真夜中の博麗神社では、博麗霊夢が満月を眺めながら、夜風に当たっているとルーミアが神社に訪ねてきたので境内に行く。霊夢の姿を見て、走って近づいてきた。
「どうしたのよ。こんな真夜中に訪ねてきて…」
「…………手土産持ってきたから、一緒に…」
ルーミアは霊夢の顔を見ずに、右手に持っていた八ツ目鰻の入った箱を霊夢に渡した。
「縁側に来て、お茶…いえ、お酒を出すわ。飲むでしょう?」
ルーミアは小さく頷くと、縁側で霊夢が来るのを待った。暫くして、霊夢がお酒を持って縁側に来る。
「何かあったの?」
「眠れない…」
ルーミアは顔を下に向けたまま霊夢に言った。月明かりがルーミアの顔を照らすが、顔は下に向いたままなので、表情はわからない。だが、話し方からして元気がないのはわかった。
(表情はわからないけど、暗そうね…ルーミアが話してくれるまで、待ちますか。)
「ルーミア。これだけは言っておくわ。何があったかわからないけど、また明日神社に来なさい。私は中立の立場でも、来るものは拒まないわ。正直に言ったら、独り酒は寂しいのよ。来てくれない?」
ルーミアが少し顔を上げて、霊夢の方を見る。
「お酒…飲もう。」
「うん……」
ルーミアと霊夢は真夜中の満月を見ながら、お酒を飲んだ。八ツ目鰻を食べながら、ルーミアの方を見ると、表情が少し明るくなったような感じがした。
(何かよくわからないけど、明るくなったようね。)
「宴会以外で誰かとお酒を飲んだのは、久し振りだわ。」
「そうなの?」
「人間は普通、真夜中は寝てるわよ。今日は眠れなかったのよね…」
お酒を飲んで気分がいいのか、霊夢は聞かれていないのに、本音を話続けている。
「ルーミアは何時も、真夜中は起きてるの?」
「……寝てるよ。今日は何故か…眠れなくて…」
「ルーミア…今日はもう泊まりなさい。」
「え!?霊夢?」
お酒を飲み終えると、霊夢は立ち上がり、布団の準備をする。ルーミアは八ツ目鰻を食べ終えると同時に、抱えられて一緒の布団に入らされる。
「私は…泊まると…」
「ルーミア。寝るわよ…お休み。」
ルーミアが言い終える前に、寝てしまった霊夢。
(……霊夢は…強引なんだよ…よくわからない…人間。)
わからない状況になったが、ルーミアの心が晴れてきたのか、暗い表情をしなくなった。次第に眠くなったルーミアは、霊夢の背中に抱きついて眠った。
翌朝、ルーミアは霊夢に起こされて、幻想郷の空を一緒に飛んだ。冷たい風を感じながら、眠気がなくなったルーミアは、霊夢が何を考えているのか、よくわからなかった。
妖怪の山の山頂に降り立つ霊夢とルーミア。この時間に天狗はいないのか、監視がいない。
「霊夢…」
「ルーミアが悩んでいることは解決した?よくわからないけどね。」
「な、なんで…」
「私は勘だけは、良く当たるのよ。理由はわからないわよ。」
ルーミアは暫く霊夢を見続けた。風を感じている暇など、無いくらいに。それから暫くして、監視の天狗がやって来ると、霊夢とルーミアは逃げ回った。
何時の間にか、ルーミアの表情は明るくなっていて、何を悩んでいたのか、忘れてしまったらしい。
博麗神社に戻ると、再び寝てしまった。すると、霧雨魔理沙が遊びに来たのだが境内にいないので、部屋内に入ると、霊夢とルーミアが仲良く一緒の布団で寝ていたようなので、魔理沙は静かに起きるのを待っていたのであった。