晩餐会が終わり、食堂の後片付けをしているゼラートは、自分の手袋を外し、手に刻まれている契約紋を眺めていた。
「ゼラート。後片付けを手伝うわよ。」
「咲夜ですか。手伝うのは構いませんが…時を止めるのは…止めていただきたい。」
咲夜は目を見開いて、ゼラートから離れてナイフを構える。
「御安心を…パチュリー様の願いにより、この館に住む全住人を裏切る事が出来ないように枷をしているのです。」
咲夜に刻まれている契約紋を見せる。
「この紋章で、私の能力も制限されてしまいました。」
「貴方の能力は何?」
「【血を操る程度の能力】ですが、制限されたので…【自分自身の血を操る程度の能力】になりました。その名の通り血を操る能力。」
「体内の血液は操ることは?」
「体内の血は無理です。この様に…」
ゼラートは小瓶に入っている血を操る。
「体内の近くでは操れません。小瓶に入れてやっと操るのです。制限が無ければ、相手の血を操れます。」
咲夜は安心してゼラートに近付く。
「で、私の能力がわかった理由は?」
「懐中時計…鎖の音が微かに…それが、能力の媒体ですよね?空間が広がっている理由は…不明ですが。」
「媒体の事まで…降参よ。」
咲夜は両手をあげて、反論を諦める。
「能力は便利ですが…人間が時を操るのは、私にとっては、愚かな行為だ。時間は大切なもの。無暗にやり過ぎると後悔しますよ。私のように…」
「貴方も…何かを後悔したことがあるの?」
「貴女だけに…ちょっとした私の秘密を教えましょう。私には悪魔になる前、妹がいたのですよ。」
「悪魔になる前…半魔の理由は…」
「そうです。妹の種族が悪魔。本当の妹ではなかった。詳しい話はしませんが…悪魔になった理由は…妹が私に血を飲ませたのです。死ぬ寸前の私を…」
「ゼラートの体には妹さんの血が流れているのね?」
「奇跡に近いですよ。本来なら悪魔の血は、人間にとって猛毒なのですから。それでは、また明日。この話は誰にも内緒ですよ。」
「パチュリー様にも。」
「聞かれるまでは。」
ゼラートは食堂を出て闇に消えた。
使い魔になった翌日。紅魔館の屋根の天辺にゼラートがいた。太陽の光を浴びて日光浴をしていた。
「良い天気です。そうだと思いませんか?妖怪賢者殿。」
「あら、私の存在に気づくとは、貴方…やるわね。」
「美しい貴女程でもありませんよ。八雲紫殿。」
「冗談は無しですわよ。」
「悪戯は好きですが…冗談は苦手ですので。」
ゼラートは紫に笑みを浮かべると、姿を消した。
「パチュリーの使い魔、ゼラート。面白い少年ね。」
紫はスキマで消えた。
日光浴を終えたゼラートは、主であるパチュリーを起こしに図書館に入り、小悪魔を呼んだ。
「ゼラートさん。おはようございます!」
「おはようございます。パチュリー様を起こしたいのですが…」
パチュリーはソファーに座り、本を読んでいた。その数は100冊以上だ。流石のゼラートは、小悪魔にある指示を出すと、小悪魔は図書館を出る。
「パチュリー様。おはようございます。良く眠れたでしょうか?」
「ん?寝てないわよ。」
「パチュリー様。今から寝て下さい。夜更かしはいけませんよ。」
ゼラートはパチュリーを抱えて寝室に連行した。