寒い冬の幻想郷。雪が降り続ける夜の博麗神社では、博麗霊夢、古明地こいしの2人が炬燵に入ってお茶を飲んでいた。
「人間も寒い冬は苦手だけど、妖怪も関係無いのね。」
「流石に、こんなに寒いときついよ…」
炬燵に入っているが、まだ寒いようで、こいしが寒さに震えている。霊夢は炬燵から出てこいしを抱き締めたまま炬燵に入る。
「霊夢?」
「寒いんでしょ?だから…これなら、寒くないでしょ?」
抱き締める力を少しだけ強くして、離さなかった。こいしは抵抗する気がないどころか、霊夢に抱き締められて、嬉しそうである。
「霊夢は…夜1人でいるのが寂しくなったりする?」
「私だって…寂しかったりするわ。」
「今は私と霊夢だけだよ。」
腕の力を緩められて、こいしが霊夢と向かい合わせになり、目を見つめている。すると、霊夢がこいしの目から視線をずらした。
「今の霊夢は寂しそうだよ。私に甘えてよ…」
「だけど…私は…」
「巫女だから、中立を保たないとダメなんだよね?」
霊夢が発言する前に、こいしに言われてしまい黙る。
「私と逃げよ?私の力があれば、誰にも見つからずに2人だけでいられるよ。」
「でも…」
霊夢は徐々に弱々しくなり、こいしに視線を合わせると、両手で霊夢を抱き締めて離れないように力を込める。
「冬が終わるまで、私に甘えてよ…霊夢が満足するまで一緒にいるから。」
「何で…私に…そんなことを…」
「私は霊夢が好き…だから私に甘えて…」
こいしは霊夢にキスをした。両手で抱き締められているため、離れることはできない。霊夢はキスされていることに理解したが、されるがまま抵抗をしなかった。暫くすると、こいしはキスをやめて、笑みを浮かべた。
「何で抵抗をしなかったの?霊夢なら私を止めれたよね?」
「……無意識だからよ。そうでしょ?」
「私は能力…………そうだよね。無意識だから、仕方ないよね?」
こいしが霊夢の手に触れると、そのまま手を握り霊夢に視線を合わせる。
「今なら引き返せるよ。」
「私は…こいしと一緒にいるわ。だけど、暫くは神社から出ないで…こいしの能力なら、誰にも気づかれずに出来るわよね?」
「それだと、何時もと変わらないよ?」
「今の私を知ってるのは、こいしだけよ。そして、少しの間だけ私を独り占めできる。それじゃあ…ダメなの?」
霊夢はこいしの背中に手を回して、決して逃げないと行動で示した。
「良いよ。それじゃあ…霊夢を無意識の世界に招待するね…」
こいしは霊夢に抱き締められたまま、能力を発動すると、こいしと霊夢の視界に薄い膜のようなものが覆われる。
「何も変わってないわね?」
「今はそうだけど、他の人には見えていない状態になるよ。正確には相手の無意識に入ってるだけだから。私から離れたらダメだよ?」
霊夢は頷いた。今現在は夜明け前だ。霊夢がこいしから離れなければ、他から見られることはないらしい。
「寝てても、能力は解除されないの?」
「わかんない。普段から無意識だから…」
霊夢とこいしはお互い傍を離れないように、抱き合ったまま過ごしていると、普通の魔法使い、霧雨魔理沙が神社に遊びに来たようだ。
(寝てるのか?)
魔理沙は部屋に入り、霊夢とこいしの前を気づかないまま通り過ぎていった。やっぱり、見えていないらしい。暫くすると、霊夢がいないと判断して、何処かに行ってしまった。
「気づかれなかったでしょ?やめても良いよ…霊夢。」
「もう少しだけ…私と一緒に…」
「良いよ…抱き締めなくても、手を繋いだ状態でも大丈夫だよ?」
霊夢は離れたくないようで、抱き締められている腕の力が入り、こいしの顔は霊夢の体に押し付けられる。
「ちょっと苦しい…」
「ごめんなさい…」
「逃げないからね。」
「こいしは帰らないの…何時までいてくれる?」
霊夢はこいしと離れたくはないが、帰る場所がこいしにはあるため、聞いてみたのだ。
「明日かな?また、泊まりに来るけど、良いよね?」
「……わかったわ。」
朝食の準備をするために、こいしから離れて準備をする。だが、こいしもついてきたようだ。
「邪魔しないから、近くにいさせて…」
「良いわよ。」
朝食を食べ終えて、再びこいしは霊夢に抱き締められる。神社に誰も来ないため、無意識状態にはならない。
「こいしは退屈じゃない?」
「別に。霊夢といられれば。」
「ちょっと、眠たいから寝るわ。」
「霊夢と一緒…」
こいしは霊夢に抱き締められるまま、布団に入りそのまま眠った。目が覚めると、外は日が沈んで来て暗くなる。
「寝て過ごしちゃったわね。」
「霊夢。頭撫でて…」
霊夢はこいしの頭を撫でるが、首回りを少し撫でると、猫のように霊夢の体に頭を擦り付けてきた。
「今のこいしは猫みたいよ。」
「えへへ。霊夢だけの猫だよ。」
「こいし。ありがとう。明日は帰るのよね?近くまで、送らせてくれない?」
「良いよ。おやす……ンム…は、霊夢…いきなりは狡いよ。」
霊夢がこいしにキスをすると、少し不機嫌になり頬を膨らませた。
「ごめんなさい。今度はちゃんとするわ。」
こいしにゆっくり近づいてきて、触れるだけのキスをする。すぐに離れようとするが、こいしに腕を掴まれて、離れられない。
「………こいし。長いわよ…触れるだけだから、よかったけど…」
「猫は気紛れだよ。一緒に寝よ…」
その日の夜も、抱き締めたまま眠り、翌朝にこいしを近くまで送って、神社に帰っていった。
つい弱みを見せちゃう霊夢とそれを受け止めるこいしがよかったです