「ん…あれは、美鈴じゃないか。なんでアイツ、屋台なんか引いてるんだろ。」
-----------------------------
ぶるぶる。あぁ…さっむいなぁ。
なんでこんな日に外に立ってなきゃいけないんだろ。
風も吹いてきたし、雪でも降られちゃたまんないよぉ。
それにしても今日は特に冷えるなぁ。
里じゃ人間の間でヘンテコな疫病が流行ってるらしいし…。
外になるべく出ないようにしてるんだってから、私も館の内勤にしてくれって言ったのに。
『どうせ人間じゃないんだから風邪なんか罹らないでしょ』だって。
ひどいや、咲夜さん。妖怪差別だ。
あぁ…だんだんお腹も空いてきたなぁ。
寒いと体力使っちゃうんだよねぇ。
外勤は体力勝負なんだからさぁ。夕食、私の分はもっと増やしてくれてもいいのに。
今日のパスタは美味しかったなぁ。おかわりしたかったなぁ。
居候のパチュリーさん、半分しか食べてないからもらおうと思ったのに。
『どうせ外で突っ立ってるだけなんだから、いやしい真似しないの』だって。
ひどくないか、咲夜さん。門番差別だ。
…なんだか眠くなってきた。
今何時くらいだろ…九時か…交代までまだまだ長いなぁ。
ちょっとぐらい…居眠りしちゃおうか……ちょっと……
………
や!いかんいかん。
ただでさえ昼間も寝てるんだから夜中も寝てたら何言われるかわかったもんじゃない。
交代要員の増員申請も門前払いだったもんなぁ。
『どうせ美鈴なんだから大丈夫でしょ』だって。
…ひどすぎないか、咲夜さん。美鈴差別だ。
最近の人間は妖怪を怖がらないからなぁ。困ったもんだ。
あぁ、なんだかぼんやりした光が近づいてくるぞ。
いよいよ夢の世界に入っちゃったのかなぁ。
あれ、なんだか食べ物の匂いもしてきたぞ。
そっかぁ。お腹が空いてると夢でも匂いがわかるんだなぁ。
これはきっとご馳走の夢に違いない。
もう門番の仕事なんかどうでもいいや。おやすみなさーい…
…ん?違う。ホントに何かが向かってきてるぞ…。
提灯だ。あ!屋台だ!!
白い湯気がもくもく出てる。
そうだ、あれはみすちーの屋台に違いない。
普段は紅魔館までこないのに珍しいなぁ。
でもちょうどいいや!お腹も空いてたし、なんかご馳走になろう。
お金はないけど、妖怪のよしみでツケにしてもらおっと。
おおぃ、おおぃ。みすちーさーん!
……あれ?
なんか屋台引っ張ってる人、ゴツくないか。
みすちーは、もっとこう…ちっちゃいよなぁ。
あ、羽も生えてない。髪も生えてない。髭が生えてる。
男だ。オジサンだ。たぶん人間だ。
私に気づいてコッチに近づいてくる。
まいったな…。みすちーだと思ったから呼び止めたのに。
人間相手だとツケが効くのかなぁ。
のぼりが見えてきた。『そば』かぁ。蕎麦屋の屋台。
あったかいかけそば。ちゅるちゅるっと手繰って、あっついおツユもグビリ。
…ごくっ。食べたいな。食べちゃうか。どうしようかな。
お金ないかな。いくらか持ってたかな。
ポケットに十円玉があったぞ。ひぃ、ふぅ、みぃ…十五枚。
足りるかな…。店主さんと仲良くなればいいや。そしたらツケにしてもらえるかな。
あ、そうだ。みすちーの屋台だと蕎麦が一杯百六十円くらいだったから…。
ちょうど九時で十五枚。
こないだ魔理沙に聞いた落語?みたいに誤魔化せるかも!
咲夜さんに怒られるかな。まぁ、食べちゃえばいいや。
いいや、食べちゃえ食べちゃえ。
あのーお蕎麦さーん!こっちでーす!
-----------------------------
うわっ!メニュー放りなげてきた。
なにこのオジサン。ムスッとしてるし頑固親父タイプなのかな…。
まーいいや。どれどれ…なににしよっかな。
あ、かけとざるしかない。ならメニューいらなくない?口で言えばよくない?
あー、かけ一杯お願いします。
『へいよ』だって。話弾まなそうな人だな…。でも仲良くならないとな。
あのー、この辺ではお見かけしない屋台ですねぇ。
へー、初めて来たんですか。普段は人里にいらっしゃるんですね。
あぁ…例の疫病騒ぎで追い出されたんですか。
えっ!てことはまさかアナタ罹ってるんじゃ…。家で寝てなくていいんですか?
知るか、って…。なんかゲホゲホしてますね…。ちょっと、咳が鍋に…あぁ。
…それにしても随分年季の入った屋台ですね!この屋根のくたびれ具合。さぞかし老舗の蕎麦屋さんなんでしょ。
え?一昨年始めたばっかり?
野晒しにしといたから勝手に壊れたんだろって?
風が吹けば掃除代わりになるって…。ぜんぜん愛着ないんですね。
うわ、よく見たらカウンターも席も埃だらけ…。
あー、そのー、でもすごいですね!そのお歳で蕎麦屋を始めるなんて!よっぽどお蕎麦が好きなんですね!
はぁ。親方殴って大工をクビになったと。博打をやってたらお金が無くなったと。
やりたくないけど蕎麦くらいならできるだろ、と。
蕎麦なんか粘土こねるのと同じだろと。
…もしかしてその棚に置いてある緑っぽい固まり、蕎麦ですか。
こないだ打ったのが一週間前?カビてるんじゃないでしょうね…。
なんだか雲行きが怪しいぞ。どうも店主とは仲良くなれそうもない。
まぁ、でも。こういう人ほど自分の料理を褒められるのを喜ぶもんだ。
あっ、お蕎麦がきた!
この際、丼に指が浸かっているのは見ないことにしよう。
いやーきたきた!外はホントに冷えますからねぇ。
こういう時はかけ蕎麦に限りますよ。このあったかー……くない。ぬるい。ぬる蕎麦。
あー、あんまり熱いとお腹にも良くないですからね。
さて、割り箸を…。
ボキボキッ。
…根本から折れた。え?洗って使いまわしてるんですか?汚いなぁ…。
まぁまぁ。まずはおツユから頂きましょうか!
このお出汁の香りたっぷり、たまりませんねぇ。
ズズッズッ。
…げぇ。なんか苦くて生臭い。その鍋の中から飛び出てる目玉の腐った魚の頭みたいなの、いつから入ってます?
お、これはお揚げですね!嬉しいなぁ。ただのかけ蕎麦なのにお揚げが載ってる。
おツユのたっぷり染みたお揚げ。どれどれ…。
ネッチャネチャ。
…一応聞きますけど、いつ仕入れされました?先週?はい。
カマボコ!カマボコも載ってるんですねぇ。
うすーくじゃなくて、ズッシリ分厚く切ってあります。これは期待できそう…。
バキッゴリゴリ。
…今後のためにご忠告なんですが、カマボコの下についてる板は食べ物じゃないんですよ。
いやいや、メインはお蕎麦ですからね!蕎麦が上手けりゃなんでもいいんですよ、なんでも。
お蕎麦はコシですから!ほぅら、この太い麺…
モッチャモッチャ。
…粘土みたい。噛み切れないし…飲み込むしか…。
ジュルジュルジュルジュルジュルルルルルルルルルルルルルルルルルルル。
ゴックン。
……全部繋がってた。どう切ったらこんな風に…。一口で無くなっちゃった…。
あぁ、なんてことだ。とんだハズレ蕎麦屋に当たっちゃった。
よくこんなんで商売やろうと思ったもんだ。
ぜんぜん食べた気がしないよぉ。こんなのにお金払いたくないなぁ。
でもしょうがない。
あのぅ、お幾らでしょうか。
えぇ?千六百円!?
ちょちょっと、高過ぎやしませんか!
これじゃぜんぜん誤魔化せない!
文句あるなら戻せって?そんなことできませんよ…。
あのぅ、実は私、これしか持ってないんですが…。
はい、はい。ぜんぜん足りませんよね…。あの、ここはツケということに…。
代わりに屋台を引いて代金分稼いで来い??
そんなぁ、ムリですよぉ。
こんなマズくて高い蕎麦屋、誰もお客さん来ませんよぉ。
それに私も館に戻らないと…。
え!なら館の主人に払ってもらいに行くって!
ダメダメ!勝手に持ち場離れてたのがバレたらもっと怒られちゃいますよぉ…。
じゃあ屋台を引っ張れって、そんなこと言われても…。
これ以上店主に騒がれるのはマズイ。
はぁ、もう、仕方ないなぁ……。
ボキボキッ。
ズズッズッ。
ネッチャネチャ。
バキッゴリゴリ。
モッチャモッチャ。
ジュルジュルジュルジュルジュルルルルルルルルルルルルルルルルルルル。
ゴックン。
…ふぅー、お腹いっぱい。
でも困ったなぁ。この屋台、どうしよう……。
-----------------------------
ぶるぶる。あぁ…さっむいなぁ。
なんでこんな日に外に立ってなきゃいけないんだろ。
風も吹いてきたし、雪でも降られちゃたまんないよぉ。
それにしても今日は特に冷えるなぁ。
里じゃ人間の間でヘンテコな疫病が流行ってるらしいし…。
外になるべく出ないようにしてるんだってから、私も館の内勤にしてくれって言ったのに。
『どうせ人間じゃないんだから風邪なんか罹らないでしょ』だって。
ひどいや、咲夜さん。妖怪差別だ。
あぁ…だんだんお腹も空いてきたなぁ。
寒いと体力使っちゃうんだよねぇ。
外勤は体力勝負なんだからさぁ。夕食、私の分はもっと増やしてくれてもいいのに。
今日のパスタは美味しかったなぁ。おかわりしたかったなぁ。
居候のパチュリーさん、半分しか食べてないからもらおうと思ったのに。
『どうせ外で突っ立ってるだけなんだから、いやしい真似しないの』だって。
ひどくないか、咲夜さん。門番差別だ。
…なんだか眠くなってきた。
今何時くらいだろ…九時か…交代までまだまだ長いなぁ。
ちょっとぐらい…居眠りしちゃおうか……ちょっと……
………
や!いかんいかん。
ただでさえ昼間も寝てるんだから夜中も寝てたら何言われるかわかったもんじゃない。
交代要員の増員申請も門前払いだったもんなぁ。
『どうせ美鈴なんだから大丈夫でしょ』だって。
…ひどすぎないか、咲夜さん。美鈴差別だ。
最近の人間は妖怪を怖がらないからなぁ。困ったもんだ。
あぁ、なんだかぼんやりした光が近づいてくるぞ。
いよいよ夢の世界に入っちゃったのかなぁ。
あれ、なんだか食べ物の匂いもしてきたぞ。
そっかぁ。お腹が空いてると夢でも匂いがわかるんだなぁ。
これはきっとご馳走の夢に違いない。
もう門番の仕事なんかどうでもいいや。おやすみなさーい…
…ん?違う。ホントに何かが向かってきてるぞ…。
提灯だ。あ!屋台だ!!
白い湯気がもくもく出てる。
そうだ、あれはみすちーの屋台に違いない。
普段は紅魔館までこないのに珍しいなぁ。
でもちょうどいいや!お腹も空いてたし、なんかご馳走になろう。
お金はないけど、妖怪のよしみでツケにしてもらおっと。
おおぃ、おおぃ。みすちーさーん!
……あれ?
なんか屋台引っ張ってる人、ゴツくないか。
みすちーは、もっとこう…ちっちゃいよなぁ。
あ、羽も生えてない。髪も生えてない。髭が生えてる。
男だ。オジサンだ。たぶん人間だ。
私に気づいてコッチに近づいてくる。
まいったな…。みすちーだと思ったから呼び止めたのに。
人間相手だとツケが効くのかなぁ。
のぼりが見えてきた。『そば』かぁ。蕎麦屋の屋台。
あったかいかけそば。ちゅるちゅるっと手繰って、あっついおツユもグビリ。
…ごくっ。食べたいな。食べちゃうか。どうしようかな。
お金ないかな。いくらか持ってたかな。
ポケットに十円玉があったぞ。ひぃ、ふぅ、みぃ…十五枚。
足りるかな…。店主さんと仲良くなればいいや。そしたらツケにしてもらえるかな。
あ、そうだ。みすちーの屋台だと蕎麦が一杯百六十円くらいだったから…。
ちょうど九時で十五枚。
こないだ魔理沙に聞いた落語?みたいに誤魔化せるかも!
咲夜さんに怒られるかな。まぁ、食べちゃえばいいや。
いいや、食べちゃえ食べちゃえ。
あのーお蕎麦さーん!こっちでーす!
-----------------------------
うわっ!メニュー放りなげてきた。
なにこのオジサン。ムスッとしてるし頑固親父タイプなのかな…。
まーいいや。どれどれ…なににしよっかな。
あ、かけとざるしかない。ならメニューいらなくない?口で言えばよくない?
あー、かけ一杯お願いします。
『へいよ』だって。話弾まなそうな人だな…。でも仲良くならないとな。
あのー、この辺ではお見かけしない屋台ですねぇ。
へー、初めて来たんですか。普段は人里にいらっしゃるんですね。
あぁ…例の疫病騒ぎで追い出されたんですか。
えっ!てことはまさかアナタ罹ってるんじゃ…。家で寝てなくていいんですか?
知るか、って…。なんかゲホゲホしてますね…。ちょっと、咳が鍋に…あぁ。
…それにしても随分年季の入った屋台ですね!この屋根のくたびれ具合。さぞかし老舗の蕎麦屋さんなんでしょ。
え?一昨年始めたばっかり?
野晒しにしといたから勝手に壊れたんだろって?
風が吹けば掃除代わりになるって…。ぜんぜん愛着ないんですね。
うわ、よく見たらカウンターも席も埃だらけ…。
あー、そのー、でもすごいですね!そのお歳で蕎麦屋を始めるなんて!よっぽどお蕎麦が好きなんですね!
はぁ。親方殴って大工をクビになったと。博打をやってたらお金が無くなったと。
やりたくないけど蕎麦くらいならできるだろ、と。
蕎麦なんか粘土こねるのと同じだろと。
…もしかしてその棚に置いてある緑っぽい固まり、蕎麦ですか。
こないだ打ったのが一週間前?カビてるんじゃないでしょうね…。
なんだか雲行きが怪しいぞ。どうも店主とは仲良くなれそうもない。
まぁ、でも。こういう人ほど自分の料理を褒められるのを喜ぶもんだ。
あっ、お蕎麦がきた!
この際、丼に指が浸かっているのは見ないことにしよう。
いやーきたきた!外はホントに冷えますからねぇ。
こういう時はかけ蕎麦に限りますよ。このあったかー……くない。ぬるい。ぬる蕎麦。
あー、あんまり熱いとお腹にも良くないですからね。
さて、割り箸を…。
ボキボキッ。
…根本から折れた。え?洗って使いまわしてるんですか?汚いなぁ…。
まぁまぁ。まずはおツユから頂きましょうか!
このお出汁の香りたっぷり、たまりませんねぇ。
ズズッズッ。
…げぇ。なんか苦くて生臭い。その鍋の中から飛び出てる目玉の腐った魚の頭みたいなの、いつから入ってます?
お、これはお揚げですね!嬉しいなぁ。ただのかけ蕎麦なのにお揚げが載ってる。
おツユのたっぷり染みたお揚げ。どれどれ…。
ネッチャネチャ。
…一応聞きますけど、いつ仕入れされました?先週?はい。
カマボコ!カマボコも載ってるんですねぇ。
うすーくじゃなくて、ズッシリ分厚く切ってあります。これは期待できそう…。
バキッゴリゴリ。
…今後のためにご忠告なんですが、カマボコの下についてる板は食べ物じゃないんですよ。
いやいや、メインはお蕎麦ですからね!蕎麦が上手けりゃなんでもいいんですよ、なんでも。
お蕎麦はコシですから!ほぅら、この太い麺…
モッチャモッチャ。
…粘土みたい。噛み切れないし…飲み込むしか…。
ジュルジュルジュルジュルジュルルルルルルルルルルルルルルルルルルル。
ゴックン。
……全部繋がってた。どう切ったらこんな風に…。一口で無くなっちゃった…。
あぁ、なんてことだ。とんだハズレ蕎麦屋に当たっちゃった。
よくこんなんで商売やろうと思ったもんだ。
ぜんぜん食べた気がしないよぉ。こんなのにお金払いたくないなぁ。
でもしょうがない。
あのぅ、お幾らでしょうか。
えぇ?千六百円!?
ちょちょっと、高過ぎやしませんか!
これじゃぜんぜん誤魔化せない!
文句あるなら戻せって?そんなことできませんよ…。
あのぅ、実は私、これしか持ってないんですが…。
はい、はい。ぜんぜん足りませんよね…。あの、ここはツケということに…。
代わりに屋台を引いて代金分稼いで来い??
そんなぁ、ムリですよぉ。
こんなマズくて高い蕎麦屋、誰もお客さん来ませんよぉ。
それに私も館に戻らないと…。
え!なら館の主人に払ってもらいに行くって!
ダメダメ!勝手に持ち場離れてたのがバレたらもっと怒られちゃいますよぉ…。
じゃあ屋台を引っ張れって、そんなこと言われても…。
これ以上店主に騒がれるのはマズイ。
はぁ、もう、仕方ないなぁ……。
ボキボキッ。
ズズッズッ。
ネッチャネチャ。
バキッゴリゴリ。
モッチャモッチャ。
ジュルジュルジュルジュルジュルルルルルルルルルルルルルルルルルルル。
ゴックン。
…ふぅー、お腹いっぱい。
でも困ったなぁ。この屋台、どうしよう……。
さすが妖怪だと思いました