Coolier - 新生・東方創想話

縛りプレイ

2021/09/22 18:46:22
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「文ってペット飼ってるのかなぁ」
夕食を作る文の背中をボーっと見ていたら不意に思った。
ので呟いた。
ただの戯言だった。
けれども文は怪訝な顔で振り向いた。
「はぁ?」
げ、聞こえてた。
「いきなり何の話よ」
振り返った彼女の両手には二皿の冷やし中華が乗せられていた。
ああ、作り終わったのね。
「いやさ、思ったの。文はさ、だらしない私のためにこうやって家に来て、料理作ってくれるじゃん?」
我が家の中で口に入れることが出来るものは革の靴だけ。
私の家は有機生命体とはかけ離れた位置にある。
「ちょくちょく私の様子見に来てくれるし」
文が来ると日付が変わったんだなって気付く。
便利。
「すごーい面倒見がいいから、最初はお姉さんなのかなって思ったの」
ずるずる。
文は既に麵を啜っていた。
えー。頂きますって言わなきゃダメじゃん。
しょうがないなぁ。
「頂きます。それと、頂きます」
よし、文の分まで言った。これでだいじょーぶ。
食べましょう、食べましょう。
おー、ハムだ。お肉を食べるのはいつぶりだったかな。
「それで?」
ああ、そうだった。話が途中だったね。
ええっと、ああそうお姉さん。
文がお姉さんって話。
お姉さんって年下の面倒を見るのに慣れてるって言うじゃん?
だから文は私の世話を焼いてくれるのかなって思ったんだけど。
「でもさ、文はお姉さんなのかなって聞いたら、“君は大丈夫か?”って言われちゃったから違うんだなって思ったの」
「それ言ったの誰?」
「椛」
「そ」
“あの人が他人の世話を焼いているところなんて見たことないよ”とは椛の談。
面倒見がいいわけじゃあないのか。
じゃあ、お姉さんじゃない。
なら何で私の世話を焼くのかな?
「それで次は、私を食べようとしてるのかなって思ったの」
家畜を育てて、さばく人。
私を太らせて食べるためって言うなら納得できるかも。
「なら、私が文の料理を食べなかったら怒るかなって思ってね。食べないようにしてみたの」
太らせるために餌を与えてるなら、餌を拒めば怒るだろう。
無理矢理にでも食べさせてくるかな。
そう思ったけど文は作る量を減らして、お粥とかお雑炊とか食べやすいものを作ってくれた。
ああいうのって水分が多くて栄養があまり無いって聞いたから、太らせようとしてるわけじゃないみたい。
「じゃあ、私を食べるのもやっぱり違うかってなってね」
「麵、伸びるよ」
「あ、ごめん」
私は麵を啜るのが上手ではないので、噛み入れるように少しずつ口に運ぶ。
はむはむ。
程よい噛み応え。
麵の湯で加減が上手だ。
前に私がやった時は粘土みたいになった。
水から茹でてはいけないと後で文に教えてもらった。
「美味しいね」
「そ」
味付けも強すぎない。
私は濃い味付けが苦手だから、文の料理は食べやすい。
露店で拉麺を食べた時は刺激が強すぎて吐いた。ごめんなさい。
「それで?」
「うん。で、面倒見がいいでもない、私を食べるでもない。次にあるとしたら何かなって考えて、お金かなってなってね」
新聞コンクールで何度か賞を取ってると、賞金が幾らか懐に飛び込んでくる。
欲しいものなんて特にないし、放っておいたからそれなりの額が溜まっていた。
携帯見てたら、押し込み強盗にご注意くださいってメールが来たからね、それかなって思ったのね。
「じゃあ、お金出しとくかって賞金を居間に放り出して、寝たの」
結構多かったから、運ぶのに疲れてぐっすり寝てしまった。
日頃の運動不足が祟った。
起きたら居間のお金が無くなってて、寝室に金庫が出来ていた。
金庫の中に賞金が全部整理されて入ってた。
「だからお金も違うかなってなったの」
一銭も減ってなかったから、ちょっと悲しかった。
せめて金庫のお代は払いたいなぁ。
ちらりと前を見ると文は残ったキュウリをつまんでいた。
文って食べ方が綺麗。
食事って本能的な行為だと思うんだけど、文が食べ物を口に入れる様は品がある。
一緒に食べると綺麗な光景が見れてお得です。
「それで?」
「あ、ええっと、そう。慈悲でもないし、食料も違うし、お金も間違い。そうなるともう全然分かんないじゃん?」
「ふーん」
「で、分かんないから椛の尻尾をもふもふして、椛の耳をこねこねしながら考えてたの」
「は?」
文が険しい声を出した。
え。何。
何か悪いことをしてしまったのでしょうか……?
文は優しいけど、怒った時はすごく怖いから勘弁して欲しいです。
怒られてからはちゃんと服着て寝てるよ!
びくびく。
祈りながら視線を上げたら、文は机に肘をついてこちらを睨んでいた。
「なんでしょう…」
「で?」
「えっと」
「で?次は?」
圧がすごい。
私はプレッシャーに弱すぎて、プレゼン形式のコンクールではもれなくゲロを吐く。
今回も酸っぱいものがのどに上がってくる感じがしました。
「う、うん。それで、尻尾をもふもふしてたらこれじゃんって思ったの」
手慰みでいじってしまう。
ついつい構い倒したくなる。
ペットがいるとこういう癖つくじゃん?
事実として私は椛の尻尾も髪も耳もいっぱいいじってるわけだし。
なら文がついつい私の世話をしてしまうのも、ペットがいるからじゃない?
ペットの世話をしてたら世話焼きが癖になった、とかさ。
「だから私は、文がペットを飼っていると推理したわけです」
どや。
ちょっと振り返って考えてみたけど、中々の名推理ではないでしょうか。
もしかして、私ってすごい頭いい?
「ね、どう?当たってる?当たってるんじゃない?」
当たってるなら是非とも私に見せて欲しい。
出来たら猫がいいな。触る機会ないし。
犬は間に合ってます。
「はぁ」
文は呆れ顔でため息をついた。
あれ?違う?
「あのね、私が慈悲とか、食人癖とか、金とか、そんなものの為に好きでもない奴の世話を焼くと思ってんの?」
「…?」
それは違うと確認した。
だからペットを飼っていると推理したのです。
何か間違ってた?
「えーっと、飼ってないの?」
「…」
そういう話じゃないの?
文は苦虫を嚙み潰したように眉をしかめていたが、しばらくしてため息をついた。
「はぁ。もういいわ」
「え、え?なに?飼ってるの?飼ってるんじゃないの?」
文が食べ終わったお皿を下げようとするので、腰に張り付いた。
蹴られた。
いたぁい。
「…飼ってるよ。図体がでかい癖にぐうたらで、物臭で、察しが悪い馬鹿を一匹」
おお!
「ほら!やっぱり!見たい!見せて!」
おっきいって事は犬かな。
犬もいいよね!
写真撮りたい!もふもふしたい!
「絶対見せない」
「…酷いよ、文。なんでそうなこと言うの」
意地悪!ケチ!ゴシップ!
黒髪光ってる!
翼綺麗!
可愛い!
…くそう。悪口くらい言わせろよぉ。
泣き崩れる私を見て、文が口を尖らせた。
「気づいた時の顔が見たいのよ」
告白縛りでしか見れない表情差分があります。
蟹のふんどし
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コメント



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1.100サク_ウマ削除
憎まれ口でもガチで思っててもどっちでも美味しいので素晴らしいかと思います。
碌でもなくて好き。良かったです。
3.90奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
4.80名前が無い程度の能力削除
よかったです
5.100名前が無い程度の能力削除
いやはやにやにやしてしまいます
6.100名前が無い程度の能力削除
好きです
7.100めそふ削除
いや、まじで最高ですね…
8.100水十九石削除
読んでて本来ならはたての鈍重さにもどかしさを感じるでしょうに、それが全く無くむしろはたてに笑みさえ溢れてきそうな畳み掛けの具合が本当に強烈。すきだ…………すきだね…………
9.100夏後冬前削除
情景やら文章やらの切り取り方が抜群にうまい
11.100Actadust削除
あーもう好き。この憎まれ口叩きながら好きという言葉を使わず、それでもしっ仮表現するこの感じ大好きです。
12.100モブ削除
はあーあ、甘い! しかもちょっとしっとりとした甘さ! ご馳走様でした。