いんでぃぺんでんと、始まる。
「…さて、ここからどうする?あの妖怪の事だから俺たちの挙動なんて全て把握しているだろう」
「そうだな、武器なんて作ってたらすぐに殺されるだろうな」
「情報収集とか、かな」
「何の情報を収集するんだ?」
「…妖怪の情報…?」
「妖怪の情報……!そうか!それだよ霖之助君!」
「?」
「村の近くにある神社へ行ってみよう。巫女さんなら何かわかるかもしれない」
「そういえばいつからか行ってなかったわね。あの宗教に汚染されていないといいけど」
「じゃあ、行く人を決めよう。全員で行くのは危険だ」
「そうね。なら、こうしましょう」
靈夢は提案する。
「神社に行くのは、私とお父さん、の二人。この家に残るのはお母さんと霖之助君、魔梨沙の三人でどうかしら」
「それじゃあ、少ないんじゃないかい?」
「むしろこっちの方がいいだろ。子供を何人も連れていけねぇ」
「そうかい…まぁ、子供の一人や二人見るくらい変わらないさ」
「それがいいかもな。私は八卦炉を持ってるし、靈夢はお父さんがいるから大丈夫だろ」
「僕もそれでいいと思う。今新しい武器を作ってるんだ。あと、この家も詳しく調べて見たいし」
「お、新しい武器か。八卦炉より強いの期待してるぜ」
「よし!決まりね」
早速神社へ行く準備を行う。
「それじゃあ、ご飯作ってるから。気を付けて帰ってきてね」
「行ってきます、お母さん」
「気を付けろよ。何かあったらすぐ戻ってこい」
「こっちは僕たちでなんとかするよ」
「ありがとう、魔梨沙、霖之助君」
二人は歩き始めた。平和に向けて。
――――――――――――
「靈夢大丈夫か?疲れたら休むぞ」
「平気よ、まだ休憩しなくても大丈夫」
山の麓にある家から神社に向かう途中、村が見えてくる。
村を越えてまっすぐ進むと次第に坂道になり、階段が見える。そこを登れば神社だ。
「真っ直ぐ行った方が近いけど、村の出入り口にぶつかるから迂回するか?」
「そうね、人目は避けた方がいいかも。門番もいるし」
村の出入り口は一か所のみ。であれば、迂回して外を周って行けば確実に神社にたどり着けるはず。
「この村って結構大きいのね」
「山の麓に住んでいた人もこの中にいるからな。村人全員が食べていける田んぼが入ってるんだからでかいだろう」
「っ、臭うわね…」
「好かねぇな、この臭い」
村を外から周っている。隙間から村の様子が見える。
「…」
「…変に見る必要はないんだぞ」
「いや、見ないといけない。これからこの村を救うんだから、見なきゃいけない」
村の中は血の色に染まり、死臭が漂っていた。死体は土壇場に留まらなかった。
驚いたことに村人は死体を気にしないで生活しているようだった。
枯れている植物も散見された。もしかして、家族全員が恐らく…
「これだと、霧雨商会もただじゃ済まないでしょうね…商売なんて出来たもんじゃないわ」
「いや、潰れる事はないだろう。商会を支配する人間が変わるだけで財団としての機能は失われていないはずだ」
「…そうだとするなら、こんなに村が寂れるのは何故?」
「支配者が変わったからこそと言えるかもな。むしろ、あの宗教の中だけでビジネスが出来ている。
食べ物を作る人も、店を切り盛りする人も、全員信者だ。そいつらに投資して、金を回すっていうのは、今までと変わらないはずだ。
寂れているように見えるのは、信者ではない人間が見当たらないからだろう」
「…」
「靈夢、現実を見るってのは凄い事なんだ。
そこらの人間は、人生の苦しみから逃げようとして、都合のいい言葉に誘われ、空想の中に生きる。
だが、お前は現実を見ている。
俺が保証する。お前はどんな事があっても幸せに生きていける」
やがて、村を一周しかける所まで来た。神社へ向かう道はもうすぐ。
「良し、このままこの道を進んでいけば…」
―――貴方は先程村から出た方ではございませんか。精が出ますね―――
『!!』
(村一周した意味が無くなっちまった…
ここで神社に行くって言ったら何をされるかわからん…)
(お父さん!どうする!?)
(俺に任せろ。汚名返上だ)
「神社の近くの田んぼまで…。大変ご苦労様でございます。
あそこは紫様の教えに逆らう逆賊の住処ですからね」
「左様でございまして…」
「あれ、そういえばこちらの方は畑しかなかったのですね。すみません、あまり門から動かないものですから。
では、こちらには何を…?」
「商会の上の者から畑も調査してくれと言われましてね。被害が田んぼだけでしたが、
畑でも起きたら大変な事になります」
「そうですか、分かりました。ではお気を付…」
―――「失礼します。私は霧雨商会の者ですが、靈夢様のご家族でしょうか?」
《…嫌な予感がする》
「弊商会代表のご息女である霧雨魔梨沙様が現在行方不明になっております。
以前、森近霖之助という少年と靈夢という少女が常に行動をしていた事、
そして、その二人と少女の両親も同時にいなくなっている事から、何か関係があるのではないかと考えております。
貴方がたを悪く扱うつもりは毛頭ございません。是非、霧雨商会に出頭頂けないでしょうか」
『…』
「なぜ黙るのです?」
(まずいな…これは付いて行ったら出られないお決まりだ…)
(靈夢。すぐに神社の方へ走ってくれ。後で追う)
(!?…だめよお父さん!危険すぎるわ!)
(良いから行け!!)
(…!!)
砂をいっきに掻き揚げて少女は走り出した。
「おい!!何故逃げる!!」
「捕まえるぞ!」
門番と商会員が走り出した。
「おい、追わせるわけがないだろ?お前らの相手は俺だ」
「邪魔をするなら容赦しないぞ…」
「それは、俺の言葉だ。若造」
「ぐぁああ!!」
靈夢の父が繰り出す拳が2人を圧倒する。
しかし…
「紫様の教えに反する人か?懲らしめてやらないとなぁ…」
「!?」
騒ぎを聞きつけたのか、村の人間が駆けつけてきた。
「そうだ!あいつは紫様の教えに従わず邪教を崇拝する悪魔である!パージせよ!」
「おぅ!行こうぜ!!」
(くそっ!これは逃げるしかない!
しかし…、…そうか!!)
「こっちだ、信者ども!」
「追え!!」
(神社と逆の方へ逃げれば、靈夢の方へ向かうやつは…」
―――よぅし、村の人間が追いかけている間に私達であの少女を追いかけるぞ―――
「!?…ま、待て…」
「おいおい、どこ見てるんだよ。お前の相手は俺たちだぜ」
「待っ…、がっ!…」
脳天を鍬で貫かれた。なだれ込まれ、切り刻まれた。
血が畑の土を潤す。
「おら!さっさと死んじまえ!」
「く、くそ…、力が…。もう…だめだ…」
「…靈夢、お前は…幸せに…生きてくれ…」
『…やったか!?』
「…」
「やった!!これで、紫様に逆らう者をこの世界から一人消すことができた!」
「万歳!紫様万歳!!」
「空飛ぶマジカル紫教は永遠だ!!」
「何だよ、そんな一人いなくなるなんて普通の事じゃないか。大袈裟だ」
「それじゃ、村に戻って乾杯だな!」
―――――――――――――――――
「…はぁ、はぁ。まだなの?」
靈夢は焦っていた。いつ見えるか分からない神社、いつ来るか分からない村の人間と、帰ってこない父を。
「戻ろうかな…いや、だめ」
「まず、神社に行くことだけを考えよう、私」
やがて、石造りの階段が見えてきた。
「ここだ!早く…――――」
「見つけたぞ!捕まえろ!!」
「えっ!?」
早く、早く、行か…ないと…まさか…お父さん…
「お父さん…ぅぅ…」
目も体も汗で濡れていた。
それでも、駆け上がらなければ。
「あ…と半分…!」
あと半分登り切れば神社に着く。それまでは走らないと…!
「もうすぐ―――
「きゃっ!」
「よぉし!捕まえたぞ!」
体を拘束された女の子の姿が無残に映っていた。
「安心しな。ご息女様の事を教えてくれたら俺たちでしっかり教育するからな!
紫様の教えをじっくり叩き込まねぇとな!」
「あ…あと、もうちょっと、だったのに…」
涙が溢れてしまう…。
「お父さん…お母さん…霖之助…魔梨沙…ごめ―――」
「頭を下げて!!」
え―――?
「はぁっ!!!」
「きゃっ!」
鳥居の方から声が聞こえたと思ったら目の前が光った。
眩しくて目が明けられなかった。
体が軽い…?
後ろを振り向くと…
「ひぃっ!!」
首から上部が消えて、体のみが立っている有機物。パタン。パタン。
「な、な…にが、起き、て…るの…ぁ…ぅ…」
「落ち着きなさい!!深呼吸をして、すぅーはぁーー」
「…すぅーはぁーー」
『すぅーはぁーー』
………………
「落ち着いた?」
「…」
「無理もないわ。階段は登れる?ほら、手を握って」
「…あ、ありがとう」
「どういたしまして」
「…ぐすっ…うぅ…ひぐっ…」
靈夢は鳥居をくぐった。
「…さて、ここからどうする?あの妖怪の事だから俺たちの挙動なんて全て把握しているだろう」
「そうだな、武器なんて作ってたらすぐに殺されるだろうな」
「情報収集とか、かな」
「何の情報を収集するんだ?」
「…妖怪の情報…?」
「妖怪の情報……!そうか!それだよ霖之助君!」
「?」
「村の近くにある神社へ行ってみよう。巫女さんなら何かわかるかもしれない」
「そういえばいつからか行ってなかったわね。あの宗教に汚染されていないといいけど」
「じゃあ、行く人を決めよう。全員で行くのは危険だ」
「そうね。なら、こうしましょう」
靈夢は提案する。
「神社に行くのは、私とお父さん、の二人。この家に残るのはお母さんと霖之助君、魔梨沙の三人でどうかしら」
「それじゃあ、少ないんじゃないかい?」
「むしろこっちの方がいいだろ。子供を何人も連れていけねぇ」
「そうかい…まぁ、子供の一人や二人見るくらい変わらないさ」
「それがいいかもな。私は八卦炉を持ってるし、靈夢はお父さんがいるから大丈夫だろ」
「僕もそれでいいと思う。今新しい武器を作ってるんだ。あと、この家も詳しく調べて見たいし」
「お、新しい武器か。八卦炉より強いの期待してるぜ」
「よし!決まりね」
早速神社へ行く準備を行う。
「それじゃあ、ご飯作ってるから。気を付けて帰ってきてね」
「行ってきます、お母さん」
「気を付けろよ。何かあったらすぐ戻ってこい」
「こっちは僕たちでなんとかするよ」
「ありがとう、魔梨沙、霖之助君」
二人は歩き始めた。平和に向けて。
――――――――――――
「靈夢大丈夫か?疲れたら休むぞ」
「平気よ、まだ休憩しなくても大丈夫」
山の麓にある家から神社に向かう途中、村が見えてくる。
村を越えてまっすぐ進むと次第に坂道になり、階段が見える。そこを登れば神社だ。
「真っ直ぐ行った方が近いけど、村の出入り口にぶつかるから迂回するか?」
「そうね、人目は避けた方がいいかも。門番もいるし」
村の出入り口は一か所のみ。であれば、迂回して外を周って行けば確実に神社にたどり着けるはず。
「この村って結構大きいのね」
「山の麓に住んでいた人もこの中にいるからな。村人全員が食べていける田んぼが入ってるんだからでかいだろう」
「っ、臭うわね…」
「好かねぇな、この臭い」
村を外から周っている。隙間から村の様子が見える。
「…」
「…変に見る必要はないんだぞ」
「いや、見ないといけない。これからこの村を救うんだから、見なきゃいけない」
村の中は血の色に染まり、死臭が漂っていた。死体は土壇場に留まらなかった。
驚いたことに村人は死体を気にしないで生活しているようだった。
枯れている植物も散見された。もしかして、家族全員が恐らく…
「これだと、霧雨商会もただじゃ済まないでしょうね…商売なんて出来たもんじゃないわ」
「いや、潰れる事はないだろう。商会を支配する人間が変わるだけで財団としての機能は失われていないはずだ」
「…そうだとするなら、こんなに村が寂れるのは何故?」
「支配者が変わったからこそと言えるかもな。むしろ、あの宗教の中だけでビジネスが出来ている。
食べ物を作る人も、店を切り盛りする人も、全員信者だ。そいつらに投資して、金を回すっていうのは、今までと変わらないはずだ。
寂れているように見えるのは、信者ではない人間が見当たらないからだろう」
「…」
「靈夢、現実を見るってのは凄い事なんだ。
そこらの人間は、人生の苦しみから逃げようとして、都合のいい言葉に誘われ、空想の中に生きる。
だが、お前は現実を見ている。
俺が保証する。お前はどんな事があっても幸せに生きていける」
やがて、村を一周しかける所まで来た。神社へ向かう道はもうすぐ。
「良し、このままこの道を進んでいけば…」
―――貴方は先程村から出た方ではございませんか。精が出ますね―――
『!!』
(村一周した意味が無くなっちまった…
ここで神社に行くって言ったら何をされるかわからん…)
(お父さん!どうする!?)
(俺に任せろ。汚名返上だ)
「神社の近くの田んぼまで…。大変ご苦労様でございます。
あそこは紫様の教えに逆らう逆賊の住処ですからね」
「左様でございまして…」
「あれ、そういえばこちらの方は畑しかなかったのですね。すみません、あまり門から動かないものですから。
では、こちらには何を…?」
「商会の上の者から畑も調査してくれと言われましてね。被害が田んぼだけでしたが、
畑でも起きたら大変な事になります」
「そうですか、分かりました。ではお気を付…」
―――「失礼します。私は霧雨商会の者ですが、靈夢様のご家族でしょうか?」
《…嫌な予感がする》
「弊商会代表のご息女である霧雨魔梨沙様が現在行方不明になっております。
以前、森近霖之助という少年と靈夢という少女が常に行動をしていた事、
そして、その二人と少女の両親も同時にいなくなっている事から、何か関係があるのではないかと考えております。
貴方がたを悪く扱うつもりは毛頭ございません。是非、霧雨商会に出頭頂けないでしょうか」
『…』
「なぜ黙るのです?」
(まずいな…これは付いて行ったら出られないお決まりだ…)
(靈夢。すぐに神社の方へ走ってくれ。後で追う)
(!?…だめよお父さん!危険すぎるわ!)
(良いから行け!!)
(…!!)
砂をいっきに掻き揚げて少女は走り出した。
「おい!!何故逃げる!!」
「捕まえるぞ!」
門番と商会員が走り出した。
「おい、追わせるわけがないだろ?お前らの相手は俺だ」
「邪魔をするなら容赦しないぞ…」
「それは、俺の言葉だ。若造」
「ぐぁああ!!」
靈夢の父が繰り出す拳が2人を圧倒する。
しかし…
「紫様の教えに反する人か?懲らしめてやらないとなぁ…」
「!?」
騒ぎを聞きつけたのか、村の人間が駆けつけてきた。
「そうだ!あいつは紫様の教えに従わず邪教を崇拝する悪魔である!パージせよ!」
「おぅ!行こうぜ!!」
(くそっ!これは逃げるしかない!
しかし…、…そうか!!)
「こっちだ、信者ども!」
「追え!!」
(神社と逆の方へ逃げれば、靈夢の方へ向かうやつは…」
―――よぅし、村の人間が追いかけている間に私達であの少女を追いかけるぞ―――
「!?…ま、待て…」
「おいおい、どこ見てるんだよ。お前の相手は俺たちだぜ」
「待っ…、がっ!…」
脳天を鍬で貫かれた。なだれ込まれ、切り刻まれた。
血が畑の土を潤す。
「おら!さっさと死んじまえ!」
「く、くそ…、力が…。もう…だめだ…」
「…靈夢、お前は…幸せに…生きてくれ…」
『…やったか!?』
「…」
「やった!!これで、紫様に逆らう者をこの世界から一人消すことができた!」
「万歳!紫様万歳!!」
「空飛ぶマジカル紫教は永遠だ!!」
「何だよ、そんな一人いなくなるなんて普通の事じゃないか。大袈裟だ」
「それじゃ、村に戻って乾杯だな!」
―――――――――――――――――
「…はぁ、はぁ。まだなの?」
靈夢は焦っていた。いつ見えるか分からない神社、いつ来るか分からない村の人間と、帰ってこない父を。
「戻ろうかな…いや、だめ」
「まず、神社に行くことだけを考えよう、私」
やがて、石造りの階段が見えてきた。
「ここだ!早く…――――」
「見つけたぞ!捕まえろ!!」
「えっ!?」
早く、早く、行か…ないと…まさか…お父さん…
「お父さん…ぅぅ…」
目も体も汗で濡れていた。
それでも、駆け上がらなければ。
「あ…と半分…!」
あと半分登り切れば神社に着く。それまでは走らないと…!
「もうすぐ―――
「きゃっ!」
「よぉし!捕まえたぞ!」
体を拘束された女の子の姿が無残に映っていた。
「安心しな。ご息女様の事を教えてくれたら俺たちでしっかり教育するからな!
紫様の教えをじっくり叩き込まねぇとな!」
「あ…あと、もうちょっと、だったのに…」
涙が溢れてしまう…。
「お父さん…お母さん…霖之助…魔梨沙…ごめ―――」
「頭を下げて!!」
え―――?
「はぁっ!!!」
「きゃっ!」
鳥居の方から声が聞こえたと思ったら目の前が光った。
眩しくて目が明けられなかった。
体が軽い…?
後ろを振り向くと…
「ひぃっ!!」
首から上部が消えて、体のみが立っている有機物。パタン。パタン。
「な、な…にが、起き、て…るの…ぁ…ぅ…」
「落ち着きなさい!!深呼吸をして、すぅーはぁーー」
「…すぅーはぁーー」
『すぅーはぁーー』
………………
「落ち着いた?」
「…」
「無理もないわ。階段は登れる?ほら、手を握って」
「…あ、ありがとう」
「どういたしまして」
「…ぐすっ…うぅ…ひぐっ…」
靈夢は鳥居をくぐった。
まとめを先に述べますと、メリハリ(読者の読み進める目を止まらせるポイント)を増やしてはどうでしょうか。
一つ目にメインキャラクターが増えると誰がそのセリフを喋っているのか、分かりづらくなる傾向にあります。今回の話では序盤の相談シーンが顕著でした。口調と一人称である程度の把握はできますが、読者に委ねすぎると情報が混乱してしんどくなります。
全部とは言いませんが、重大なセリフの前には一呼吸置くなどして緩急をつけるなどすると物語にメリハリが出ると思います。
今回の話を例にとります。霖之助が「…妖怪の情報…?」と呟きますが、これは「巫女のもとへ向かう」という次の展開を引っ張る大事なセリフです。しかしこれが重要なセリフと分かるのはその後の「それだよ霖之助君!」の指摘があってこそです。
作中の流れでは何気ない言葉を拾う構図は正しいのですが、メタ的に見ると「そのセリフ大事なんだ! 霖之助の発言なんだ!」と後出しで読者は理解することになります。もったいないです。
霖之助の発言の前に「顎に当てていた手を離し、霖之助はふと呟いた。」みたいな地の文を入れれば、読者の注目を次のセリフ、つまり「妖怪の情報」に集めることができると思います。倒置法のような使い方になるでしょうか。
人伝ですが、人は地の文と比べて「」の会話が目につきやすいそうです。地の文を効果的に挿入すればそこに目が留まり、セリフの中身もいっそう映えるかと思いました。
二つ目は物語のハイライトに時間をかけることです。物語の一区切りごとに投稿されているということなので、区切りごとに見せ場があると思います。一話なら紫の登場、今回なら父親と靈夢の奔走でしょうか。
そのシーンにもっと尺を使っても良いのかなという印象を受けました。緊迫したシーンでダラダラ書き連ねるのもあれですが、心情を軽く挟むだけで効果が出る場合もあるかと思います。
例えば二人が霧雨商会に詰め寄られるシーンで父親が「これはついて行ってはいけない。→先に行け」と靈夢に促します。その前にあった親子で語らう場面からの悲劇的な別れです、一生モノの。
この別れを強調するならば、親子で語らうほんのわずかなシーンに「父親が靈夢の頭を撫でて、靈夢が小さく笑顔を見せる」などのふれ合いを前もって描写し、その関係が引き裂かれるという「上げて落とす」の構図を用いてはどうでしょうか。先の展開をより引き立てる前描写があれば、より良い作品になれると感じました。
あれこれ具体例を用いましたが、物語進行の緩急をつけること、ヤマ場を魅せること、この二点がより良くなれば作品がもっと生き生きしたものになると思います。せっかくスピーディーで話の全体を追いやすい書き方をしてらっしゃるので、その持ち味を殺さない要所要所の改善が作品の質の底上げにつながるかと感じました。
あくまで私個人の考えですが、気分を害されましたらすみません。長編執筆は私には難しく感じているので毎週投稿できるまやしまさんは単純にすごいと思います(語彙力)。巫女から何を得られるのか、紫とどう決着するのか、楽しみにしています。執筆活動がんばってくださいね!
アドバイス本当に嬉しいです!
Kオスさんのおっしゃる通り、確かにシナリオをどうにか進めようとしてそれぞれのシーンがなあなあになっているなとは思っていました。
一生モノのシーンであっけなく人間が生き死にしてあっさり終わるのは確かにもったいないなと私も思います。勉強になります。
<<「顎に当てていた手を離し、霖之助はふと呟いた。」みたいな地の文
このアドバイスは本当にそうだなと頷いてしまいました。
地の文を加える事で誰が会話しているのかもわかりやすくなるなと。
こちらについて、次話及び次回作以降において根本的にこれから直していきます。
今回のアドバイスを頂いて、もう少し丁寧に書くことを意識せねばという考えをもたせて頂きました。
これからも、もしお時間がありましたら、都度アドバイスを頂ければ幸甚です。
ありがとうございます!