「あーあ...つかれたー。」
深夜やっと仕事が終わった私はベッドに寝転がる。
「何で私がやらないといけないんだろう。当主だから?でもそんなの私が望んだ訳じゃないのに。」
思わず出てくる愚痴。普段はまわりにだれかがいるから言わないが今は一人。
愚痴のひとつや二つ言いたくなるわよ。
「あー私がもう一人いればなぁー...」
なんて子供みたいなことを呟く。
考えてみたらもう一人自分がいれば私は自由じゃない?
「バカなこと考えてないで寝よ...」
「...と...ちょっと起きて!ねえ起きなさいよ私!」
「うー...なによもうだれ。。え?」
誰かのけたたましい声で起こされた私は目の前にいる人物を見て目を丸くした。
「やっと起きたわね私。こんにちは。」
「な...何で私が...?」
目の前にたっていたのは紛れもなく私だ。
そっくりどころじゃない。瓜二つだ。
姿も声も仕草もすべてが私レミリア・スカーレットだった。
思わず自分の頬をつねる。
「痛い...」
現実だった。そんな私を呆れたように見つめるもう一人の私。
「確かめ方が随分原始的ね。レミリア・スカーレット。あなたの思ってる通り私はあなたよ。私はレミリア・スカーレット。紛れもなくね。」
「まじか...でも何で私が?」
「あなた本当に私なの?昨日いったでしょ。『私がもう一人いたら』って。それがかなったと言うことよ。」
「...どういう原理で?」
「知らないわ。運命操作の能力が無意識に発動したんじゃない?」
ああ確かにこいつは私だ。私が運命操作の能力を持っているということは一部のものしか知らないはず。もう信じるしかない。
でも私がもう一人ということはもしかして...!
「あなた私の代わりに全部やってくれる?仕事とか面倒なこと。」
そうずっと願っていたこと。こいつの言う通りもう一人の私なら仕事も生活もなんなくできるはず。
私が期待を込めて聞くともう一人の私はニヤリと笑った。
そして服従するように胸に片手をあて軽くお辞儀をすると、
「ええやりますやります。私はあなたの分身みたいなものですから。」
と含み笑いでいった。
「やった。じゃあお願いね私は出掛けてくるから‼」
やってくれるとなれば早いこと。私は手早く準備をすると久しぶりの休暇を楽しもうと部屋を飛び出した。
私が部屋を出る前にもう一人の私がなにかいったが私は聞いてなかった。
急いで窓から飛び出す。神社にいこうと決めていた。
私が窓から飛び出す。私は笑みを浮かべた。
「ねえ私...あなたは知らないのかしら『ドッペルゲンガー』という単語を。調べておいた方がいいわよ。最も調べてももう無意味だけどね...って聞いてないか。」
私は私が残していった仕事をやりはじめた。
「霊夢!」
「あらレミリアじゃない。仕事はいいの?」
私は神社につくと霊夢に飛び付く。
「うん!今日はおやすみ!」
最初から話すとめんどくさいのでもう一人の私のことは言わない。
「上がってく?ちょうど美味しいお茶菓子が手にはいったのよ。」
「わーい!」
それから私は霊夢たちと楽しい一日を過ごした。
「ありがとね私。」
「いえいいのよ。」
休暇を満喫した私は館に戻ってきていた。
任せた仕事はすべて終わっていた。
「ふぇー楽しかったー‼」
といいながら私はベッドに寝転がる。
もう一人の私はそれをにこにこしながら見ていた。
「ねえレミリア。満足したかしら?」
私が聞いてくる。
「ううんもうちょっと遊びたいわ。明日もお願いね。」
さすがにこの自由を手放すのは辛いわ私。
私のその答えにもう一人の私は今朝と同じように笑みを浮かべると
「...仰せのままに。」
と呟いた。
次の日私が目を覚ますと私はいなかった。
もう遊びにいったのだろう。机の上に今日の分だと思われる資料が乗っていた。
「もう少しね...」
私は呟きながら机に向かう。
「お嬢様失礼します。」
仕事をはじめて少しすると咲夜が入ってきた。
咲夜は仕事をしている私を見ると昨日と同じように驚く。
「お嬢様...どうしたんですか昨日も今日も...こんな朝早くから仕事を始めるなんて。」
その質問に私は笑みを浮かべて答える。
「私は当主だもの。このぐらいやらなきゃね。みんなのために。」
「まあお嬢様...!」
咲夜が感激したように目を輝かせる。
昨日知ったのだがどうやら私はほとんどさぼっていたらしいのだ。
「なにもしてないくせに自由にしたい?わがまますぎね本体の私。」
「お嬢様?なにか言いましたか?」
「いいえ何でもないわ。それより紅茶がほしいわ。」
「かしこまりました‼」
ぱたぱたと咲夜が出ていく。
「とにかく本体とは違うことをしないとね。」
私はニヤリとしながら呟いた。
「お姉様ー...」
「あらどうしたのフラン。」
お茶をのみ再び仕事を始めた私のもとにフランがやって来た。
ぬいぐるみを抱えもじもじとしている。
「あのね遊んでほしいなって思って。」
「あらいいわよ。」
「...え?」
私の答えにフランは目を見開く。
そりゃそうだろう。本体の時はなにもしてないくせに忙しいからといって遊んであげなかったのに今回はあっさり肯定したのだから。
「お...お姉様忙しくないの?」
「ええ。」
フランはぱあっと笑みを浮かべると飛び付いてくる。
「やったぁ!お姉様と遊びたかったの‼」
「フフあなたが言うならいつでも遊んであげる。」
「本当?約束ね‼」
「ええ約束。」
「お嬢様。妹様と遊ぶのでしたら残りの仕事はお任せください。」
「あらいいの?咲夜?。」
「はい。お嬢様はしっかりやっていますから妹様と遊ぶ時間ぐらいあげますよ!」
「ありがと。」
「今日も楽しかったわ‼」
「そうよかったわね。」
満足そうな顔をする本体。
「明日もよろしくー」
「...もちろんです。」
これは結末が楽しみね...
一週間がたった。
私は相変わらず遊んでおり分身は私の代わりをしている。
まだこの時期が続くと思ったが...
「ねえ本体。私も今日だけ自由にしていい?今日だけ戻ってくれる?」
初めての分身からのお願い。
私は迷ったが一日くらいはと了承した。
分身は部屋を出ていった。
私はその時分身が浮かべた笑みに気づかなかった。
「お嬢様!いったいどうされたのですか?これでは昔と同じです❗」
「ええなによ咲夜...」
仕事を脇におしやりのんびりとしてた私は咲夜の怒ったような声で体を起こす。
「最近はしっかりやっていたじゃないですか?どうしたんですか!」
咲夜の怒りに私は少し戸惑う。
やっていたのは分身だろう。私はやってないのだ。
「もういいです!」
咲夜は怒ったまま出ていった。
「お姉様ー遊んでー‼」
フランが入ってくる。
「何をいってるの?無理よ私は忙しいの。」
反射的にいつも通り答える。
「何で?お姉様約束したじゃない!いつでもあそんであげるって...」
「え?してないわよ?」
いってから私はしまったと思った。
きっと分身が約束したのだろう。
みるみるうちにフランの目に涙がたまっていく。
「うわぁぁぁん!お姉様の嘘つきーー‼」
フランは大声で泣き出す。
咲夜がすぐに飛んでくるとフランを抱えこちらをにらんだ。
「お嬢様!妹様との約束も破るなんて何事ですか⁉」
「え...いや私は...」
私は宥めている咲夜を見るとすぐに部屋から逃げ出した。
「もうどうなってるのよ!」
私は八つ当たりぎみに廊下を歩く。
「ふふっやっと気づいたの?」
クスクスという笑い声と共に分身が姿を表す。
「あなた...どうなってるの?何をしたの?」
私は分身に怒りをぶつける。
分身は笑いながらいった。
「あなたと違うことをしただけよ。ねえ私。なにもしてないくせに自由にしたいとか言うバカな私。妹を放り出してろくにかまってあげなかった愚かな私。...しっかりと仕事をやりとげる私と妹にもかまってあげる私...」
そこで分身はよりいっそうニヤリと嗤うといい放った。
「みんなはどっちがいいかしらね?」
「っ...」
私はなにも言えなかった。
「あなたの役目はもうおしまい。これからは私がしっかりレミリア・スカーレットとして生きていくわ。だから...」
消えなさい。その言葉が聞こえた瞬間私は意識を失った。
「...た?どうでしたかレミリアさん。」
「っ...」
私は飛び起きる。辺りを見渡すとそこは私の部屋だった。
にとりが私のかおを覗き込んでいる。
「えっ...ああそうか...」
私は思い出した。
にとりがVRというのを開発したので実験として私が試作したのだった。
「どうでしたかレミリアさん。あなたの思いを幻想空間で想記する「わたし」というこの新作は?」
にとりの問いに私はつまる。
あなたの思い。ということはいまの出来事は私の思っている...考えていることなの?
もう一人の私、確かに考えたこともあった。
「レミリアさん?新品が出たら是非使ってみてくださいね」
にとりが言うがきっと私は二度と使わないだろう。
レミリアの最初困惑しつつもなんだかんだ調子乗っちゃうところがコミカルで、いかにもレミリアらしくてよかったです
少しずつ歯車がズレていくような恐ろしさを感じました
「わたし」を経験したレミリアがどう変わったかも気になります。