに』、と思い出す。
 人の生に似た形で、この一週も流れているかのようだ。
 まだ昼間じゃない――そう思うと、多少気が楽になった。



 時間作りの大家もいることだし、残りの半日で十分。
 一週の夜たる土曜が更け、一週の朝たる日曜が明ける前に。
 この一日を最大限に使って、友人から課されたこの問題を、楽しみながら解いてやろう。

 まだ続く土曜に対し。
 何故か私は、たった今から今日が始まるのだという、妙な清々しさを得ていた。






 <ブギーマジックオーケストラ・四 了>


 大変長らくお待たせしました、shinsokkuです。

 ブギーマジックオーケストラ、六つ目の曜日をお届けします。
 相変わらずのノリですので、お好みでない方には全くお奨めできません。
 お好みの方は、もしかするとお楽しみいただけるのかもしれません。
 自分も少し楽しいです。
 この文章は基本的に日が落ちきったテンションで作られています。

 ぽちぽちと伏線回収。
 ハイ撤収ーっ! って言ってがやがや帰っていく伏線たちが可愛いかもしれない。
 他愛も無い内容ですから、伏線も捻くれていません。
 素直で真正直。それは潜んでいるのかというと、ちょっと判らないです。

 当初の予定と比べると、当初の予定に申し訳なくなってきます。あいつは立派だった。
 立派すぎて、今の自分にはとても書けない壮大さになりそうだと、早めに気付けて良かったです。
 この位が自分には丁度いい無理の加減。

 次が、一応の終わりとなるはずです。
 剋目せず、のんびりと瞳を潤しながらお待ちくだされば、いつかはお届けできるものと思います。

 具体的には、文花帖を手に入れました。
 皆様も、紅魔郷とか妖々夢とか永夜抄とか萃夢想とか花映塚とか文花帖とかをプレイすると、いつの間にか自分の次回作が出ても、難なく見落とす事が出来て、とても良いことだと思います。おすすめ。
 (でも自分以外の方の二次創作が見れないのは惜しいな)

 本文未読既読問わず、ここまで読んで下さった全ての方へ。
 本当に、ありがとうございました。

 日曜を待ちながら、またお会いしましょう。
shinsokku
parymawasu@inter7.jp
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コメント



0.1930簡易評価
10.無評価名前が無い程度の能力削除
お待ちしてました。
独特のテンションと言い回しは健在ですね。
次の曜日も楽しみにしてます。
12.100no削除
新年初SSが待ってた曜日シリーズ!あなうれしや。
相変わらず読者を混乱させすぎない程度の煙のまき加減や、
西尾維新ばりのレトリックと「異名」。
本当に大好きです。次回クライマックス? 楽しみに待っています。
25.80Mya削除
> 良いお年を。
>
> そんな、投げ遣りな祈りが明日の日の出に届く暇も無しに。

 ふひー、読みました。今回は笑える所が随所随所にたくさんありましたぞ。「はいそうですか」とか、パチュリーが延々と、咲夜さんに言わせてみれば「べらべらぐちぐちと」瞑目して喋り続けていたこととか。
 しかし、嬉しい悲鳴です。木曜は三回読み返しました。金曜も同じだけ読み返しました。そして新年早々、がんばって黙読。これまでの伏線を思い返しつつ、小悪魔主題にならないからそろそろかなと思っていましたら、何と彼女が主犯でしたか。瞠目。小悪魔、いつかはやると思ってました。小悪魔は出来る子です(前記の通り、レアな小悪魔ファン。……小悪魔「も」ファン?)。

 点数は100点なんです。ですがどうしても、シリーズということで、私の中で神の域に達している木曜日と比べてしまって100点が付けられません。減点方式だけではなく加点方式も採用しております。金曜も面白かったので、対比の上でどうしたものかと……。困った。
 困った末でのこの点数です。平にご容赦。

 ブギーマジックオーケストラ終章、つつがなくお待ちしております。
27.90A削除
お待ちしてました!
延々と展開される思考の迷路にクラクラです。小悪魔は出来る子。
次で最終章でしょうか?お待ちしております。
30.90七死削除
土曜日がUPされてから、気が付けば6日も経ってしまっていた。
いやUPされてたの見て嬉しかったんすよ、この話大好きでしたから。
直ぐにでも読みたかったんすけど、どうにも構えちまって、情けないです。

いざ読み終えてみれば、やはりが流石のShinsokku節。
一行読めば行間に溺れ、一言を味わえば洒脱に中てられる。
紫線にしろ紅帝にしろ、その他惜しげもなく無数にちりばめられ、飾り付けられた一言一句はまさに至宝の山。 その至宝で固められた文章は言葉の美術館に例えれば宜しいでしょうか。

自分のチンケな理解力とキャパシティーでは到底収められない言葉の大妖才を向こうに廻し、それでも呑もうと躍起になる。
それが愉しい。
こんな愉しい読書は他に知らないのですが、間違いなく愉しいとこれだけは胸を張って言えるのです。

臆病者がしり込みしている間にもう新年最初の土曜日が始まってしまいましたが、全て開ける日曜日、明日を望む希望の年になりそうです。

それにしても、小悪魔、まさかこのタイミングで入ってくるとは。
ブギーマジック、しかもそれがオーケストラだ。
この七重奏、ああ堪らない堪らないと口の端がヌタリと吊り上がるばかりで御座いました。
35.90名前が無い程度の能力削除
やはり、氏のパチュリーは格好良い。
幻想郷の日の出を心待ちにしております。