マヨイガで小鈴は子猫達に埋もれていた。
「橙ちゃん!?助けて!」
「皆!小鈴から離れて!」
橙が注意しても子猫達は、離れようとせず、逆に橙を威嚇している。
「何でこうなったの!?」
「うー私のせいだ!」
数十分前に遡る。
毎日の日課である小鈴は、鈴奈庵で読書をしながら店番を任されていた。すると、八雲紫の式、八雲藍が鈴奈庵を訪れた。
「いらっしゃいませ。」
「小鈴に紫様から手紙を預かっている。」
「紫様?」
「申し遅れた。私は八雲紫様の式、八雲藍だ。紫様から小鈴宛に手紙を預かっている。絵巻での異変で御世話になったそうだな。」
小鈴は数ヵ月前にあった異変を思い出した。
「読ませてもらいますね。ん?妖怪文字で書かれた手紙?【小鈴ちゃんお久し振りです。この度は、マヨイガにいる藍の式、橙を紹介したいがために、招待状を送ります。八雲紫】と書かれて…藍さん?」
「妖怪文字が読めるとは。紫様の言っておられていた通りだな。」
「この力ですか?数ヵ月前ですが、ありとあらゆる文字を読める力を手に入れまして…それ以来…妖魔本の内容がわかるようになったんです。」
「その力は素晴らしい。だが、他の妖怪に利用される危険がある。妖魔本を扱うときは、細心の注意を払うことだ。」
藍からの忠告を受けるが、禁止されていないことに、少々驚いている。
「禁止しないんですか?私なんかが妖魔本を所持していても…」
「小鈴は人間なのだろ?妖怪に興味のある。私からしたら歓迎だ。この事は、紫様には内緒にしてくれ。余り…」
「わかりました。」
藍は紫の日傘を開くと、スキマが出現した。
「このスキマはマヨイガに繋がっている。」
「わかりました…」
スキマに見て、興味が湧くが少し恐怖心が出ている。
「怖いのは仕方ない。私の手を握っていればいい。」
小鈴は藍の手を握り、スキマの中を通りマヨイガに向かう。
「暗いですね。」
「何回も通ったら…慣れるかな。」
マヨイガに到着した小鈴は、暖かい風を感じながら周りを見ている。ちらほらと子猫が小鈴を見ている。
「子猫がいる!」
「橙は家にいるはずだ。案内しよう。」
小鈴は迷子にならないように、藍の横を歩く。
「猫の里みたい…」
「橙は化け猫の妖怪なんだ。小鈴は見たことはあるかな?」
「う~ん。寺子屋で猫っぽい妖怪をちらほらと…」
思い出そうとするが、余り良く覚えていないのか、わらなかった。
「橙は裏の庭にいるはずだ。」
「そう…藍さん。子猫達を追い掛けるあの子ですか?」
小鈴が指を指している方向には、帽子を被っている化け猫が、子猫達を追い掛けて遊んでいる光景に見える。
「橙の課題は、子猫達を従えることんだが…」
「どうしますか?」
「そうだ…気づいたようだ。」
橙は子猫達を追い掛けるのに疲れいて、休憩する際に藍に気づいて手を振っている。
「お帰りなさいませ!藍様!隣にいる人は誰ですか?」
「私は本居小鈴。よろしくね。橙。」
「はい。よろしくお願いします。小鈴!」
橙の尻尾が機嫌が良さそうに揺れている。
「橙。小鈴と少しの間だけ遊んでいなさい。小鈴も良いかな?」
「大丈夫です。」
「わかりました。藍様!」
小鈴は少しの間だけマヨイガで、橙と遊ぶことにした。
「橙はどうやって子猫達を従えさせるの?」
「餌をやったり、力で押さえつけたり…」
「押さえつけ…恐怖支配じゃあ、従えても…橙は悲しくないかな?」
橙の頭を撫でながら、話を聞いて、良いアイデアがないか考えている。
「猫の好きなものは…」
「小魚かな?煮干しとか。」
「家におやつ用の煮干しがあります。あげてみましょう!」
橙は煮干しを取りに向かった。
数十分後。小鈴は子猫達に埋もれてしまっていたのだ。子猫達は小鈴になついてしまった。橙が煮干をあげて命中しても言うことを聞かなくなってしまった。
猫を全然従えられない橙がかわいらしかったです