Coolier - 新生・東方創想話

古明地姉妹のtea time

2021/09/18 16:50:44
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薔薇が濃密に香る時間、私、古明地さとりは一人で紅茶を飲んでいた。
正確には、膝の上でごろごろと鳴く白猫と、紅茶を飲んでいた。フルーツのフレーバーティー。お燐やお空と楽しみたい気持ちもあったが、2人も(2匹も?)忙しいところはあるだろうし、なにより自分から誘うのは少し恥ずかしい。そんな他愛無いことを考えつつ、クッキーに手を伸ばしたところで…
「…そういえば、貴方の餌を忘れていたわ。思い出させてくれてありがとう」
白猫からふいに聞こえてきた声。お腹がすいたようだ。紅茶を全てすすってしまい、席を立つ。
そういえば、お菓子が余っていたから、食べてしまおう。この後は本でも書こうか?ペットのお世話を先にしようか。
鬱屈としていて退屈な生活の中では、毎日考えることは大方同じで、変わりばえのしない毎日、だからと言って不満なわけでもなく、何かしようとも思わない毎日。
強いて言えば、時々『あの』妹が…
「おねーちゃん!私もお茶したーい!」
…背後から突然声をかけてきて、何かに巻き込まれるくらいのことで。

「………えー、もう今日はお茶飲み終わっちゃったのー?じゃあもっかい淹れてよー。もういっかい!もういっかい!」
「駄目よ。こんなに短い時間でそう何杯も飲めないわ。」
「むー」
こいし、私の妹がじとっとこちらを見上げる。かわいい。しかしそうも見つめられると甘くなってしまいそうだから、できればやめて欲しい。
「…じゃあ、お菓子だけ。」
甘くなった。甘々だった。
「ぱぁっ!」
効果音付きで目を輝かせるこいし。かわいい。
「用意してあげるから待ってなさい。」
「はーい。待ってまーす!」
私はそんな自由でちょっぴりかわいそうでかわいい妹の声を聞きつつ、お菓子の用意を始めた。

「こいし。お菓子とってきたから、一緒に…あら。」
予想通りでもあったけれど…こいしはそこにはいなかった。
自由に無意識に奔放に、何処かに行ってしまったのだろう。
そのうち帰ってくるとも思っていたが、残念ながら今日のお菓子には煎餅があった。しかも開封してしまっている。
こいしが持ち帰ってきたざらめ煎餅、その他諸々の煎餅。(多分神社から持ってきたものだ…貧乏な方の。今度謝りに行こう)
「ふぅ…だけど、随分冷静になれたわ。私って姉馬鹿なのかしら…」
あの吸血鬼姉よりはましだと思うけれど…ひょっとして逆?
でもこいしがいないなら、どうせペットの餌をあげなければならなかったし、ちょうどいいと思い、気を紛らわす。
寂しい気を紛らわす。
寂しいというか…なんとなく、胸が痛いような気がした。
こいしから何か誘ってくれたり、ましてやお茶しようと言ったり、そんなの滅多に無いことだった。
覚えているだけでも1ヶ月は言われていない。
あのこが眼を閉じてから、私達はめっきり姉妹らしいことをしなくなった。もともとそうでもなかったけど、更に姉妹らしくなくなった。一緒に遊ぶだとか、雑談だとか、そういうことがなくなった。繰り返すが、もともとそうでもなかったけど、それでもこんなに姉妹らしくないわけでもなかった。
閉ざす前は、結構一緒に遊んでいた。ような気もする。やっぱり気のせいなのだろうか。都合の良いようにしているだけなのだろうか。
まあでもやっぱり、寂しいんだろう。せっかく久しぶりに姉らしいことが、姉妹らしいことができると思っていたのに、結局忘れられて(忘れたわけではないかもしれないけど)、自由に無意識に奔放に、すごされてしまうなんて。
姉として、姉妹として、寂しかった。一緒に過ごせないことが、過ごせそうだったのにすれ違ったことが。
ああ、やっぱりすぐにお茶も淹れて、待ってなさいなんて言わずに一緒に来て貰えばよかっただろうか…こんなに色々考えて、感傷的になるのも、こいしにお茶しようと言われるのと同じくらい、また久しぶりだった。この感情で本でも書けそう。
どれくらい時間が経ったか…しかたないので、ペットの世話や仕事をすることにした。煎餅はしっけてしまうから、1人で食べてしまおう。
枯れかけている花、萎れかけている花のように、気分は萎む。
涙で目が潤む。慌てて目を閉じる。眼を閉じる。
白猫に餌をやって、そして思わず袖で涙を拭う。

どうせなら。
どうせなら、こいしとお茶したかったなあ…

「おねーちゃん!呼ばれて飛びでてじゃじゃじゃじゃーん!おまよ!」

…待ってたわよ。

「おまよって何?」
溢れかけた涙を隠そうとして、慌てて変なことを言う。
違うそうじゃない私!
今にもこいしに抱きつきたいくらいだった。
久しぶりにこいしのこと、姉妹のことについて考えたから、余計に嬉しい。
私の心は、薔薇が咲いたように明るくなる。
「おまよ…?なにそれ…?」
「なんで自分が言ったこと覚えてないの?5秒前のことよ?」
考えられるのはおまたせ+お茶しよ。
混ざりすぎ。
こいしはするする滑るように椅子に座ってお菓子を見渡す。
「うわあおいしそう!びっくりするくらいおいしそう!」
…さて、オーバーリアクションにきゃあきゃあ喜ぶこいしは、果たして。
大量のお菓子を持っていた。
チョコにクッキー、ウエハース。
和菓子だって大量に持っている。
「これー?ちょっとお出かけして買ってきたのー!」
「お金は?」
「もちろんおねーちゃんの部屋に入って…」
「……………………………………………」
「…ごめんなさい。はんせーしてます。」
「まあ、たまのことだし。いいわよ。」
「ほんとー!?ありがと、おねーちゃん!」
…………。
ああもう!
かわいい!

「さくさくしてておいしー。こっちはあまーい。これはしょっぱーい。」
「一度に全部食べないの!」
一気にお菓子を頬張るこいしを軽く叱る。
叱りつつも、その美味しそうなお菓子に自然、手が伸びる。
「…はむ。…ん、んむ。…確かに美味しいわね。」
「ね!おいしいよね!ねえねえ、おねーちゃん、きーてきーて!この前ね、地上でね、私の友達と遊んできたの!」
こいしは無邪気に話し始める。かわいい。
妹とお茶してるって感じする。妹とお茶してるんだけど。
「えっと、名前はフランちゃんって言って、一緒におにごっこしたの!」
「フラン…?」
聞いたことあるような。
ないような。
「それでね、フランちゃんすごかったのー!ふわふわーぴょん!って感じで、ぴりーって感じで逃げちゃって!でもね、私が勝ったんだよ!それで、このとろとろですっごくおいしいチョコは、そのとき賞金?みたいな感じで賭けてて、だからもらったの!」
「そう。フランちゃんっていうこは、ゆるやかで余裕ある動きながらもすばやく、その速さはさながら電光石火のだったのね。とても強い子なのでしょう。」
「そー!フランちゃんとーっても強いの!でも、私が勝ったから、私の方が強いの〜!」
褒めて褒めて〜、と言わんばかりに話すこいし。かわいい。
こいしの表現は独特なところもあるけど、大体は比喩表現のように受け止めれば意外と解読は簡単。
他の人がどうかは知らないけれど…他の人、どうしているのかしら?
こいしと話すのも当然久しぶりで、困ることもあるけれど、やっぱり楽しかった。
楽しいのが、こいしと話すことなのか、人と話すことなのかは、わからない。
こいしだから楽しいのか。話しているから楽しいのか。
前者であってほしい。
その後も私達は、山のように積み上げられたお菓子を頬張り、夕方くらいまで話し続けた。
もっとも、ほとんど変わらないことしかしてない私より、こいしの方が喋っていたけど…それでも、小説の話やペットの話をすると、目を輝かせて聞いてくれた。かわいい。
フランというこの話。なんだか私の知らない間に異変解決した話。こころというこの話。
そんなちょっと大きな話から、四葉のクローバーを見つけた話、抹茶を飲んで苦さにびっくりした話など、日常でありがちな話。
でもその全部が無邪気さに包まれていて、とても楽しい時間だった。
「あー、もうお菓子なくなっちゃったね。また明日もお茶しよ、おねーちゃん!」
「え、ええ。そうね。あ、ついでにご飯食べる?」
しかし『あ、つい』の時点で、すでにこいしは私の目では見えなかった。眼で視えなかった。
…明日も?
明日も、お茶?って言っていたかしら?
…明日は、雪ね。

「おねーちゃん!昨日話せなかったこと話すね!」
「ええ。とっても楽しみだわ。」
本当に楽しみだった。無邪気さに包まれた、明るくて、ふわふわしていて、夢みたいなだいぼうけん。子供に戻ったみたいだった。鬱屈で退屈で変わりばえののない毎日から抜け出したみたいだった。
それもそうだけど…私と約束の通りお茶してくれたことも、また嬉しかった。
その日もいろんな話をした。チョコとマシュマロ、おだんご。いろんなお菓子を食べなが
ら。
「あの弾幕はびっくりしちゃった。波紋みたいに、どんどんどんどんぶつかって、広がって…」
こいしのお友達の話。オオガマに襲われてる妖精を正義のヒーローの如く助けた話(なんていった?オオガマに襲われてる妖精を正義のヒーローの如く助けた話?)。弾幕ごっこの話。
「それでね、おねーちゃん!そのチルノっていう妖精は…」
いろんなお話を聞く。夢いっぱいで無邪気で明るい話を。
「こころちゃんと踊り?能楽?の練習したのー!」
そんな話を聞くうちに、地上へ行きたい、こいしと地上へ行きたいと自然、考える。
でも、私は地上の暗いところもいっぱい知ってる。
人間に気味が悪いと、気持ち悪いと…嫌われる。
だから。
こいしに、語り継いでもらおう。語ってもらおう。
話を聞いている間だけでも、私は地上にいられる。
…嬉しい、と。
楽しい、と。
それもまた…自然、思った。
自然に、無意識に。
私達のお茶は、突然、私達の日課になった。
流石に1番長かったのは最初だけで、そこからは毎日だいたい30分から1時間。
その後は2人とも自由に過ごす。
それでもこいしと地上に行っているかのように思える、幸せな時間だった。
所詮妹とお茶してるだけの、素朴で至福の時間。
しかし気になることがある。
なんでこいしは、急に私に付き合ってくれるのだろう?
思いつきで初日だけなら理解できる、むしろこいしらしいが、どうしてこうも毎日?
それともまた思いつきで急にやめてしまうの?ひとたびそんなことを考えだすと、黒い黒い負のスパイラルは永遠にねじれこじれる。私の幸せな時間は、こいしの思いつきに過ぎないの?ひょっとして、私のことだって、ただ話し相手としか考えてないの?あんまり話があるとこんがらがるから、整理しようとしてるだけ?そう考えると…
「…ねえ、こいし」
聞かずにはいられなかった。理由を。
「どうして、最近私とお茶してくれるの?」
こいしは、驚くような不思議そうな顔をして、思案顔になる。
「…あー!思い出したっ!」
ひらめいた、とでもいうように手を叩くこいし。
「最初はやっぱり思いつきだったんだよね。帰ってきたら良い匂いがして、なんだろうなーこれ、ああそうかお茶かー、あっそうだお茶しよう!みたいな。でも、お姉ちゃんとお話しして、とっても楽しくて。私の友達っていうのは、あんまり境遇?かんきょう?が違いすぎて。フランちゃんも妹だけど、私と全然違うの。それに、なにを話しても『どういうことかわからない』っていうの。遊びに行く先でなにをしてもなにも言われないし…それでもね!おねーちゃんは、私の話をわかってくれるし、お金勝手に使ったら怒ってくれたし、すっごく楽しそうに聞いてくれるの!だからね、楽しくて、おねーちゃんといるだけで楽しくて、どきどきするの!私、おねーちゃんともっと一緒にいて、もっと一緒にお話ししたい!」
一気に喋るこいし。それを聞いて、私は………
体が熱くなるのを感じた。
涙が溢れるのを感じた。
こいしが、私のことを、そんなふうに思ってくれてたなんて。
私と一緒にいるだけで、楽しいなんて、私みたいなつまらなくて全然妹のことも気にかけてあげられない、ダメダメな姉に言ってくれて…
嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて。
久しぶりに、人の暖かさを感じた気がして。
それに…そ、それに。
『おねーちゃんといるだけで楽しくて、どきどきするの!…もっと一緒にいて、もっと一緒にお話ししたい!』そんなの。
まるで、

恋じゃない。

私は突然泣き出した私にあっけに取られるこいしを抱きしめる。
こいしは訳がわからないというふうだったけど、こいしに抱きついて、泣きじゃくる。
それこそ子供になったように。

こいし。
あしがとう。
私の、たった1人の妹。

しばらくして、こいしは笑顔で私を抱きかえす。
魔がさしたのか…なんなのか。
…私は、こいしに。
「…大好きよ。こいし。」

恋なのか愛なのか、ただの姉妹愛で、思い違いで、調子に乗ってるだけなのか。
わからないけど。
でも。

私は、こいしが好き。

「…明日、一緒に地上に行こうね。」

小指の約束。

私も、こいしみたいに眩しい体験を、明るい話を、全身で感じたい。
大好きな人と。
思いつきで(無意識で?)書き進めていくうちに、心情がこじつけみたいになってしまいました。お茶もほぼ関係なくなってしまいました…。でもオチだけはそこそこ綺麗に落ちれたと思っています。読んでいただきありがとうございました。

追 皆様からのコメント、励みになります。ありがとうございます。終始とろけるような甘い話だったので、初投稿ということもあり心配だったのですが、私の作品で喜んでいただけて幸いです。キャラ同士の絡みのリクエストもあれば是非。いつか書くかもしれません。
重ねて、読んでいただき、ありがとうございました。
ちょこれーと
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コメント



0.300簡易評価
2.90奇声を発する程度の能力削除
楽しめました
3.100サク_ウマ削除
かわいいたすかる
こいフラたすかる
健康になりました。良かったです。
4.90Actadust削除
古明地姉妹の可愛さが光る良い作品でした。
5.100南条削除
ふたりともかわいらしかったです
10.90名前が無い程度の能力削除
かわいらしかったです
12.100名前が無い程度の能力削除
こいしの無軌道さが、文章によく表れていたと感じました。いとしこいし、どんな感情をこれから姉妹ははぐくんでいくのでしょうね。ご馳走様でした。とても甘く、ちょっとだけ刺激的でした。