今年の村の収穫はこれまでになく上々であった。
米はたくさん採れ、野菜も力強く実った。
村では流通が盛んに行われ、小売業や飲食業などのサービス業が増えた。
銀行業も発達し、店にお金を出資して主となり、利益の一部を配当金として受け取る者が現れた。株式会社である。
大日本帝国(当時の日本)は明治6年から地租改正という制度改革が制定、翌年施工。
地代(土地の価格)の3%分を毎年納税する事になった。
それは、不作でも同等に払う必要があった。
しかし、今年は今までの税で底をつきそうになったお金が豊作によって、
生活費を抜いてもおつりが出るほどまで膨れ上がった。
村は有史以来の好景気であった。
「なんだか、妖怪に支配されているってのが嘘みてぇだな」
「そうだな、あの日から妖怪たち出てこねぇしな」
「このまま支配してもらった方がいいんじゃねぇか?」
「はっはっは!言えるな!」
「まぁ今年は豊作だが、来年どうなるか分からんからあんまり使いすぎるなよ」
「それもそうだな!来年もこうなればいいけどな!」
『あっはっは!』
「霊夢。村の真ん中にある霧雨商会って所で読み聞かせやってるんだってさ。暇だったら行ってきたらどう?」
「行ってみたい!それじゃ母ちゃん、行ってきます!」
「…動くのだけは一人前だなぁ…靈夢は」
―――霧雨商会―――
"…村に帰ってきた桃太郎は、金銀を村のみんなに返して幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし"
『わー!!!』
「あー面白かった!後で母ちゃんに話そ!…ん?」
「おーい。読み聞かせ聞かなかったの?」 「…」
「おーい!」 「ぅわああ!」
「どれだけびっくりしてるの…」
「はー…。なんだ?今忙しいんだ。後にしてくれ。」
「読み聞かせ聞かなかったの?」
「あれはもう何回も聞いたからこれ以上聞いても仕様がないぜ」
(…ぜ?)
「だが、あの話は本によって内容が違うから面白いけどな」
「そうなんだ!もしかしてこのお屋敷の子?」
「そうだ。それがどうかしたか?」
「それなら、このお屋敷にある本を読ませてもらってもいいかな?」
(…この子、癖が強いなあ…でも…)
「…勝手にしろ」
「ありがとう!貴方、お名前は?」
「…霧雨魔梨沙だ。」
「わかった!これからよろしくね、魔梨沙!」
「…あぁ、よろしく」
(…こいつ、癖が強いんだが…)
………………
チリリーン
「こんにちは!本を読みに来ました!」
「あら、いらっしゃい」
「いつもお世話になってます、お姉さん」
「あら、私の教えが上手くいったのかしら、
いい男になったんじゃない?」
「そ、そうですね…」
「…なんか聞いたことのある声ね。
女中さんと何の話をしてるのかしら…」
靈夢の勘はいつでも鋭い。
「よお、こーりん」
「こんにちは!魔梨沙。今日も本を読みに来たよ」
「おう、勝手に読んでいけ」「うん」
「…あれ?この間のお姉ちゃん!?」
「ん?……あー!霖之助君!?」
「なんだ、知り合いなのか。
…だとしてもここは本を読む場所だから静かにしてくれよ」
『ごめんなさい…』
「僕、読みたい本があるから行くね。読んだら一緒に帰ろ」
「わかったわ。また後でね」
――――――
「霖之助君が読んでる本、脇から見てたけど凄く難しい本を読んでるのね。何書いてあるのかさっぱり」
「僕も最初は分からなかったよ。ただ、色んな本を読むうちに少しずつ分かってきたんだ。
頭の中で想像しながら読むって感じ」
「へぇ、凄いね。私は楽しいから読んでるだけなんだけど」
「僕も、楽しいから読んでるだけだよ」
「え、そうなんだ!ところで、霖之助くんは何でいつも難しい本を読んでるの?
楽しむだけなら絵本も楽しいよ」
「楽しいっていうのもあるけど、この前お姉ちゃんに見せた道具について色々と調べたくてね」
「ああ!あれね。工作は順調なの?」
「うん!少しずつ出来上がってきてるよ」
「いいじゃない!完成まで楽しみね」
「ただ、これが完成したら渡したい人がいるんだ」
「へぇ、誰に?」
「霧雨商会の魔梨沙に渡したいんだ。さっき一緒にいたあの子だよ」
「あの子に…意外かも」
「そうかな?魔梨沙のおかげでいつも本を読ませてもらってるからね。
この道具は魔梨沙のおかげで出来てる様なものなんだ」
「そっか。いいわね、きっと魔梨沙も喜ぶわよ」
――――――
「じゃあ、僕の家はここから曲がった所だから、またね」
「ええ、またね。霖之助君」
「ただいま」
「靈夢、お帰りなさい。長かったね、読み聞かせ。」
「いや、読み聞かせはすぐに終わったんだけど、そのまま本を読んでたんだ」
「あらら、霧雨商会さんのとこで本を読ませでもらったの!やだ、後でお礼に行かないとね。いやでも、あたしみたいな人が入っていいんだか…」
「そんなにすごいところなの?」
「すごいも何も、この村で一番のお金持ちは霧雨商会だよ」
「え!そんなにすごいところだったんだ!そこの女の子と仲良くなったんだ。魔梨沙っていう子なんだけど」
「あら、魔梨沙ちゃんって霧雨商会の中でも一番お偉いさんの娘さんじゃないか!よくやったよ、靈夢!」
「…母ちゃん…別にお金もらうために友達になったわけじゃないんだけど」
「あらそうなの、ごめんごめん」
霧雨商会は、優れた商才で成り上がった霧雨一族による財閥である。
問屋から始まり、余剰資金を商店などに投資し、
商店の利益によるリターンを得る事で、村の経済を回しながら、自分の富を着実に増やしていった。
融資を受けたい商店は必然的に霧雨商会の傘下に入っていった。
米はたくさん採れ、野菜も力強く実った。
村では流通が盛んに行われ、小売業や飲食業などのサービス業が増えた。
銀行業も発達し、店にお金を出資して主となり、利益の一部を配当金として受け取る者が現れた。株式会社である。
大日本帝国(当時の日本)は明治6年から地租改正という制度改革が制定、翌年施工。
地代(土地の価格)の3%分を毎年納税する事になった。
それは、不作でも同等に払う必要があった。
しかし、今年は今までの税で底をつきそうになったお金が豊作によって、
生活費を抜いてもおつりが出るほどまで膨れ上がった。
村は有史以来の好景気であった。
「なんだか、妖怪に支配されているってのが嘘みてぇだな」
「そうだな、あの日から妖怪たち出てこねぇしな」
「このまま支配してもらった方がいいんじゃねぇか?」
「はっはっは!言えるな!」
「まぁ今年は豊作だが、来年どうなるか分からんからあんまり使いすぎるなよ」
「それもそうだな!来年もこうなればいいけどな!」
『あっはっは!』
「霊夢。村の真ん中にある霧雨商会って所で読み聞かせやってるんだってさ。暇だったら行ってきたらどう?」
「行ってみたい!それじゃ母ちゃん、行ってきます!」
「…動くのだけは一人前だなぁ…靈夢は」
―――霧雨商会―――
"…村に帰ってきた桃太郎は、金銀を村のみんなに返して幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし"
『わー!!!』
「あー面白かった!後で母ちゃんに話そ!…ん?」
「おーい。読み聞かせ聞かなかったの?」 「…」
「おーい!」 「ぅわああ!」
「どれだけびっくりしてるの…」
「はー…。なんだ?今忙しいんだ。後にしてくれ。」
「読み聞かせ聞かなかったの?」
「あれはもう何回も聞いたからこれ以上聞いても仕様がないぜ」
(…ぜ?)
「だが、あの話は本によって内容が違うから面白いけどな」
「そうなんだ!もしかしてこのお屋敷の子?」
「そうだ。それがどうかしたか?」
「それなら、このお屋敷にある本を読ませてもらってもいいかな?」
(…この子、癖が強いなあ…でも…)
「…勝手にしろ」
「ありがとう!貴方、お名前は?」
「…霧雨魔梨沙だ。」
「わかった!これからよろしくね、魔梨沙!」
「…あぁ、よろしく」
(…こいつ、癖が強いんだが…)
………………
チリリーン
「こんにちは!本を読みに来ました!」
「あら、いらっしゃい」
「いつもお世話になってます、お姉さん」
「あら、私の教えが上手くいったのかしら、
いい男になったんじゃない?」
「そ、そうですね…」
「…なんか聞いたことのある声ね。
女中さんと何の話をしてるのかしら…」
靈夢の勘はいつでも鋭い。
「よお、こーりん」
「こんにちは!魔梨沙。今日も本を読みに来たよ」
「おう、勝手に読んでいけ」「うん」
「…あれ?この間のお姉ちゃん!?」
「ん?……あー!霖之助君!?」
「なんだ、知り合いなのか。
…だとしてもここは本を読む場所だから静かにしてくれよ」
『ごめんなさい…』
「僕、読みたい本があるから行くね。読んだら一緒に帰ろ」
「わかったわ。また後でね」
――――――
「霖之助君が読んでる本、脇から見てたけど凄く難しい本を読んでるのね。何書いてあるのかさっぱり」
「僕も最初は分からなかったよ。ただ、色んな本を読むうちに少しずつ分かってきたんだ。
頭の中で想像しながら読むって感じ」
「へぇ、凄いね。私は楽しいから読んでるだけなんだけど」
「僕も、楽しいから読んでるだけだよ」
「え、そうなんだ!ところで、霖之助くんは何でいつも難しい本を読んでるの?
楽しむだけなら絵本も楽しいよ」
「楽しいっていうのもあるけど、この前お姉ちゃんに見せた道具について色々と調べたくてね」
「ああ!あれね。工作は順調なの?」
「うん!少しずつ出来上がってきてるよ」
「いいじゃない!完成まで楽しみね」
「ただ、これが完成したら渡したい人がいるんだ」
「へぇ、誰に?」
「霧雨商会の魔梨沙に渡したいんだ。さっき一緒にいたあの子だよ」
「あの子に…意外かも」
「そうかな?魔梨沙のおかげでいつも本を読ませてもらってるからね。
この道具は魔梨沙のおかげで出来てる様なものなんだ」
「そっか。いいわね、きっと魔梨沙も喜ぶわよ」
――――――
「じゃあ、僕の家はここから曲がった所だから、またね」
「ええ、またね。霖之助君」
「ただいま」
「靈夢、お帰りなさい。長かったね、読み聞かせ。」
「いや、読み聞かせはすぐに終わったんだけど、そのまま本を読んでたんだ」
「あらら、霧雨商会さんのとこで本を読ませでもらったの!やだ、後でお礼に行かないとね。いやでも、あたしみたいな人が入っていいんだか…」
「そんなにすごいところなの?」
「すごいも何も、この村で一番のお金持ちは霧雨商会だよ」
「え!そんなにすごいところだったんだ!そこの女の子と仲良くなったんだ。魔梨沙っていう子なんだけど」
「あら、魔梨沙ちゃんって霧雨商会の中でも一番お偉いさんの娘さんじゃないか!よくやったよ、靈夢!」
「…母ちゃん…別にお金もらうために友達になったわけじゃないんだけど」
「あらそうなの、ごめんごめん」
霧雨商会は、優れた商才で成り上がった霧雨一族による財閥である。
問屋から始まり、余剰資金を商店などに投資し、
商店の利益によるリターンを得る事で、村の経済を回しながら、自分の富を着実に増やしていった。
融資を受けたい商店は必然的に霧雨商会の傘下に入っていった。
それは自分の無知なところでした…。
今回の作品は、魔梨沙の名前で書いており、違和感があるとは思いますが寛大な気持ちで読んでいただければ幸いです。
雰囲気がよくてかわいかったです
でも後半に行くにつれてセリフだけになっていくのが状況をイメージしづらくて少し寂しかったです
南条さんいつもありがとうございます!アドバイス非常に嬉しいです!