今年の正月は特に忙しい。多くの方に初詣にお越しいただけるようになったのは、索道が開通してからはずっとそうだけれど、なんせ、今年はついに御柱祭が復活するのだから。
御柱祭を行うにあたって一番の課題は、ただでさえ氏子も全く足りない中、天狗の協力が得られなければ御柱を選ぶのもままならないこと。神奈子様のご尽力によって天狗が索道を受け入れたことで、里に氏子が増えて、あとは御柱祭自体への天狗の協力が得られれば、という所までは持ち込んだけれど、その後はまた膠着状態。なのに、神奈子様が大天狗様の策動を受け入れてからというもの、急に話がトントン拍子で進んで、気がつけばもうあと数カ月。今思えば、神奈子様も大天狗様ののグル、おそらくは御柱市場のためだったのだけど、私はいつも何も知らされない。
私が神奈子様に命じられたのは、山出しで生贄を出さずに済む方法を河童と考案すること。いくら熱狂的な神事と言えど、当然のように生贄を求められると知られれば、氏子に受け入れられるか分からない、というお考え。何でもありな幻想郷なら、安全な山出しも容易く実現できるだろう。そう思っていた時期が私にもありました。
ダムを造ろうとした時から早幾年、河童はギークだと散々分からされたはずだったのに。どうして私は河童をその気にさせるのが困難だということを忘れていたのでしょう。またしても何も知らされず、行き詰まった私は、異変解決を通してやっと打開策を知らされたのでした。
河童をコントロールできる、代えの利かない存在、山童。河童も山童には頭が上がらず、河童相手に有利に話を進められると言う。そして今、どうして河童も山童も互いに依存しているのか、目の前で見せつけられています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ほら、こいつら水中に飽きたら陸に上がってきちゃうじゃん」
「おい、誰が両生類だコラ」
「いい加減認めなさい。さもなくば、別のことに興味が湧いたら仕事に手がつかなくなる性格をとっとと直せオタマジャクシ」
「その分クライアントの期待以上のものを作るだろうが。あと誰がクソガキだ」
「あんたら河童が仕事に興味を抱くまで何回頭下げて納期延ばしてもらってると思ってるの!」
「あらあら、たかねさんも随分苦労されてるんですね」
「えっ」
まさか河童は私に同情してもらえると本気で思っていたんでしょうか。勝手に山を発破するようなギークのコントロールなんて、神奈子様も断念されたような無理難題、大変に決まってるじゃない。
「でしょ。なまじ有能なギークだから困るんだよ。ちゃんと育ててやったら立派なカエルになるから。製品が出来た時のこいつの笑顔見たらね、もう報われるんだよ」
「えっ」
「どうしたんですかにとりさん、私の眼に見えない清酒でも召し上がられましたか?」
「えっ」
よほど山童から褒められたことが無いのか、こんなにすぐ紅潮するものでしょうか。
「チョロいでしょ、全然褒められ慣れてないでやんの。まぁ、これぐらい分かりやすい方がビジネスパートナーとしては信頼できるけど」
随分と意地悪な童だこと。悪い童は現人神が懲らしめなければなりませんね!
「たかねさんも重度なツンデレですね!」
「はぁ?」
まさか山童は私が梯子を外さないでいてくれると本気で思っていたんでしょうか。というか河童がさっきから固まっているんですけどどうしましょう。商売とかの話をしてる時は、何も言い繕わない姿なんて見たこと無いのですが。
「ほら、普段散々煽っておいて、たまにそうやってにとりさんにデレてあげてるんでしょう?」
「ギークに仕事させるにはこれが一番確実だからね。あくまで仕事のためだよ」
「でもにとりさんの笑顔見たら報われるんでしょう?本当に仕事のためなら、報酬とかで報われそうなものですけど」
「うっ」
自覚も無かったのか、山童まで固まったのですがどうしましょう。河童をコントロールできるくらいだから固まるわけないと思っていたのですが。
「たかねさんも私の眼に見えない酒を召し上がられましたか?」
河童も山童も似た者どうし、固まってしまった二匹どうやって融かしましょうか。やっぱり核融合炉に放り込むのが早いか。しかし意外です。不器用な二匹だこと。
御柱祭を行うにあたって一番の課題は、ただでさえ氏子も全く足りない中、天狗の協力が得られなければ御柱を選ぶのもままならないこと。神奈子様のご尽力によって天狗が索道を受け入れたことで、里に氏子が増えて、あとは御柱祭自体への天狗の協力が得られれば、という所までは持ち込んだけれど、その後はまた膠着状態。なのに、神奈子様が大天狗様の策動を受け入れてからというもの、急に話がトントン拍子で進んで、気がつけばもうあと数カ月。今思えば、神奈子様も大天狗様ののグル、おそらくは御柱市場のためだったのだけど、私はいつも何も知らされない。
私が神奈子様に命じられたのは、山出しで生贄を出さずに済む方法を河童と考案すること。いくら熱狂的な神事と言えど、当然のように生贄を求められると知られれば、氏子に受け入れられるか分からない、というお考え。何でもありな幻想郷なら、安全な山出しも容易く実現できるだろう。そう思っていた時期が私にもありました。
ダムを造ろうとした時から早幾年、河童はギークだと散々分からされたはずだったのに。どうして私は河童をその気にさせるのが困難だということを忘れていたのでしょう。またしても何も知らされず、行き詰まった私は、異変解決を通してやっと打開策を知らされたのでした。
河童をコントロールできる、代えの利かない存在、山童。河童も山童には頭が上がらず、河童相手に有利に話を進められると言う。そして今、どうして河童も山童も互いに依存しているのか、目の前で見せつけられています。
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「ほら、こいつら水中に飽きたら陸に上がってきちゃうじゃん」
「おい、誰が両生類だコラ」
「いい加減認めなさい。さもなくば、別のことに興味が湧いたら仕事に手がつかなくなる性格をとっとと直せオタマジャクシ」
「その分クライアントの期待以上のものを作るだろうが。あと誰がクソガキだ」
「あんたら河童が仕事に興味を抱くまで何回頭下げて納期延ばしてもらってると思ってるの!」
「あらあら、たかねさんも随分苦労されてるんですね」
「えっ」
まさか河童は私に同情してもらえると本気で思っていたんでしょうか。勝手に山を発破するようなギークのコントロールなんて、神奈子様も断念されたような無理難題、大変に決まってるじゃない。
「でしょ。なまじ有能なギークだから困るんだよ。ちゃんと育ててやったら立派なカエルになるから。製品が出来た時のこいつの笑顔見たらね、もう報われるんだよ」
「えっ」
「どうしたんですかにとりさん、私の眼に見えない清酒でも召し上がられましたか?」
「えっ」
よほど山童から褒められたことが無いのか、こんなにすぐ紅潮するものでしょうか。
「チョロいでしょ、全然褒められ慣れてないでやんの。まぁ、これぐらい分かりやすい方がビジネスパートナーとしては信頼できるけど」
随分と意地悪な童だこと。悪い童は現人神が懲らしめなければなりませんね!
「たかねさんも重度なツンデレですね!」
「はぁ?」
まさか山童は私が梯子を外さないでいてくれると本気で思っていたんでしょうか。というか河童がさっきから固まっているんですけどどうしましょう。商売とかの話をしてる時は、何も言い繕わない姿なんて見たこと無いのですが。
「ほら、普段散々煽っておいて、たまにそうやってにとりさんにデレてあげてるんでしょう?」
「ギークに仕事させるにはこれが一番確実だからね。あくまで仕事のためだよ」
「でもにとりさんの笑顔見たら報われるんでしょう?本当に仕事のためなら、報酬とかで報われそうなものですけど」
「うっ」
自覚も無かったのか、山童まで固まったのですがどうしましょう。河童をコントロールできるくらいだから固まるわけないと思っていたのですが。
「たかねさんも私の眼に見えない酒を召し上がられましたか?」
河童も山童も似た者どうし、固まってしまった二匹どうやって融かしましょうか。やっぱり核融合炉に放り込むのが早いか。しかし意外です。不器用な二匹だこと。