普通の魔法使い、霧雨魔理沙は、マヨイガにいる妖怪賢者、八雲紫に用事があって訪ねてきた。手土産の御酒を持って。
「私に用事なんて珍しいわね。魔理沙…」
「ありえない話をしに来たんだぜ。」
「ありえない話……ね。」
酒を飲み、魔理沙の事を見ながら、観察する。
「紫は幻想郷を愛してると発言するよな?」
「当たり前よ。私が誕生させた楽園ですもの。」
魔理沙はそうだよなと思いながら酒を一気飲みすると、紫に魔理沙が考えていたありえない仮説を発言する。
「ありえない仮説なんだがな。幻想郷の存在そのものが、妖怪化した可能性はあるのか?」
「意味がわからないわね。」
「この幻想郷は、紫が誕生させた楽園と言われているが、実は楽園ではなく、意思をもった妖怪である仮説を考えていたんだ。」
「幻想郷は妖怪であると、魔理沙は言いたいのね?」
魔理沙の仮説を興味深く聞いている紫だが、笑みはなく。変わりに、魔理沙の仮説を危険視している雰囲気が漂う。
「仮説としては…面白くないか?」
「そうね…茶菓子にはピッタリの話だわ。」
「さて、紫。私の仮説は真実か?」
「私にもわからないわね。魔理沙の仮説には、穴があるわよ。」
紫は魔理沙に仮説を立証しろと言っているのだ。
「一つ目、幻想郷が妖怪なら何を食べて、どんな方法で吸収しているのか?
二つ目、博麗の巫女の存在
三つ目、今。私達がいるのは何処なのか?」
「一つ目は、妖怪と仮説してるわけだから人間だぜ。方法は、幻想郷内で誕生した妖怪が人を食べて、それが養分となり幻想郷が吸収している可能性がある。」
「面白い方法ね。二つ目は?」
「博麗の巫女の役割は結界維持と修復。幻想郷の掟を犯した妖怪を討伐することだろ?バランスが保たれなくなると、幻想郷崩壊の危機だからな。矛盾はないと思いたいが…」
紫は三つ目の穴を提示する。魔理沙は不敵な笑みで答える。
「私達がいるのは、幻想郷の腹の中だな…だか、私達が死んでいない理由は、幻想郷内でバランスが保たれなくなるからだ。」
「うーん、やっぱり仮説としては、否定したいのよね。妖怪化した場合は、私が誕生させた…母親として嬉しくないわけがない。」
「これ以上の話し合いはムリか。だが、幻想郷が妖怪である可能性は、否定出来ないだろ?」
「……そうね。だけど…妖怪ではない可能性も否定出来ないわよ。」
「何かの本で見たが…悪魔の証明だったか。」
「猫箱理論…どっちでも良いわ。魔理沙。忠告しといてあげる。余り、幻想郷を知り過ぎると、死ぬわよ。」
紫は一瞬だが、妖怪としての本性を出して忠告した。
「………気をつけるぜ。」
魔理沙は帰っていった。
「十数年しか生きていない人間の娘にこんな仮説を出されるなんてね。」
紫は笑みを浮かべながら消えていった。