今より何百年も前。
豪華な屋敷の綺麗な食堂に両親と座っている次期当主であるフランドールが口を開く。
「ねえお母様、お父様。どうしてお姉様は一緒にお食事しないの?」
フランドールの視線の先には部屋のすみにある汚い小さなテーブルにつき一人で黙々と食事をとっている姉レミリアの姿があった。
両親はフランドールの質問に優しい笑みを浮かべるといった。
「それはねあいつは他人だからだ。ほら見てみなさいあの穢らわしい羽を。」
「そうよフラン。あの子はあんな下等種族である蝙蝠の翼を持っているのよ?一緒にいたくないでしょ?」
「そうなの?フランはお姉様の羽好きだけどなぁ」
「あらあら....フランは優しい子ね。」
フランの答えに満足げに呟く母。
父も優しく笑ったがレミリアには絶対零度の視線を向けながらいった。
「フランは優しいな。だがあんなやつを構うな。よく自分や母様たちの羽を見ろ。あんなのより断然きれいだろう?お前のその綺麗な宝石の羽こそが貴族であるスカーレット家の証。お前も当然私達のようになれるだろう。」
「うん!フランお母様たちみたいになるんだ!」
「いい子ねフラン。」
ぱあっと顔を輝かせたフランを両親はいとおしくてたまらないとでも言うように眺めていた。
全ての会話が聞こえていたレミリアはただ目に涙を浮かべることしかできなかった。
先代スカーレット家の当主夫妻には子供ができず早くほしいと思っていた。
そんなある日ついに待ちわびていた子供が産まれたが、その子が生まれたとたん部屋が静まり返った。
吸血鬼の世界では美しい宝石の羽を持つものこそが貴族とされていた。
そんな貴族のなかでも上級貴族であるスカーレット家に第一子として生まれてきたのは黒い蝙蝠の翼を持つ少女だった。
両親は絶望した。隔世遺伝というらしくまれに生まれることがあるらしい。
蝙蝠の翼は吸血鬼の世界でもっとも嫌われている。
そんな子供があろうことかスカーレット家に生まれてしまったのだった。
名前こそつけたがこんな恥さらしとは一緒に生活できないと考えた両親はもう一人子供を作ることとした。
そして生まれてきた二人目は望んだ通り宝石の羽を持つ美しい女の子だった。
両親はよろこびその子を大事に育てた。
もはや一人目は生まれていないかのように。
レミリアはまだ聞こえる両親と妹の声に耳をふさいだ。
フランドールが生まれてからレミリアの生活は一変した。
それまで決して幸せとは言えないが一応世話はされていた。が、フランドールが生まれたとたんにそれはガラッと変わった。
両親もメイドもみんなフランドールに付きっきりだった。
フランドールは暖かい両親の部屋で一緒に眠れる。レミリアは寝具さえ与えられてない冷たい地下室の床に寝転ぶしかない。
フランドールは可愛いおもちゃやドレスぬいぐるみなどが定期的に与えられる。レミリアは洗うことも許されていない汚れた質素なワンピース以外はなにももらえない。
フランドールはいつでも両親やメイドたちに囲まれる。レミリアにはメイドでさえ近づこうとしない。
フランドールは毎日豪華な食事を取れる。レミリアはみんなの残り物をほんの少しもらえるだけ。
考えるだけでレミリアは気が狂いそうだった。
何度も自分の羽を破り宝石をつけようとしたが怖くてできなかった。
フランドールのまわりにほとんど同い年の子がいないので必然的にレミリアが遊んであげるのだがそのときもひどいものだった。
何をしても怒られるのはレミリアで。
そと遊びの最中に雨に降られたときフランドールだけ助けられたこともあった。
フランドールはまわりに私しか遊び相手がいなかったからか『お姉様』といって慕ってくれたがレミリアはそんな妹のことが大嫌いだった。
フランドールが産まれなければ幸せとはいかないまでもこんなに惨めな生活になることはなかった。
そう考えると更に憎しみがあふれてくる。
だがそんな日々はフランドールが能力を発現させたときに終わりを迎えた。
両親は暴走した愛娘により殺された。
そのまま能力を制御できなかったフランドールは地下に入れられた。
両親が死んだので当主を継がなくてはいけないが継ぐはずだったフランドールはそんな状況じゃないのでかわりにレミリアが継ぐこととなった。
ここから立場は逆転したのだ。
みんなから愛され次期当主として華々しい人生を歩むはずだったフランドールと誰からも疎まれ隅っこで惨めにいきる人生を歩むはずだったレミリア。
それが今は真逆になったのだった。
「とまあこんなところね。」
パチュリーは咲夜を手当てする手を止めず淡々と語り終えた。
「はあ..そんなことがあったのですか....」
呆けた声で返す咲夜の片目に巻かれた包帯に滲む血が痛々しい。
先程お茶会の最中に咲夜は主にある質問をしたのだ。
もちろん他意はない。
だがその質問を聞いた主は態度が急変した。
いつもなら楽しそうで穏やかな性格のはずの主はまるで敵を見るような瞳で咲夜を見つめ無言で片手を振り上げたのだ。
咲夜が気づくともう主は消えていて自分の怪我をてきぱきと治すパチュリーのみがその場にいた。
黙々と自分の手当てをするパチュリーに何がいけなかったのか聞いたところさすがに伝えないのは可哀想だとでも思ったのか淡々と話始めたのだ。
なぜレミリアにあのしつもんをするのがいけないのか咲夜はやっとわかった気がした。
「さあじっとしていて包帯取り替えてあげるから。....それからわかったでしょ。二度とレミィにあの質問やこの話に関する質問をするんじゃないわよ。次はあなた命とられるからね。」
それだけ言うとパチュリーは咲夜の手当てを続けるのだった。
豪華な屋敷の綺麗な食堂に両親と座っている次期当主であるフランドールが口を開く。
「ねえお母様、お父様。どうしてお姉様は一緒にお食事しないの?」
フランドールの視線の先には部屋のすみにある汚い小さなテーブルにつき一人で黙々と食事をとっている姉レミリアの姿があった。
両親はフランドールの質問に優しい笑みを浮かべるといった。
「それはねあいつは他人だからだ。ほら見てみなさいあの穢らわしい羽を。」
「そうよフラン。あの子はあんな下等種族である蝙蝠の翼を持っているのよ?一緒にいたくないでしょ?」
「そうなの?フランはお姉様の羽好きだけどなぁ」
「あらあら....フランは優しい子ね。」
フランの答えに満足げに呟く母。
父も優しく笑ったがレミリアには絶対零度の視線を向けながらいった。
「フランは優しいな。だがあんなやつを構うな。よく自分や母様たちの羽を見ろ。あんなのより断然きれいだろう?お前のその綺麗な宝石の羽こそが貴族であるスカーレット家の証。お前も当然私達のようになれるだろう。」
「うん!フランお母様たちみたいになるんだ!」
「いい子ねフラン。」
ぱあっと顔を輝かせたフランを両親はいとおしくてたまらないとでも言うように眺めていた。
全ての会話が聞こえていたレミリアはただ目に涙を浮かべることしかできなかった。
先代スカーレット家の当主夫妻には子供ができず早くほしいと思っていた。
そんなある日ついに待ちわびていた子供が産まれたが、その子が生まれたとたん部屋が静まり返った。
吸血鬼の世界では美しい宝石の羽を持つものこそが貴族とされていた。
そんな貴族のなかでも上級貴族であるスカーレット家に第一子として生まれてきたのは黒い蝙蝠の翼を持つ少女だった。
両親は絶望した。隔世遺伝というらしくまれに生まれることがあるらしい。
蝙蝠の翼は吸血鬼の世界でもっとも嫌われている。
そんな子供があろうことかスカーレット家に生まれてしまったのだった。
名前こそつけたがこんな恥さらしとは一緒に生活できないと考えた両親はもう一人子供を作ることとした。
そして生まれてきた二人目は望んだ通り宝石の羽を持つ美しい女の子だった。
両親はよろこびその子を大事に育てた。
もはや一人目は生まれていないかのように。
レミリアはまだ聞こえる両親と妹の声に耳をふさいだ。
フランドールが生まれてからレミリアの生活は一変した。
それまで決して幸せとは言えないが一応世話はされていた。が、フランドールが生まれたとたんにそれはガラッと変わった。
両親もメイドもみんなフランドールに付きっきりだった。
フランドールは暖かい両親の部屋で一緒に眠れる。レミリアは寝具さえ与えられてない冷たい地下室の床に寝転ぶしかない。
フランドールは可愛いおもちゃやドレスぬいぐるみなどが定期的に与えられる。レミリアは洗うことも許されていない汚れた質素なワンピース以外はなにももらえない。
フランドールはいつでも両親やメイドたちに囲まれる。レミリアにはメイドでさえ近づこうとしない。
フランドールは毎日豪華な食事を取れる。レミリアはみんなの残り物をほんの少しもらえるだけ。
考えるだけでレミリアは気が狂いそうだった。
何度も自分の羽を破り宝石をつけようとしたが怖くてできなかった。
フランドールのまわりにほとんど同い年の子がいないので必然的にレミリアが遊んであげるのだがそのときもひどいものだった。
何をしても怒られるのはレミリアで。
そと遊びの最中に雨に降られたときフランドールだけ助けられたこともあった。
フランドールはまわりに私しか遊び相手がいなかったからか『お姉様』といって慕ってくれたがレミリアはそんな妹のことが大嫌いだった。
フランドールが産まれなければ幸せとはいかないまでもこんなに惨めな生活になることはなかった。
そう考えると更に憎しみがあふれてくる。
だがそんな日々はフランドールが能力を発現させたときに終わりを迎えた。
両親は暴走した愛娘により殺された。
そのまま能力を制御できなかったフランドールは地下に入れられた。
両親が死んだので当主を継がなくてはいけないが継ぐはずだったフランドールはそんな状況じゃないのでかわりにレミリアが継ぐこととなった。
ここから立場は逆転したのだ。
みんなから愛され次期当主として華々しい人生を歩むはずだったフランドールと誰からも疎まれ隅っこで惨めにいきる人生を歩むはずだったレミリア。
それが今は真逆になったのだった。
「とまあこんなところね。」
パチュリーは咲夜を手当てする手を止めず淡々と語り終えた。
「はあ..そんなことがあったのですか....」
呆けた声で返す咲夜の片目に巻かれた包帯に滲む血が痛々しい。
先程お茶会の最中に咲夜は主にある質問をしたのだ。
もちろん他意はない。
だがその質問を聞いた主は態度が急変した。
いつもなら楽しそうで穏やかな性格のはずの主はまるで敵を見るような瞳で咲夜を見つめ無言で片手を振り上げたのだ。
咲夜が気づくともう主は消えていて自分の怪我をてきぱきと治すパチュリーのみがその場にいた。
黙々と自分の手当てをするパチュリーに何がいけなかったのか聞いたところさすがに伝えないのは可哀想だとでも思ったのか淡々と話始めたのだ。
なぜレミリアにあのしつもんをするのがいけないのか咲夜はやっとわかった気がした。
「さあじっとしていて包帯取り替えてあげるから。....それからわかったでしょ。二度とレミィにあの質問やこの話に関する質問をするんじゃないわよ。次はあなた命とられるからね。」
それだけ言うとパチュリーは咲夜の手当てを続けるのだった。
もっと掘り下げて膨らませたら長編一本になるくらいの話だと思います