梅雨の陰鬱な雰囲気もピークを過ぎ、久々に雲一つない晴れた一日。日が沈み、そろそろ少し肌寒いとも感じる風が吹き始めガラスを鳴らす頃、私は蓮子の家に誘われ、次の秘封倶楽部の活動内容を考えていた。
しばらくして、調査先もある程度見当がついてきた当たりで、蓮子がお酒をもってきた。酒を飲まずんば女子大生であらず!という謎の超理論に押し切られ、私たちはあれよあれよという間にお酒を開けていった。久々に一緒にお酒を飲むということもあって、互いにお酒も話もどんどん進んでいった。
テーブルに缶が乗らなくなり互いの話題も尽き始めたあたりで、ふと窓の外から空を見た。夜空には美しい月が煌々と輝き、夜の世界を照らしている。
私が窓の外を眺めているのに気付いたのか、既に結構酔っている蓮子も外の月を見上げた。
「月が綺麗ですね、メリーさん?」
外の月を見て蓮子が私に言った。今日は久々の晴れの満月。有名な口説き文句を言うには申し分ないタイミングだと蓮子は思ったのだろう。
「あら、口説いてるの蓮子」
「...別に」
少し照れて顔を背け、チューハイの缶を煽る蓮子を見て笑みがこぼれる。
「にしても、月ってのは不思議よね。人を情緒的にさせる魔法のような何かを秘めているような気がするわ」
多くの人が月に例え、月に詠み、月に詠った。なぜ天に輝く存在に人々はそれほどまで魅了され情緒的になれたのだろう、と。
「昔はどれだけ手を伸ばしても届かなかったからかしらね」
ふと、私の心を見透かしたかのように蓮子が言った。
「決して届かなかったからこそ、人は憧れ、恋焦がれて、求めたのよ」
今なんか学生のお小遣いで月なんか遊びにいけちゃうもんね、と付け加えた。
時代が変わり、夢物語と言われていた月面旅行もとうの昔に実用化され、オーソドックスな旅行先になっている。多くの人が当たり前のように月へ行き、住み、遊べる。想像もできなかったような世界が今では普通で当たり前の世の中になったのだ。
「それでも身近にあって知っていると思っている存在ほど、本当は遠くにあって、決して分からないものよね」
空になった缶を見つめながら蓮子は続ける。
「月っていうものは、その美しさに酔心し、手を伸ばしても最後には零れ落ちていく」
まるで叶わない恋みたいなものね。寂しい目をしながらそうつぶやいた。
机に突っ伏して寝ている蓮子に毛布を掛けた。6月も後半とはいえ、お酒を飲んだ後では体が冷えてしまうかもしれない。散らかった空き缶をキッチンにまとめて、椅子に座り直し一息ついた。外ではまだ月が世界を照らしている。
ふと、大昔に月と酒を呑み、月を掴み、月に溺れていった詩人の話を思い出した。
「月と酒を呑む...ね」
そうつぶやきながら、目の前で寝ている相方の頭を少し撫でてみる。少しぼさついているけどしなやかできれいな髪が手に感じ取れる。
「こんなに近くにいて一緒に遊んで呑んで、手を伸ばせば届くのにね...」
私は蓮子と出会い、いろいろな体験をした。時には無茶もしたし、うんざりしたこともあった。それでも蓮子はいつでも私を引っ張ってくれた。
「私が月なら、貴女は太陽なのよ」
蓮子、貴女は私の世界に光をくれた。この目に光を点してくれた。
それでも月は太陽に手が届かない、遠い遠い存在。それでも私も貴女を求め続ける。
「溺れてるのは蓮子、貴女だけじゃないのよ」
だって、私のことをずっと照らしてくれる太陽だもの。
しばらくして、調査先もある程度見当がついてきた当たりで、蓮子がお酒をもってきた。酒を飲まずんば女子大生であらず!という謎の超理論に押し切られ、私たちはあれよあれよという間にお酒を開けていった。久々に一緒にお酒を飲むということもあって、互いにお酒も話もどんどん進んでいった。
テーブルに缶が乗らなくなり互いの話題も尽き始めたあたりで、ふと窓の外から空を見た。夜空には美しい月が煌々と輝き、夜の世界を照らしている。
私が窓の外を眺めているのに気付いたのか、既に結構酔っている蓮子も外の月を見上げた。
「月が綺麗ですね、メリーさん?」
外の月を見て蓮子が私に言った。今日は久々の晴れの満月。有名な口説き文句を言うには申し分ないタイミングだと蓮子は思ったのだろう。
「あら、口説いてるの蓮子」
「...別に」
少し照れて顔を背け、チューハイの缶を煽る蓮子を見て笑みがこぼれる。
「にしても、月ってのは不思議よね。人を情緒的にさせる魔法のような何かを秘めているような気がするわ」
多くの人が月に例え、月に詠み、月に詠った。なぜ天に輝く存在に人々はそれほどまで魅了され情緒的になれたのだろう、と。
「昔はどれだけ手を伸ばしても届かなかったからかしらね」
ふと、私の心を見透かしたかのように蓮子が言った。
「決して届かなかったからこそ、人は憧れ、恋焦がれて、求めたのよ」
今なんか学生のお小遣いで月なんか遊びにいけちゃうもんね、と付け加えた。
時代が変わり、夢物語と言われていた月面旅行もとうの昔に実用化され、オーソドックスな旅行先になっている。多くの人が当たり前のように月へ行き、住み、遊べる。想像もできなかったような世界が今では普通で当たり前の世の中になったのだ。
「それでも身近にあって知っていると思っている存在ほど、本当は遠くにあって、決して分からないものよね」
空になった缶を見つめながら蓮子は続ける。
「月っていうものは、その美しさに酔心し、手を伸ばしても最後には零れ落ちていく」
まるで叶わない恋みたいなものね。寂しい目をしながらそうつぶやいた。
机に突っ伏して寝ている蓮子に毛布を掛けた。6月も後半とはいえ、お酒を飲んだ後では体が冷えてしまうかもしれない。散らかった空き缶をキッチンにまとめて、椅子に座り直し一息ついた。外ではまだ月が世界を照らしている。
ふと、大昔に月と酒を呑み、月を掴み、月に溺れていった詩人の話を思い出した。
「月と酒を呑む...ね」
そうつぶやきながら、目の前で寝ている相方の頭を少し撫でてみる。少しぼさついているけどしなやかできれいな髪が手に感じ取れる。
「こんなに近くにいて一緒に遊んで呑んで、手を伸ばせば届くのにね...」
私は蓮子と出会い、いろいろな体験をした。時には無茶もしたし、うんざりしたこともあった。それでも蓮子はいつでも私を引っ張ってくれた。
「私が月なら、貴女は太陽なのよ」
蓮子、貴女は私の世界に光をくれた。この目に光を点してくれた。
それでも月は太陽に手が届かない、遠い遠い存在。それでも私も貴女を求め続ける。
「溺れてるのは蓮子、貴女だけじゃないのよ」
だって、私のことをずっと照らしてくれる太陽だもの。
いい感じに酔っぱらっている二人がかわいらしかったです
綺麗な雰囲気で好きです