...まぶたの向こうが明るい。
もう朝か、いや昼前なのかもしれない。
かといってあまり起きる気にもならないが。
新種のウイルスが流行りだしてから、大学生活はさんざんなものになった。
肝心の講義はオンラインになってしまったし、そうそう大学に通う訳にもいかない。
わざわざ東京から越してきて一人暮らしを始めたというのに。
秘封倶楽部の活動も大っぴらには出来なくなってしまった。
たまり場にしていたサークル棟は、やはり立ち入りが規制された。
ここを出る意味などもはや無いのだ。出かけた所で、行ける場所なんてたかが知れている。
メリーともしばらく合っていないな、メリーはどうしているだろうか。
思えば何故かメリーには、この未曾有の事態が精神的に応えてはいないようだった。
ごく稀に感染者数が減り大学を訪れたときキャンパス内の人は皆俯いていて、マスクの上からでも憂鬱そうな顔をしているのが分かった。しかしメリーを見かけたとき彼女は颯爽と歩いていて、顔色もなんだか良さそうだった。
能天気?いや、彼女はこのご時世の生活に何か別のことを考えていたのかもしれない。
*********************
二度寝をして再び意識がもどってきた。
何やら足先の方からゴソゴソと音がしてくる。シュッシュッと、念入りに手をアルコール消毒する音も聞こえる。
誰だろう、まあここに入って来られる人なんて彼女くらいしかいないが。
聞き覚えのある足音が近づいてくる。
近づいて来て、足音がぴたりと止んだ。きょろきょろと何かを探しているのか。
「あー、やっと見つけた、ここにいたのね蓮子!」
やっぱりメリーだ。
「ほら蓮子起きなさい。どうせ目は覚めてて、もぞもぞしてるだけでしょ。まったく蓮子ったら、いくら何でも大学に来なさすぎよ。ぜんぜん会えなかったじゃない!」
力のこもったメリーの声が頭に響く。
「ほんっと分かりにくいわよね。こう物が多すぎて。ファイルとかノートとか、髪留めとか化粧品とか山のようにあって、見つけるの大変だったのよ。」
見つけるもなにも私はずっとここにいたし、大学で見なくなったのであれば私がここにいるのは自然だろうに。聞き耳を立ててメリーの意図を考えていたが、よく頭が回らない。
「メリー、さっきから一体何を言って...」
私は声のする方向に身を出してみた。
まぶしい、いや待て、いくらなんでも眩しすぎる。
これはいつもの昼の眩しさじゃない。寝起きでかすむ目が、強い光で更に霞む。
「でも今の蓮子の姿なら、これからもっと楽しく過ごせるわね!」
「待ってメリー、さっきから話が全然見えないんだけど。」
「全然蓮子に会えてなかったもの、ひどいことだわ。でもこれで解決ね!ありがと蓮子!」
「???」
私は異様な気配を感じて、目を擦った。
すると目の前に巨大なメリーが立っていて、私に手を伸ばして来ていた。
訳も分からないまま、私はひょいと持ち上げられメリーに運ばれていく。
「こうやってね、白いあなたと黒いあなたを2枚重ねたらいいんじゃないかしら。」
私は成すがままメリーの口元に当てがわれてしまった。
「2枚あれば感染対策もばっちりじゃない?さあ蓮子、一緒に大学に行くわよ!」
もう朝か、いや昼前なのかもしれない。
かといってあまり起きる気にもならないが。
新種のウイルスが流行りだしてから、大学生活はさんざんなものになった。
肝心の講義はオンラインになってしまったし、そうそう大学に通う訳にもいかない。
わざわざ東京から越してきて一人暮らしを始めたというのに。
秘封倶楽部の活動も大っぴらには出来なくなってしまった。
たまり場にしていたサークル棟は、やはり立ち入りが規制された。
ここを出る意味などもはや無いのだ。出かけた所で、行ける場所なんてたかが知れている。
メリーともしばらく合っていないな、メリーはどうしているだろうか。
思えば何故かメリーには、この未曾有の事態が精神的に応えてはいないようだった。
ごく稀に感染者数が減り大学を訪れたときキャンパス内の人は皆俯いていて、マスクの上からでも憂鬱そうな顔をしているのが分かった。しかしメリーを見かけたとき彼女は颯爽と歩いていて、顔色もなんだか良さそうだった。
能天気?いや、彼女はこのご時世の生活に何か別のことを考えていたのかもしれない。
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二度寝をして再び意識がもどってきた。
何やら足先の方からゴソゴソと音がしてくる。シュッシュッと、念入りに手をアルコール消毒する音も聞こえる。
誰だろう、まあここに入って来られる人なんて彼女くらいしかいないが。
聞き覚えのある足音が近づいてくる。
近づいて来て、足音がぴたりと止んだ。きょろきょろと何かを探しているのか。
「あー、やっと見つけた、ここにいたのね蓮子!」
やっぱりメリーだ。
「ほら蓮子起きなさい。どうせ目は覚めてて、もぞもぞしてるだけでしょ。まったく蓮子ったら、いくら何でも大学に来なさすぎよ。ぜんぜん会えなかったじゃない!」
力のこもったメリーの声が頭に響く。
「ほんっと分かりにくいわよね。こう物が多すぎて。ファイルとかノートとか、髪留めとか化粧品とか山のようにあって、見つけるの大変だったのよ。」
見つけるもなにも私はずっとここにいたし、大学で見なくなったのであれば私がここにいるのは自然だろうに。聞き耳を立ててメリーの意図を考えていたが、よく頭が回らない。
「メリー、さっきから一体何を言って...」
私は声のする方向に身を出してみた。
まぶしい、いや待て、いくらなんでも眩しすぎる。
これはいつもの昼の眩しさじゃない。寝起きでかすむ目が、強い光で更に霞む。
「でも今の蓮子の姿なら、これからもっと楽しく過ごせるわね!」
「待ってメリー、さっきから話が全然見えないんだけど。」
「全然蓮子に会えてなかったもの、ひどいことだわ。でもこれで解決ね!ありがと蓮子!」
「???」
私は異様な気配を感じて、目を擦った。
すると目の前に巨大なメリーが立っていて、私に手を伸ばして来ていた。
訳も分からないまま、私はひょいと持ち上げられメリーに運ばれていく。
「こうやってね、白いあなたと黒いあなたを2枚重ねたらいいんじゃないかしら。」
私は成すがままメリーの口元に当てがわれてしまった。
「2枚あれば感染対策もばっちりじゃない?さあ蓮子、一緒に大学に行くわよ!」