彼女は私にとってなんなのだろうか。友達?恋人?
「もうどうでもいいや」
これが私が考えて出した結論だ。私は霊夢を好きだけど、霊夢はきっとそうじゃない。
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しとしとと振り続ける雨の中、私は霊夢のもとへ向かう。何日ぶりだろう、霊夢と話すのは。もうしばらく口を聞いてない。パサパサした髪を1時間かけて整え、服装も準備万端。これで雨が降っていなかったら、告白にちょうどいい日と言えるだろう。はぁ、うまくいけばいいのだが。
「霊夢〜」
霊夢を呼ぶが、返事はない。変わりに睨みつけてくるだけだ。よっぽど私と話したくないんだな、と誰でもわかる状況だった。
(やばい、気まずすぎる......)
「ところでさ、話したい事があるんだけど」
「あとにして」
ものすごい食い気味の返答と、固まったままの彼女の口角。このままではいけない。おはようでもこんにちはでも言わなきゃダメだ。
(考えろ.....どうにかして話すきっかけを....!)
「雨が止んだら、桜の木の下で会おう!きっと霊夢はもっと綺麗だから!」
彼女の表情はやっと変わる。目を見開き、驚く様子を見せる。
「わかった」
「約束だからな!」
「うん」
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「綺麗、か......」
なんでだろう、魔理沙のことなんてもう頭から消えたはずなのに!
「もうやめて!」
照れてる自分が嫌だ。
恥ずかしくて、顔は燃えている。だが、その炎を消すかのように流れる私の涙。こんな複雑に感情が動き回るのは、初めてかもしれない。
あぁ、
どうか雨よ!止まないでくれ!
あんなセリフ、私には向いてない。というか、桜の木の下だろうが家の中だろうが、私の目の前にいる霊夢はいつも綺麗だった。そして、今の私にできる事といえば、告白のセリフを考える事、そして待つ事ぐらいだろう。
はぁ、
いつでも準備はできてるぞ!さあ、今にでも止んでくれ!
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結局昨日からずっと雨だ。今霊夢は何をしているんだろう。窓の外を見ると、薄ピンクの綺麗な桜の花びらがポツッと落ちていた。
「いつかはこの中で告白をするんだ」
私はもう、決心していた。
本当に、もう無理だ。別に魔理沙に対して怒ってる訳ではないが、なんとなく距離を置きたかったんだ。わかってる。確かに私は身勝手だ。その人のことは好きなのに、自分の気分で話すか話さないかを変えるなんて駄目だと思う。でも、でもさ.....
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止んじゃった。まだ心の中は変わらない。私の雨は、まだ止まない。でも、きっと魔理沙が待ってる。私は、怠い身体を持ち上げ、桜の木の下へと向かう。
「やっと来た!」
魔理沙の声だ、目なんて合わせたくない。下を向きながら言う。
「おは...よう」
「元気出せって」
私の頭が、脳を無視して上を向く。魔理沙は私の頭を撫でていた。
「かわいいな」
「綺麗......じゃないの?」
「どーでもいーだろ」
「で?話したい事があるんじゃないの?」
「あぁ、それについては、」
「今は忘れてくれ」
「んっ.......」
理解が追いつかない。今キスしてるのか?魔理沙と?
「ごめんな」
は?なんで謝ってんの?
「魔理沙は悪くないと思うよ?」
「そりゃありがとう」
「でも、ここ最近話さなかったのは事実だろ?」
「だから、謝りたかったんだ。ごめん」
「だから魔理沙は悪くないってば!!」
「うるせえ」
こんな風に抱きしめられたら、どうするのが正解なんだろう?私は魔理沙の胸に沈んだ。いい匂い。どこか懐かしい、桜の匂い。
「私、ずっとここにいたい」
思わず声に出た。
「霊夢」
「なに?」
「好き」
「私も!」
その瞬間、私の心のモヤモヤは消えた。もれなく全部だ。魔理沙はきっと、私にはない力を持ってると思う。もう泣くなんてしない。魔理沙と話さないなんて嫌だと改めて思う。
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窓を開けて外を見た。空は青く、風に飛ばされた薄ピンクの小さな楽園が、私の頬をかすった。
そうだ、魔理沙と出掛けよう!
終わり
話の前後がないので置いてかれた感じはあるんですけど着実に上達してると思いました。
前半のもやもやを吹き飛ばすような後半の勢いがとてもよかったと思います