【八雲紫のプロジェクト交渉編】の続きです
交渉から一ヶ月後。妖怪屋敷建設計画を始動するために、藍、紫は話し合いをする。紫は屋敷の設計図を取り出す。
「屋敷の設計図は出来てるんですね。見覚えありますが…」
「依頼よ。この通りにしないと、ダメなのよ。」
「そうですか。神社に行きましょう。集まっていると思いますので…」
藍、紫は神社に向かった。
博麗神社の境内には、河城にとり、伊吹萃香と他の河童と鬼が五人ずつ集まっていた。藍は集まったメンバーに指示を出す。
「妖怪屋敷の建設場所は博麗神社に決まったわ。境内に建設をするから、この設計図通りに作業してくれ。」
藍がメンバーに設計図を渡した。イメージは紅魔館になっている。この提案は吸血鬼、レミリア・スカーレットが提案したものだ。
紅美鈴を参加させる条件での契約だ。色は博麗の巫女の紅白だ。
「何で屋敷の色が紅白なのよ!?」
「紫様の御命令なんだ。逆らうことはできない。」
藍は命令に逆らう気は全然無い。設計図を見ながら指示を出していく。ところが、建設途中でトラブルが発生した。河童の一部が設計図にない機能を取り付けようとしていたのだ。
「自爆機能を取り付けようとするな!そんな機能は要らないだろうが!」
「藍!?落ち着いて。」
「建築には犠牲が付き物だ!」
「にとり!?この馬鹿河童どうにかしてくれ!」
「ちょっと待って!酒を…を!?どうして!」
周りを見ると、鬼の一部が酒を持ってきていて、河童は鬼の被害を受けてしまい、酒で酔ったのが原因のようだ。
「こら!仕事中に酒を…!」
「藍は真面目だね~休憩だよ休憩だよ~」
鬼を率いる責任者に任命されている萃香は、鬼を止めなければならないのに、一緒になっている。河童も巻き込まれているため、建設作業が進まない。
「困ったな…」
「藍。進んでる?」
霊夢が建設作業の様子を見に来た。更には、差し入れとして、おにぎりと胡瓜の漬け物を作って持ってきたようだ。
「霊夢。大変なことが…」
「鬼が河童に酒をね…」
「もっと酷いのは、酒に酔った河童が自爆スイッチを組み込もうと…」
「あの鬼共…退治しても良いわよね?」
「霊夢!?今回ばかりは穏便に済ませたい。」
「鬼共を止めないと、建設は進まないわ。大丈夫……鬼は嘘を嫌う。私はこの計画のためなら……」
霊夢は藍に、とある物を見せると、少し悩むが霊夢の提案に乗ることに。
「仕方無い。本当は…神社での祭り用だが…やるしかないな。」
「鬼共!建設を進めなさいよ!ちゃんとやるなら、この酒をやるわ。前払いでね!」
霊夢が鬼に見せたのは、神社に大切に保管されていた神酒だ。主に、祭りや祝い事のために、先代巫女が用意していたものだ。
「な!?良いのか…霊夢!?」
「この神酒を前払いで、鬼共に渡すわ。前払いで渡すのだから、建設作業を危なくない程度に進め、作業中に酒を飲まない。企画終了時まで、河童に酒を無理矢理飲ませない。約束するならね。」
霊夢の取引に鬼共は、頭を悩ませる。鬼は嘘を嫌う。酒の前払いは魅力的ではあるが、条件が厳しい。取引に応じるか悩んでいる。
「悪いけど…取引に応じるかは、今決めなさい。」
(霊夢…鬼の逃げ場を塞いだな。)
藍は霊夢の取引条件に感心している。鬼の代表である萃香は、霊夢の発言に悔しがっている様子だ。
「う…酒の前払いに、こんな取引条件は…狡くない?」
「私は嘘を言ってないわ。約束するなら、前払いで酒を渡すわ。条件付きでね。」
「う……降参するよ!取引に応じるから、酒を渡してよ!」
「取引成立ね。」
萃香に酒を渡した。鬼達は約束通り作業を進める。霊夢は酒に酔った河童を介抱するために、薬を持ってくる。
「鬼に酒を飲まされたようだけど…大丈夫?」
「あ…ありがとうございます…」
「余り…無理したらダメよ。治るまでは安静にしなさい。」
「え!?ですが…」
「仕方無いわね…」
霊夢は河童の少女を抱える。抱えられた河童の少女は、あたふたしながら抵抗しているが、途中で諦めた。
「抵抗やめたのね?」
「巫女様は人間なのに、妖怪のあたしを心配するのは、どうなの?」
「私はね。面倒で疲れることが、嫌いなだけよ。でも…人間、妖怪なんて関係ないわ。困ってたら助けるだけ…差別はしないわ。異変を起こしたら話は別だから。だから、貴女は安静にしなさい!」
神社の一室に入ると、河童の少女を寝かせる。だが、河童の少女は霊夢の手を掴みながら、霊夢にお願いした。
「巫女様…私が眠るまで…傍に…」
「良いわよ。」
河童の少女は安心して眠った。
「うーん。やっぱり、妖怪に好かれるわね。」
霊夢は自分の行動が、妖怪に好かれている理由だとは、気づいていない。人間からしたら、妖怪の存在は恐怖でしかないのだ。だが、霊夢は妖怪を恐怖せずに拒まず、どんな妖怪だろうと態度を変えない。霊夢が好かれている一部だ。
建設の方では、既に屋敷の土台が完成していた。鬼がいるため、建設は短期間で完了出来そうである。
「短期間で完成出来そうだな。後、二ヶ月は掛かりそうだが…。塗料作業があるからな。耐震設計も大丈夫か。」
藍は設計図を確認しながら、建設に問題がないか検査しながら見る。
「藍~屋敷の内部も出来そうだよ。」
「は!?」
「建設仕事は鬼が幻想郷で一番だ~」
萃香の報告で、屋敷内部を注意深く確認しながら見ると、全く問題がない。念のため、紫から渡されたスカウターを右目に取り付けて、数値を計測する。
「耐久値は……三十五億!?…………わからん。」
スカウターをしまうと、紫から渡された札を屋敷の内部と外側に埋め込む。この札は紫のスキマとの通路を繋げる物らしい。
「次は河童の仕事を見るか。」
河童の作業を見るために、神社の裏手に向かいスキマを繋げる。このスキマは、河童の開発室に繋がるスキマだ。河童に仕事をしてもらう際に、通路用のスキマ札を河童達に渡しているのだ。
「にとり?作業…………は!?」
開発室では、企画で使う道具を河童達に開発してもらっているのだが、大掛かり物が出来ていた。
「にとり!?あの大掛かりなアレはなんだ!?」
「屋敷に取り付けるステージだよ。賢者様からの通達で、参加する者が一人二人追加されたらしいから、頼まれたよ。」
「屋敷の内部にどうやって…………あの札はその役割か!?」
藍は開発室から出ると、丁度昼時であるが、霊夢の姿はなく、探してみることに。
河童、鬼が作業している頃。霊夢が神社の台所で、昼食の料理をしていた。鬼、河童がいるため、大量に必要になる。
「料理はこんなものかな?」
胡瓜の漬物、胡瓜の酢の物、熊肉の串焼き、油揚げの御味噌汁、握り飯、鬼用に酒が用意されていた。
「霊夢は昼の準備か?言ってくれたら、私も手伝ったのだが…」
「藍は企画を進めないと、ダメじゃなかったの?私が出来ること…あんまり…」
「そう言うな。私も運ぶの手伝うよ…それにしても、大量に作ったな。河童も鬼もいるから当たり前だが。」
「この料理見て、まだ気づかないんだ?」
「油揚げ!」
「藍の分もあるに決まってるでしょ……………藍?」
藍は嬉しさの余り、霊夢を抱き抱えようとした。だが、藍の行動が怖くなったのか。ラリアットで藍を撃退する。料理は結界で保護。
藍を背負いながら、料理を異空間にしまい境内に向かう。
「霊夢!?藍をどうしたんだ!?」
「襲ってきたから、撃退しといたわ。萃香。鬼共を神社の縁側に呼んでおいて、昼の準備をしといたから。」
「霊夢の昼食!わかった!呼んでくるよ~」
萃香は作業中の鬼を呼びに向かう。
「……嬉しそうだったわね。鬼は嘘を嫌うから…本心…なのか。私のどこが…わからない。」
河童、鬼達と昼食を食べる途中で、河童の少女が霊夢の隣に座る。
「作業順調?」
「うん……胡瓜漬け物美味しい。」
「毎日作業しないとダメなのよね。先代様にも何回か怒られたかな?」
「御馳走様でした。」
「食器は流台にね。」
「わかった…」
「ん……?妖怪に好かれるのも…悪くないのかな?」
霊夢も昼食を食べ終えて、片付けをやっている。
「霊夢。屋敷に結界を施しといてくれ。屋敷内部も、もう少しで完了するんだ。」
「あれ?予定では二ヶ月掛かるのよね?」
「鬼の作業スピードを計算に入れてなかったよ。順調に進めば、一週間で建設が完了する。開催日までは結界で保護しないと、何があるかわからないからな。」
「わかったわ。」
霊夢は境内に向かい、屋敷の建設作業を見学する。
「やっぱり、鬼は力が強い。」
鬼達は木材を斬っては嵌め込んだりして、内部の骨組み作業をしている。
「確かに…もう少しで完成ね。」
「まさか…一日で建設するとは、思わなかったよ。」
「紅魔館よりは小さめだけど、中はどうするの?」
「紫様の能力を使うから当日に客が入れない事態にはならない。」
建設作業は夜遅くまで、続けられた。
翌朝。建設作業の内部が完了した。
「見た目は紅魔館みたいな館ね。」
屋敷の内部は二階建の少し小さな屋敷だ。一階は受付、食堂になっている。
二階は、劇場、グッズ売り場(予定)となってある。
「神社の境内に屋敷だから、小さなで良いんだよ。後は、紫様のスキマでどうにかなる。」
「紫がいないけど、どうしたの?」
「紫様は演目会議で、参加者達と地霊殿に行っている。」
「ふーん。」
「さて、最後の仕上げの入るぞ。」
鬼、河童が紅白の塗料を屋敷全体に丁寧に塗っていくと、昼頃には屋敷が完成した。
「後は三日間乾かしたら建設は完了だ。」
「私の仕事は…」
霊夢は札と針を取り出して、屋敷全体を何重にも結界を施した。
「結構疲れるわね。紫以外は屋敷に入れないはずよ。」
「そうか。建設お疲れ様。河童には開発の仕事が残ってると思うが、無理だけはしないでほしい。」
河童達に藍の話を素直に聞いている。
「今回はこれで解散する。」
妖怪屋敷建設計画は終了した。
幻想郷ならではのトラブルに見舞われながらも企画を進めていく藍が素敵でした
霊夢の対応をファインプレーでした
さすが妖怪の扱いに慣れてますな