「お掃除してたらこんなものが見つかりまして」
そう言って咲夜が取り出した物は一冊の本であった。
表紙には巨乳大作戦という文字と豊満な乳房を自慢げに露わにした女性が並んでいる。
咲夜の緊急の招集で大図書館に揃った少女達は、息を呑んでそれを見つめていた。
「ちょっと、なによそれ」
凍り付いた場の空気を裂く様にして、レミリアが咲夜へと問い掛ける。
「まぁ、俗に言うエロ本って奴じゃないですかね」
「いやなんでそんな物がうちにあるのよ」
「こんなに本が有るんですから、無い方が可笑しいってもんですけど。まぁ私が言いたいのはそう言う事では無くてですね」
咲夜は仕切り直す様にして、こほんと咳払いをする。
「こんな如何わしい本を廊下に落としておくってのはどういう事なのかって事なんですよ」
咲夜の冷ややかな視線がその場に揃った全員に向けられる。
ある者は背筋が凍り、ある者は冷や汗が額に浮かび、そしてある者は平然を装いながらも心臓の鼓動が急激に跳ね上がっていた。
その場にいる全員が疑心暗鬼になっている様だった。
一体誰がこのエロ本の所有者なのかと。
こんな本を持っている事にされたら一生いじられるに決まっている。
皆が皆、自分がエロ本の持ち主であるというレッテルを貼られない為に動く事を決意をしたのだった。
「それで、この本の持ち主はどなたなんですか? 困りますからね、妖精メイド達が見つけて騒いでたんですから。止めるのほんとに大変だったんですよ」
咲夜はそう言うが、申し出る者は勿論いない。
皆、自分以外の誰かが動き出すの切望してる様だった。
「んーどうして誰も出てこないのかしら」
「そりゃこんな公開処刑みたいな事やったら出てこないでしょうよ」
パチュリーが諭す様にして咲夜に現状を理解させる。
「だって一遍に聞いた方が楽じゃないですか。わざわざ一人一人に聞いて回るのなんて効率悪いですよ」
「あんた時間止められるんだから関係ないでしょ」
「私的にはそれでも効率が悪いんですよ。お掃除が進まなくて」
話は平行線のまま、結局咲夜は折れる事はなく再び公開処刑の場が再開される。
「まぁでも、個人的にはフラン様の線は薄いと思っているのです」
咲夜がフランドールへ視線を向ける。
それに追随する様に、残った者達の視線も集まっていった。
殆どが、先にこの地獄から抜ける事が出来てずるいといった嫉妬であったが。
フランドールは危機を逃れたといった安堵で顔が緩むのを堪えながら、勝ち誇った表情を少女達に向けてみせた。
「そうね、私はそんな低俗な物は読まないの。貴方達と違ってね」
「いえ、そういう意味ではなくて。フラン様、雑誌系よりも小説でこういうの読まれていられますから」
「がっ!」
先程までの安堵は束の間、フランドールに下された刃はあっさりと彼女の首を斬り落とした。
処刑執行である。
「棺桶が二重底になっていたのでおかしいなと思ったんです。それで中身を見てみたら官能小説ばっかりだったので」
「……咲夜、ちょっとオーバーキルよそれ」
笑いを噛み殺しきれていないレミリアが、咲夜を止めるもフランドールは既に手遅れであった。
羞恥に耐えかねた彼女は隅っこで蹲っていて、それが一層レミリアの笑いを誘ったのだった。
「あ、でもそういう事ならパチュリー様もこういうの小説派だから無しですかね」
「え」
咲夜による無慈悲な刃はパチュリーをも刈り取った。
一瞬、パチュリーは何が起こったのか分からないというか表情をしていたが、先程の咲夜の言葉を反芻し、ようやく事の顛末を理解する。
また一人、処刑が成された者が増えたのだ。
レミリアは二人目の犠牲にとうとう耐えきれなくなり、思いっきり吹き出す。
パチュリーは、自らの友人によるそれが決め手となり、涙目になりながらフランドールと同様に隅っこへと逃げ込んで行った。
そうしてこの場に残されたのはレミリアと美鈴の二人のみになった。
「おいおいおい、ちょっと待てよ! さっきまで誰があのエロ本持ってるレッテルを貼られるかみたいな空気だったのに、これじゃあ全員のエロ本の趣味言われてるだけになってきてるだろ!」
「まぁまぁ、お嬢様落ち着いて下さいよ。犯人が名乗り出れば済む話なんですから」
「……美鈴、あんた早く正直に言いなさいよ」
「はぁ? あれお嬢様のじゃないんですか!? 私あんなの持ってませんもん!」
「私だってあんなの知らないって!」
二人の言い合う声は次第に大きくなる。
彼女達はどちらかをこの地獄を止める為の生贄にしようとしているのだ。
無論、どちらも自分がなる気はないのでいつまで経っても話は纏まらない。
「あーもう! こうなったらお嬢様が隠してるエロ本の事言っちゃいますからね!」
「ちょっ! それを何処で……じゃなくてそんなもの無いわ! 出鱈目を言うんじゃない!」
「咲夜さん! お嬢様が隠して」
「知ってる。ベッドの下にある本でしょ。掃除の邪魔だからテーブルに置いておくのに、お嬢様ったらいつもまたベッドの下に入れてるんだから」
「え……あれバレてたの? なんかおかしいなとは思ってけど……」
「寧ろなんでバレてないと思ったんですか」
自らの秘密が完全に知られていた事に、レミリアはショックを隠し切れず、膝から崩れ落ちる。
床に手を突き、頭を垂れて屈した姿から表情を読み取る事は出来ないものの、彼女の耳は燃える様にして熱くなっていた。
「おっと、つまりこれは私の勝ちって事? やったー! 解放されたー!」
「何言ってるのかはよく分からないけれど、箪笥の裏側に仕舞ってあるのは知ってるわよ」
「えぇ? 咲夜さん、私のまで知ってるんですか……?」
最後に残った美鈴も腰が抜ける様にして座り込む。
これにて全員処刑が達成された。
この場に、誰にも言えない秘密を抱えた者はもう居ない。
全員が全員、エロ本を持っているという事実を暴露されたのだ。
「それにしても、この本って誰のだったのかしら?」
そう、発端は廊下に落ちていたとされるこのエロ本の持ち主を探す事だった。
いつしか、誰がこのエロ本の持ち主に合わないかとなり、そして誰がどんな風にどんなエロ本を持っているかという流れへと変わっていったのだった。
結果としてこのエロ本の所持者は未だ判明していない。
「もうみんな(精神的に)死んじゃったんだから、恥ずかしがる事なんて無いと思うのだけど……」
今更恥ずべき事など無い、必死に隠してきたつもりの秘密をいとも簡単に把握されていた時点で彼女達が失う物はもう無い筈のだ。
それなのに一向に犯人は出てこない。
一体この本は誰の物なのか。
咲夜はその疑問を拭えないまま、もう一度自分が手にしている本へと視線を落とした。
「あ、これ私のだ」
そう言って咲夜が取り出した物は一冊の本であった。
表紙には巨乳大作戦という文字と豊満な乳房を自慢げに露わにした女性が並んでいる。
咲夜の緊急の招集で大図書館に揃った少女達は、息を呑んでそれを見つめていた。
「ちょっと、なによそれ」
凍り付いた場の空気を裂く様にして、レミリアが咲夜へと問い掛ける。
「まぁ、俗に言うエロ本って奴じゃないですかね」
「いやなんでそんな物がうちにあるのよ」
「こんなに本が有るんですから、無い方が可笑しいってもんですけど。まぁ私が言いたいのはそう言う事では無くてですね」
咲夜は仕切り直す様にして、こほんと咳払いをする。
「こんな如何わしい本を廊下に落としておくってのはどういう事なのかって事なんですよ」
咲夜の冷ややかな視線がその場に揃った全員に向けられる。
ある者は背筋が凍り、ある者は冷や汗が額に浮かび、そしてある者は平然を装いながらも心臓の鼓動が急激に跳ね上がっていた。
その場にいる全員が疑心暗鬼になっている様だった。
一体誰がこのエロ本の所有者なのかと。
こんな本を持っている事にされたら一生いじられるに決まっている。
皆が皆、自分がエロ本の持ち主であるというレッテルを貼られない為に動く事を決意をしたのだった。
「それで、この本の持ち主はどなたなんですか? 困りますからね、妖精メイド達が見つけて騒いでたんですから。止めるのほんとに大変だったんですよ」
咲夜はそう言うが、申し出る者は勿論いない。
皆、自分以外の誰かが動き出すの切望してる様だった。
「んーどうして誰も出てこないのかしら」
「そりゃこんな公開処刑みたいな事やったら出てこないでしょうよ」
パチュリーが諭す様にして咲夜に現状を理解させる。
「だって一遍に聞いた方が楽じゃないですか。わざわざ一人一人に聞いて回るのなんて効率悪いですよ」
「あんた時間止められるんだから関係ないでしょ」
「私的にはそれでも効率が悪いんですよ。お掃除が進まなくて」
話は平行線のまま、結局咲夜は折れる事はなく再び公開処刑の場が再開される。
「まぁでも、個人的にはフラン様の線は薄いと思っているのです」
咲夜がフランドールへ視線を向ける。
それに追随する様に、残った者達の視線も集まっていった。
殆どが、先にこの地獄から抜ける事が出来てずるいといった嫉妬であったが。
フランドールは危機を逃れたといった安堵で顔が緩むのを堪えながら、勝ち誇った表情を少女達に向けてみせた。
「そうね、私はそんな低俗な物は読まないの。貴方達と違ってね」
「いえ、そういう意味ではなくて。フラン様、雑誌系よりも小説でこういうの読まれていられますから」
「がっ!」
先程までの安堵は束の間、フランドールに下された刃はあっさりと彼女の首を斬り落とした。
処刑執行である。
「棺桶が二重底になっていたのでおかしいなと思ったんです。それで中身を見てみたら官能小説ばっかりだったので」
「……咲夜、ちょっとオーバーキルよそれ」
笑いを噛み殺しきれていないレミリアが、咲夜を止めるもフランドールは既に手遅れであった。
羞恥に耐えかねた彼女は隅っこで蹲っていて、それが一層レミリアの笑いを誘ったのだった。
「あ、でもそういう事ならパチュリー様もこういうの小説派だから無しですかね」
「え」
咲夜による無慈悲な刃はパチュリーをも刈り取った。
一瞬、パチュリーは何が起こったのか分からないというか表情をしていたが、先程の咲夜の言葉を反芻し、ようやく事の顛末を理解する。
また一人、処刑が成された者が増えたのだ。
レミリアは二人目の犠牲にとうとう耐えきれなくなり、思いっきり吹き出す。
パチュリーは、自らの友人によるそれが決め手となり、涙目になりながらフランドールと同様に隅っこへと逃げ込んで行った。
そうしてこの場に残されたのはレミリアと美鈴の二人のみになった。
「おいおいおい、ちょっと待てよ! さっきまで誰があのエロ本持ってるレッテルを貼られるかみたいな空気だったのに、これじゃあ全員のエロ本の趣味言われてるだけになってきてるだろ!」
「まぁまぁ、お嬢様落ち着いて下さいよ。犯人が名乗り出れば済む話なんですから」
「……美鈴、あんた早く正直に言いなさいよ」
「はぁ? あれお嬢様のじゃないんですか!? 私あんなの持ってませんもん!」
「私だってあんなの知らないって!」
二人の言い合う声は次第に大きくなる。
彼女達はどちらかをこの地獄を止める為の生贄にしようとしているのだ。
無論、どちらも自分がなる気はないのでいつまで経っても話は纏まらない。
「あーもう! こうなったらお嬢様が隠してるエロ本の事言っちゃいますからね!」
「ちょっ! それを何処で……じゃなくてそんなもの無いわ! 出鱈目を言うんじゃない!」
「咲夜さん! お嬢様が隠して」
「知ってる。ベッドの下にある本でしょ。掃除の邪魔だからテーブルに置いておくのに、お嬢様ったらいつもまたベッドの下に入れてるんだから」
「え……あれバレてたの? なんかおかしいなとは思ってけど……」
「寧ろなんでバレてないと思ったんですか」
自らの秘密が完全に知られていた事に、レミリアはショックを隠し切れず、膝から崩れ落ちる。
床に手を突き、頭を垂れて屈した姿から表情を読み取る事は出来ないものの、彼女の耳は燃える様にして熱くなっていた。
「おっと、つまりこれは私の勝ちって事? やったー! 解放されたー!」
「何言ってるのかはよく分からないけれど、箪笥の裏側に仕舞ってあるのは知ってるわよ」
「えぇ? 咲夜さん、私のまで知ってるんですか……?」
最後に残った美鈴も腰が抜ける様にして座り込む。
これにて全員処刑が達成された。
この場に、誰にも言えない秘密を抱えた者はもう居ない。
全員が全員、エロ本を持っているという事実を暴露されたのだ。
「それにしても、この本って誰のだったのかしら?」
そう、発端は廊下に落ちていたとされるこのエロ本の持ち主を探す事だった。
いつしか、誰がこのエロ本の持ち主に合わないかとなり、そして誰がどんな風にどんなエロ本を持っているかという流れへと変わっていったのだった。
結果としてこのエロ本の所持者は未だ判明していない。
「もうみんな(精神的に)死んじゃったんだから、恥ずかしがる事なんて無いと思うのだけど……」
今更恥ずべき事など無い、必死に隠してきたつもりの秘密をいとも簡単に把握されていた時点で彼女達が失う物はもう無い筈のだ。
それなのに一向に犯人は出てこない。
一体この本は誰の物なのか。
咲夜はその疑問を拭えないまま、もう一度自分が手にしている本へと視線を落とした。
「あ、これ私のだ」
私も持ってません
咲夜さん!!!あんたァ!!!
僕は(今は)持ってません。
面白かったです。
咲夜さんは巨乳が好きなんですね
今日も紅魔館が阿鼻叫喚でよかったです
小説派二人と中学生のガキんちょみたいな隠し方をする二人、そして明らかにおトボけで公開処刑なんぞに踏み込んでしまう咲夜さんと言い本当にらしさの塊ですよ。『あ、これ私のだ』で済むそのヤバさが最高すぎる。
いやはや笑わされました、面白かったです。