Coolier - 新生・東方創想話

ルーミアと少年の3日間

2022/04/27 15:03:46
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真夜中の魔法の森で、散歩しているルーミアは人間の少年を発見した。見るからに弱々しい。服装が幻想郷では滅多に見慣れない服装なので、外から来た人間であることはわかった。

ルーミアは久々の獲物なのだが、襲い掛からずに声をかけた。

「君は誰なの?」

「……何処なのかな?」

「貴方は食べても良い人間?」

「妖怪か何かなの?」

少年に当てられて、驚く表情をするルーミア。

「そうだよ!私はルーミア。妖怪だよ。」

「僕を食べるなら、良いけど…2日後にしてもらえないかな?僕の命が3日間までなんだ。」

少年の話だと、不治の病で病院で入院していたのだが、残り命が3日になった時に魔法の森に迷い混んだらしい。

「今食べたら、ダメなの?」

「…入院中は、ずっと病室で過ごしてきたから、死ぬ前に散歩でも良いから外に出たかったんだ…ダメかな?」

「……その代わり、3日間は私から離れたらダメ。約束…どうする?」

少年は小さく頷いて、ルーミアと一緒に行動することにした。

「なら、3日間だけ彼女になってあげる。」

「え!?それは…」

「ダメなの?」

ルーミアが涙をためて、少年を見つめると、承諾してもらったようだ。

「私の家に案内するね。」

「わかったよ。」

ルーミアの頭を撫でたら、最初は少年の手を見ていたが、撫でられてるとわかると、笑みを浮かべたのだ。

「妖怪だと、知らなかったら…ルーミアは可愛い女の子だよね。」

「それだと、私は可愛くないの?」

「ルーミア…可愛いよ…」

少年の発言に、恥ずかしいのか、ルーミアは少年の背中に顔を隠してしまったようだ。

「いきなり狡いよ…」

「嘘は言ってないよ。可愛いのは…本当。」

「次言ったら、今からでも食べる。」

「今は死にたくないからダメ。」

ルーミアは機嫌が悪くなってしまったようだ。

「ルーミア。此方向いて…」

少年の頼みに、少し怒りながらも此方を向くと、抱き締めてきたのだ。その少年の行動を見直したのか、手を少年の背中に回してきた。

「今は…許す…次はないよ。」

「ありがとう。ルーミア…」

少年は手を繋ぎながら、幻想郷の簡単な説明をルーミアに教えてもらった。

「神様までいるの!?」

「蛙みたいな、帽子を被ってるよ。」

ルーミアとの会話で少しずつではあるが、元気を取り戻した少年だが、急に頭痛がしたようで、頭を押さえながら座り込んでしまった。

「大丈夫!?私の知ってる…」

「お願い…今だけは…一緒にいて。」

「わかった…」

暫く休んでいると、痛みが引いたのか、頭痛が無くなったようだ。少年を支えながら歩く。

「大丈夫…?」

「もう…大丈夫。あれがルーミアの家?」

「小屋だけどね。河童の電気製品で、生活できてるよ。」

「河童…もう、驚かない。何でもありだね…幻想郷は。」

家の中に入り、ルーミアは少年をベットに寝かせようとする。心配してくれるようだ。

「果物持ってくるから、ベットから動いたらわかるよね?」

「おとなしくしてます。」

ルーミアは果物を取りに向かった。

(別世界か…慣れない経験だよ…)

考えているうちに、疲れが来て眠ってしまったようだ。

「果物持ってきた…寝てる。」

果物を持ってきたルーミアは、寝ている少年に静かに近づいて、観察する。

(人間は…時間が短い…)

少年の頭を撫でながら、寝顔を見ていると、目が覚めたようだ。ルーミアに撫でられているのに気づいたようで、ルーミアの手を握り離さない。

(闇が、深そう…だけど…今は食べないよ…約束だから…)

ルーミアは泣きそうな少年に、抱き締めてきたのだ。 

「今だけは、私が彼女。泣いても良いよ。妖怪の私でよかったら。」

「ありがとう…ルーミア…雰囲気が変わった?」

ルーミアの容姿は変わっていないが、明らかに雰囲気が変わったのだ。少年は動揺している。

「大丈夫。約束は守るよ…人間のお前が約束を破らない限り。」

「破らない…僕の時間は…3日間しか無いんだ。」

「だから、人間は面白いよ。」

ルーミアは少年を起き上がらせて、果物を渡す。少年は果物をゆっくりと食べ始める。

「少しは食べた方がいいよ。」

「ありがとう…」

果物を食べ終えると、再び眠気が来たようで、眠った。ルーミアは少年に布団をかけると、一眠りしたのだった。

夜になる頃に少年は目を覚ましたが、ルーミアが少年の上で寝ているため、起き上がれない。

「ルーミア。起きて…」

「ん…起きたの?外が暗くなってる…」

「起き上がれない…」

少年の発言に、ルーミアは状況を確認して、怪しげな笑みを浮かべる。少年は嫌な予感がしてきた。

「今の私は彼女だよね?」

「3日間限定のね。」

「だったら、この行動も、許されるよね?」

少年に近づいて、そのままキスをしたのだ。すぐにやめたようだが、明らかにルーミアは恥ずかしそうにしていた。

「恥ずかしいなら、やらなくても…」

「君が…好き。それ以外に理由ある?」

「僕は3日間までしか生きられないよ?」

「幻想郷にも、薬師いるけど、生きたくないの?」

「いいや…正直に話すと、足が動かないんだ…久し振りに歩けたから、よかったよ。」

少年の発言に、ルーミアの目から涙が溢れたのだ。苦笑しながらルーミアの涙を手で拭って、ルーミアにキスをした。

「ンム…ン…は…何で、やめるの?」

「ごめん…眠い…」

少年は疲れて眠ってしまったようだ。ルーミアは寝顔を見て笑みを浮かべると、隣で眠り、1日目が終わった。
  


翌朝、少年が起きて体を動かしてみるが、やはり足は動かないようだ。ルーミアを見ると、少年のお腹に乗っかって寝ている。

(寝相…悪いのかな?)

暫くすると、ルーミアが目を覚まして少年を見る。何を待っているのか理解したようで、頭を撫でた。

「……………何か違う。」

「許してよ…お願い。」

「明日は覚悟してね…君を食べるとき…痛いから。」

「出来れば、痛くないように…」

ルーミアは機嫌が悪い。少年がルーミアの頬を伸ばして変顔にする。

「なにふるのしゃ?」

「妖怪でも、人間と余り変わらないね。」

ルーミアは少年の発言にぶちギレた。突如、暗闇を発生させたのである。少年は驚いたが、発生された暗闇に恐怖心を抱かなかった。

(暖かい…暗闇なのに…)

「ルーミア。」

「前が見えないからわからないよ…」

「え!?自分の闇なのにわからないのか!?だったら、暗闇を消して。」

暗闇消えると、少年の目の前にルーミアがいたのだ。

「な!?」

「捕まえた。逃がさないから。」

ルーミアは少年の顔を掴むと、そのまま抱き締めた。だが、昨日よりも力が強いため、少年の力では抵抗できない。

「………ルーミア?」

「………君は、辛くない?生きられるのが、明日で最後なんだよ。」

「辛いよ…本当は生きたい…」

ルーミアは少年の頭を撫でると、我慢が出来ずに泣き出してしまった。辛い気持ちが押し寄せて、涙が止まらないようだ

「我慢しないで…私に甘えて良いから。」

ルーミアに抱きついて、顔を胸に押し付ける。暫くして、泣き止んだようだ。だが、恥ずかしかったようだ。

「…………」

「大丈夫かな?」

「今何時?」

「午後1時だよ。人里いかない?」

「……行かない。ルーミアと2人だけでいい…」

窓から外を眺めていた少年は、突然ルーミアの手を掴んで、後ろから抱き締めてきたのだ。

「どうし………ンム…!?」

ルーミアが後ろを向いた瞬間に唇を奪った。少年の行動にルーミアは、おとなしくなり、少年の首に手を回す。

「アム…ンム…ン…は、そろそろ、どうしたいの?」

「………」

「耳掃除してあげる。ちょっと待ってね。」

少年はベットに横になると、戻ってくるのを待つ。

「綿棒持ってきたよ。」

少年の体を横に動かして、綿棒を耳の中に入れ、少しずつ綿棒を動かして、中を掃除する。

「痛い……」

「ごめん、ゆっくりするね。」

小さく綿棒を動かしながらすると、耳から取れていく。少年はくすぐったくても我慢する。

「綺麗に取れたよ。反対もする。」

「………ン……ア…」

暫く掃除をすると、中が綺麗になり最後は、息を吹き掛ける。少年は変な声を出してしまい、ルーミアを睨む。

「息はいらないよね!?」

「掃除終わったよ。昼の準備してくるね。」

ルーミアは準備をするため、寝室から出ていく。いなくなったのを確認すると、発作を起こしていたようで、我慢していたようだ。

(お願いだから…明日までなんだ…持って…)

胸を押さえていると、ルーミアが戻ってきてしまい、少年の異変に気づかれた。

「どうしたいの!?しっかりして!やっぱり…」

「ダメ!明日で…最後なんだ…お願い…ルーミアと一緒にいたい…」

「本当に?」

少年は後悔のない瞳で、ルーミアを見つめる。溜め息をしたルーミアは、説得を諦めて、少年を抱き締めて、落ち着くのを待つ。

「あ、ありがとう…ルーミア…もう大丈夫。」

(嘘つき…本当は…無理してるくせに…)

ルーミアはお粥を少年に食べさせる。恥ずかしいが、ルーミアが泣きそうになっているので、黙って食べる。

「………ごちそうさま。」

「残ってるよ…」

「食べられないんだ…」

残りのお粥を片付けると、夜まで少年と会話をした。外が暗くなると、明日に備えて早めに寝ることにした。

「明日が最終だね…」

「ルーミア…頼みたいことがあるんだ。明日は一緒に家を出よう。」

「え!?大丈夫なの?」

「わからない…でも、お願い。」

ルーミアは少年の願いを受け入れて、明日は出掛けることになった。2人は抱き締めあったまま眠りについた。


少年とルーミアは朝早くから家を出発していた。少年が奇跡的にも、歩けるようになったからである。そのため、家から出てルーミアとデートに出掛けたのだ。

「本当に人里に行かなくて良いの?」

「人里に行ったら…生きたいと…思ちゃうよ。」

そう、今日が少年の最後の日なのだ。昨日少年は発作を起こしているため、何時倒れても、おかしくない状態に陥っている。

「それにしても、少し寒い。」

「そろそろ、冬になるよ。」

魔法の森を出て、最初は霧の泉に向かう。妖精も存在するが、朝早くからはいないようだ。まだ寝ているのだろう。

「綺麗な泉…」

「この泉の近くに吸血鬼が住む洋館があるよ。」

「………吸血鬼!?」

「行かないよ…」

「行きたくない。」

暫く綺麗な泉を眺めると、妖精が泉に来たようで、少年とルーミアは急いで、泉から離れる。

「どうしたのチルノちゃん?」

「人間がいたような…気のせいかも。大ちゃん今日も遊ぼ!」




泉から離れた場所から妖精を見ていた少年とルーミア。

「あれが…妖精…」

「妖精は自然がある限り、何度でも復活するよ。」

「……………行こう…別の場所に。」

「次は…花畑のある場所に行こう!」

次に到着した場所は、太陽の畑だ。花畑の中には入らずに外から眺めている。

「向日葵が咲いている?季節違うよね?」

「うん…幽香が来た!」

太陽の畑の管理をしている風見幽香が、気づかない内に向日葵の手入れをしていたのだ。ルーミアと少年の存在に気づいて、来るように手招きしている。

「久し振りね…ルーミア。隣は人間ね。私は風見幽香。」

「よろしくお願いします。」

幽香は少年の服装を見て、
外から来た人間だと気づいた。だが、幽香は少年を見て、違和感を感じたようだ。

(足に妖力の気配がするわね…誰かが干渉してる。)

「どうしたんですか?」

「……見た感じ、貴方はどこか悪いの?」

「病気です。絶対に治らない病気…」

「………そう。」

幽香は何かを思い出したかのように、少年とルーミアに頼みごとをする。

「ちょっと2時間のくらい、花畑を見てもらえないかしら?知り合いに花の種を届けないといけないのよ。」

「………わかりました。」

「荒らさない限り、近くで見ても構わないわ。お願いね。」

幽香はそう言って、出掛けたのだ。留守を任された2人は花畑を眺め時間が過ぎていき、楽しかった時間が終わりを告げる。

「帰ってこないね…」

「そうだね……ルーミア…ごめん。時間だよ…」

少年に異変が起きた。発作を引き起こした。今までにない、酷い発作である。ルーミアは少年を抱えて、必死に呼び掛ける。

「ねぇ…しっかりして!」

「3日間…傍にいてくれて…ありがとう…」

「嫌だよ!死なないでよ…」

少年は痛みを我慢しながら、懐から鍵の形をしたペンダントをルーミアに握らせる。

「これは…」

「ルーミアに…あげる。お守り…そうだ…最期に…」

「そんな……ンム!?」

少年は最後の力を振り絞り、ルーミアにキスをした。

「…ンム…ン…ンチュ…は、お願い…生きてよ…」

「元気でね…」

「お願い…だから…目を覚ましてよ!」

少年はルーミアの傍で、永遠の眠りについた。ルーミアは少年を抱き締めながら泣き叫んだ。

「………最後…せめて…君を…食べなきゃ…誰にも…渡さない…」

少年の肉体をルーミアは喰らった。泣きながら、少年の存在を忘れないように、全てを喰らったのだ。

「……これで…私は…君を…忘れない…永遠に…一緒だよ…」

鍵のペンダントを首につけて、泣きながら家に帰ったのだった。それから、1年後。ルーミアは悲しみが癒えて、博麗神社の宴会に参加した。

ルーミアは神社の屋根から満月を見ていると、博麗霊夢がお酒を持ってルーミアに声をかけた。

「霊夢…どうしたの?」

「珍しいわね。1人で満月を見てるなんて。隣…」

「良いよ。隣に来ても…」

ルーミアは霊夢に聞きたいことがあり、質問した。

「もし、人間の好きな人が目の前で死んじゃたら…霊夢はどうする?」

「そうね…泣くわね。確実に…ルーミアの実際にあった話なの?」

霊夢に質問されたルーミアは、笑みを浮かべながら満月を見て、発言した。

「話してあげる…妖怪の少女と外から来た人間の少年が、一緒に過ごした3日間の物語を…」





終わり
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コメント



0.簡易評価なし
1.80名前が無い程度の能力削除
話はまとまってるように思いました。特にルーミアが男の子を食べる展開は、いかにもルーミアらしいと思いました。が、肝心のルーミアが何故男の子の彼女になると言ったのか、妖怪と人間の壁を越えた感情が彼女の中に存在したのか。そこら辺の心理描写が乏しかったので、イマイチ感情移入がしづらかったのが惜しかったです。
2.90奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
3.100名前が無い程度の能力削除
初々しくて良かったです
4.10名前が無い程度の能力削除
病気ってもうちょっと切実みがあると思うの