「いやっ!」
「嫌じゃない!」
満月の照らす紅魔館はいつも通り賑やかだった。
…主に館の当主と当主の愛娘によって。
発端は数時間前、竹林から予防接種のお知らせが届いたのだ。
今夜あると言うそれにもちろんいかなくてはならない。
当主であり今は一児の母でもあるレミリア・スカーレットは早速娘と妹をよんで伝えたのだ。
妹フランは泣きそうになりながらも了承した。しかし娘のティナは予防接種のお知らせを聞いたとたん脱兎のごとく逃げ出した。
レミリアは娘が逃げるのは予想していたが予想よりはやかった。
注射のことを思い浮かべしくしく泣いている妹を適当な妖精メイドに任せレミリアはいつも通り後を追う。
だが知ってる人はしっている事実としてレミリアは体が弱い。
成長はしたものの変わったところと言えば胸の大きさやかみの長さぐらい。
身長もほんのすこしのびたが、それでもせいぜい11才~13才ぐらいのみためだ。
それ故出産は危険だったがレミリアが頑として生むといって聞かないので生む方向で進めたのだ。
だがまあそのせいで心臓を痛めたわけだが。
心臓が悪いと言うことは過度な運動は危険だと言うこと。すなわち、
「も…もうだめ…」
「お嬢様ーー!」
倒れた。毎日の光景である。
ティナはちょっと心配そうに母の方を見たが注射の怖さには勝てなかったようである。たたたと走っていってしまった。
レミリアは追いかけようとしたが治療役として館に留まっている永琳のでしである妖怪ウサギからドクターストップを出され強制的に部屋のベッドへ戻された。
さてところ変わって大図書館。
レミリアがダウンしたことにより無事逃げ切れたティナは図書館に来ていた。
正直母が心配だったが注射は嫌なのだ。
母親のみかたであろう魔女と使い魔に見つからぬようにこっそり進むティナだが…
「見つけたわティナ。」
後ろから少しおこっている魔女の声が聞こえた。
恐る恐る振り向いた瞬間ティナは魔女の腕の中にいた。
「全くもう…いい加減観念しなさい。ママを困らせちゃダメよ。」
魔女の諭すような声にティナは不満げに答える。
「だってちゅうしゃいやだもん…」
「嫌じゃない。」
ティナの文句をピシャリと遮った魔女はティナに目線をあわせ言い聞かせるように話し出した。
「ティナ。あなたが注射をいやがるのはわかるわ。痛いものね。でも貴方のママはもっといたいのよ?ママの心臓が悪いことはしっているでしょう。ママはね本当は走ったりしちゃいけないのよ?でもあなたが逃げるからママは走らなくてはならない。もしも心臓がもっと悪くなってママが死んでしまったらどうするの?」
「むぅ…それは…で…でも!はねを使って飛べばいいじゃん?」
諦めの悪い親友の娘に魔女はイライラしながらいった。
「ええそうね。そうかもしれない。でもはねを使って飛ぶ方が走るより苦しいのよ?ティナはママを苦しませたいの?」
「そんなの嫌だよ!ママが苦しむなんて絶対にいや!」
「じゃあママの言うことを聞きなさい。ほらレミィは部屋にいるわ謝ってきたら?」
そう言うと魔女はティナをおろす。
ティナはたたたと出ていった。
「ママー!」
「ティナ?!」
ティナはレミリアの部屋に飛び込むとベッドに寝かされている母親に抱きついた。
「ママ!ごめんなさい!」
娘のいきなりの謝罪にレミリアは目を白黒させるがとりあえずいいよといっておいた。
しばらく娘はぐずぐずしていたがレミリアの代わりに竹林へつれていく美鈴が入ってきたことによってピタッと固まる。
レミリアが美鈴に頼んで指示を出している間にティナは考える。
レミリアと追いかけっこをするのはダメだと言われた。それはティナにもわかっている。だが別の人から逃げちゃダメとは言われていない。それに注射はやっぱり嫌だ。
ティナは母と話している美鈴はちらっと見ると逃げた。
咲夜には勝てないが美鈴ならにげきれるはず。と思ったのだ。
だが結局美鈴も簡単にティナを捕まえ泣いていやがるティナと隠れてやりすごそうとしていたフランを竹林へ引っ張っていった。
竹林中に泣き声と悲鳴が響いたのは言うまでもない。そして
またわがままで逃げ、レミリアを暫く戦闘不能にしたティナが帰ってきたメイド長にしかられたのは言うまでもなく。
ちなみにレミリアは今回大分重症だったので3日間はベッドからでてはいけないと釘を刺されたそうだ。
かわいいところが見せたかったことがとても伝わってきました
スゴ味がありました