Coolier - 新生・東方創想話

助けてメンタリスト!

2021/01/26 16:10:58
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 ちょっと、そんなことはないですね、かなり困ったことになってしまいました。今すぐ叫び出したい気分ですが頑張って我慢してみます。……無理そうですね、正直寂しすぎて泣き出したい気分です。こういう窮地に陥ったときは冷静さが必要なんですけど……、そうだ! 話し相手ですよ! 私に必要なのは! ということで、いいですか大幣さん、私の話を聞いてもらって……、ありがとうございます! 呼びにくいのでぬっさーって呼んでいいですか? そうですか、残念です。

 あれは約一時間前、私がタケノコの妖怪を追いかけ回していた時のことです。タケノコの妖怪なんてちょっと意味が分からないかもしれませんが……、絵でどんな外見か見てもらえれば簡単に納得してもらえると思いますが、辺りに紙が見あたらないのが残念です。とにかくそういう怪しいやつがいたんです。

 私はその時、かなり退屈してましたから、霊夢さんのところへ向かっていました。飛んでいけばよかったんですが、たまには歩いていこうって気になりまして……、嘘です。神奈子さまのせいですね、最近ごろごろしすぎだって、小言を言われて。それでちょっとした喧嘩になってしまいまして。空を飛ぶの今日だけ禁止にされちゃたんですよ。なんだか悪い魔法、じゃなくて多分神聖な力かなんかで飛べなくされちゃったんですよ。今思うと私も一週間引きこもって漫画ばかり読んでいたのはまずかった気がしますが……、すみません、話を続けますね。

 とにかく私は歩いて神社に向かってたんです。するとですね、目の前にタケノコの妖怪が……、ああ、もう! とにかくいたんですよ! 信じてもらえないかもしれませんが、ひと目でタケノコの妖怪だって分かる……、いいですよ! 別にあなたに信じてもらえなくても!信じてもらったところで別にお金貰える訳じゃありませんからね。私はお金には興味ないですけど。

 それでですね、これはいい遊び相手がいたと私は思いまして、一生懸命追いかけ回したんですよ。皆が大好きな慈善活動ですね。そしたら、そいつ……じゃなかった、その妖怪ですがね、憎たらしいことに近くの竹やぶに飛び込んだんです。そこで私急になんだか面倒というか冷めちゃって。そこでちょこっと考えました。このままタケノコの妖怪と格闘して今日を終えてしまうか、それとも無視して霊夢さんの神社に向かうか……、その時ですね、私の頭の中に霊夢さんの亡霊みたいなのがぼうっと思い浮かんだんですね。そしてそのまま私の頭から勢いよく飛び出して竹藪の中へ入っていったんですよ。もちろん、比喩のつもりで言ったんですよ?

 あなたも知っていると思うんですけど、私、霊夢さんを尊敬しているじゃないですか。あ、分かります? はい! そうです! 何というか、やっぱりかっこいいじゃないですか霊夢さん。今日博麗神社行くのも霊夢さんとお喋りに行くというよりは、霊夢さんの……、うまく言えないですけど何というか参考にしよう! みたいな気分で。霊夢さん成分を吸収して強くなるぞって。やっぱり尊敬している人に近づくにはその人の全部を真似するに限りますから。

 それで何が言いたいのかっていうと、霊夢さんなら絶対目の前妖怪に容赦しないと思うんです。それなら私のやることといったらもう一つだけということで……

 それでですね、私はもう、一生懸命走ったり、時々へばって歩いたりしました。飛べないことがまさかこんなにも大変なことだなんて!こんな苦労思い出したくなかったですよ! だってこれから先、私は飛べない人を人里で見かける度に、珍しい虫か何かを見るような目つきになっちゃいそうですから。ここに来る前の私は一体どうやって生活していたのでしょうか。覚えてます? ぬっさー?

 とにもかくにも私は件の妖怪を探しました。でも、よくよく考えてみると竹やぶの中でタケノコの妖怪を探すなんて、遊園地の流れるプールで落としたコンタクトレンズを探すようなものですから……うわ!ちょっといいですか? 今、私一つ嫌なことを思い出してしまいました!

 幼いころにですよ、初めて諏訪子さまに遊園地に連れて行ってもらった時に……、まあ、いいじゃないですか! 別にそんなに長い話じゃないので。それでですね、名前何て言いましたっけ、あの、くるくる回る……、ぱらそるるーぱー? ぱられるるーぱー? とにかくですね、ブランコみたいな乗り物にこう、足を放り出してですね、ぶらぶらさせてるとグングン上っていくんですよその乗り物は。辺りの景色がグワーンと落ちていってですね、メリーゴーランドの馬だとかゴーカートの車だとかが、おもちゃ箱に入りそうなぐらいに縮んでいくんです。それはもう、私たちはすごくはしゃいでいました。隣に座っている諏訪子さまも私に沢山話しかけてくるんですよ。

「ほら、早苗、あそこの木の下で神奈子が不安そうにこっちを見てるぞ、ほら手を振ってあげて」
「うわー、とんでもないね、早苗。ほら、あの鉄骨錆びてるでしょ? 回ってる最中に折れちゃってさ、それでこの高さから落ちたら死んじゃうんじゃない? まあ、私は大丈夫なんだけど」
「ふふふ、こんなに高いとテンションあがるね、早苗、どれ一つ歌でも歌おうじゃないか。ほら、先週死んじゃったあの犬の唄だよ! わすれないよ~このみちを~パトラッシュとあるいた~」
「早苗、ここから靴落としたら、あの紅葉にカメラ向けてるおじさんに上手い事当たるんじゃない?」

 ルルルルと運転の開始を知らせるベルが鳴り響き、遊具がゆっくりと重々しい機械音と共に動き出しました。私たちはわーわーきゃーきゃーと子供らしく騒いでたんです。するとですね、ブランコの頭上についていた別のスピーカーから……

 すみません、やっぱり何でもないです。すっかり脇道にそれてしまったので話をレールの上に戻しますね。

 えーっとどこまで話しましたっけ、落とし穴の中…… そう! 竹やぶの中でしたね。まあ、後の話は簡単で、今ペロっと言ってしまいましたが走っていたら私穴の中に落ちちゃったんですよ。恐らくどっかの誰かが掘った落とし穴ですね。古井戸にしては浅いですし。そうはいっても自力で抜け出せそうにない深さですし。そもそも私今日飛べませんし……、ねえ、ぬっさー、そういえばあなたずっと私と一緒にいたじゃないですか。どうして一部始終を知っているのに、ここまで黙って私の話を聞いていたんですか?





 さて、こんな一人芝居を続けていたら日が暮れてしまいます。そろそろ真面目にここから抜け出す術を見つけ出さなければなりません。人に助けてもらうのが一番手っ取り早くて良い方法ですが、一体誰がこんな歩きにくい道を好んで通るのでしょう。穴の中は広く、大人二人がゆったりとくつろげるぐらいのスペースがあります。これを掘った人はよっぽど暇だったに違いありません。霊夢さんならどうするでしょうか、誰かに助けを頼むでしょうか……

「誰か助けて! このままだと餓死してしまいます! プリーズヘルプミー!」

私は上に向かって思いっきり叫びました。しばらく待ってみましたが、案の定全然返事がありません。期待していませんでしたが、それでもやっぱり悲しいです。頭上に広がる残酷な青い空を私は目いっぱい睨みつけました。

 無理に登ろうとしましたが、元々乾いた土地なのか体重をかけたところからぼろぼろと崩れていき、それに足をとられて難しそうです。おととい読んだ漫画で、主人公の相方が偶然持っていたものを組み合わせて家に侵入するシーンがありましたけど、お財布と私の友達(ぬっさー)以外に殆ど手ぶらで来てしまったので、そもそもそんな試行錯誤も出来そうにありません。まさに八方塞がりです。

「助けてくださーい!!!」

もう一度助けを呼んでみます。相変わらず返ってくるのは風の音と遥か遠くから聞こえるおかしな鳥の鳴き声だけ。私はすっかり困り果てしまいました。

 またしばらく時間が経ちました。昨夜、夜なべをして巾着を縫っていたせいで、少しばかりうとうとしてしまったようです。

「助ケテクダサーイ!!!」

 先程はうまくいかなかったので今度は趣向を変えてちょっとロボットぽく。

「任せて頂戴」
「えっ!」

 思いがけないことが起こったせいか、ともかく少なからず気が動転していたのでしょう。でなければ私がこんな素っ頓狂な声を上げる筈がありません。驚いたことに、どこからか返事が聞こえてきます。

「ほんとに助けてくれるんですか?」

 僅かに後悔しました。自分で言っておきながら何て間の抜けた質問でしょう。しかし謎の声の主は相変わらず「任せて頂戴」と心強い返事。この人にかかれば地球温暖化ですら大した問題ではなさそうです。

「私は守矢神社の巫女をしております東風谷早苗と申します。情けない話なのですが誰かが掘った落とし穴にまんまとはまってしまいました。どなたか存じ上げませんが、よろしければ手を貸してくれませんか?」
「ええ、安心して頂戴。私は世間で言うところのメンタリストよ。珍しくもなんともないわ」
「ではお願いします!」
「ええ、私は単なるメンタリストだから別にあなたは慌てる必要はないのよ」

 声の主が穴の中を覗きこんでるのではと思い、その姿を探しましたが影一つ見当たりませんでした。

「……めんたりすと? 聞いたことがないですけど、それは職業みたいなものなんですか?」
「メンタリストは人の心を読むことが出来るの」

 ひと昔前に流行った霊媒師みたいなものでしょうか。この後、この不思議な彼女(声の質からして多分女性です)からメンタリストについて、彼女が独自に編み出した方法論だとか、もっと具体的な長い説明が飛び出してくるとばかり思っていましたので、私は少し身構えていました。参拝客の相手をするみたいに、好きなように喋らせようと思ったんです。しかし、彼女はそれだけの説明で満足したのか黙ってしまい、ちょっとだけ気まずい沈黙が続きました。

「えーっと、じゃあちょっと見せてもらっていいですか、そのめんたいこなんとかを」
「ええ、構わないわ。それでは1から13までのカード、まずはこの中から好きな数を選んで頭に思い浮かべて。思い浮かべたらその数に4を足してさらに倍にする。そこから6を引いて……」
「ちょっと、その、ちょっと待ってください、そんなに早く計算できませんし、それに……、それってインチキじゃないですか! 答えが1になるやつでしょ? 私は知ってるんですよ!」
「2」
「え?」
「2になる予定だったのよ」
「その、すみません」
少し間がありました。「では気を取り直して別のを。一つ動物を思い浮かべてみて」
「え、動物ですか? えー、何にしようかなー、あ! 決めましたよ」
「それは角が生えてる?」
「角?」
「角よ。頭の上にね、こう突起物が出ている生き物が存在するの。世の中は広いわね」 
「いえ、角はありません」
「それは哺乳類?」
「ええと、そんなの沢山聞いてればそのうち当たるに決まってるじゃ……」

 こんなことは言うべきではなかったんです。予想通り、彼女は再び黙ってしまい、今度はしばらく耐えがたい時間が続きました。私は何か話そうと話題を模索してみましたが、結局思いつきませんでした。それに、ここで助けを求めるのも何だが悪いような気がしてしまいます。

 彼女の声が穴の中に響いてきます。「仕方がないわね。本気を出すことにするわ。これは疲れるから本当はあまりやりたくないのだけど、あなたの心はどうやら綺麗なようだから、今日だけの特別よ。ちょっとだけまってて」

 私は胸を撫でおろしました。返事をして言われた通りに待つことにします。今度はどんな質問が飛び出しても、絶対に真面目に取り組もうと心を固めました。

「いい? あなたの悩みを当ててあげるわ。本当はお金を頂くのだけれど、特別に無料でみてあげる」
「えっと、悩みですか?」
「そう。何か思い当たることはない?」
「うーん、そんなこと急に言われてもですね……」

 中学生の時でしょうか。いえ、確かきっかけは高校受験の面接練習の時でした。座右の銘という言葉を初めて知りまして、自分も誰かのを参考にしようと他の人に聞いて回ったんです。そうしたら奇跡的に、諏訪子さまの座右の銘が、人を見たら泥棒と思え。神奈子さまの座右の銘が、渡る世間に鬼はなし。その後、お二方はどっちが正しいか喧嘩を始めてしまいまして、困った私は「二つとも私の座右の銘にしますから!」 喧嘩はもっと激しくなってしまいましたが…… その時ふと思ってしまったんです。つまりですね、最強の座右の銘ってどれだろうって。それから何か問題にぶつかった際に、今の自分の座右の銘を試してみて、ダメだったら別のにして……、そんなことを心の中でずっと繰り返してたんです。でも、こっちの世界は今までの常識が全く通じず、そうだ! 別に既にあるものに縛られる必要はないのだから自分で考えてしまえ、という事でなるべく常識から逸脱した行動をとろうとこっちに来て今まで心掛けていたんです。『 私もここでの挨拶の仕方を学びました』そして、それが結構うまくいってたんです。しかし何ですか! 今日の体たらくは!ちょっと待ってください! 今私ですね、何か悟りみたいなものを開けそうですよ。ガンジーとかもこんな感覚だったんですかね? あれ、ガンジーじゃなくって、誰でしたっけ? ダライラマ? とにかく分かりました。私は、なるべく常識から外れようとしてましたけど、そもそも常識っていうのはある意味……

 するとかわいらしい掛け声と共に、上空から一本の太いロープが               
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コメント



0.170簡易評価
1.90奇声を発する程度の能力削除
面白く良かったです
5.100Actadust削除
この話があっちいってこっちいってのグッダグダっぷりよ。好きです。
リアルな女子高生の会話っぷりがツボでした。
6.100名前が無い程度の能力削除
助かって良かったね早苗さん
7.100名前が無い程度の能力削除
ハイテンションになった後に全力で笑いました
8.100南条削除
面白かったです
徹頭徹尾支離滅裂な早苗さんが最高でした
9.100めそふらん削除
出てくる奴みんな、まあ2人しか居ないんですけどやばいやつばっかじゃないですか。
終始テンションの高くて、大幣とかいうのを連れてる早苗とよく分からない自称メンタリストさとり。読み始めから笑いましたし、話がまとまらないのも笑ったし、オチでも結局わらいました。とても良かったです。
10.100水十九石削除
ただただ爆速面白文章が目の前の画面を走っていくこの感触!!ズルい!!楽しい!!
感想という形で言語化しようとしたら格落ちしてしまうのが情けない、そんな面白さでたまりません。
言葉のドッチボール、文章のかっぱえびせん。ご馳走様でした!!!うまい!!!
11.100マジカル☆さくやちゃんスター(左)削除
興奮したチワワみたいな早苗さんすき
13.100名前が無い程度の能力削除
早苗さんは愉快だな〜
14.90ヘンプ削除
早苗さんのグダグダしている所がとても良かったです。
終わり方が理不尽にも程がある……