Coolier - 新生・東方創想話

花火

2021/08/24 23:27:36
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 夜空には、火を吸って咲いた花が浮かぶ。
 水面はその花を映していて、夜空と同じ顔をしていた。

 私はありきたりな雑踏、見飽きた屋台を横目に、やけに騒がしい夜を歩く。
 君が「花火を見に行こう」そんなことを言った気がして、いつもの白いワイシャツ、足首までの黒いズボン、いつもの黒いハット、履きやすい靴をはいて外へ出た。
 真っ赤な色のりんご飴、丁度いい甘さのベビーカステラ、鼻先をくすぐるソースの香り、群衆の喧騒、子供の笑い声、夜に響く迷子のお知らせ、やけに濃い湿気の気配、それに紛れる深い夜の群れ、浴衣姿が目立つ中でもいつもの服装の私たち。
 君は、やけに騒がしいなんて言うけれど、その横顔も周りの人と同じ表情で、夜の花が咲くのを待ち望んでいるよう。
 私は君とはぐれない様に、君の手を握って人混みを歩く。君は、暢気に私の手に引かれて嬉しそうにしているけれど、私は君とはぐれてしまうと二度と会えない様な気がして、その手を必死に掴んでいた。
 雲の様な綿菓子、ぬらぬらと光る金魚すくいの水槽、怪しいお面屋さん、豪華賞品を並べるクジ引きの屋台、香ばしい匂いの焼きとうもろこし、高価な缶ジュース。どれもが魅力的で、私たちはそれらを眺めながら歩いて行く。
 誰もが夜だと言うことを忘れているようで、私は少し怖かった。
 どこか落ち着ける場所はないかと思いながら歩いていると、やがて何処からともなく花火の打ち上げを告げる放送が響き渡り、周囲はより一層盛り上がる。
 人ごみにまみれながらの花火などは見たくない。と、私は思い、君と静かな場所を探す。
 なんとか水辺に近いベンチに君と腰かけて、一息ついていると、やがてひゅうぅと大きな音をこぼしながら夜空を進む火の玉は、やがて大きな花を夜空に咲かせた。
 冷たい手で私の右手の甲をなぞる君は、意味ありげに私に向かって微笑む。
 私は、思わず右手で君の手をとろうとするも、君はひらひらと躱して、私を弄ぶ。
 呆れながらも、私は思わず君の方を向く。

 そこには、暗がりだけの虚空が浮かぶ。
 水面は君の姿を映していて、君はあの頃と同じ顔をしていた。
どうもこんにちは、鉄骨屋です。
正直に言います。酒に酔っているので、お題の「宇佐見菫子」を「宇佐見蓮子」と読み間違えていました。
それはともかく、こういうものを書いたことがないと思って書いてみました。
鉄骨屋
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コメント



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1.100柏屋削除
>>火を吸って咲いた花が浮かぶ。
>>真っ赤な色のりんご飴、丁度いい甘さのベビーカステラ、
>>雲の様な綿菓子、ぬらぬらと光る金魚すくいの水槽、

広い視野と文章化の力をお持ちで羨ましい。
実際に歩いてるかのようだなぁと思いました。
感覚が麻痺する縁日特有の感じがしてとても良きです。
2.90奇声を発する程度の能力削除
楽しめました
8.100名前が無い程度の能力削除
楽しめました