《イントロダクション》
ジ、ジジッ、ジジジジッ……ザー、ザー、ザー…………
メル「……あーあー、てすてす、てすてす。……うん、多分大丈夫そうかな?」
メル「みんな、こんばんやっほー!!(挨拶)
さあ元気良く始まりました、騒霊メルランのハッピーラジオ、略してメルラジ!
この番組は視聴者の皆様から寄せられたひょんなお悩みやみょんなお悩みを、
持ち前のポジティブシンキングでメルっと素敵に解決していく……なんてことは別に全然まったく無くてー、
単に私が勝手気の向くままにお喋りするのをのんびり聞いてもらうってだけの番組なのよね。
だからみんなも気楽にしてていいからね! もう存分にくつろいじゃって!
私も今すっごいくつろいでるから! ココアとか飲んでるから!」
??「のっけから飛ばしてくなぁ」
メル「あ、こらリリカ! 紹介が済む前に喋るんじゃないの、ネタバレになっちゃうでしょうが!」
リリ「へーい」
メル「……こほん。えー、この番組は毎週日曜日に放送させて頂くわけですが、
いくら私が話術に優れ話題には事欠かず、小粋なジョークで場を和ませつつも幸せオーラ全開のトークができる、
おまけに見た目もとってもキュートで素敵なお姉さんだとしても――」
リリ「…………」
メル「……ちょっとリリカ、ちゃんと突っ込んでよ。
でなきゃ、私がやたら自信過剰な女みたいになっちゃうじゃない」
リリ「いや、黙ってろって言われたし」
メル「あ、そっか。すいませーん、今の部分カットでお願いしまーす」
リリ「(あれこの番組って生放送って体だったんじゃ)」
メル「はい。この番組は毎週日曜日に放送させて頂くわけですが、いくら私でもただ一人でお喋りしてるだけじゃ
すぐにマンネリ化しちゃって視聴率もテンションもどんどん下がっていって、
しまいに『おまえもう番組降りろ』って言われちゃうのは火を見るよりも明らかなのね。
って言うか単純に、一人で喋り続けるのは寂しいです!
なのでー、この番組では週替わりで、ご応募頂けた方の中からお一人、ゲストをお呼びしたいと思っています!
さぁこの放送をお聞きのそこの貴方! 私と一緒にお喋りしましょう!
そして友達になりましょう! いっそマブダチになりましょう!
あ、連絡先は番組の最後にお伝えするので、最後までお付き合いよろしくね!」
*
《ゲスト紹介》
メル「それでは本日のゲストをご紹介します! 記念すべき第一回目のゲストはこの人!
我らがプリズムリバー楽団の一員であり縁の下の力持ち! 彼女がいないとうちの楽団は成り立ちません!
ちっちゃな身体に想いはおっきく! 生意気だけど時々甘えんぼだったりもするよ!
どぅるるるるるるるるるるるるるる……じゃーん。
騒霊キーボーディスト、リリカ・プリズムリバーの登場だー!!」
リリ「はいどうもー」
メル「リリカテンションひっくーい! もっとアゲアゲでいかなきゃファンは増えないわよ!
もっと可愛くあざとさ全開で! 妹キャラを前面に押し出していきましょう!」
リリ「えー」
メル「ほらほら、もう一回やってあげるから今度は元気良くね!
どぅるるるるるるるるるるるるるる……じゃーん。
騒霊キーボーディスト、リリカ・プリズムリバーの登場だー!!」
リリ「…………んんっ。
みんなぁ、こんばんやっほー!!(挨拶)(キュンとくる萌声で)
初めましての方は初めまして、そうじゃない方は……えへへ、いつも応援ありがと♪
今紹介してもらった妹のリリカだよー♪ 楽団ではキーボートとか担当してるよ!
普段は楽器を通して音を伝えてる私たちだけど、今日は声でみんなのことを楽しませちゃうよー!
私たちのお喋りで、ラジオの前のみんながちょっとでも癒されてくれたら……リリカ、とぉっても嬉しいなぁ♪
メルラン姉さん、今日は一緒に精いっぱい頑張ろうね!」
メル「…………」
メル「……あんた、すっごいわね」
リリ「メル姉がやれって言ったんじゃん?」
*
《テーマ① リリカは眠らない》
メル「リリカはもうちょっと寝た方がいいと思うのよ。だってほら、寝る子は育つって言うじゃない?」
リリ「チビって言うな」
メル「言ってない!」
リリ「冗談はさておき、これでも一日四時間は寝るようにしてるんだけどなー」
メル「それが短いって言ってるのよー。
私なんか一日平均十時間は寝てるし、オフの日は起きたらお昼過ぎてたなんてこともザラよ?」
リリ「それは寝すぎだしもう少し働け。だいたいさー、騒霊って本来、睡眠とる必要なんてないわけじゃん?
昔からの習慣で、なんとなく夜の間はベッドに入るようにしてるけどさ。
”音探し”に譜面整理、楽器の整備に新曲作成……やるべき事なんて他にいくらでもあるんだし。
メル姉は一日の三分の一を意識も無いまま無為に過ごすの、勿体無いって思わないの?」
メル「思わないわよぉ。あったかふわふわのおふとんに包まれながら微睡むこと以上にハッピーな時間なんて、
ライブで最高に盛り上がってる時やアツアツのお風呂に漬かって手足を伸ばした時、
あとはお酒を飲みながら好きな食べ物をお腹いっぱい食べた時くらいでしょ?」
リリ「あぁ、メル姉はほんとよく食べるよね。食事も、騒霊には必要ない行為だと思うんだけど」
メル「太ってないもん!」
リリ「言ってない!」
メル「冗談はさておき……いやほんとに太ってないんだからね?
……そりゃあ最近、ちょっぴり楽団服の前ボタンが留めにくくなった気はするけどー」
リリ「じゃあやっぱり太ったんじゃん」
メル「太ってないもん! 断じて太った訳ではなく、あれは……そう!
胸が! 胸が大きくなったのです!」
リリ「……はあーん?
ねぇ皆さん、今の聞きました? この女、公共の電波を使っておっぱい自慢を始めやがりましたよ」
メル「んなっ?! ち、違うもん! 今の無し! 今の取り消し!」
リリ「じゃあ太ったんでしょ?」
メル「…………」
リリ「おっぱい自慢……」
メル「……ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ太りました」
リリ「うんうん、正直なのは良いことだよねー。ラジオの前のみんな?
みんなも暴飲暴食や惰眠を貪るのは程々にして、適度な運動を心がけてスマートな体型を維持しようね!」
メル「はぁい……」
*
《テーマ② リリカはつれない》
メル「突然ですが、番組宛てにお便りが届いております」
リリ「はぁ」
メル「早速読み上げたいと思います。
『聞いてください! 最近、うちの妹の付き合いが悪いんです。
明日はオフだから今夜は一緒にお酒飲もうって誘っても、全然付き合ってくれません……。
このままでは固い家族の絆に徐々にヒビが入り、いずれ一家離散の憂き目を見ることになるかもと思うと、
不安で不安で夜しか眠れません。どうしたらいいと思いますか?
――霧の湖近くの廃洋館在住、某ハッピーの伝道師より』
……ですって! これは大変な難題よー。一体どうしたらいいのかしらね?」
リリ「いや、誘われたらちゃんと毎回付き合ってるでしょ」
メル「最初の一杯だけは、ね。それ以降はぜーんぜん飲もうとしないじゃない」
リリ「飲む量なんて個人の自由でしょ? 今はそういうのアルハラって言うんだよ。
……だいたい、なんでそんな飲ませようとしてくんのさ?」
メル「だってリリカが酔っ払ってるとこ見たいんだもん」
リリ「……なんで?」
メル「それはですね皆さん!!」
リリ「うわっ!! 急におっきい声出さないでよびっくりするじゃん」
メル「このように、うちの妹リリカは普段は生意気でツンツンしていて、一見すると可愛げが無さそうに思えます」
リリ「うっさい」
メル「でもね、でもね! 酔っ払った時のリリカはほんとに可愛いの!
ほっぺたが林檎みたいに赤ぁくなって、ずーっとニコニコ笑いっぱなしで。
それですっごい甘えてくるの!
『お姉ちゃん、ナデナデしてー♪』って言いながらこう、私の胸に頭をぐーって押し付けてきてさー」
リリ「……そんなことしてないし」
メル「いい子、いい子ってしてあげたら、気持ちよさそうに目を細めてはにかむのがもう堪んなくてねー♪
ルナサ姉さんなんて『ぐっはぁ!』って言いながら悶絶してたんだから」
リリ「それ以上言ったら殴るからね?」
メル「夜も更けたことだしそろそろお開きにしましょうかって言ったらリリカが私の袖をちょんちょんって引っ張ってきて
何かと思ったらちょっと恥ずかしそうに上目遣いで私を見上げながら『……おやすみのちゅーは?』なんてことを言ってきた日にはもう」
リリ「おらぁ!」
メル「ぐっはぁ!」
*
《テーマ③ リリカは友達が少ない》
メル「リリカは友達が少ない」
リリ「喧嘩売ってんのか」
メル「だって事実じゃない。あんたが家でお友達と遊んでるとこなんて見たことないわよ」
リリ「そりゃあプライベートだもん。なんでわざわざ姉さん達の見える所で遊ばなきゃいけないのさ」
メル「そういうスレたこと言ってるから友達ができないのよー」
リリ「だーかーらー、友達くらい居るってば」
メル「へー、ほー。じゃあ例えば?」
リリ「例えばー……ほら、魔理沙とか」
メル「あぁ、魔理沙ねー。確かにあの子、交友関係広そうだもんねぇ。
数多い友人の中に、リリカが一人くらい混じっていても不思議じゃないか。
よし、魔理沙はリリカのお友達だと認めてあげましょう!」
リリ「なにさま~?」
メル「そりゃあお姉さまよね。でも魔理沙と普段どんなことして遊んでいるの?」
リリ「んー、普通に弾幕ごっことか? あ、たまーに魔法の研究手伝ってあげたりもしてるよ。
なんかあいつ、奴隷……ってか使い魔?の研究をしてるっぽいんだよね。
簡単な命令は聞かせられるんだけど、複雑な命令を実行したり自分の頭で考えられる使い魔は作るのが難しいらしくてさ。
お前らみたいな自律した魔法生物はどうやったら生み出せるんだーって、頭抱えてるんだよね」
メル「……へぇ、そうなんだ」
リリ「『そもそもお前らはどうやって生まれてきたんだぜ?』なんて聞かれたこともあったんだけどさ。
私が正直に”音楽の霊”から生まれてきたんだって言っても、あいつ全然納得した感じじゃなくて……」
メル「おおっとリリカ、そこまでよ。今は友達の質じゃなくて量の確認をしてるんだから。
まさか、お友達が一人だけってこともないでしょう?
ほらほら、魔理沙の他に仲のいいお友達はいないのかなー?」
リリ「…………? なんか変なの。
魔理沙以外だと……うーん。……あ、妖夢! 妖夢がいるじゃん」
メル「えー、妖夢ちゃんかぁ」
リリ「え、なにその反応。妖夢とだって時々遊んでるよ?
……妖夢“と”って言うか、妖夢“で”遊んでるって言った方が正しいかもだけどー。
からかい甲斐があるもんね、妖夢って」
メル「それはすっごく判るけども。でも……んー、妖夢ちゃんとは気心に知れた仲ではあるけどー、友達って感じではないんじゃない?
どちらかと言えば従姉妹って言うか……いや、姪っ子かな?」
リリ「あー。確かに私ら、妖夢がこーんなに小さい頃からの付き合いだもんねー。
……考えてみれば、あいつもいつの間にやらデカくなったもんだ」
メル「あ、リリカはもう身長抜かされちゃったんだっけ」
リリ「うん、何年か前にね」
メル「私たちと違って、妖夢ちゃんはゆっくりとだけどちゃんと成長してるもんね。
……あ~あ。私も、あと五十年もしないうちに追い越されちゃうのかなぁ……」
リリ「……まぁでも、妖夢はきっと何百年経っても妖夢のままじゃん?」
メル「……ふふっ、それはそうね。間違いないわ」
メル「ところでリリカー、他にお友達は……」
リリ「あ、メル姉そろそろ時間みたいだよ。ほら、締めの挨拶はきっちりしなきゃ」
メル「逃げたなこいつ!」
*
《アウトロダクション》
メル「さて皆様、名残惜しいですがそろそろお別れの時間が近付いて参りました」
リリ「思ったより時間経つの早かったねー」
メル「あら? ってことはゲスト出演、案外楽しんでくれてたのかしら」
リリ「……うん、楽しかったよ。ほんとに。これならまた呼んでもらってもいいかもね」
メル「リリカにそこまで言ってもらえるとは心強いわー。これは反響が楽しみね!
……まぁ実際のところ、どのくらいの人がこの放送を聞いてくれてるのかはまったくの未知数なんだけどね。宣伝とかも全然してなかったし!
……そもそもなんだけど、幻想郷でラジオ持ってる人なんて果たして存在するのかしら。
ぶっちゃけ一人も聞いてくれてないっていう事態も普通にありうるわ!」
リリ「え、今更そんなこと言っちゃう……?
……まぁでも、仮に誰も聞いてくれてなかったとしてもさ。それでもやっぱり楽しかったよ。
たまには姉さんとこんな風に無駄話するのも……悪くないのかもしれないなー」
メル「……リリカ、あんたどうしちゃったの? さっきからやけに素直じゃないの」
リリ「べっつにー? ただの得点稼ぎだよーだ。……ほら、もっと妹キャラを押し出してほしかったんでしょ?
あ、そうだ! どうせならさ、この後どっか飲みに行かない? 勿論ルナサ姉さんも誘って、家族水入らずでさ」
メル「……!!
行く! 行きます!! わー、リリカから誘ってくれるなんて初めてなんじゃない?
こ、これは盛大にお祝いしなくては! ええい、今日は私の奢りだー!
リリカの行きたい店、食べたいもの、なんでも言ってくれていいからね!」
リリ「わーい、さすが姉さん太っ腹ー♪(ちょろいなぁ)」
メル「?? 何か言った?」
リリ「んーん、なんにもー?
……ってメル姉! 放送終了まであと三十秒も無いよ!」
メル「ふへ? ……あ、あーっ!
ラ、ラジオの前のみんなー、こんな時間までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
ハッピーだった? ハッピーだったよね? 私はとってもハッピーでした!」
リリ「ハッピーはもういいから、連絡先! 番号とか伝えておかなきゃ、ゲスト募集も何も無いよ!」
メル「あわわわわわっ……。あ、あれー? 連絡先のメモ、どこにやったっけー……?」
リリ「はぁっ?! なんで番号くらい暗記しておかないん
ジ、ジジッ、ジジジジッ……ザー、ザー、ザー…………
*
本日の放送は終了しました。
来週の放送をお楽しみに!
ジ、ジジッ、ジジジジッ……ザー、ザー、ザー…………
メル「……あーあー、てすてす、てすてす。……うん、多分大丈夫そうかな?」
メル「みんな、こんばんやっほー!!(挨拶)
さあ元気良く始まりました、騒霊メルランのハッピーラジオ、略してメルラジ!
この番組は視聴者の皆様から寄せられたひょんなお悩みやみょんなお悩みを、
持ち前のポジティブシンキングでメルっと素敵に解決していく……なんてことは別に全然まったく無くてー、
単に私が勝手気の向くままにお喋りするのをのんびり聞いてもらうってだけの番組なのよね。
だからみんなも気楽にしてていいからね! もう存分にくつろいじゃって!
私も今すっごいくつろいでるから! ココアとか飲んでるから!」
??「のっけから飛ばしてくなぁ」
メル「あ、こらリリカ! 紹介が済む前に喋るんじゃないの、ネタバレになっちゃうでしょうが!」
リリ「へーい」
メル「……こほん。えー、この番組は毎週日曜日に放送させて頂くわけですが、
いくら私が話術に優れ話題には事欠かず、小粋なジョークで場を和ませつつも幸せオーラ全開のトークができる、
おまけに見た目もとってもキュートで素敵なお姉さんだとしても――」
リリ「…………」
メル「……ちょっとリリカ、ちゃんと突っ込んでよ。
でなきゃ、私がやたら自信過剰な女みたいになっちゃうじゃない」
リリ「いや、黙ってろって言われたし」
メル「あ、そっか。すいませーん、今の部分カットでお願いしまーす」
リリ「(あれこの番組って生放送って体だったんじゃ)」
メル「はい。この番組は毎週日曜日に放送させて頂くわけですが、いくら私でもただ一人でお喋りしてるだけじゃ
すぐにマンネリ化しちゃって視聴率もテンションもどんどん下がっていって、
しまいに『おまえもう番組降りろ』って言われちゃうのは火を見るよりも明らかなのね。
って言うか単純に、一人で喋り続けるのは寂しいです!
なのでー、この番組では週替わりで、ご応募頂けた方の中からお一人、ゲストをお呼びしたいと思っています!
さぁこの放送をお聞きのそこの貴方! 私と一緒にお喋りしましょう!
そして友達になりましょう! いっそマブダチになりましょう!
あ、連絡先は番組の最後にお伝えするので、最後までお付き合いよろしくね!」
*
《ゲスト紹介》
メル「それでは本日のゲストをご紹介します! 記念すべき第一回目のゲストはこの人!
我らがプリズムリバー楽団の一員であり縁の下の力持ち! 彼女がいないとうちの楽団は成り立ちません!
ちっちゃな身体に想いはおっきく! 生意気だけど時々甘えんぼだったりもするよ!
どぅるるるるるるるるるるるるるる……じゃーん。
騒霊キーボーディスト、リリカ・プリズムリバーの登場だー!!」
リリ「はいどうもー」
メル「リリカテンションひっくーい! もっとアゲアゲでいかなきゃファンは増えないわよ!
もっと可愛くあざとさ全開で! 妹キャラを前面に押し出していきましょう!」
リリ「えー」
メル「ほらほら、もう一回やってあげるから今度は元気良くね!
どぅるるるるるるるるるるるるるる……じゃーん。
騒霊キーボーディスト、リリカ・プリズムリバーの登場だー!!」
リリ「…………んんっ。
みんなぁ、こんばんやっほー!!(挨拶)(キュンとくる萌声で)
初めましての方は初めまして、そうじゃない方は……えへへ、いつも応援ありがと♪
今紹介してもらった妹のリリカだよー♪ 楽団ではキーボートとか担当してるよ!
普段は楽器を通して音を伝えてる私たちだけど、今日は声でみんなのことを楽しませちゃうよー!
私たちのお喋りで、ラジオの前のみんながちょっとでも癒されてくれたら……リリカ、とぉっても嬉しいなぁ♪
メルラン姉さん、今日は一緒に精いっぱい頑張ろうね!」
メル「…………」
メル「……あんた、すっごいわね」
リリ「メル姉がやれって言ったんじゃん?」
*
《テーマ① リリカは眠らない》
メル「リリカはもうちょっと寝た方がいいと思うのよ。だってほら、寝る子は育つって言うじゃない?」
リリ「チビって言うな」
メル「言ってない!」
リリ「冗談はさておき、これでも一日四時間は寝るようにしてるんだけどなー」
メル「それが短いって言ってるのよー。
私なんか一日平均十時間は寝てるし、オフの日は起きたらお昼過ぎてたなんてこともザラよ?」
リリ「それは寝すぎだしもう少し働け。だいたいさー、騒霊って本来、睡眠とる必要なんてないわけじゃん?
昔からの習慣で、なんとなく夜の間はベッドに入るようにしてるけどさ。
”音探し”に譜面整理、楽器の整備に新曲作成……やるべき事なんて他にいくらでもあるんだし。
メル姉は一日の三分の一を意識も無いまま無為に過ごすの、勿体無いって思わないの?」
メル「思わないわよぉ。あったかふわふわのおふとんに包まれながら微睡むこと以上にハッピーな時間なんて、
ライブで最高に盛り上がってる時やアツアツのお風呂に漬かって手足を伸ばした時、
あとはお酒を飲みながら好きな食べ物をお腹いっぱい食べた時くらいでしょ?」
リリ「あぁ、メル姉はほんとよく食べるよね。食事も、騒霊には必要ない行為だと思うんだけど」
メル「太ってないもん!」
リリ「言ってない!」
メル「冗談はさておき……いやほんとに太ってないんだからね?
……そりゃあ最近、ちょっぴり楽団服の前ボタンが留めにくくなった気はするけどー」
リリ「じゃあやっぱり太ったんじゃん」
メル「太ってないもん! 断じて太った訳ではなく、あれは……そう!
胸が! 胸が大きくなったのです!」
リリ「……はあーん?
ねぇ皆さん、今の聞きました? この女、公共の電波を使っておっぱい自慢を始めやがりましたよ」
メル「んなっ?! ち、違うもん! 今の無し! 今の取り消し!」
リリ「じゃあ太ったんでしょ?」
メル「…………」
リリ「おっぱい自慢……」
メル「……ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ太りました」
リリ「うんうん、正直なのは良いことだよねー。ラジオの前のみんな?
みんなも暴飲暴食や惰眠を貪るのは程々にして、適度な運動を心がけてスマートな体型を維持しようね!」
メル「はぁい……」
*
《テーマ② リリカはつれない》
メル「突然ですが、番組宛てにお便りが届いております」
リリ「はぁ」
メル「早速読み上げたいと思います。
『聞いてください! 最近、うちの妹の付き合いが悪いんです。
明日はオフだから今夜は一緒にお酒飲もうって誘っても、全然付き合ってくれません……。
このままでは固い家族の絆に徐々にヒビが入り、いずれ一家離散の憂き目を見ることになるかもと思うと、
不安で不安で夜しか眠れません。どうしたらいいと思いますか?
――霧の湖近くの廃洋館在住、某ハッピーの伝道師より』
……ですって! これは大変な難題よー。一体どうしたらいいのかしらね?」
リリ「いや、誘われたらちゃんと毎回付き合ってるでしょ」
メル「最初の一杯だけは、ね。それ以降はぜーんぜん飲もうとしないじゃない」
リリ「飲む量なんて個人の自由でしょ? 今はそういうのアルハラって言うんだよ。
……だいたい、なんでそんな飲ませようとしてくんのさ?」
メル「だってリリカが酔っ払ってるとこ見たいんだもん」
リリ「……なんで?」
メル「それはですね皆さん!!」
リリ「うわっ!! 急におっきい声出さないでよびっくりするじゃん」
メル「このように、うちの妹リリカは普段は生意気でツンツンしていて、一見すると可愛げが無さそうに思えます」
リリ「うっさい」
メル「でもね、でもね! 酔っ払った時のリリカはほんとに可愛いの!
ほっぺたが林檎みたいに赤ぁくなって、ずーっとニコニコ笑いっぱなしで。
それですっごい甘えてくるの!
『お姉ちゃん、ナデナデしてー♪』って言いながらこう、私の胸に頭をぐーって押し付けてきてさー」
リリ「……そんなことしてないし」
メル「いい子、いい子ってしてあげたら、気持ちよさそうに目を細めてはにかむのがもう堪んなくてねー♪
ルナサ姉さんなんて『ぐっはぁ!』って言いながら悶絶してたんだから」
リリ「それ以上言ったら殴るからね?」
メル「夜も更けたことだしそろそろお開きにしましょうかって言ったらリリカが私の袖をちょんちょんって引っ張ってきて
何かと思ったらちょっと恥ずかしそうに上目遣いで私を見上げながら『……おやすみのちゅーは?』なんてことを言ってきた日にはもう」
リリ「おらぁ!」
メル「ぐっはぁ!」
*
《テーマ③ リリカは友達が少ない》
メル「リリカは友達が少ない」
リリ「喧嘩売ってんのか」
メル「だって事実じゃない。あんたが家でお友達と遊んでるとこなんて見たことないわよ」
リリ「そりゃあプライベートだもん。なんでわざわざ姉さん達の見える所で遊ばなきゃいけないのさ」
メル「そういうスレたこと言ってるから友達ができないのよー」
リリ「だーかーらー、友達くらい居るってば」
メル「へー、ほー。じゃあ例えば?」
リリ「例えばー……ほら、魔理沙とか」
メル「あぁ、魔理沙ねー。確かにあの子、交友関係広そうだもんねぇ。
数多い友人の中に、リリカが一人くらい混じっていても不思議じゃないか。
よし、魔理沙はリリカのお友達だと認めてあげましょう!」
リリ「なにさま~?」
メル「そりゃあお姉さまよね。でも魔理沙と普段どんなことして遊んでいるの?」
リリ「んー、普通に弾幕ごっことか? あ、たまーに魔法の研究手伝ってあげたりもしてるよ。
なんかあいつ、奴隷……ってか使い魔?の研究をしてるっぽいんだよね。
簡単な命令は聞かせられるんだけど、複雑な命令を実行したり自分の頭で考えられる使い魔は作るのが難しいらしくてさ。
お前らみたいな自律した魔法生物はどうやったら生み出せるんだーって、頭抱えてるんだよね」
メル「……へぇ、そうなんだ」
リリ「『そもそもお前らはどうやって生まれてきたんだぜ?』なんて聞かれたこともあったんだけどさ。
私が正直に”音楽の霊”から生まれてきたんだって言っても、あいつ全然納得した感じじゃなくて……」
メル「おおっとリリカ、そこまでよ。今は友達の質じゃなくて量の確認をしてるんだから。
まさか、お友達が一人だけってこともないでしょう?
ほらほら、魔理沙の他に仲のいいお友達はいないのかなー?」
リリ「…………? なんか変なの。
魔理沙以外だと……うーん。……あ、妖夢! 妖夢がいるじゃん」
メル「えー、妖夢ちゃんかぁ」
リリ「え、なにその反応。妖夢とだって時々遊んでるよ?
……妖夢“と”って言うか、妖夢“で”遊んでるって言った方が正しいかもだけどー。
からかい甲斐があるもんね、妖夢って」
メル「それはすっごく判るけども。でも……んー、妖夢ちゃんとは気心に知れた仲ではあるけどー、友達って感じではないんじゃない?
どちらかと言えば従姉妹って言うか……いや、姪っ子かな?」
リリ「あー。確かに私ら、妖夢がこーんなに小さい頃からの付き合いだもんねー。
……考えてみれば、あいつもいつの間にやらデカくなったもんだ」
メル「あ、リリカはもう身長抜かされちゃったんだっけ」
リリ「うん、何年か前にね」
メル「私たちと違って、妖夢ちゃんはゆっくりとだけどちゃんと成長してるもんね。
……あ~あ。私も、あと五十年もしないうちに追い越されちゃうのかなぁ……」
リリ「……まぁでも、妖夢はきっと何百年経っても妖夢のままじゃん?」
メル「……ふふっ、それはそうね。間違いないわ」
メル「ところでリリカー、他にお友達は……」
リリ「あ、メル姉そろそろ時間みたいだよ。ほら、締めの挨拶はきっちりしなきゃ」
メル「逃げたなこいつ!」
*
《アウトロダクション》
メル「さて皆様、名残惜しいですがそろそろお別れの時間が近付いて参りました」
リリ「思ったより時間経つの早かったねー」
メル「あら? ってことはゲスト出演、案外楽しんでくれてたのかしら」
リリ「……うん、楽しかったよ。ほんとに。これならまた呼んでもらってもいいかもね」
メル「リリカにそこまで言ってもらえるとは心強いわー。これは反響が楽しみね!
……まぁ実際のところ、どのくらいの人がこの放送を聞いてくれてるのかはまったくの未知数なんだけどね。宣伝とかも全然してなかったし!
……そもそもなんだけど、幻想郷でラジオ持ってる人なんて果たして存在するのかしら。
ぶっちゃけ一人も聞いてくれてないっていう事態も普通にありうるわ!」
リリ「え、今更そんなこと言っちゃう……?
……まぁでも、仮に誰も聞いてくれてなかったとしてもさ。それでもやっぱり楽しかったよ。
たまには姉さんとこんな風に無駄話するのも……悪くないのかもしれないなー」
メル「……リリカ、あんたどうしちゃったの? さっきからやけに素直じゃないの」
リリ「べっつにー? ただの得点稼ぎだよーだ。……ほら、もっと妹キャラを押し出してほしかったんでしょ?
あ、そうだ! どうせならさ、この後どっか飲みに行かない? 勿論ルナサ姉さんも誘って、家族水入らずでさ」
メル「……!!
行く! 行きます!! わー、リリカから誘ってくれるなんて初めてなんじゃない?
こ、これは盛大にお祝いしなくては! ええい、今日は私の奢りだー!
リリカの行きたい店、食べたいもの、なんでも言ってくれていいからね!」
リリ「わーい、さすが姉さん太っ腹ー♪(ちょろいなぁ)」
メル「?? 何か言った?」
リリ「んーん、なんにもー?
……ってメル姉! 放送終了まであと三十秒も無いよ!」
メル「ふへ? ……あ、あーっ!
ラ、ラジオの前のみんなー、こんな時間までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
ハッピーだった? ハッピーだったよね? 私はとってもハッピーでした!」
リリ「ハッピーはもういいから、連絡先! 番号とか伝えておかなきゃ、ゲスト募集も何も無いよ!」
メル「あわわわわわっ……。あ、あれー? 連絡先のメモ、どこにやったっけー……?」
リリ「はぁっ?! なんで番号くらい暗記しておかないん
ジ、ジジッ、ジジジジッ……ザー、ザー、ザー…………
*
本日の放送は終了しました。
来週の放送をお楽しみに!
メルランのラジオというのは素敵なコンセプトだと思いました