「あら....これは..」
ある日紅魔館のメイド長である咲夜は倉庫を掃除していた。
紅魔館には倉庫がいくつもあり大体は貴重な工芸品などがしまってあるそうだがレミリアに言わせれば『ただのがらくた』らしい。
その倉庫のひとつを掃除している途中で咲夜の目を惹いたものがあった。
「これは..お嬢様..かしら?」
思わず手に取ったのは古びたひとつの肖像画だった。
布にくるまれていたが気になってはずすと出てきたのだった。
「にしても随分..」
描かれているのはまごうことなきレミリアだったが、少し咲夜が知っているレミリアとは違う気がした。
「髪も長いし、背は高いし..でもお嬢様よね。」
咲夜は首をかしげる。
描かれているレミリアは笑みを浮かべていた。
「気になるなぁ..」
珍しく掃除を途中でストップした咲夜は肖像画を観察する。
古いものらしくサインが書いてあるがかすれて読めない。
しかし肖像画の後ろにかかれている部分は何とか読み取ることができた。
そこには、『美しい紅い月の女王様へ』とかかれていた。
「紅い月..ってことはやっぱりお嬢様かしら?でもなぁ..」
肖像画を片手に座り込んでいると不意に呆れたような声が聞こえた。
「....何をしてるのよ咲夜。」
「ひょえ!」
驚いた咲夜が振り替えると眉を潜めたレミリアがたっていた。
「も....申し訳ありませんお嬢様!ちょっと気の迷いで....!」
あわてて弁明するがレミリアは全く聞いておらずその紅い瞳は咲夜の持っている肖像画に向けられていた。
「それ....どこで..」
「いえそのこれは..掃除をしてたら出てきまして..あの..」
レミリアはなぜか驚きと寂しさが混ざったような顔で肖像画を見つめていた。
咲夜は咎められるかと思ったがレミリアはなにも言わず肖像画を手に取った。
「あの..その描かれている方はお嬢様ですよね?」
あまりにも見つめるレミリアにおずおずと尋ねる咲夜。
その言葉にはっと我に帰ったらしいレミリアは首を降った。
「いえ。私じゃないわよ。」
そういうとレミリアは肖像画を抱えたまま手短なデスクの上に座り込む。
そして「これはね私たちのお母様。」といった。
咲夜はその言葉になぜか納得する。
確かにレミリアにしては大人すぎるからだ。
「その..お嬢様のお母様なんですか?」
そっと尋ねるとレミリアは少しうつむいたあと話始めた。
「ええ。その吸血鬼は私たちのお母様。名前はセレーネ・スカーレットって言うのよ。名前の由来は生まれたときからまるで女神セレーネのように美しかったからだそうだけどよく知らない。お母様は伯爵家の生まれで公爵家であるお父様に一目惚れされてスカーレット家に嫁いできたそうよ。旧姓はわからない。暫くして私が生まれたんだけど..」
レミリアはそこで言葉を切ると悲しそうに笑って呟いた。
「あまりお母様らしくはなかったかな..」
「はあ..お母様らしくなかった?」
レミリアは咲夜のおうむ返しのような言葉に軽く頷くと続きを話始めた。
「まあ別に虐められてたとかじゃないんだけど..なんというか放任主義って言うの?ああ言うの。物心ついたときから私を育てていたのはほとんどメイドや家庭教師で..お母様と遊んだ記憶もなければ可愛がられた記憶もないわ。フランが生まれてからもそうね。お母様はもちろんお父様もあまり私たちを構わなかったからフランは私が育てたようなものよ。..でも嫌われていた訳じゃないと思う。玩具をくれることもあったし庭につれてかれることもあったわ。でもやっぱり....お母様というにはほど遠いというか..」
うーんと腕を組むレミリアに咲夜はそっと聞く。
「お嬢様はお母様がお嫌いでしたか?」
レミリアは少しきょとんとすると困り顔で返す。
「うーん..嫌いなわけでもないけど好きでもなかったかな。私ってほら小さい頃から冷めてたの。だからあんまり両親になにか思ったこともないわね。こんなものなんだな親ってくらいだったわね。」
「....そうですか..あのこの肖像画はなんでしょうか?少し気になるんですが..」
咲夜はおずおずと尋ねる。
レミリアはぱちぱちと目を瞬かせると悲しげな表情で呟いた。
「肖像画についてかぁ..それが完成したのはお母様がなくなる二日前..くらいかな。」
「え!そうなんですか?」
「うん..私たちがある程度大きくなると吸血鬼の貴族家庭ではお抱えの絵師に頼んで肖像画を書いてもらう習慣があったの。うちも例外じゃなくって沢山書いてもらったわ。庭園でとかお部屋でとか..正直きついお姫さまドレスを着なきゃいけないしあんまり好きじゃなかったけど。..私たちの肖像画は探せば出てくるからまたきになるなら探せばいいと思うけど..お母様たちも一緒でしょっちゅう書いてもらってたわね。でもまあお母様が死んだのって人間たちが館に攻めてきたからなんだけどさそのときにほとんど燃えちゃって、お母様の肖像画はそれしか残ってないのよ。」
「そうなんですか..ですがせっかくの唯一のお母様の肖像画なのに飾らなくてよかったのですか?」
咲夜のといにレミリアは勢いよく立ち上がると冷たい声で告げた。
「だからいってるでしょう。私は別にお母様のことが好きな訳じゃないの。だから飾る必要なんてないわ。」
そういい捨てるとレミリアは倉庫を出ていった。
咲夜は無言で肖像画を片付ける。
出ていくときにレミリアが涙を流したことに気づいていたから。
きっと口ではああいっていても母親のことは好きだったのだろう。
しかし好きじゃないと言うのも本音だと思う。
レミリアは素直になれない性格ゆえにそういう風にしかいえないのかもしれない。
いくら好きじゃないといってもいきなり人間たちに母親を奪われてきっと傷ついただろう。
肖像画を飾らずに倉庫に押し込んだのは多分..
そこで考察を終えると咲夜は掃除を終わらせ倉庫を出て鍵を閉めた。
それ以上相手の心理を想像するのは無粋だと考えたからだ。
咲夜はもう二度とあの肖像画を見ようとすることはないだろう。
そしてレミリアも二度とこの話しはしないだろう。
誰にでも知られたくない過去はあるものなのだから。
ある日紅魔館のメイド長である咲夜は倉庫を掃除していた。
紅魔館には倉庫がいくつもあり大体は貴重な工芸品などがしまってあるそうだがレミリアに言わせれば『ただのがらくた』らしい。
その倉庫のひとつを掃除している途中で咲夜の目を惹いたものがあった。
「これは..お嬢様..かしら?」
思わず手に取ったのは古びたひとつの肖像画だった。
布にくるまれていたが気になってはずすと出てきたのだった。
「にしても随分..」
描かれているのはまごうことなきレミリアだったが、少し咲夜が知っているレミリアとは違う気がした。
「髪も長いし、背は高いし..でもお嬢様よね。」
咲夜は首をかしげる。
描かれているレミリアは笑みを浮かべていた。
「気になるなぁ..」
珍しく掃除を途中でストップした咲夜は肖像画を観察する。
古いものらしくサインが書いてあるがかすれて読めない。
しかし肖像画の後ろにかかれている部分は何とか読み取ることができた。
そこには、『美しい紅い月の女王様へ』とかかれていた。
「紅い月..ってことはやっぱりお嬢様かしら?でもなぁ..」
肖像画を片手に座り込んでいると不意に呆れたような声が聞こえた。
「....何をしてるのよ咲夜。」
「ひょえ!」
驚いた咲夜が振り替えると眉を潜めたレミリアがたっていた。
「も....申し訳ありませんお嬢様!ちょっと気の迷いで....!」
あわてて弁明するがレミリアは全く聞いておらずその紅い瞳は咲夜の持っている肖像画に向けられていた。
「それ....どこで..」
「いえそのこれは..掃除をしてたら出てきまして..あの..」
レミリアはなぜか驚きと寂しさが混ざったような顔で肖像画を見つめていた。
咲夜は咎められるかと思ったがレミリアはなにも言わず肖像画を手に取った。
「あの..その描かれている方はお嬢様ですよね?」
あまりにも見つめるレミリアにおずおずと尋ねる咲夜。
その言葉にはっと我に帰ったらしいレミリアは首を降った。
「いえ。私じゃないわよ。」
そういうとレミリアは肖像画を抱えたまま手短なデスクの上に座り込む。
そして「これはね私たちのお母様。」といった。
咲夜はその言葉になぜか納得する。
確かにレミリアにしては大人すぎるからだ。
「その..お嬢様のお母様なんですか?」
そっと尋ねるとレミリアは少しうつむいたあと話始めた。
「ええ。その吸血鬼は私たちのお母様。名前はセレーネ・スカーレットって言うのよ。名前の由来は生まれたときからまるで女神セレーネのように美しかったからだそうだけどよく知らない。お母様は伯爵家の生まれで公爵家であるお父様に一目惚れされてスカーレット家に嫁いできたそうよ。旧姓はわからない。暫くして私が生まれたんだけど..」
レミリアはそこで言葉を切ると悲しそうに笑って呟いた。
「あまりお母様らしくはなかったかな..」
「はあ..お母様らしくなかった?」
レミリアは咲夜のおうむ返しのような言葉に軽く頷くと続きを話始めた。
「まあ別に虐められてたとかじゃないんだけど..なんというか放任主義って言うの?ああ言うの。物心ついたときから私を育てていたのはほとんどメイドや家庭教師で..お母様と遊んだ記憶もなければ可愛がられた記憶もないわ。フランが生まれてからもそうね。お母様はもちろんお父様もあまり私たちを構わなかったからフランは私が育てたようなものよ。..でも嫌われていた訳じゃないと思う。玩具をくれることもあったし庭につれてかれることもあったわ。でもやっぱり....お母様というにはほど遠いというか..」
うーんと腕を組むレミリアに咲夜はそっと聞く。
「お嬢様はお母様がお嫌いでしたか?」
レミリアは少しきょとんとすると困り顔で返す。
「うーん..嫌いなわけでもないけど好きでもなかったかな。私ってほら小さい頃から冷めてたの。だからあんまり両親になにか思ったこともないわね。こんなものなんだな親ってくらいだったわね。」
「....そうですか..あのこの肖像画はなんでしょうか?少し気になるんですが..」
咲夜はおずおずと尋ねる。
レミリアはぱちぱちと目を瞬かせると悲しげな表情で呟いた。
「肖像画についてかぁ..それが完成したのはお母様がなくなる二日前..くらいかな。」
「え!そうなんですか?」
「うん..私たちがある程度大きくなると吸血鬼の貴族家庭ではお抱えの絵師に頼んで肖像画を書いてもらう習慣があったの。うちも例外じゃなくって沢山書いてもらったわ。庭園でとかお部屋でとか..正直きついお姫さまドレスを着なきゃいけないしあんまり好きじゃなかったけど。..私たちの肖像画は探せば出てくるからまたきになるなら探せばいいと思うけど..お母様たちも一緒でしょっちゅう書いてもらってたわね。でもまあお母様が死んだのって人間たちが館に攻めてきたからなんだけどさそのときにほとんど燃えちゃって、お母様の肖像画はそれしか残ってないのよ。」
「そうなんですか..ですがせっかくの唯一のお母様の肖像画なのに飾らなくてよかったのですか?」
咲夜のといにレミリアは勢いよく立ち上がると冷たい声で告げた。
「だからいってるでしょう。私は別にお母様のことが好きな訳じゃないの。だから飾る必要なんてないわ。」
そういい捨てるとレミリアは倉庫を出ていった。
咲夜は無言で肖像画を片付ける。
出ていくときにレミリアが涙を流したことに気づいていたから。
きっと口ではああいっていても母親のことは好きだったのだろう。
しかし好きじゃないと言うのも本音だと思う。
レミリアは素直になれない性格ゆえにそういう風にしかいえないのかもしれない。
いくら好きじゃないといってもいきなり人間たちに母親を奪われてきっと傷ついただろう。
肖像画を飾らずに倉庫に押し込んだのは多分..
そこで考察を終えると咲夜は掃除を終わらせ倉庫を出て鍵を閉めた。
それ以上相手の心理を想像するのは無粋だと考えたからだ。
咲夜はもう二度とあの肖像画を見ようとすることはないだろう。
そしてレミリアも二度とこの話しはしないだろう。
誰にでも知られたくない過去はあるものなのだから。