Coolier - 新生・東方創想話

月灰圏 花底

2022/01/13 01:07:34
最終更新
サイズ
47.53KB
ページ数
1
閲覧数
438
評価数
6/9
POINT
730
Rate
15.10

分類タグ

 これは残花と呼ばれる季節の物語。
 そもそもの話をどちらが始めたのか、宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーンの双方が覚えてはいなかった。世間話として漫然と会話に使われた手札は忘れ去られるのがさだめ。とはいえ追想の漣から最初にすくい上げられたのはひとつの噂である。
──夜空を黒い星がよぎっていくのを見た者がいる。
 不可視の存在を見たと言い張る噂の絶えることはない。科学世紀が謳歌するこの世紀においても。手のひらからこぼれ落ちる美しい幻影に等しいその噂を確かめるため、二人の少女によるサークル秘封倶楽部は夜な夜な冥い街へとびこんで覗きまわり、つぶさに噂の収集と結界破りを行っていった。やがて情報は枯渇し、彼女たちの活動による収穫も消え失せつつあったころ、二人におさない疑問が生まれた。
──そもそも噂を言いはじめたのは誰だろう。
 これもまた過去のあらゆる世界がふけった噂のひとつではあった。故に秘封倶楽部の二人は虜にされ、黄昏の空へ星が灯されていくように議論は重ねられていった。原初の夜空へ星座が組まれていく様にも似て、空想による仮定が心算に挿し込まれ増殖し、感覚による扇動が焚きこめられると情熱は再駆動をはじめた。最初に他人の耳へ黒い星の話を吹き込んだ者を辿ることは論理的ではなく、それゆえ秘封倶楽部の二人は疑問を変質させて(なにしろ科学世紀の子らである。因果を設定することは手慣れたものだ)『噂の中心』たりうる幻想を目指すことにした。
 ギリシャの噂の神たるペーメーが座す高殿へ続く道があればすぐさま結界を越えて出向いたのだが、彼女たちの住む東方の端ではそれも望めず、ようやくメリーの勘と夢見によって導かれた神社の結界を超えたころ、幻の星の噂は夜空から拭い去られようとしていた。



 真っ先に認識できたのは微かな光と緑に類する流動性の色である。点々と散りばめられたものではなく、眺めうる大地の隅々まで薄衣で包まれるような状態が息づいており、そのうち眼前の一帯が広大な森林であると蓮子とメリーには理解できた。夜の下、発光する森より外れた草原の一角に秘封倶楽部は立っているようだった。忍びやかに通っていく風は音を殺して歩く踊り子さながらに優美な感触を少女たちの膚の上に残し、現と夢の境界線を越えたばかりの脳髄を沈滞させる。
「星がない」
 空を見上げ一抹の陰翳かげを秘める蓮子のつぶやきが秘封倶楽部の意識をまばたかせた。月がない夜にはこれまで幾度も出会った。だが星は? 二人はしばしば話し合うと当初の目的を果たすため、うっすらともる森へ向かって歩きだした。
 茂る草種から絡み立つ匂いに足を止めたのはメリーが先だった。鼻や腔内を過ぎ去っているものだとばかり思っていた香りはどこか歪んでおり、それから嗅ぐことを耳に依って行っている自身をメリーは見出した。
「蓮子」
 呼びかけられた蓮子が振り返り、互いの目が会うと双方が口を開こうとした。しまいまで口にすることは許されなかったが。
 喉から言葉がひとつ流浪する。これが脳を走るよりも先に次の言葉が投げかけられる。耳鼻目膚が聞いた。それは上位語であり、それは海の底でかわされていた言葉であり、それは滅びた自閉症種らの用語であった。声を挟む間もない雄弁に無視は許されぬ。かといって答えようにも口では追いつけぬし、そもそもどこへ告白すればよいのか。混乱した自我は五感のすべてを返答に使おうと錯綜し、呆気にとられながら二人の娘の身体と魂は急速に活動を剥奪されていった。おびただしい苔におおわれるようにして失せてゆく娘らの意識は、しかしある光彩によって元の場所へすくい上げられることとなる。
 再び光景を取り戻した秘封倶楽部の前に広がるのは、かすかな光と緑に類する何かしらの色。聞こえていた言葉は消え失せ、草原から森へ向かって伸びる白亜で敷き詰められた道の上に二人は立っていた。そして何より、三人目の少女がそこにいた。
 少女の装いは藍銅鉱アズライトと黒が締める袖なしの胴衣とスカート。ぐなシルエットの上に走る鈍色のボタンや装飾が小さな光を走らせる一方で、手足は柔らかな白がかれている。手のそれはたっぷりとした布。足のそれは月光のごとき膚。髪上に冠する大輪じみた帽子は優雅かつ剣呑であり、身体を包む装束に合わせて相応ふさわしく咲いた不凋花。髪は薄明かりに濡れた風信子石ジルコンの房であり、片方はうなじまで、もう片方は肩下まで垂らしてある。なによりも目は──輝く両月は見たことがないほど老いており、公平さと酷薄さと正義に燃えていた。
「地獄に仏とはいきませんが、道ひとつならば私がきましょう。現へ引き返しなさい。夢で迷い込むにせよ、こんな場所へ来るなんて。言語学者の子たちかしら」
「あいにくと外れね。それに地獄だって? 私たちが見たものに比べたらずいぶん様変わりしてるじゃないの」
 ある種の威容に撃たれたながら蓮子は返答する。地獄を見たという言葉に眉をひそめた少女はメリーにも一瞥を走らせ、静かに目を閉じた。
「生者が地獄を垣間見ることは珍しくないとはいえ、あなたたち二人は慣れすぎているように思える。夢から覚めそうにもない。とすれば、しばらく道同しなさい」 
「白兎にしては高圧的ね」
 軽口をたたくメリーの瞳はしかし、口調と裏腹に暗いものだった。
「警戒を解けとは言いませんが、私の示す道を進まないとさっきみたいにあぶくになってしまいますよ」
「おや。だったら道づれついでに此処の説明もサービスしてくれない? お返しに私達からも現状の報告をしてあげるわ」
「結構です」
 呆れた声音で返す少女へからかうように笑った蓮子は、わずかの間メリーと目を合わせ頷いた。
「冗談にせよ、無駄な虚勢はやがて自分を貶めることに繋がりますよ。おいでなさい。眠気が覚めるまでのあいだ、私がここに至るまでの話をしてあげましょう」
 秘封倶楽部を引き連れて森へと進み始めた少女は四季映姫と名乗り、自らを閻魔だと説明した。龍をはじめとする幻想らによって隔離された或る隠れ里の地獄が任地であり、用あってこの夢の世界へ赴いてきたのだと言う。返答として秘封倶楽部が自分たちを一通り紹介し終わると、四季映姫は宣した。
 聞け。ひとつの徴候を。四季映姫の担当する彼岸において三途の川の幅が短くなったことがそもそもの発端である。霊魂たちの罪の多少が原因ではなく水量そのものが減っていると判明し、いずれ干上がるのも時間の問題となったのがつい先日のこと。現世と地獄の境界が消えてしまえば数多の面白からぬ影響が百花繚乱することは考えるまでもなく、神や妖怪が解決策を求めて立ち回った。それに付随する形で川を断ち切ろうとしている意思が見つかったのだ。
 聞け。三途の川が流れつく先の先に、とある最果てが造成されていた。川を吸い込んで霧散させるように消していく奈落のような現象は誰も目にできず聞くこともできない領域での出来事であり、結果とその反響から予想が積み上げられた。その奈落。地獄から延長された最先端を更に底へとむさぼり飲む穴の向こう側について、さらなる注力と観測が続行されて見出されたのがこの夢の世界なのだと閻魔は告げた。
 聞け。
「聞いてるよ」
 どちらかの少女が応える。四季映姫の声は子守唄のように優しく根気よく続けられており、秘封倶楽部は半ば無視をして共歩きをしていた。閻魔の後ろ髪を白い羽根が一枚滑り落ちていく。
 さて、夢の世界において三途の川が出てくる話は少なからぬことからもわかるように、ふたつの間に何かしらの関係があるのは疑うべくもない。しかし三途を飲み込むというのはあまりに動的すぎ、いうなれば意思に満ちていた。妖怪たちにとって馴染み深い感情である悪意を嗅ぎとらずにはいられぬほどに。
「その主を見つけるために私はやってきたのです。まえりべり。あまり植物に近づかぬよう。先ほど体験したことをまた繰り返すことになりますよ」
 道を踏み外しかけていたメリーが四季映姫の言葉に半歩退いた。連なる静やかな雪花石膏アラバスタ舗道しきいしみちは前後に遠く伸び、森中の遠景へ呑まれて細い白線となっている。あたりは土──それ自体が銀のごとく輝いている──を覆い隠すほど波のようにうねる根々が地面を編み、形も色も千差の類型を見せる波濤は、もしかすれば一つとして同じものが無いのかもしれぬと半ば信じかけるほど。色は紅玉ルビー金剛石ダイヤモンド橄欖かんらん石。蛋白石オパール。月長石と柘榴石が互いに打ち寄せ合って縞瑪瑙じみているものまであった。幹と枝葉は暁の月。もしくは星々のよう。
「三途の川をたっぷり飲んだから、ここの植物は地獄とつながっているのかしら。さっき体験した感覚は死国の入り口というわけ?」
 森のまばゆさから自発的に道の中央へ寄った蓮子が静かな声で聞くと、四季映姫は歩みを止めた。
「この領域は未言語の集合区。人間が生きる途上で膨大に積み重なっていく、言葉にならなかった言葉を光景と仮定したのがこの領域です」
 正確さが煮とろけ、続けられるべき夢が寸断されていく。雲が破れるようにして。

───────────────────────────────────────
 
 既存の言葉に当てはまらない、もしくは撹拌されて判別できない複合体としての感情は時間に流されて消え去るのみであり、別の言語体系と遭遇し翻訳の必要が発生するなどして定義せざるをえなくなった場合をのぞいては捨て置かれる未言語たちの領土がここだという。言わば言語森とでも名付けるべき夢の領域に封された+収斂しゅうれんされた+内蔵された+癒着された場所への存在を四季映姫は認可している。幻想郷の群れに助力されて。

───────────────────────────────────────

 未言語でざわめく植物らの音に半ばほど消された四季映姫の説明は途切れがちだったが、七遍のまばたきの後で秘封倶楽部は理解することができた。

───────────────────────────────────────

 探索者として四季映姫が選ばれたのは己の中に基準を持つものであり、変質しないものだからであると閻魔は語る。未知は幻想にとって危険である。先導者として月の舌禍(羽とする。口伝機能は取り外された)から力を借り、四季映姫にとって異物である力をなじませるために同じく異物である道士のちからを借り、月の薬で身体を補ってここへ訪れている彼女は言うなれば間接証明された閻魔の分体であり、自らの幻想と夢が混じり合った状態である。おとぎ話の兄妹のように帰り道へ印を落としているわけではないが、深海へ侵入する潜水夫の命綱のような物はわえられており、非時空と非夢現で作られた物質による綱は幻想郷側と即時的で簡単な意思疎通を可能としていた。

───────────────────────────────────────

 ざわめく植物らの音に半ばほど消されたのか四季映姫の説明は途切れがちであったが、十四遍のまばたきの後で秘封倶楽部は理解することができた。いつの間にか辺りの植生は見るからに変化しており、輝かしい星のごとき光はいくらか和らいで、森全体の奥行きと高さは深長を加えている。根束のひるがえりは鳴りをひそめ、代わりとばかりに緑の下生えや樹上からの垂れ枝が地表の上へ幾重にも広がっていた。星影の匂いが感覚をくすぐる中で、空間に氾濫した緑は層をなし、個々が深く浅く、もしくは広く狭く輝き、紡がれた糸翡翠のようにくねりつつ硬直していた。寄木細工モザイクじみた配列の色彩で輝くのは碧玉と天河石。と思えば翠玉と緑柱石の光彩に変じていく森の中を三人の少女は歩いていった。
「催眠効果でもあるんじゃないの。ここ」
 蓮子がぼやくと、しばらく間をおいてメリーが答えた。
「眠りの中で眠るとどうなるか試してみる? それとも試したことがあったかしら」
「いけない。本当に夢を見ているような感覚になってきてる」
 そして二人は一種の静寂を聞いた。弾かれたように揃って四季映姫の方を向いてみれば、先を進む閻魔は道の真ん中で振りかえっていたが、その顔は頭上より伸びてきた影により全てが黒で塗りつぶされてしまっていた。森のあちこちで地上の木漏れ日のごとく、枝葉を貫いて空から直ぐに影が差し込まれている。地に満ちる光のために端から削られながらも、影のいくつかは地上へこのれ落ちて溜まっており、そのうちのひとつを四季映姫は浴びていた。
 帰れ。
 メリーが結界を観測した。現への帰り道がそばに現れている。いいえ。はじめからずっと彼女の近くに境界はあったのではないか。七の三倍まばたきを落とした蓮子は時間の残響を目端にとらえる。いいえ。はじめからずっと彼女の近くで時はひしめいていたのではないか。
 冬に食い殺されすがれていく花時のように霧散した蓮子とメリーを影の中から四季映姫は見ていた。夢から現への帰還を見届けると彼女は踵を返し、白い煉瓦の道が続く先を見据えた。はじめての夢の終わりが四季映姫に記されたのはこの時である。



 秘封倶楽部は夢から帰還した。交わされる意見は瑞々しく自らの歓びのために奮って語られ、しかし夢の残照を再び吟味しようかという矢先にある発見をさせられた。舌の操る言語の一部が変質しているのを偶然(もしくは言葉にできぬ直感に導かれて)見出したときの驚きといったら。聞き覚えのない単語は存分に二人の知的好奇心を弄び、痕跡を嗅ぎ回させ、波々と欲望を脳髄へ溢れさせた。
 未言語の領域で遊ぶことにより、解らぬながらもそのいくつかを持ち帰ることができた。蒐集したそれらを並べることにより類型を見出し、意味を解きほぐすことができれば訳することができる。その中に人類が未だ扱ったことのない新しい概念──それこそ一冊の本が述べることを一言でくくり付けてしまえる言葉か、あるいはその逆でも見つかりさえすればどれほどの利益を生むものか。
 一度歩いた道ならば再び赴くことは容易であり、加えて大いなる興味と関心を共連れにするならば嵐にも躍りこもうというもの。蓮子とメリーは冥い街の夜なる場所を進み、軽々と結界を抜けて緑の光海へ進んでいった。



 はじめて夢の再開が記されたとき、四季映姫は呆れた顔で秘封倶楽部を見ていた。
「来るなと言った覚えはたしかにありません。ですが言わずとも危険のほどを知ることはできたはずです。それは」
「それは間違ってない」
 四季映姫の言葉を引き取って遮ったメリーは自らにどのような変化が起こったのかを説明し、実際に発言してみせた。目を閉じてため息をつく四季映姫に二人がかりで未知の言葉がもたらす利益を説き、それから謝った。見ず知らずの少女たちをどうやら本気で心配している閻魔へ向けて、他の方法で誠意を伝えるすべを娘たちは知らなかったのだ。
「謝りさえすれば納得して手を伸ばしてくれる。私がそのような存在に思えているのでしょうか?」
 しかし、と四季映姫は続ける。二言三言とはいえ変質を遂げた言葉は本来生まれ得なかったはずのものであり、供養が必要なのも事実だと。
「事の次第を私が見届け対策が打たれたあと、貴方たちに根付いた言語はこの場所へ返します。そして貴方たちの脳から席を譲った元の言語も復帰させることを、私の名において約束しましょう」
「閻魔ってそんなこともできるの」
 取り出した手書きのメモ帳へ蓮子がペンを走らせる。
「勤勉なのは結構。私ではなく以前説明した隠れ里の者たちが為します」
「閻魔が生者に命令を?」
「まさか。ただ此度の役割に見返りを要求していなかったので、それを使うことにしましょう」
「これから先にすり替えられる言葉についても、後日の回復をお願いしたいんだけど」
「強欲は身を滅ぼしますよ。代償として一語につき一刻、私の薫陶を授けましょうか」
 秘封倶楽部の二人は狡そうに笑って目を合わせると、手のひらに乗る程度の紙の包みを取り出して四季映姫に差し出した。
「これは?」
「お礼よ」
「まさかとは思いますが、私を三途の渡しのような者だと考えてはいないでしょうね」
「まぁまぁ。六文銭じゃないから」
 引き続き蓮子とメリーが粘り強く説得を試みる中で冷然とした態度をとる四季映姫だったが、受け取っていた包みがふとした拍子に緩み、中にあるものが目に入ると密やかに見つめた。それは他愛のない菓子ではあったが、秘封倶楽部の住む世界のものとあっては四季映姫と言えども口にしたことがないものだった。
「どちらにせよ食べてもらわないと」
 四季映姫の顔と菓子を交互に見ながら蓮子が言う。
「前回のお礼とあわせてのものだし、気兼ねなくどうぞ」
 微笑むメリーが穏やかすぎる声で促した。
 ふむ、と鼻を鳴らしてどら焼きに口をつけた四季映姫はそのまま咀嚼し、秘封倶楽部の二人へ変わらぬ表情を向け、飲み込むより早くもう一度どら焼きを口へ含んだ。心底でメリーは笑った。どら焼きを選んだのは彼女である。中にどっさりとプリンとカスタードとキャラメルソースが詰め込まれているものであり、少々の理屈と多大な勘を根拠に選んだ手間はどうやら報われたらしい、と彼女は悟ったのだ。
「気に入ってもらえたなら嬉しいわ」
 ゆらゆらと笑う蓮子に応えて、どら焼きを口先で千切りながら四季映姫は頷いた。
「とりあえず歩きましょうか。これからのことはおいおい話をしましょう」
 メリーは最初の一歩だけ歩いた。彼女たちは知っているのだ。一度歩きだしてしまえば歩みというものは止め難く、特に目的を持っている者にとっては呼吸のように続けられるものなのだと。どら焼きの真ん中を大きく頬ばりながら四季映姫は何も考えずにメリーの横へ続き、さらには前へと歩みを進めてしまった。

 言語森として名付けられたこの地の配合と装入は未だに変わるものではなかった。繁乱する木々。発光する地と遠景。空の全ては夜の黒。だが物体を構成するあらゆる曲線が細く鋭くのたうつように変わり、蜘蛛糸じみた疎密だけで色彩は分類されはじめていた。色付きの物で描くというよりは、黒く塗られた物から削り除いて作られる肌理きめの溢れた世界を三人は進んでいく。
「方向は正しいようです」
 ついには秘封倶楽部の同行を許した四季映姫が歩みを止めずに言った。
 未言語で咲き出された植物群はひとつの方向を持っているようだった。木々は独立した数々の点在ではなく繋がった巨大な管として、おそらくは三途を吸い上げ動かしているようだった。森を通過する甲高い飛音の唱和が根拠であると閻魔は樹陰の方に顔を向けた。水を飲む命ではなく水を運ぶための駆動が森となって現出しているのだ。
「あ」
 少女のうつろな声に振り返った四季映姫の顔を白い羽根が一枚滑り落ちていった。追従者が眠りを振り払ったのを見届けて四季映姫は歩行へ戻り、夢をるような声で説教をはじめた。結局のところ秘封倶楽部の失われる言葉は一段落の後にすべて戻してみせると閻魔は請け負ったが、この夜において娘たちの脅威となるのは失語よりも夢の中における自我の希薄症であり、道を踏み外して森に捕まればたちどころに己をひらききってしまう。ゆえに眠ることなかれ。理性の眠りは怪物を産むと知れ。
「どちらかといえば現に戻るのだけれど。私たちの場合」
 合いの手を入れる余裕のあるメリーのぼやきに仰々しく首を向けた四季映姫の頬を、髪の流れる速さで白い羽根が横切った。
「前から気になってたんだけど、なにそれ。頭に鳩でも入れてるの?」
「さっそく夢魔にやられましたね。鳩の怪物を人の頭へ勝手に生み出さないで」
 そもそもこの場へ立つ自分は完全な閻魔ではないと四季映姫は自らを断じた。危険な場所へ出向かせるための【使者、調査機といったたぐいの言葉】であり、夢に本人の権能を混ぜ、その隙間に先導者の力を流し込んではた織られた二つ脚だと言った。半分以上は月の薬師による薬で構成されており、先導者も月に由来する者であるため地上のものである四季映姫とは反りが合わず、これら一切をなじませるためにとある道士から太陽の力をまぶされているのだとも。こうして変容をけた閻魔のようなものは薬を燃料として夢の領域を探索している幻想機械なのだと彼女は言葉を結んだ。
「怪物じゃないの。継ぎ接ぎの」
「そうです。もしかしたら貴方たちの眠りが産み出した存在かも知れませんよ」

───────────────────────────────────────

 時間がそこかしこへ点在していることに蓮子は首を傾げている。空にはむろん一滴の星もないのだが、明るく半透明な時刻は彼女の目に次々と飛び込みかけており、諸人の肩から肩へ飛び移り沈黙をおいていく天使のように作用していった。ついでに先ほどの四季映姫の成り立ちを蓮子は以前にも聞いたのではなかっただろうか。あのときの時刻はいくつだったか。

───────────────────────────────────────

 予兆者としての一片ひとひらは四季映姫の周りを旋回し、常に視線から外れるようにして落ちては昇る。その速さは微睡みと昏倒の間ほどであり、進むべき先を教えると言うよりは匂わせるようにして方向を知らせ、道を敷いていく機巧だと説明された。
「貴方が選ばれたのは道を造れるから? 閻魔って土木業だったのね」
 胡散臭げに閻魔の背中をメリーが眺める。
「それで選ばれるとすれば土蜘蛛でしょう。道を伸ばしているように見えるのは、夢という曖昧なものへ在るべき白黒を私が定めているからに他なりません」
 いつの間にか影が頭上から降りてきていることに気づいた秘封倶楽部が頭上を仰げば、両側へ高さもわからぬほどの絶壁が空を切り取るようにして立っていた。壁は光の気泡に包まれていたが言語森の植物ではなく、地層がむき出しになった岩体であると最初は思えたものだ。しかしよくよく見れば質感が鉱物というよりは植物的であり、なによりも言葉ならぬ谺が風のようにそよいでいる。
 一本の倒木が割れ朽ちたあとの年輪と年輪の間を進んでいるのだと結論づけた蓮子とメリーは、それでも目のする光景の巨大さを疑わずにはいられなかった。飲み込まれるようにして空へ消えていく左右の壁の高さも、長大な大地へ横たわる樹躯がどうやって生育できたのかを彼女たちは理解ができない。できようはずもない。存在し得ないものを見た彼女たちは興奮してさえずり続け、やがて定刻を迎えた。
 聞け。
 帰れ。



 前にも比して多くの聞き知れぬ言葉を収穫した蓮子とメリーは分類に勤しんだ。残念ながら莫大な利益を生むものは脳髄へ刻まれなかったものの、蒐集の快楽と小さからぬ所有欲は存分に刺激され秘封倶楽部の活動としては及第点だろうと幸福を覚えたものだ。しかし瑕瑾もあった。割合で言えばメリーより多くの言葉が変化していた蓮子は日常生活でもそこそこの頻度で使う【やさしい口づけ、もしくは肌をすべる髪に該当する】という単語を使えなくなってしまっており、それをついつい多数の他人の前で使用してしまい、少しの恥と小さからぬ騒動を引き起こしてしまったのは、しかしこの物語の埒外にある出来事である。



 夢に舞い戻った秘封倶楽部を待っていたのは全面の暗黒だった。足元で体を支えるのは月から彫り抜いたかのような色を持つ階の一段。腐食して掠れた文字のように頼りない並びの螺旋をえがく階段たちのはるか下方には、広大な山脈を思わせる一本の巨大な朽木が地平の向こうまで倒れている。四季映姫が二人の腕を支えていなければ、光景の沈殿につと足を踏み外していたかも知れない。

 三人の姿は空の黒に飲まれて不可視となっており、わずかな光をはためかせる足元の階だけを道しるべにして進んでいく。進行がさして困難と思えなかったことは秘封倶楽部の二人にとって驚きだったが、夢であることを斟酌すれば不思議とまでは言えぬと思い改めた。蓮子の差し出した抹茶モンブラン風のどら焼きを食べるあいだ四季映姫は無言であり、秘封倶楽部はただ光景を堪能しながら上昇していった。

───────────────────────────────────────

この灰は星の燃え殻。土砂のごとく台地の上に氾濫するほどならば、あるいは生まれくるはずだった全ての星が灼かれてできたのかも知れぬと聞いた。おそらくは花文字によって。

───────────────────────────────────────

「行く先は空? それとももっと上?」
 メリーが訊ねる。
「わかりません。しかしこの空はおかしい」
「空じゃないからね」
 蓮子の声が割り込んだ。その薄々さに不安を覚えたメリーが瞳を動かすと、ふと森の外れが見えたかに思われた。無論、枝葉と下草による仄光の茫々とした広がりを下に敷いた何ひとつ変わり映えのない夜ではあったが、森とは別の黒による境を見たメリーは鼓動を速めたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた。───────────────────────────────────夜半の傾く音を聞いた蓮子が自覚を揺らす。時の認識が変わったことは彼女の動揺を間断なく全身へ伝えた。これまで遠雷のように種々の時刻を視ていた蓮子は、急に増幅した時間の揺籃へ怯えるように立ち止まり、半覚醒し、すでに道が移ろっていたことを知った。
 昇っていたことは間違いない。三人の体の動き、道のりを伝える言葉の全ては真実であることは四季映姫にも記されている。だが頭上には植物の根が一所ひとところへ流れる川もしくは美髪のように張り巡らされており、周囲には黒ではなく白熱したかのような尋常ならざる光が満ちていた。目を灼かれずにすんだのはその光には翳をも織り込まれているためであり、これらの煌めきは言語森における土──植物を支える銀の露地と同じものであると知れた。足元の道は変わらぬ白玉である。
 いつの間にか空から地の底へ道が変じていたことは明らか。そもそも空へ向かえば地底へ通じるはずもないという認識は夢の否定であり、提示された事実を前にすれば言葉を失う程度の失うこと程度の言葉をう失こ程度としか失もので言葉あるうこと度としか失うこ程るう───────────────────────────────────────
 この時に蓮子は視力を失った。
「あ」
 声に反応して他の二人が振り向いた時、中空から突然生じたかのような瑞々しい緑の花鬘はなかずらが蓮子の瞳へ絡まっていた。灰壁を縫い道の外から生え出ていた植物を四季映姫は摘み取ると、手の内で枯れる緑には目もくれず蓮子の肩を支え、娘の顔を見て首を振った。蓮子の眼球は黒く染め上げられ、通常の視力の全てが失われていたのだ。
「言葉にあたりましたね」
 四季映姫は───────────────────────────────────────溶解。耽瞳。言葉に中る。夢であれ現であれ、そこで使用する言葉の変質は蓮子とメリー双方に影響している。未知の言語を使わずとも動作系に支障をきたし、蓄積された自覚症状を圧して進んだ結果、蓮子は視覚を焚かれた。
夢の中で現を保てるメリーはまだ軽症。人は夢に耐えられるようにできてはいない。いないそうだ。

───────────────────────────────────────
「私の能力で白黒の分別をつけ、蓮子の小康を保つことはできます」
「時刻はまだわかるよ。目が潰れたわけじゃないみたい」
──視界外にいる素描の夢ら。
「おそらく夢過性のものでしょう。この夢の中で復調することは難しいかもしれません」
「私の視界を蓮子と共有すればいいんじゃない?」
「そうしてって言うところだったの」
。。
──言葉によって知識を伝えることに慣れきった者たちの
───────────────────────────────────────



───────────────────────────────────────
 三途を奪った悪意はこの領域の空を燃やしたのかもしれない。蓮子が観測している薄い時刻群は燃え尽きた灰から視えていると彼女自身が呟いた。大地を星の灰でいっぱいにして言語森の根を張りめぐらせる下地にしたとする。もしかすれば天地を逆にしてから地に落ちたままの星を灰燼にしたのか。
 どうあれ目的はそれだけではあるまいと四季映姫の中にある道士の要素が告げた。星を焼くならば廻天を止めるも同じであり、時の否定に端を発しているのだとも。
「じゃあ、空から降ってくる黒い光はどういう星が」
 言葉を止めたメリーは唇を指でなぞった。思わぬ動作をした口先を確かめでもするように。
「夜は黒を降らせはしません。そうですね。天の光を見に行きましょう」
 白い道はおそろしく急な上り坂となって森の中へ出ると、やがて広々と開けた場所に三人を導いた。地面はびっしりと灰で覆われており、広場の中央へ近づくにつれて幾多の根がまっすぐに伸びてきて絡まりあい、切り株じみた異様な瘤を形成していた。そこをぐるりと囲む高い樹々の枝葉は空から振ってくる強い黒光によって半ば飲み込まれるようにしてまたたいていた。
 広場にそのまま入らず、木の陰から辺りをうかがいながら葉群はむらの一点をじっと見つめていた四季映姫の唇がほぐれた。
「見つけました」
 燦々と非輝を降り注いでくる天にあるものを閻魔は読み取っていた。この世界の空に浮かぶ暗黒星を。
「龍を? 未生。階位ならば先ごろ……」
 あとに続く断片的な独り言に業を煮やした蓮子が説明を求めると、時々虚空を見つめて止まりながら四季映姫は語った。
 隠れ里と可能な限り情報をやり取りして受け取った仮説によれば、暗黒星はこの領域で生まれた知性の一つであろうということだった。非生に端を発している存在といえど莫大な言葉に囲まれたならば誕生は道理であり、そのうち存在の肥大化に使用できる物を発見してしまった。それが三途の川であり、化石燃料を燃やすようにして力をつけた未言語は次に時をやしてさらに大きくなっていったのだという。
「吸い上げた大量の水に着目した仮説が龍です。三途の川を動力として使用していることは予見されていましたが、この彼方を見てしまえば龍を呼ぼうとしているのが妥当な予測でしょう」
「龍を呼んでどうするの。自分を食べてもらうとでも」
「であればこちらも助かるのですが。そもそも我々の隠れ里を成立せしめたのは龍の力が大きい。というよりは最後の承認として用いられました。暗黒星はそれを識っている」
「承認?」
「現と袂を分かち、別世界として成立するための。一度成立した儀式を模せば失敗も少ない。なるほど人間の想念から生み出されただけあって知恵をよく使い、吸い取った三途の川から我々をよく学んでいる」
 四季映姫の言うことを理解しようと首を傾げる秘封倶楽部を置いて閻魔は一歩前へ踏み出した。広場へ出るための道を伸ばして。
「あれは閉じた世界をひとつ作るつもりです。我々の世界を踏み台にして、空を焼きつくし星をべつくしたこの言語炉の大地において」
 声の角度が変わった四季映姫を蓮子は不安げに見ようとした。
「貴方はこれから帰るんじゃないの? 場所はわかったんでしょう?」
「ええ。私が一度帰還すれば詳細が解析されるでしょう。時間を消費して。いまよりさらに遅れることは摂理が許しそうにない。場所さえわかれば即座に行動は起こされますが、見知らぬ夢における位置を正確に知らせるというのは困難な事なのです。基準をどうするのか。隠れ里における基準とどうやって相対させるのか。いまのやり取りで大雑把には掴んだでしょうが、大海の底で一粒の真珠を探すに等しい所業です」
「月が見えたらわかったのかしらね。私の場合は日本語になるだろうけど」
「あるいは。さあ、貴方たちは道を戻りなさい。私はなんとかするわ」
 そうして軽やかに根塊へ向かって歩き始めた四季映姫へメリーが声を荒げた。
「なんとかもなにも、空の中心を一人でどうにかできるわけない!」
 閻魔にそのような逸話も権限もなく、それどころか地獄ですらない管轄外の別世界とあっては試みるのも愚かなことだと言える。メリーの叫びも当然のものとして受け取られるべきだったが、四季映姫は決断したのだ。そもそもこの暗黒星を成長させたものは三途の川であり、これは多少とはいえ四季映姫の力が及ぶものであったこと。また太陽に親しい力も運良く携えていたこと。空を黒く塗りつぶしているとはいえ、中点に輝くものを太陽と見なせぬこともないだろう。あの道士のように目につく宇宙すべてとまではいかぬまでも、いささかなれば空へ告することもできよう。心許こころもとない手法ではあったが為すべきだと四季映姫は裁定した。
 ゆえに悔悟棒を高く掲げつつ空へ向けて閻魔は告げた。
 落ちよと。
 存在せぬはずの風が森によって模された。かん高く疾走する音と気配が坂道を転げ落ちる大木さながら四季映姫の周囲をうねり捻じれ、それに乗せられた黒光が荒れ狂う中で地上の僅かな光はかき消されてしまっており、その中で少女だけが昼間の月のように朧気な姿を見せていた。遠く離れた木陰から揺れ動く閻魔の姿を見て、やはり彼女では天球には至らないのだとメリーは悟った。出番はまだか、と現の世界へ戻る結界が自らの側で囁いたように思えてしまい、娘は頭を振った。幻聴だと言わんばかりに。風のようなものは存分に未言語の植物をちぎりかき混ぜ爆ぜ舞わせ、白い道へ座り込んだ秘封倶楽部にさえ花を撲つようにして叫喚を聞かせる始末。その全てをメリーは無視した。
 黒濁した瞳で空を見上げながら蓮子は探した。この状況を打破する何かを。耳に入ってくる言葉に脊髄を噛まれながら。何も視えはしない。何もわかりはしない。メリーを通して蓮子が見たのは四季映姫の孤立した灯。塗りつぶされた黒の黒。そして大地へ潜らんとする蛇虫のように荒れ狂う木々の根に加えて、巻き上げられる星色の灰──。
「【夜の底深い時間を示す言葉】」
 花洎夫藍クロッカスのような蓮子の声が秘封倶楽部の間に流れた。何をすべきかが二人の間で話し合われたのは間違いない。あらゆる言葉が混在するこの場所においてはもはや、秘封倶楽部の間でどのような会話がなされたのか知るすべは失われおり、あとに残されたのは何を行ったのかという事だけだ。それすら曖昧ではあったが。
 どちらにせよ語部かたりべは虚言をよくするもの。そのうえで再解釈と補遺を織り込めば以下のようになろうか。
 秘封倶楽部は白い道の外側に広がる灰地を目指して飛び出した。灰の上へと翔けたのは宇佐見蓮子。その片手へ制止するように両腕を絡めたマエリベリー・ハーンの顔はしかし、足先が灰に沈みはじめた蓮子と同じ表情をしていた。あらゆる人間がひとつの季節を燃え上がらせるときの表情を。燃える灰さながらの。
 灰の中へ宇佐見蓮子は沈んだ。
 正確には星と灰の境界をメリーの指示によって越えたのだ。
 星と灰の境界。本来これらの間に境界は存在しない。それでもなお見出すのであれば多大な力が要求され、とても人間に転換できるものではないだろう。しかしこの領域であれば話は別。星が燃え尽きて灰となったことは理として世界に横たわっていたし、星の残滓を蓮子が観測もしていた。世界を別々に隔離するために引かれた線──結界は発生していた。
 蓮子の感じる重力が変化した。片手の先は言語森でメリーに掴まれているはずだったが境界を超えた後で両足は支える大地を失い、灰の中を墜ちていく。加速する落下速度と全身の膚を撫でつける灰片の僅かな抵抗が全身の触覚を塗りつぶし、無覚へと変え、星骸の中を蓮子はたゆたっていく。もはや瞬かず、しかし星は星。かつて夜空だった場所の全てに光は蔓延していた。何者かが言ったのではなかったか? あるいは生まれくるはずだった全ての星が灼かれてできたのかも知れぬと。とすれば人間の目に耐えうる光量ではない。静かな星影のため身を焦がされることはないとしても(古今のあらゆる人間が夜空の星のために焼死したという事実はない)、まともに見つめれば瞳が灰となって消散することもありうる。しかし蓮子の瞳はすでに言葉によって盲いていた。一度灼かれた瞳を囚える光などなく、全てが黒く染まった少女の目は星の白の中でいつもとかわらず開き、そしてにらいでいた。燃える灰さながらに。
 灰の中へ蓮子の唇から泡となった言葉が漏れる。それは【祈りの空を告げる時の意味】であり、秘封倶楽部が慣れ親しんだ地上の言語ではない。次の気泡は【水面を駆ける天の意味】であり、次は【いつまでも明るい雲を纏う氷原の意味】。いずれも蓮子が見えぬながらも受け取れる時刻であり、地上の時刻ではない為すり替えられた言葉を用いてつぶやかれていった。やがて目当てを探り当てた蓮子の唇が引き絞られると、彼女は結界面上に突き出ているはずの手首から先を思いきり握りしめた。れた感覚は蓮子の足先を硬直させ、続けて誤った指令が肺に残っていた何かを半分以上吐き捨てさせてしまった。見当違いな動きを繰り返し、何が間違っているのか曖昧になってきた中でさえ、蓮子は愚直に手首から先を動かすことだけを実行していった。
 その途端、蓮子の上半身は横薙ぎの突風の中に戻ってきた。思い切り手を握り返すという合図を受けたメリーがなんとか灰の境界から相棒を引き上げ、潜灰者の胴をあしで挟み込みながら引き上げていく。
──────!
 朦朧から醒めた蓮子は叫んだ。地上の言語を。今この領域のこの時刻、暗黒星が燦々と聳えるこの時を。
 騒然とした風のなかを透かしてその声は四季映姫へと届き、あとは暗黒星に膝を屈するのみと思えた閻魔の口元へ弱々しい驚きを添えた。時刻を定めたということは過去未来を等量で刻むことと同様であり、その尺度を人類がどこから引用してきたのかと言えば答えは一つしかあるまい。再び空へ向けて閻魔は告げた。
 その姿を見せよ、と。
 暗黒星を落とす権能は持たずとも容姿の開陳ならば可能だった。そして空の果てあたりから彼女たちを覗きこんでいた黒の円形は姿を現し、メリーの目には映らなかった。人間の瞳で黒を夜空に見つけることが叶わぬことは京都での噂が証明している。しかし蓮子の瞳には観測された。言葉で盲いた瞳の裏で、ひとつの言葉が生まれて唇から湧きたった。
────||。
 灰の中で掴んだ時刻から秒数だけが経過しており、時が動いたという事実を耳に香らせた四季映姫はえまいを咲かせた。人が時を刻むために振るうのみの名は天をおいて他にない。そして時の不在にかこつけて天頂の座に君臨していようとも、たかが一つの星でしかない暗黒星は廻らねばならぬのだ。人が老いねばならぬように。暗黒星がぐらつくのを閻魔は感じた。
「さあ。時の取り立ては地獄の者もすくみ上がるほど苛烈ですよ」
 力を使いすぎたために体の末端が崩壊をはじめ、中空へ銀色の煙をくゆらせる四季映姫が一点を見上げて宣告する。
「廻りなさい。暗黒星。今まで支払わなかった分も含め、疾く速やかに絢爛と地平ヘ没せ」
 暗黒星はつまづき、ゆらぎ、そして天をめぐる円線へもたれかかると、そこから手を離してはるか遠くの地上へ墜落した。凡百の数ならぬ星の一つとして生きることはできぬとばかりに。音ひとつたてぬ堕天ではあったが、森に落ちた衝撃でその身が砕けたのか黒い闇の突風が少女たちのいるところまで席捲し、しばらくは白い道の上にさえ闇を滑らせ馳せていった。
 あとに残ったのは灰の地面と根塊の丘。林立する言語と夜より黒い頭上の天鵞絨ビロウド。三人の少女と白い道。暗暗黒星の屍風にすすがれたものか、通常の瞳と視力を取り戻した蓮子は初めて見る光景へ感心しきりで、そんな彼女を未だに灰の中から引き出そうと苦戦しているメリーがひとつの疑問を口にした。秘封倶楽部としての活動を優先するのは見上げた熱心さだが、今は他にやるべきことがあるのではないか、と。娘らを一瞥した閻魔が色味を失い透けつつある身体で元の白い道へ戻っていく。
 四季映姫の身体を天上より黒い光が貫いた。
 一条。二条。四条。十六条。
 異変を目の辺りにして硬直する秘封倶楽部へ向けて四季映姫が指を振るうと、白い道が上下にうねり娘たちを跳ね上げる。わななく四季映姫の指先から白い羽根が矢のように真っ直ぐ秘封倶楽部へ飛び、その先にある夢と現実の境界へとメリーの視線を誘導した。思わず羽根をつかんだメリーは結界に投げ入れられる前に見てしまった。空に燦然と輝く黒の星々。人間にすら視覚できる黒の中の黒をまとった、大小様々な暗黒連星──。



 夢から【帰還に該当する】秘封倶楽部は、【秘密の黄昏に該当する】【 咲いた黄色の殺意に該当する】【欠落した第九番目の文字に該当する】【木の葉の間を垂れてくる風に該当する】【空転する雑踏に該当する】 【獰猛な踊り子に該当する】 【おおよそ夜の寓話に該当する】 【写真へ垣間見る覚醒に該当する】 【少女の時間的隔たりに該当する】 【東に差し出される血流に該当する】 【古の死体挿絵に該当する】 【異色の夢幻に該当する】 【魔術背景腐刻に該当する】 【再び灯る妖猫に該当する】【過去の未知に該当する】 【少女の決行に該当する】 【葬られた造形媒介に該当する】 【永遠に該当する】…………………………………………



───────────────────────────────────────
 秘封倶楽部の二人は多くの言葉を口にすることができなくなっていた。幸いにも読むことは可能であったため、携帯通信機器を使ってのやり取りを駆使して生活を続けていたが、このままでは行き詰まるのが目に見えている。ゆっくりと社会から孤立していく前に蓮子とメリーは解決を急いだ。
───────────────────────────────────────



 二十九にも及ぶ空からの黒光で串刺しにされた四季映姫はどうすべきかを思索し、諦めてから瞳を閉じた。暗黒星が一つだけだと思っていたのは迂闊と言う他なく、言語の本質が増殖であることを考えてみれば当然自得するべき事態だった。わずかに残されていた力は急速に消失していき動くことも叶わぬ。やがて霧散するとはいえ幻想郷に警句のひとつも持ち帰れぬ己を恥じたが、最後に人間の娘たちを救えたことに安堵してもいた。舌禍の女神による羽根を持ったままいずれ幻想郷へと入り込むだろう二人は見咎められ、羽根へ付随しておいた四季映姫のメッセージを読み取り、娘らは言葉を取り戻すことができるだろう。それまで幻想郷が無事とすればの話だが。どうあれ帰還した秘封倶楽部は恐怖を堪能した思い出としてこの夢を脳の奥底へしまいこみ、この冒険は終わるのだ。
 ゆえに境界から秘封倶楽部の二人が戻ってきたとき、四季映姫は目を疑った。蓮子とメリーが自分へ向かって白い道を一目散に駆けてくるのを見て今いちど道を動かそうと試み、それが叶わぬほど力を失っていることへ底深い喪失感を味わって四季映姫は凍てついた。目の前で子供らが獅子に裂かれるのを瞳に映さねばならぬかのように。
 結界を越えるなり全力疾走をはじめた蓮子とメリーは、まず四季映姫をどうするのか決めていた。彼女らを逃がした閻魔に対して何を行うのか。自らの言葉を取り戻すということは脇に置かれた。四季映姫が言葉を戻してくれると約していたこともあったが、何よりも彼女をあの森から救い出さねばならないと人間の娘らは決めたのだ。秘封倶楽部だけでこの夢へおもむき、熱い蒸留酒のように冒険を啜ったのち逃げ出したのであれば、二度と言語森へ近づくことはなく次の結界破りへ彼女たちは足を向けていただろう。
 つまるところ蓮子とメリーには我慢がならなかったのだ。四季映姫があのまま消えることに。傲慢な秘封倶楽部は現実いまを失っていく者を否定し、同時に彼女たちが存分に飽食する現在から忘れられる者を否定していた。すべての人の死を拒む子供と変わりない。多くの人間に比してはるかに幻想に浸かっているはずの若い二人は、しかし四季映姫を人間として見る倒錯を許していた。夢を現に見るごとく。
 再び訪れた人間の娘たちに気づいた暗黒星らが黒い光をまっすぐに下ろそうするより先に、前を走るメリーが片手だけを後ろへ伸ばした。その手を取った蓮子が己の両目を塞ぐようにあてがうと、メリーと同じ視界を共有する。彼女たちには見えていた。すでに落ちた暗黒星へ生じている結界──堕ちた宇宙の中心と夜を司る、旧い象徴の境界を。
 星のひとつとして堕ちた最初の暗黒星ではあったが、その兄弟が空を埋めたことにより黒い太陽としての屍衣を被せられた黒躯を秘封倶楽部は視た。射殺された太陽が月へと変じることは地上における多くの神話が指し示しており、暗黒星は二面性の狭間を携えることとなった。そして月としての顔を持つに至った暗黒星の成れの果てをメリーは見つめ、蓮子は観測した。墜ちたる星の新たなる被衣かつぎから伝い流れる銀光が、暁における初光さながらに言語森へ注がれ、暗黒連星の光と縦横に交差しながら機織はたおりとなって蓮子の瞳にきらめいた。
「【空を焦がす場所にて死せる月に該当する】!」 
 蓮子の声を聞いた四季映姫からさらに色彩が揮発する。残された諸々の己を糧に、幻想郷へ言葉を送ったのだ。
 雲耀のあと、メリーの横顔をよぎって白羽根がひらめく。薄玻璃は宙を舞い、と見えるや月華が葉ごもりを縫う速度で遥か後方より飛んできた光に砕かれ四散した。それは矢である。遠い夢幻から一人の薬師によって放たれた矢はそのまま真っすぐに空へ向かって躍り上がり、遠く遠く、空の広さよりなお広い隔たりを走りってから消えると夜空に月が一つ、にじみ出るようにして現れた。指を動かす四季映姫が霞むと、メリーの前に天へ駆け上るための階段が置かれていく。いつかの夜のように。
「【空を焦がす陽月が集う場所にて死せる月に該当する】!」
 ほころんだ二の月を見た蓮子が再び地上の物ならぬ言葉を放ち、空を見ることに集中する彼女が落ちないよう手を引きながらメリーは光の階段を飛びこえていく。秘封倶楽部を追い抜くように二の矢が放たれ来たり、細い銀糸じみた旋条を風の中に残しながらのぶかく夜空に立つと、月の近くにもうひとつの月がじわりと現れた。ふたつの月は水面の油玉のように境界線が触れたところから融け合わさり、大振りな月へと変わって空の低いあたりを照らしはじめた。
 おびただしい空に比してあまりに小さな秘封倶楽部ではあったが、月白で身体の境界線を染めて黒に塗りつぶされること無く上昇を続けていく。夢中のこととて疲れも知らぬとばかりに娘らは駆け続け、その時々で月を指差しては使われたことのない名をちりばめると、緑と灰の向こうより天走あまばしる一矢が天体的死所を定めるために空を突いた。花が落ちる速さで姿を表すひとつの月。新しい光によってさらに輝きを帯びていく階と少女らによる秘封倶楽部。
 言葉がひとつ生まれた。それは意思を先んじて持ちながらも不必要なために用いることをしなかった暗黒星たちの言葉であり、他の誰かに向けて放たれた言葉ではなかった。ゆえに声もしくは人の感覚器官を反応させる手段は何ひとつ使用されていなかったが、四季映姫は聞き届けた。そもそもが幻想の存在であること。あらゆることに先駆けて聞くことを行う職務上の問題によるためか。無論ことばではあるが、人間の使用するいかなる言語には当てはまらないため書き記すことは叶わぬ。とはいえ微かに残された記録、事後に何者かの口端を流れていった流言をかき集め、当て推量で編み上げた想像であれば叙述は可能。真実そのものではなくとも、その兄弟の程度には似せることができようか。語部かたりべは虚言をよくするものだ。夢と同じく。
「知らなかったのですか? あの子らの中で流れているのは、ここの黒とは似つかわしくない赤。そちらに拝跪する謂れなどないのですよ」
 四季映姫は言った。進んだ。前に。黒光にまれこそげ落ちていく自らの身体と苦痛を一顧だにせず、色を失いつつある己を自覚し常のごとく振るまいながら。
 ワレらを無為に蹴こんできた現の人間へ関わらぬことで独自の宇宙を作り上げたかった。
 そう天の星々は語っただろうか。しかしその夢は愚かで幼い二人の少女たちのために叶わなかったとも。座標を幻想郷へ送り、秘封倶楽部の道を作りながら四季映姫はこぼれていく。
「知るがいい。生まれ損ねた黒よ。私の中に流れているものは自らが規定する白と黒のみであり、天よりの黒で我が裁きを止めることはできない。ひそやかな物を暴くために侵入してきた人間そのものである彼女たちもまた同じである。人類の御先は常に暗黒で包まれているがゆえに。
 聞け。人間の始祖にして御先を歩むものが閻魔である。私はその模倣を纏うことを許された地蔵。裁定を下す一方で地蔵として振る舞うことは本来許されることではないが、お前の見る夢であればその限りではないと知りなさい」
 月が増えてあふれだした光が黒い杭をぬぐいとると、拘束を解かれた四季映姫はよろめき、一度だけ秘封倶楽部を見た。そして暗黒星へ瞳だけを動かした。
「そう、貴方は少し未生にすぎる。生まれてくるべきではなかったとはいえ、我が弔いは受けてもらいます」
 暗黒星もまた四季映姫を見下ろしていたのだろう。おそらくは。少なくともこの間に記すべき事柄は何も残されていない。



 最後の暗黒星が落とされた後に訪れたのは静寂の一種である。空の九割を覆う月球の重たい光芒は森のあらゆる部分を煌々と息づかせており、宙から外界を見とおす蓮子とメリーの目にも感じ取れるほど旺盛な律動となっていた。スケールが桁外れではあるものの彼女たちにとってはどこかで見たことのある光景であり、夢の中の夢ではなくなってきている。孔雀の青。象牙の銀。落日の後を歩むのは夜と月。幻想は暴かれていた。秘封倶楽部の手によって。
「行ったわ」
 メリーが静かに告げる。たあいなく。
「うん」
 返答をした蓮子は森の一点、おそらくは四季映姫がいたあたりを見つめている。静けさは続いていた。高空をしたたっていく風も今においては黒百合の花びらを濡らす夜色のひとつにすぎぬ。蕾を霜枯れさせるかのような音を引いて銀の一矢が彗星じみた動きで走り、地上で溜まっていた最初の暗黒星を貫いた。星の骸は空のものと同じく銀色に輝き、霧散した。その光は瀑布のような勢いで四方八方へ飛び出し、凄まじい放埒さで森を飲み込んでいく。相変わらず静寂がみる上空から絶滅の様を見下ろしながら、秘封倶楽部は一言も交わさない。植物の根先ひとつすら逃さず丹念に掻き取るような渦旋を繚乱させ、全ての樹木の痕跡を水底に押しやりながら月光は地上をどこまでも広がっていった。やがて合わせ鏡のようになって天地を染めつくす月面が毛ほども揺るがなくなった後も、寂漠は永く永く留まり続け、そうなる一万年ほど前に秘封倶楽部は夢から覚めていった。



 地獄の片隅であることは間違いない。なんにせよ三途の川を渡った向こう側にあることだけは確実であったのだ。陽光(もしくはそれに準ずる光を空から降らせることのできる天体の光)に染められた浮綾織りを広げたかのような、地平線上まで続こうかと思わせる種々様々な花を蝟集する平野に四季映姫は一人で立っている。休憩時間にでも当たるのか閻魔の佇まいはくつろいでおり、青空の爽やかさに勝るとも劣らぬ静かな所作をたたえていた。
「地獄に仏って、思ったより普通の場面ね」
 背後からかけられた声にも動じず四季映姫が振り向くと、そこには二人の娘(しかも見たところただの人間)が歩み寄ってきていた。
「私は仏ではありませんし、迷い出る場所を間違えてはいませんか? 定められた命の刻限には程遠いおふたりと見ますが」
「あら。地獄にも幽霊って迷い出てくるの」
「無論そのようなことは許しません。生者の場合は……さて、どうしましょうか」
 四季映姫が来訪者の瞳を覗き、娘ら──蓮子とメリーはそれぞれ手にした大きめの紙袋を見せつけるように小さく振った。
「はじめまして。四季映姫」
「はじめまして。宇佐見蓮子。マエリベリー・ハーン。しかし分霊の記憶は取り込んでいるので、あまり正確な挨拶ではありませんね。なぜここに? 失われた言葉の復旧はすでに済んだと聞いていますよ」
「その件についてはどうも。今日は別件で参上したわ」
「では注意しなさい。夢の私とは違いますよ」
 その威容に蓮子は口をつぐみ、メリーは小さく鼻を鳴らした。たしかに精緻な石細工を思わせる冷たさで閻魔は立っていた。しかし石細工は瓦灯かとう。中で咲く灯については、すでに秘封倶楽部は夢の中で出会っている。
「そういえば取り戻した一語につき一刻の約束だった」
「境界を超えて侵犯してきた者たちをそれだけの説法で許すと? 寿命の限りが夢の中で尽きると知りなさい」
「まだ私達には返してもらっていない言葉がある。引き取りに来たのは秘封倶楽部の正当な要求と言えるわね。それができるのは貴方だけだというのに、仕事にかこつけて地獄から出てこない始末」
 蓮子が肩をすくめてみせると、メリーが続く。
「わざわざ私たちを出向かせたとなれば、説教の支払いには色を付けてもらいたいわ」
「よろしい。ではこの場でやり取りする一語につき一刻としましょうか。そのような言葉が残っていればですが。嘘の類は承知しませんよ」
「承知はしてもらうよ」
 蓮子は紙袋を四季映姫に手渡した。悔悟棒と交換するようにしてメリーからも同様に袋を持たされた四季映姫は、両手の間で視線を往復させる。
「?」
「ケーキ。クッキー。シュークリーム」
「紅茶。コーヒー。グリーンティー」
 取り出した布の敷物を広げる蓮子を見ながら、なおも怪訝な顔をしている四季映姫へメリーが言う。
「貴方。私達が持ってきた間食に一言も感想を返してないのよ。だから今回は洋菓子ばかり持ってきたわ。和菓子は口に合わないのよね?」
「なるほど……」
「ウソよ。前に持ってきた物も持ってきたから。あ。嘘じゃないから。冗談よ。冗談」
「なるほど」
 三人は花群はなむらの中へ座り、多くの香と光が波うちあふれる中で忘れられていた言葉をひそやかに語った。時のまたたく中で茶杯は重ねられ、笑いが咲き、思い出は洗われ、やがて誰もが去っていった。もはや一顧だにされず時の流れにひたひたと暗黒星は沈んでいく。漫然と会話に使われた手札は忘れ去られるがさだめ。会うはずもない閻魔と人間たちの夢も、噂もそうしたもの。
 これは残花と呼ばれる季節の物語。
 やがて散ることを知らぬものがいようか? めぐれば再び咲くものなれば。
                         
                         Fin
読んでいただきありがとうございました。
楽しんでいただければ幸いです。

[email protected]
http://twitter.com/kawagopo
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.150簡易評価
1.90奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
3.100名前が無い程度の能力削除
言葉にならない領域を表現し暴いていく。
物語と作者さんと秘封倶楽部とが一体となった素晴らしい作品でした。
4.100名前が無い程度の能力削除
良かったです
5.100名前が無い程度の能力削除
文体が好みです。
展開も面白く、楽しく読むことができます。
8.90クソザコナメクジ削除
もうちょっと不真面目で良かった気がする。
9.100サク_ウマ削除
壮大で鮮烈で強烈な世界観が見事でした。言語野の宇宙を旅していたような気分です。良かったです。