Coolier - 新生・東方創想話

名前も知らないあなたへ、もう一度

2022/01/08 08:57:40
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 〈前書き〉

・このお話は彼女達についての『俺が考えた最強の設定』をひたすら垂れ流したものです。苦手な方はご注意ください。
・『東方妖々夢』『東方花映塚』をプレイ済み、且つ書籍版『東方文花帖』『東方求聞史紀』『ZUN氏の回答メール』の、
 彼女達についての項目を読了している方向けとなっております。
・問題が無ければ、お進みください。

* 

 〈プロローグ〉
 
 むかしむかし、あるところにレイラという女の子がいました。
 とある貿易商の末娘として生まれた彼女は、大きな館で何不自由の無い暮らしをしておりました。
 お父様は職業柄、家を離れることが多く、お母様は早くに他界したそうです。
 それはまだ幼く、寂しがり屋の少女にとっては、大変残念なことであったでしょう。
 でもご安心。彼女には、とっても素敵な姉さん達が居たのですから。それも三人も!
 
 まずはレイラ嬢に、姉さん達の紹介をして頂きましょう。 

 長女ルナサ。
 一番歳の離れた姉でした。少々無愛想なところがあり怒ると怖い人でしたが、面倒見が良く優しい姉でした。
 学業にお料理、淑女の嗜みのヴァイオリン……涼しい顔でなんでも卒なくこなしてしまう彼女は、私にとって憧れの、自慢の姉さんでした。
(実のところ、彼女は妹達の規範であろうと、裏では大変な努力と苦労を重ねていたようです。しかしそれは、まだ幼い少女の知るところではありませんでした)
 
 次女メルラン。
 一家のムードメーカー的存在でした。よく笑い、よく喋る、感情豊かな姉でした。
 少々変わり者で、興が乗ると周りが見えなくなる傾向があり、ルナサ姉さんやお父様に度々お叱りを受けておりました。
 それでも彼女はまるで懲りる様子もなく、自分を貫き続けました。殻に閉じこもりがちだった私にとってその姿は眩しく、
 私に少しでも彼女の余裕と明るさがあれば、と思わずにはいられませんでした。
(実のところ、彼女は笑うのと同じくらい、涙を流すことも多かったのですが……その涙を知るのは彼女の姉、ルナサだけであったでしょう)

 そして、三女リリカ。
 一番歳の近い姉で、よく一緒に遊んでもらいました。
 彼女は賢くて、少々ズルいところもありましたが、本当に色々なことを教えてくれました。彼女が居なければ私の世界はもっと狭く、つまらないものであったでしょう。
 私の手を引いて、時々後ろを振り返りながら、常に一歩先を歩いてくれる彼女を、私は慕っておりました。
 嬉しいことや悲しいことがあると、私はいつでも真っ先に彼女に話すようにしていました。彼女も私と一緒に喜んだり、悲しんだりしてくれました。
 私は、リリカ姉さんが大好きでした。

 大きなお屋敷で、三人の姉達に囲まれて、私はとても幸せでした。
 この幸せな暮らしが、いつまでも続くと信じていました。



 お察しの通り、この幸せはそう長くは続きませんでした。
 ”とある不幸な事故”によってプリズムリバー家は崩壊し、仲の良い四姉妹は離れ離れになりました。
 幼い少女にとって、それはどれほどの衝撃であったでしょう。
 一人、また一人と館を去っていく姉達を、悪夢を見ているような気持ちで見送りました。
 このような辛い現実は、到底耐えられるものではありません。あぁ、可哀想なレイラ!
 彼女はこのまま、一生嘆き悲しみながら過ごさねばならないのでしょうか?
 
 いえいえ、そんなことはなかったのです、ご安心!
 彼女は、何か魔法的なアレで三人の姉さん達そっくりのポルターガイストを生み出しました。
 更には驚くなかれ、魔法的なアレで忘れられた者達の楽園、幻想郷へと引っ越しました。魔法ってすごい。
 
 彼女にとって、当時の幻想郷での暮らしは過酷なものであったでしょう。
 それでも、愛する姉達の幻影に守られながら彼女はすくすくと成長しました。
 少女はやがて大人になり、様々な出来事を経験しながら歳を重ねていき……。
 やがては、天寿を全うしました。
 彼女はきっと、幸せでした。

 
 ……ところで、遺された騒霊達はどうなったのでしょうか?
 創造主が死んでしまえば当然、魔力の供給は途絶えます。……であれば、彼女達の末路も想像に易いというものです。
 一人の人間を守り抜き、全ての役目を終えた彼女達もまた、レイラの後を追うようにその姿を消しまし……消し……消え……。
 
 あれ、消えない。
 
 そう、レイラの亡き後も、ルナサ、メルラン、リリカの三人は、何故か消滅せずに活動を続けていたのです! 不思議なこともあるものですね。
 ともあれ、特にやることもなくなった彼女達は、騒霊の名の通り騒がしく騒いでやろうと思いました。
 楽器の演奏技術を習得し、お揃いの衣装を纏って、ちんどん屋を始めました。
 皆さんご存知、今ではライブに宴会に引っ張りだこの、プリズムリバー楽団の誕生です! 



 その後、”とある理由”で冥界に行ったりしているうちに、プリズムリバーの名は世間に知れ渡っていきました。

 少し影のある雰囲気が通には堪らない、ルナサ姉さん。
 元気いっぱい笑顔いっぱいの花形トランペッター、メルラン。
 ちっちゃくてあざと可愛い、頑張り屋のリリカちゃん。
 
 ちなみに筆者はメルラン推しです。メルランはいいぞ。
 
 メルランはいいぞ。大事なことでした。


 見目麗しい三姉妹が賑やかな演奏で楽しませてくれるんですから、それはもうファンも増えます。
 冥界を管理する白玉楼のご令嬢とも懇意になり、顕界では人妖問わず人々を魅了し続け……。
 これからも彼女達は、騒がしくも愉快な日々を送ることでしょう。
 
 レイラと暮らしたあの日々の想い出を、いつまでもいつまでも、大切に胸に抱きながら……。
 
 
 めでたしめでたし。
























 









 
 ――って、そもそも最初は何で冥界へ行ったんだっけー?(リリカ談)





 
 『名前も知らないあなたへ、もう一度』
 
 
 騒霊三姉妹のうち、最初に生み出されたのはリリカである。
 
 レイラは、自分と歳が近く、いつでもそばに居てくれた”リリカ姉さん”を何よりも求めたのだ。
 リリカにとって、そのことは密かな誇りであった。ルナサよりもメルランよりも、自分が一番必要とされているのだと判っていた。
 
 リリカは彼女に尽くした。リリカは彼女を愛した。
 リリカにとって、彼女は自分の全てだった。
 
 不思議蔓延る新天地に至った時、リリカは思った。
 この幻想郷で彼女を守り、育て、天寿を全うさせる。それが自分達の存在意義であり、生まれた理由であると。
 彼女が寿命を迎える時、自分達は役目を終える。彼女が逝く時は、即ち自分達が消える時だと。



 月日が経つに連れて、三人の騒霊達はますます姿が明瞭となり、その自我も強まっていった。
 レイラの元を離れ、自分達だけの時間を過ごす機会も増えていった。
 

 老いゆく彼女を見て、ルナサは想う。

 日に日に、彼女は弱ってゆく。近頃はもう、ベッドから起き上がることもままならなくなった。
 きっともう、それほど長くないのだろう。つまり、自分たちの役目ももうすぐ終わる。
 ……本当にそうなのだろうか?

「ちょっと、ルナ姉聞いてる? さっき、またメル姉がやらかしてさー」
「あー、リリカ! あんた、また自分だけ良い子ちゃんぶろうとして!
 ち、違うのよ姉さん、リリカも悪かったのよ? だって、カクカクシカジカであれがあーでこーで……」
「うん、よくわかった。……メルラン、後で私の部屋に来なさい」
「ぎゃー!!」
「へへーんだ♪」

 私は、レイラを愛してる。でもそれと同じくらい、メルランとリリカ、二人のことも愛してるんだ。 
 この幸せな時間が、もう幾らも残されていないだなんて。
 ……そんなのは、嫌だ。


 メルランは想う。

「くどくどくどくど……まったく、あなたもいい加減もう少し落ち着きなさい」
「はぁい……。……姉さん、もうお説教終わった?」
「?? 終わったけど?」
「じゃあ、これから人里まで遊びに行きましょうよ♪ こないだ美味しいお団子屋さん見つけちゃってさぁ。
 あ、リリカのやつも誘って、仕方ないから仲直りしてやりましょうかね。レイラは……もう一緒には行けないだろうから、お土産買って帰らなきゃね。
 ……あれ? どしたの姉さん、陰気な顔しちゃって。いつものことだけど」
「……はぁ。あんたは毎日楽しそうでいいわねぇ」
「もっちろん! 姉さんは楽しくないの?」
「……私はそこまで楽しめないわ」
「えー勿体無い。だってほら、窓の外を見てよ! 今日もいい天気よー?
 ……私たちも、きっとあともう少ししかないんだからさ。せめて一日一日を、目一杯楽しまなきゃ損ってものでしょ?」
「……そうね。それじゃ、出かける準備をしましょうか。リリカに声を掛けてきてくれる?」
「はぁい♪」

 改めて、窓から青空を見上げた。
 この世界には美しい景色や美味しい食べ物、愛すべき人々に楽しい音楽が山ほどある!
 私達はまだまだこの世界を楽しみたい……レイラと、運命を共にしたくはない。
 
 二人の騒霊は、創造主との決別を望んだのだ。


 でもリリカは、リリカだけは。

「リリカリリカー」
「うげ、メルラン姉さん」
「『うげ』、ってなによ姉に向かって。失礼なこという口はこうだ!」
「いひゃいー。……いや、さっきのことで文句言いに来たんじゃないの?」
「さっきのことって? ……あー! リリカ、さっきはよくも姉さんに告げ口してくれたわね! ええい、悪い口はこうだ!」
「いふんはははっは……(言うんじゃなかった……)」
「まぁそれはもういいや。リリカ、あんた出かける準備してきなさい。みんなでお団子食べに行きましょ」
「今から? また急だなぁ」
「美味しいお団子は待ってはくれないのよー。あ、今日は天気が良いから私の奢りよ?」
「天気が良いから」
「天気が良いと気分も良いからね。さぁ、早く着替えてきなさいな」
「……んー、私はいいや。ルナ姉と二人で行ってきてよ」
「……そっか。じゃあ、お土産は二人分かな」
「うんよろしく。まぁ、私達の分まで楽しんできてよ」

「ねぇレイラ、起きてる? 姉さん達、お団子食べに行っちゃった。お土産買って来てくれるってさ。
 ……うん、楽しみ。あ、カーテン開けてもいい? ……今日も良い天気だよ」



 リリカは決して、レイラの元を離れようとしなかった。
 リリカにとって彼女は絶対であり、彼女のいない世界など考えたくもなかった。
 もちろん、リリカにも消えたくないという想いはある。
 
 だからリリカは望んだ。
 彼女が死後、亡霊と成ってこの世に存在し続けることを。
 この不思議に満ちた幻想郷で、それは決して不可能なことではないはずだった。

 亡霊と成り、四人で果てしない時間を共に過ごす……。
 リリカが提案したそれは、彼女にとってもこの上なく魅力的な選択肢だったはずだ。
 彼女は大いに悩み、しかし結局、己の死を受け入れることを決めた。


 理由は二つある。
 
 一つは、ある種の精神体である騒霊にとって、亡霊は危険な存在であるということ。
 元来、彼女は強い魔力を持っていた。自我を持つ騒霊を三人も生み出し、自らを想い出の館ごと幻想入りさせてしまうほどに。
 そんな彼女が亡霊と成り、人の身体の枷が外れれば、その魔力は如何程に膨れ上がることか。
 暴走した魔力は、きっと姉達にとって毒となる。
 亡霊と化した自分が愛する姉達の幻影を歪め、壊し、狂わせてしまうかもしれない。
 ……そんなことは、到底耐えられるものではなかった。

 二つ目の理由は。
 幻想郷で長い時を過ごした彼女は、しかしどうしても、生き別れた”本当の”姉達のことが忘れられなかったのだ。
 亡霊と成り輪廻の輪から外れれば、もう二度と彼女達とは再会できない。
 だけどもしかしたら、彼岸に渡れば。
 そこには私の到着を待つ、彼女達の姿があるのではないか。
 また、私の手を引いてくれるのではないか。
 それが叶わなくとも、転生を繰り返すうちにいつかまた家族となって。
 今度こそ、ずっと一緒に。

 死後の世界への憧れ、その幻想を持ち続けた彼女は最初から、亡霊になど成れるはずもなかったのだ。



 最期の時、レイラは遺してゆく騒霊達に伝えた。

 私は間もなく死ぬ。けれどどうか、私のことは忘れて、あなたたちは三人で仲良く過ごしてください。
 あなたたちは強力な霊だ。私への想いを引きずらず、また別の拠り所を見つける、それだけで消滅することはないはずだ。
 私のために泣いてほしくはない。天寿を全うしてこの世を去るのは、決して悲劇ではないのだから。
 喪に服すことなく、どうか笑顔で賑やかに、私の旅路を見送ってほしい。
 
 さようなら。ありがとう。
 あなたたちのおかげで、私は幸せでした。



 レイラは死んだ。

 創造主の死は、遺された騒霊達に甚大な影響を及ぼした。
 ルナサとメルランは、その精神の一部を著しく損傷した。
 ルナサは躁の感情を、メルランは鬱の感情を失い、存在が不安定となった。
 しかし、完全に消滅することはなかった。それは彼女達が、精神的に自立し始めていたからである。
 新たな拠り所として、彼女達は音楽を選んだ。
 音楽を通じて、これからはレイラただ一人ではなく、幻想郷の全ての住人達に、自分達の在ることを伝えよう。
 この美しい箱庭、幻想郷に住まう、騒霊となってやろう。
 一度は失くした感情も、様々な出来事を経験し、多くの人々と触れ合ううちに、また形作られていくものだ。
 彼女たちはいつか、人間とそう変わらない存在になるのかもしれない。


 ……リリカは。

 彼女は最初、表面上は問題が無いように見えた。
 賢く、物分りの良い彼女は、レイラの最後の望みを受け入れたように見えた。
 笑顔で、彼女を送り出したように見えた。
 
 ある朝。
 いつまでも起きてこない妹を心配したルナサが部屋を訪ねると、そこにリリカの姿は無かった。
 家中どこを探してみても、リリカは見つからなかった。



 リリカはレイラに引かれるようにして、独り冥界へと向かっていた。
 
 想うのはレイラ、ただ一人のことだけ。
 他のことは、何もかもどうでも良くなっていた。
 結成したばかりの楽団も。ルナサ姉さんも、メルラン姉さんも、もうどうでもいい。
 
 それは愛、あるいは本能だったろう。
 自分が生まれた理由、それを失って、どうしてのうのうと生きられるのか。
 私には彼女が必要なんだ。彼女には私が必要なんだ。

 彼女が逝ってしまったのは、何かの間違いに違いなかった。
 だって彼女は、私をこの世で一番愛してくれているのだから。
 いつまでもずっと、私と一緒に居てくれるのだから。

 
 「レイラ!!」



「……リリカ姉さん」

 ……どうして。
 どうして、追ってきてしまったのか。どうして私の最後のお願いを、聞き入れてくれなかったのか。
 
 私は人として生まれた。そして人として寿命を迎え、人として死んだ。
 もう間もなく、私は輪廻の輪に加わる。
 
 明るいうちにたっぷり遊んだ。日が暮れてきたので、お別れをした。
 それは、とても当たり前のことだ。悲しむようなことじゃ、なかったはずだ。
 
 それなのに、なんて馬鹿な姉さん。
 
 何もかもを捨てて私に付いてきて。全部、台無しにしちゃって。
 そんなに泣き腫らした目をして。小さな子供みたいに喚き続けて。
 
 あなたには、あなたたちには、まだ未来があるというのに。
 これからいくらでも、楽しいことがあるはずなのに。
 
 悲しいお別れは、もうたくさんだと思っていたのに。
 笑顔で、さよならを済ませたはずなのに。
 なのに、どうしてこんな。

  
 私の方まで、泣きたくなってしまうではないか。


 
 レイラは、泣きじゃくるリリカの小さな身体を抱きしめて、ある魔法を使った。
 
 これは、想いを奪う魔法だ。
 この子は、自分の想いによって生まれた。
 その在り方を少し弄ることなど、容易いことだ。
 万全を期すなら、最初からこうすべきだっただろう。

 でも、それをしなかったのは。


「本当は、覚えておいてほしかった」

 眠りに落ちた彼女の髪を、指先で静かに掬う。
 敬愛する姉に。そして、私の生きた証に。
 

「……さようなら、リリカ」

 愛しい娘に、そう別れを告げた。
 


 私たちが追いついた時、既に彼女の姿は無かった。
 
 リリカは、なぜ自分がここに居るのか判っていない様子だった。
 自分が何者なのか、判らないと言っていた。
 まるで、今この場で生まれたばかりのような、無垢な表情をしていた。
 
 そんなリリカに、私たちはこう教え込んだ。

 私達は騒霊である。
 私達を産んだのは音楽の霊、曲霊である。
 私達の拠り所は楽器である。
 私達の存在意義は、音を奏でることにある。

 さあ、もう家に帰ろう。
 寂しくないように、悲しくないように。
 騒霊の名の通り、面白おかしく騒いでやろう。
 ……たった三人の家族なのだから。

 そう、嘘を教え込んだ。

 

 リリカは、レイラを最も深く愛したが故に、彼女に関する記憶、その想い出の全てを永遠に失ったのだ。





 〈エピローグ〉

 むかしむかしに、そんな出来事があったとします。
 では、彼女は今でも、レイラのことを忘れてしまったままなのでしょうか?
 自分が生まれた本当の理由を、失くしてしまったままなのでしょうか?


 ……私は。

 
 幻想郷中のあらゆる花が咲き誇る、六十年目のある春の日のこと。
 風も無いのにその身を揺らす、向日葵畑のライブステージにて。

 私は、本当はとっくに気付いてた。姉さん達が私に、ずっと何か隠していることを。
 私が、とても大切な何かを、忘れてしまったことを。

 ……って言うか! 
 姉さん達、色々判り易すぎるっての!
 
 ルナ姉は素直過ぎて嘘を吐くのが下手っぴだし、メル姉は単純で頭パッパラパーだし。
 本気で隠し通すつもりなんだったら、もうちょっと上手くやってくれなきゃこっちも困るって言うか。
 ……まぁ、空気は読んでおくけどさ。
 なんたって、賢い賢いリリカちゃんだからね。

「さ、開演の時間よ」

 ルナ姉の声を合図に、今日も三人で舞台に上がる。



 あの日、無縁の塚の桜の下で、説教好きな裁判長はこう言った。
 貴方達の拠り所は、貴方達を生んだ人間である、と。
 ……きっと、それが答えなのだろう。
 
 その人間のことは顔も思い出せないし、思い出せたとして、その時に私がどうなるのかは判らない。
 姉さん達を問い詰める気は無かった。
 だって、この心配性で過保護な二人が私に嘘を吐き続けるのは、それが私にとっての最善だと信じているから……でしょ?
 それなら私も、もう暫く二人のことを、信じてみたいじゃんか。
 
「今日は、向日葵畑からお送りしてます騒霊ライブ」
「生まれ変わったら、今度こそは上手に生き抜くぞ!と思っている力を」
「今日ここで全部出し切ってしまいましょう!」


 私はただ、のんびりと待つつもりだ。二人がいつか、本当のことを話してくれる日を。 
 
 ……ねぇ、ルナサ姉さん。メルラン姉さん。
 この曲を聴けば、きっと気付いてくれるよね?
 その時に何が起こるとしても。
 私はもう、準備できてるつもりだからさ。
  
「まずは一曲目。私の作曲だよー! 曲名は――」


 名前も知らないあなたへ、もう一度。
 せいぜい賑やかな音楽でもって、新たな旅路を祝福しよう。
 寂しくないように、悲しくないように。
 今度こそ笑顔で、『いってらっしゃい』を言えるように。


 ――輪廻転生賛歌『二度目の風葬』。
ずっと書いてみたかった、プリズムリバー三姉妹の過去話です。
こういう妄想をした後、幽霊楽団を聴くとほんとにね。たまんないんだよね。
サビが良い。うん。彼女達は叫んでるんだよ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
つぶあんぱん
[email protected]
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コメント



0.40簡易評価
1.90奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
2.90名前が無い程度の能力削除
丁寧な過去話でした。良かったです。
3.90南条削除
面白かったです
話自体はとても喪失の悲しみと再出発の喜びに満ちていて面白かったのですが、いかんせんプロローグの意味がよくわかりませんでした