涼しい秋の風がやさしく吹く中、街路樹のヴァーチャル映像が映し出される京都。赤く染まった葉々がひらひらと落ちていき、空気という水の中に溶け込んでいった。
そんなことを横目に見ながら、私は喫茶店の扉を勢いよく開けた。
ほんのりと香るコーヒーと落ち着いた曲調のクラシック音楽が店内を染めていた。それと同時に、奥のほうのテーブルから物凄い視線とオーラを感じた。
私はその視線とオーラの発生源であるテーブルの方へと向かい、
「ごきげんよう、メリー。」
と精一杯の笑顔で挨拶をした。
「1時間37分遅刻。どういうことかしら?」
そう言っているのは、私の友人のマエリベリー・ハーンだ。この名前は日本人の私には言いづらく、いつもメリーと呼んでいる。彼女の眼は結界の境目が見えるらしく、秘封倶楽部の活動にはもってこいの能力だ。そして、怒るときの眼はとてつもなく怖い。
「まあまあメリーさんや、落ち着いて落ち着いて。」
「いっつもいっつも遅刻してきて、罪悪感は無いの! まったく、待たされる身にもなってよ。」
もう少しで怒りのダムが決壊しそうな口調だった。しかしこれは日常茶飯事の光景だ。
そして私は、メリーの怒りがもとに戻るのを待たずに、黒いバックの中からタブレット型パソコンを出し、そこに映し出されている記事を指差した。
「ここなんだけど、ほら。『月面で行方不明者多数』だってさ。」
メリーは合成コーヒーを飲みながら、その記事を読んでいた。
「へー。けど、月面に行けたってことは、結構裕福な人だったのね。」
関心がなさそうな返事をされた。けれど私は、必死に事の重大さを話した。
「いやいや。そういうことじゃなくて、月面で行方不明って事は絶対どこかに月の都があるはずよ!」
「それがどうしたの?月の都はあるわよ。」
メリーは落ち着いてそう言っていたが、私は、えっ。と目を丸くしていた。まさかメリーがそう言うとは思ってもいなかった。
「たしかに政府は月の都のことは隠蔽してると思うけど、私は夢の中の世界で聞いたし見たわ。」
夢の世界。メリーは夢を見ているときには、おそらく別の世界に行ってしまう。しかし、その世界で本当に聞いたのだろうか。半信半疑でメリーの方を見ると、三つ折りにされた新聞があった。
「なにそれ、たしか今の時代に紙媒体の新聞は、資料館とかしか無かったはずだけど。」
「もしかしてメリー、奪ってきたの?」
「いやいや、蓮子じゃあるまいし。夢の中の世界でもらったの。『文々。新聞』?らしいけど、ほら。」
私はメリーから渡されたモノクロの新聞を手に取り、中身を読んだ。その記事の見出しには、「月の都遷都計画失敗」と大きく書かれていた。そして横には、「博麗の巫女らが関与」とも書かれてあった。
私はあまりの展開に驚いた。なんでメリーがこんなもの持っているんだ。そして、これは誰が書いたものだろう。少なくとも人間ではなさそうだけれど。
そう考えていると、メリーは合成コーヒーをコクッと飲み干し、席を立った。
「今夜一緒に行ってみる? 月の都に。」
そんなことを横目に見ながら、私は喫茶店の扉を勢いよく開けた。
ほんのりと香るコーヒーと落ち着いた曲調のクラシック音楽が店内を染めていた。それと同時に、奥のほうのテーブルから物凄い視線とオーラを感じた。
私はその視線とオーラの発生源であるテーブルの方へと向かい、
「ごきげんよう、メリー。」
と精一杯の笑顔で挨拶をした。
「1時間37分遅刻。どういうことかしら?」
そう言っているのは、私の友人のマエリベリー・ハーンだ。この名前は日本人の私には言いづらく、いつもメリーと呼んでいる。彼女の眼は結界の境目が見えるらしく、秘封倶楽部の活動にはもってこいの能力だ。そして、怒るときの眼はとてつもなく怖い。
「まあまあメリーさんや、落ち着いて落ち着いて。」
「いっつもいっつも遅刻してきて、罪悪感は無いの! まったく、待たされる身にもなってよ。」
もう少しで怒りのダムが決壊しそうな口調だった。しかしこれは日常茶飯事の光景だ。
そして私は、メリーの怒りがもとに戻るのを待たずに、黒いバックの中からタブレット型パソコンを出し、そこに映し出されている記事を指差した。
「ここなんだけど、ほら。『月面で行方不明者多数』だってさ。」
メリーは合成コーヒーを飲みながら、その記事を読んでいた。
「へー。けど、月面に行けたってことは、結構裕福な人だったのね。」
関心がなさそうな返事をされた。けれど私は、必死に事の重大さを話した。
「いやいや。そういうことじゃなくて、月面で行方不明って事は絶対どこかに月の都があるはずよ!」
「それがどうしたの?月の都はあるわよ。」
メリーは落ち着いてそう言っていたが、私は、えっ。と目を丸くしていた。まさかメリーがそう言うとは思ってもいなかった。
「たしかに政府は月の都のことは隠蔽してると思うけど、私は夢の中の世界で聞いたし見たわ。」
夢の世界。メリーは夢を見ているときには、おそらく別の世界に行ってしまう。しかし、その世界で本当に聞いたのだろうか。半信半疑でメリーの方を見ると、三つ折りにされた新聞があった。
「なにそれ、たしか今の時代に紙媒体の新聞は、資料館とかしか無かったはずだけど。」
「もしかしてメリー、奪ってきたの?」
「いやいや、蓮子じゃあるまいし。夢の中の世界でもらったの。『文々。新聞』?らしいけど、ほら。」
私はメリーから渡されたモノクロの新聞を手に取り、中身を読んだ。その記事の見出しには、「月の都遷都計画失敗」と大きく書かれていた。そして横には、「博麗の巫女らが関与」とも書かれてあった。
私はあまりの展開に驚いた。なんでメリーがこんなもの持っているんだ。そして、これは誰が書いたものだろう。少なくとも人間ではなさそうだけれど。
そう考えていると、メリーは合成コーヒーをコクッと飲み干し、席を立った。
「今夜一緒に行ってみる? 月の都に。」