――1.はじめての夢
どこかわからない、薄暗く、冷たい森の中、月明かりが照らす先に金色の長い髪をした少女が立っていた。
目の前には、木でできた、紅くて大きな鳥居が一基建っていた。その鳥居は、塗装が剥げていたり、朽ちていたりしていた。そしてその下には、苔の生えた参道が続いていた。神の存在が否定された科学世紀では当たり前の光景だけれど、なぜか新鮮な感じがした。
「行かなくちゃ。」
そう心が言っていた。好奇心ではなく、恐怖心でもない。何かが私を引いているようだった。そして、少し重たい脚をゆっくりと動かし、一歩進んだ。
私の靴と石が当たった、コツッという音がした。そしてその直後、あたりが崩れはじめ、私は何もする事が出来ず、勢いよく落ちていった。自分の体が人形のようになり、重力に身を任すしか方法がなかった。
落ちて、
落ちて、
落ち続けて、
闇の中に消えた。
――2.目覚めの夢
「・・ー、・リー。」
「メリー!」
ビクッっと体が震えた。おぼろげな目線の先には、いつもの天井があった。横には蓮子がお盆を持ったまま座っていた。
「大丈夫? 風邪って聞いたけど、凄い量の汗をかいているから。」
「心配してくれるのはありがたいけれど、蓮子。あなた不法侵入よ。それに、病人を無理やり起こさないで、、、。」
というか、どうやって私の部屋に入ったのだろうか。
「大丈夫。ちゃんとお粥をつくったから~。」
はぁ。とため息をついて、温かく白い湯気が出ているお粥を食べた。
今朝の夢はなんだったんのだろうか、いつもの夢とは違う"何か"があった。でも、その"何か"が私には分からなかった。
――3.夢渡り
「あれ、この鳥居は、、、。」
お粥を食べ終わって寝てしまったのか、いつのまにか私はもう一度あの夢を見ていた。でも、あの時の夢と同じではない。鳥居や、苔の生えた参道が続いているのは同じだが、私の周りが闇に包まれていたり、その先で、"宴会"をしているようだった。そこにいる少女たちは、楽しそうな表情を浮かべていた。"夢は、脳が見せる幻想"。そう思わざるをえない社会になる前の人のようだった。
そして、私は経験したことがなかった。科学世紀では、もう見られることの出来ないし見られない。笑顔あふれる宴会でもあり、古典的な宴会を。
スッスッと静かに、素早く歩いていった。一歩一歩確実に、長く苔の生えた参道を歩いて行った。そして、宴会をしている所に近づいた時、
「あれ?」
何かが変なことに気がついた。私は見逃さなかった。パッと見ても分かるような、決定的に違う"何か"を。
「・・・ホログラム?」
苔の生えた参道の奥の宴会には、近未来的な技術で作られた古典的な映像だけがたたずんでいた。科学世紀で見られるような、懐かしい映像を見ながら、私はひとり考え込んでいた。それは、
『この世界もただの"脳が見せる幻想"なのだろうか。(私はどこにいるのか。)』
『あの世界も、都市も、秘封倶楽部も、すべてが基底現実だとしたら、今見ているこの世界は、私一人がいる"ただの夢"でしかないのだろうか。(あの世界は夢なのか。)』
という、世界の在り方を問うような考えだった。
蓮子に言ったら「当たり前でしょ」とか言いそうだけれど、私にとっては"解からない方程式"だった。
私はあの"解からない方程式"について考えた。しかし、悩めば悩むほど、この世界が暗くなり始め、混沌とした色となっていた。
そして、私はこの世界の色が変化していることに初めて気づいた。その正体は、参道の奥で広がりはじめる"結界のスキマ"だった。その"結界のスキマ"は、暗く、冷たい空気を辺りに漂よわせていた。
「い、嫌!」
私は、目に見えない恐怖におびえ、叫んだ。けれど、だれの助けも来なかった。
あの叫びと同時に、針のような風が、横から吹いてきた。
私はとてつもない恐怖が身体中を駆け巡り、鳥居のあるもと来た道を必死に走った。木の葉と風が吹き荒れている。まるで私を帰させないように、だんだんと力強く、鋭くなっていく。
走って、
走って、
走って、
走り続けて、
鳥居を抜けた先に、、、。
――4.こころのゆめ
(わたしは、だれ?)
(ここは、ゆめ?)
(ひふうくらぶはゆめだったの?)
(こうはいした、あのじんじゃはゆめだったの?)
(・・・)
(・・・)
(ゆめって、なに?)
(げんじつって、なに?)
貴方はここにいる。夢と現実の狭間に。そして、夢と現の境界は、貴方が操れる。さあ、幕を閉じなさい。
衰退していく都市の世界に。(幻想の科学世紀に。)
――5.夢はそこに、
パチッと眼が覚めた。目線の先には、いつもの天井があった。その横には私が食べたお粥の器もある。そして窓から明るい光が差し込んできた。
「やっぱり・・・夢?」
重たい身体を起こした。赤い木の葉がヒラヒラと落ちてきたが、その時の私は知らなかった。
どこかわからない、薄暗く、冷たい森の中、月明かりが照らす先に金色の長い髪をした少女が立っていた。
目の前には、木でできた、紅くて大きな鳥居が一基建っていた。その鳥居は、塗装が剥げていたり、朽ちていたりしていた。そしてその下には、苔の生えた参道が続いていた。神の存在が否定された科学世紀では当たり前の光景だけれど、なぜか新鮮な感じがした。
「行かなくちゃ。」
そう心が言っていた。好奇心ではなく、恐怖心でもない。何かが私を引いているようだった。そして、少し重たい脚をゆっくりと動かし、一歩進んだ。
私の靴と石が当たった、コツッという音がした。そしてその直後、あたりが崩れはじめ、私は何もする事が出来ず、勢いよく落ちていった。自分の体が人形のようになり、重力に身を任すしか方法がなかった。
落ちて、
落ちて、
落ち続けて、
闇の中に消えた。
――2.目覚めの夢
「・・ー、・リー。」
「メリー!」
ビクッっと体が震えた。おぼろげな目線の先には、いつもの天井があった。横には蓮子がお盆を持ったまま座っていた。
「大丈夫? 風邪って聞いたけど、凄い量の汗をかいているから。」
「心配してくれるのはありがたいけれど、蓮子。あなた不法侵入よ。それに、病人を無理やり起こさないで、、、。」
というか、どうやって私の部屋に入ったのだろうか。
「大丈夫。ちゃんとお粥をつくったから~。」
はぁ。とため息をついて、温かく白い湯気が出ているお粥を食べた。
今朝の夢はなんだったんのだろうか、いつもの夢とは違う"何か"があった。でも、その"何か"が私には分からなかった。
――3.夢渡り
「あれ、この鳥居は、、、。」
お粥を食べ終わって寝てしまったのか、いつのまにか私はもう一度あの夢を見ていた。でも、あの時の夢と同じではない。鳥居や、苔の生えた参道が続いているのは同じだが、私の周りが闇に包まれていたり、その先で、"宴会"をしているようだった。そこにいる少女たちは、楽しそうな表情を浮かべていた。"夢は、脳が見せる幻想"。そう思わざるをえない社会になる前の人のようだった。
そして、私は経験したことがなかった。科学世紀では、もう見られることの出来ないし見られない。笑顔あふれる宴会でもあり、古典的な宴会を。
スッスッと静かに、素早く歩いていった。一歩一歩確実に、長く苔の生えた参道を歩いて行った。そして、宴会をしている所に近づいた時、
「あれ?」
何かが変なことに気がついた。私は見逃さなかった。パッと見ても分かるような、決定的に違う"何か"を。
「・・・ホログラム?」
苔の生えた参道の奥の宴会には、近未来的な技術で作られた古典的な映像だけがたたずんでいた。科学世紀で見られるような、懐かしい映像を見ながら、私はひとり考え込んでいた。それは、
『この世界もただの"脳が見せる幻想"なのだろうか。(私はどこにいるのか。)』
『あの世界も、都市も、秘封倶楽部も、すべてが基底現実だとしたら、今見ているこの世界は、私一人がいる"ただの夢"でしかないのだろうか。(あの世界は夢なのか。)』
という、世界の在り方を問うような考えだった。
蓮子に言ったら「当たり前でしょ」とか言いそうだけれど、私にとっては"解からない方程式"だった。
私はあの"解からない方程式"について考えた。しかし、悩めば悩むほど、この世界が暗くなり始め、混沌とした色となっていた。
そして、私はこの世界の色が変化していることに初めて気づいた。その正体は、参道の奥で広がりはじめる"結界のスキマ"だった。その"結界のスキマ"は、暗く、冷たい空気を辺りに漂よわせていた。
「い、嫌!」
私は、目に見えない恐怖におびえ、叫んだ。けれど、だれの助けも来なかった。
あの叫びと同時に、針のような風が、横から吹いてきた。
私はとてつもない恐怖が身体中を駆け巡り、鳥居のあるもと来た道を必死に走った。木の葉と風が吹き荒れている。まるで私を帰させないように、だんだんと力強く、鋭くなっていく。
走って、
走って、
走って、
走り続けて、
鳥居を抜けた先に、、、。
――4.こころのゆめ
(わたしは、だれ?)
(ここは、ゆめ?)
(ひふうくらぶはゆめだったの?)
(こうはいした、あのじんじゃはゆめだったの?)
(・・・)
(・・・)
(ゆめって、なに?)
(げんじつって、なに?)
貴方はここにいる。夢と現実の狭間に。そして、夢と現の境界は、貴方が操れる。さあ、幕を閉じなさい。
衰退していく都市の世界に。(幻想の科学世紀に。)
――5.夢はそこに、
パチッと眼が覚めた。目線の先には、いつもの天井があった。その横には私が食べたお粥の器もある。そして窓から明るい光が差し込んできた。
「やっぱり・・・夢?」
重たい身体を起こした。赤い木の葉がヒラヒラと落ちてきたが、その時の私は知らなかった。
不気味な雰囲気がよかったです
テーマが徹底されていたように感じました