Coolier - 新生・東方創想話

オペレーター

2020/10/13 23:33:55
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 仕方がない、ずいぶん長いあいだ楽しい時間を過ごしたのだから。音という音が都の住人たちと共に疎開して、私の鼓膜をもてあそぶ沈黙がひどく耐えがたいのもその代償の一つなのだ。私の言葉はもともと誰よりも制限されたものだが、いまではその宛先さえも失われている。私はかくれんぼが終わったことを知らされず、広い原っぱに取り残された子供だ。
 私は自分の部屋に座っている。それはかつてここに他者の営みがあった頃の習慣の残り香で、本当のことを言えば、私が座る場所は誰の部屋でも構わない。その誰かの文机の引き出しを開けて、別の誰かに宛てた秘密の手紙を読みさえしなければ。その誰かの貯蔵庫を開けて、ささやかな喜びのあった日のためにとっておいた菓子を食べさえしなければ。しかし、そうしたことを私はしなかった。それはただ静寂を増幅させるだけだから。
 何度か顔を見たことがある一羽の兎が、月を発つ前に氷砂糖の大きな袋をくれた。何やら決然とした表情だったが、私が質問をする前に兎は向こうを向き、小走りで駆けていってしまった。そういうわけで、私の手元には、私が口にすることを許された一掴みの破片が残された。
 私は自分の机に都の可食部を幾つも幾つも並べて組み替え、積み上げては崩した。そのかすかにざらついた表面の擦れ合いの感触は私を落ち着かせた。舌があることを忘れないために、時折その一つを取り上げて舐めた。密な停滞の味がした。

 神霊との戦いは膠着していた。私たちがここから一歩たりとも動かなければ、短期的にはこれ以上の被害はない。しかし、このままではまずかった。穢れは着々と私たちの都を取り囲んでいて、放っておいて何かが解決するわけではなかった。ただ一人起きている私には、黙ることと考えることが仕事だった。
 問題は尺度がないことだった。起きている時間に切れ目はなく、常に今よりほんの少しだけ状況の悪い、しかしそれほど変わることのない未来があるのみだ。アキレスが亀に追いつけないように、このままいつまでも何も変わらないのではないかと考えることさえあった。もちろんそれは現実逃避に過ぎなかった。しかし、そもそも私以外の都の者たちは文字通り現実から逃避しているのだ。
 こうなってからというもの、執務室にはほとんど行っていなかった。門番のいない門、同僚も部下もいない宮殿……。そうしたものは一度見れば充分だった。私はほとんどずっと自分の部屋にいた。

 時折獏が報告と様子見にやってきた。二杯の茶のあいだに私が歓迎の意を込めて氷砂糖のピラミッドを置くと、彼女は一瞬怪訝な目を向けて笑いかけたが、私の顔を見ると黙ってその墓の頂上を摘んで口に入れた。
「かなり疲れてますね」と彼女は言った。
「そう見える?」と私は訊いた。
「とても」と言って彼女は席を立ち、窓を開け放った。「ちゃんと外の空気吸った方が良いですよ」
「時々出てる」
「時々?」
 誰もいないもの、と言おうとして私は慌ててやめ、口の前で両手の人差し指で×印を作った。ドレミーは頷いた。
「美味しい?」と私は代わりに訊いた。
「美味しいですよ」
「良かった」
 窓から涼しい風が微かに入ってきた。夢の世界にも外気があるのだろうか?
 私は書き上げていた遷都計画をドレミーに渡した。読み終えた彼女はしばらく眉をしかめていたが、やがて顔を上げて「これはハレーションを起こしますよ」と言った。
「緊急事態だから」と私は言った。
「それはもちろんそうなんですけど……」
「頑張って」
 私の言葉を聞いた彼女は明らかにむっとした顔をした。「そりゃ頑張りますけどね」と彼女はゆっくりと言った。
「違う、ごめん」と私は言った。
 彼女は鼻で長い息をついた。冷めかけた茶が立てる弱々しい湯気が彼女の髪を撫でた。「いや、私もすみません」と結局彼女は言った。「気が短かったです。お互い疲れてますね」

 計画書を持ってドレミーが帰っていくと、私の部屋は寒々しいほど静かになった。私は氷砂糖をひとかけらだけ持って無人の通りに出る。特定の誰かがいない部屋に比べれば、誰もいない都はまだそれほど鋭くは心の間隙を刺さなかった。あるいはそれは、ただ無意味に複雑で綺麗な模様に見えた。人々の暮らしに最適化された意匠から、目的物をはぎ取ったものというのは。それは街の抜け殻だった。
 私は通りに砂糖で円を幾つも描いた。円を辿って片足で、両足で跳んだ。かつてここにたくさんいた兎たちが集まってそうしていたように。彼女達はいまそれぞれに戦ったり夢見たり怠けたりしているだろう。ここではないところで。そう、ここではないところで……。いつしか私は跳ぶのに疲れ、砂糖の円の中に座ってまどろみはじめた。

 私は路上に丸くなり、羽を欠いた肩を下にして眠っていた。私が道で遊んだ痕跡は残っていたが、今見たはずの夢の記憶はまったくなかった。ドレミーはやはり少し怒っているのかもしれない。彼女も疲れていると言っていた。私は私が、私たちが彼女にかけている負担について考える。何しろあまりにも多くの都の住人たちの世話を彼女に頼んでいるのだ。私はもうちょっと違ったことを彼女に言うべきだった。もうちょっと何か言うべきことがあったことに気づいたときには、会話はいつでも取り返しのつかない過去に沈み込んでいる。何もかもがそうだ。砂糖をくれたあの兎のことも。私は彼女の名前さえ知らないのだ。
 ともあれ私は石を遠い水面に投げ込んだのだ。あとはその波紋が私の足下に届くのを待つしかない。ただ何かを待つというのは苦しかった。いや、それはまったく正確ではない。私は都ごと穢れに取り囲まれ、少しずつ蝕まれながら、その実今のところは何の危険もなく暮らしているのだ。即座には苦しくない時間の延長が、たとえばドレミーを直接的に蝕んでいることが苦しかった。その上、私は私が思ったように喋れないことを――結局のところは――うまく使ってさえいるのだ。そうではないと言うのであれば、なぜ私は夢の中で計画を彼女に伝えなかった? その苦しさというのはただの空しい自己弁護に過ぎない。私には自分の卑劣さがよくわかっていた。私には戦地に向かう、もう二度と戻ることはないかもしれない兎に氷砂糖をもらうような資格なんてないのだ。私は小さくなったひとかけらを大事に抱えて、とぼとぼと家まで歩いて帰った。

 いつしか時は過ぎる。家にあった一番良い茶を淹れて、最後の氷砂糖を口に含んだときに私はそのことを知る。ドレミーの姿をしばらく見ていない。私が仕事を頼みすぎたせいかもしれないし、そうでないかもしれない。どちらでも良いのかもしれないとも思い始めていた。彼女に見捨てられ、私が都とともに攻め落とされたとしても、少なくとも他の住人たちは無事なのだ。無事ならば、無事でさえあるならば、誰かが上手いやり方を考えて新しい都を作ることも、いつしかできるだろう。
 最後の氷砂糖を舐め終え、茶を飲み干して私は床につく。朦朧とした頭が久し振りに眠気と直接紐付いていた。今ならちゃんと眠れるかもしれなかった。ちゃんと眠れれば、夢の記憶を現実に持ち帰ることができるかもしれない。そうすれば、ただ漠然とした不安と罪悪感に苛まれながら待つだけでない、何か、もっと別の何かが現れるかもしれない。

 目が覚めきる前から私は異変に気づく。下になっている肩がひどく痛んだ。身体全体が何か硬いものに挟まれている。毛布を跳ね上げると、それはすぐに戻ってきて私の頭にぶつかった。頭をさすってそれを足の方にずらす。硬くて重い。それが床と擦れ合う嫌な音がした。
 改めて見ると、毛布だったものは白くざらついた塊になっていた。皺の寄った、毛羽だった布の形のままで。
 全身の筋肉が硬く強ばっていて、苦労しながら布団から這い出る。敷き布団ももう布団ではなかった。まるで大理石のようだ。
 枕はまだ枕だった。ほっとして私が手を触れると、それは瞬く間に毛布や敷き布団と同じ材質に変わった。血の気が引いた。誰もいないのに辺りを見渡した。まずいことになったのは確かだった。ただ、慌てる自分と慌ててはいけないと諫める自分とが同時に立ち上がって、僅かに後者が勝った。あまりにもその材質には見覚えがあった。私は膝を揃え、枕だったものを両手で取り上げて、その端に舌をつけた。それはやはり氷砂糖だった。

 そろそろと枕を布団の上におろす。それらは触れ合い、掠れた硬い音を立てた。その音が部屋中に広がり、やがて死に絶えた。私は神職者のように、あるいは投降兵のように両手を肩より上に広げる。差し当たって手近なところから考えていかなくてはならない。
 私の膝や足が床に触れていたが、それらは床を氷砂糖にはしていなかった。私は膝を突いたまま自分の身体を見下ろす。服もまだ服のままだった。私は少し安心する。私が触れたものすべてを氷砂糖にしてしまうのは、恐らく手だけなのだ。何の支度もせずに眠ってしまい、寝間着でなかったことは幸運だったと思う。もちろんこの都にはもう誰もいなくて、衣服は社会的なコードとしての機能を完全に失っているとはいえ。
 最初に確かめておかないといけないことはもう一つあった。眠っているあいだにそうはならなかったのだから大丈夫だろうと思ってはいても、実際に試す段になるとやはり私は尻込みした。椅子になんとか腰掛け、息を深く吸って吐き、私は右の人差し指で左の小指の爪に触れた。爪には変化がなかった。そのまま目を瞑って、ひと思いに両手を合わせた。
 結論として、私は塩の柱にはならなかった。乾いた手の音だけが部屋の中に響いた。

 そうはいっても、私は少しずつ氷砂糖に囲まれて暮らすようになっていった。幾らもたたないうちに、机が、窓硝子が、寝台が、柄杓が、茶器がそうなった。私は湯呑みが溶けだした微かに甘い水を飲み、毛布を少しずつ口に含んで過ごした。
 身体中が砂糖に打ち据えられて、最初は痛くてたまらなかったが、それにもやがて慣れた。服に触れないように大の字になって堅いベッドに横になることにも、何にも触れずに立ち上がり、また座ることにも慣れた。それまでよりも脆くなってしまった調度品や家具の形を壊さないように、触れるか触れないかのうちに色々な用を済ませることにも慣れた。
 ほど遠くないうちに、私を取り巻く何もかもが氷砂糖になるだろう。私には荷が勝ちすぎるものばかりに包まれた私の生活は甘く崩れていくだろう。あるいは穢れが私の身を蝕むより先に。
 それは仕方のないことだ。

 ドレミーに外に出るように言われていたことを思い出し、戸を氷砂糖に変えてしまう決心をする。廊下を渡る途中に思いついて、特に何ができるというわけでもないのだが、鏡を据え付けてある部屋に入った。
 丸い大鏡を覗き込むと、私の頭の上には兎の耳が生えていた。私は驚き、思わず鏡の縁を両手で掴んだ。しまったと思った瞬間に、しかし思ったのとは別のことが起こった。鏡の縁は感触がなく、私の手はそのまま鏡の中に吸い込まれた。私はバランスを崩して前につんのめった。鏡は水面のように私の身体をまるまる飲み込んだ。

 吐き出されるようにして私は地面に投げ出される。受け身を取ると、すぐに地面が氷砂糖に変わってしまった。特にけがをしたわけではないようで、すぐに立ち上がることができた。屋外で、ひどく暗くて寒かった。振り返っても、私が出てきたはずの鏡はもうそこにはなかった。辺りを見渡したが、まったく人気がない。敵襲という感じではなかった。頭の上に恐る恐る手をやると、やはりそこにはたしかにふさふさとした両耳が生えていた。それは触っても砂糖にはならなかった。私自身だということだ。
 暗いのは空の色のせいばかりではなかった。最初はそうとは気づかなかったのだが、辺りには都のものとはまったく違う、あまりにも高い建物が幾つもそびえていた。それらが空そのものを狭めていた。ちかちかと輝く小さな光が建物の壁に沿って垂直に並んでいて、そうした建物がどこまでも続いている。
 私が知っている都にこんな場所があるわけがなかった。あるわけがなかったと思いはするのだが、これまでに起こった色々なことを考えると、もう私はほとんど何にも確信が持てなくなっていた。建物のあいだの道を私は歩いた。一つ、また一つと建物を行き過ぎても景色はまったく変わらなかった。
 空からこの場所を俯瞰しようかとも思ったが、灯りのついた知らない窓の前を飛ぶのは怖かった。まさか矢に打ち抜かれると思ったわけではないが、誰もいないことが目でわかっている地面の方が私には安心だった。誰もいないということに安心している自分は奇妙な感じだった。私はずいぶん臆病になっていた。
 私は立ち止まって俯き、目を瞑った。私は自分の兎の耳を両手で握った。その温かい耳を。しばらくそのままじっとその温度を感じていた。そうしていると何とも言えず落ち着いた。その立派な耳が聴くべき音はここに何もないのにそういう風に感じるというのは奇妙だった。
 耳から手を離し、おもむろに私は目を開いた。頭上を見上げると、先ほどは建物に遮られて見えなかった空の別の部分が見えた。そこには地球が浮かんでいた。私は動揺した。血の気が引いて身体がふらつき、私は思わず傍らの建物の壁に手をついた。
 それが決定的な過ちであることに気づくのが一瞬遅れた。その瞬間、その何十階という高さの建物すべてが氷砂糖になった。建物は自重で崩れ始めた。私はそこから動けなかった。砂糖の瓦礫が空から降り注ぎ、私はその中に飲み込まれた。

 ひどく柔らかい眠りから目覚めた。身体に毛布がかかっているのに気がついて、思わず飛び退いて両手を引き剥がし、上に掲げた。毛布は柔らかい毛布のままだった。
「おはようございます」と声がかかった。ドレミーが私の椅子から立ち上がってこちらに歩いてくるのが見えた。
「おはよう」と私は言った。
 立ち上がろうとする私の手を彼女が取ろうとするのを一旦はかわしたが、彼女は両手で私の手を無理やり掴んだ。彼女は彼女のままだった。
「ほら、もう大丈夫」と彼女は言った。私は頷いた。
 部屋の中は何もかも元に戻っていた。透明な窓ガラスの向こうにいつも通りの無人の都が見えた。
「夢?」と私は訊いた。
「そうですし、そうじゃないです。言ったじゃないですか、現実になるって」
「いつ?」
「ちょっと前に夢で」
「覚えてない」と私は言った。途端に何日か分の夢の記憶が逆流してきた。私たちはずいぶん色んなことを話していたが、現実の中で私が夢のことを忘れていたのと同じように、夢の中で私は現実のことを忘れていた。「ああ、うん。そうね」
「ばちが当たりましたね」
「くだらない」
「可哀想な人」とドレミーは言った。私は片眉を上げたが何も言わなかった。実際のところ、それには特に異論がなかった。
「私も気づくのが遅れました。申し訳ありませんでした」
「いえ、私が全部悪い」と私は言った。思い出して自分の頭の上を触った。「耳が」と私は言った。
「耳?」とドレミーが言った。「ああ、ありましたね」
「取っちゃった?」
「取っちゃいましたけど……残しておいた方が良かったですか?」
「いや、大丈夫。ありがとう」と私は言った。「座って」
「色々少しずつ落ち着いてきましたよ」と椅子に腰掛けながらドレミーは言った。「私も慣れてきました」
「みんな元気?」
「元気ですよ。あなたがいなくてみんな寂しがってます」
「そうだと良いけど」と私は言った。「……ねえ、私はあなたに何かを返せている?」
「いいえ、さっぱり」とドレミーは言って笑った。それは全然嫌な感じの笑顔ではなかった。
 私は思わず微笑んでしまう。「一番良いお茶を淹れるわ、とりあえず」と私は言った。
「頑張ってください」
「うん」
 私は立ち上がって水を汲み、火にかけた。湯気の匂いが心地良かった。湯呑みの底が抜けるのが怖くて、しばらく湯が沸かせなかったのだ。
 ドレミーは頬杖をついて、私の作業をぼうっと見ていた。現実で疲れた彼女が眠るとどこに行くのだろうか。今度訊いてみようと思った。
「良い匂いだ」と彼女が言った。
「そうね」と私は言った。「お茶請けを切らしてるけど」
「買いだめしておかなかったんですか」と彼女は笑って言った。「良いですよ、別に」
 盆に湯呑みを二つ載せて机に戻る。椅子に座るとどっと疲れが襲ってきた。両肘をつき、腕に顔を埋めて私はへたり込んでしまう。彼女がそれを見て笑うので私も笑った。
「早く終わらないかな」と私は思わず呟いた。慌てて口を押さえる。彼女も一瞬驚いた顔をしてこちらを見た。
「……大丈夫かな?」と私は訊いた。
「さあ、どうでしょうね」とドレミーは言った。「大丈夫でしょう。うまくいきますよ、たぶん」
 彼女が湯呑みに口をつけるのを見て、私も茶を飲んだ。まだ仄かに甘い気がした。
秋期例大祭さ22ab「走れ文鎮」で古い本を再版します。無事開催されるようで嬉しいです。
色んなことが少しずつ良くなっていくといいですね。
長久手
http://na9akute.web.fc2.com/special/niji/index.html
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コメント



0.400簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
懐かしい故郷のような場所からいつの間にか親しい人々は去り、別れ際に交わすべき言葉すら逃し、すでに前途が失われつつあることを予期しつつも引き延ばされた終わりから抜け出すこともできなず、停滞した思い出を氷砂糖のように消費し続けるしかないサグメ。
その姿に、どこか日々を生きる我々と通じる精神を感じました。
氷砂糖のミダス王のイメージは、夢でありながら、ドレミーの言うようにじっさい現実化しかねない怖さがあります。他者とちゃんと話をしなければ、私たちの手はいともたやすく周囲のものを寂しさをなぐさめる氷砂糖に変えてしまうのだと思います。
それでもサグメにはドレミーが居て、すれ違ったりはしたとしても、言葉を交わすことができるのが救いですね。

>「……ねえ、私はあなたに何かを返せている?」
「いいえ、さっぱり」とドレミーは言って笑った。それは全然嫌な感じの笑顔ではなかった。

ここの二人のやり取りがとても好きです。
サグメが他者に向ける不器用で義理堅い誠実さのようなもの、それを解きほぐすドレミーの損得や貸し借りを越えたどっしりとした友情のようなものがあらわれているようで。

そうである限り、形勢が悪くても、物事はまた違ったようにも動き出すことを信じていられるように思います。舌禍の能力があるゆえに自己反省的にならざるを得ないサグメが、不吉な不安と微かな希望への予感に揺れる様を精緻な文章で切り取った、仄かに甘い作品でした。「まるでそれ自体が氷砂糖みたいに」という直喩を口にしたくなりますが、この辺でサグメと同様口を噤むことにします。
3.90奇声を発する程度の能力削除
面白く良かったです
4.100終身名誉東方愚民削除
元のものから今でも手の届くように変えても戻せないような無いなら無いでもいいと思えるようなものばかりになっていくのに気づいたり不安になったりすることも難しそうだしそれでやっぱり当たり障りのないようにして守ってるのは違うものだと思うと怖くなりました
5.100サク_ウマ削除
初めに読んでただただ情景の美しさに圧倒されました。その後Twitterでのサムネ(「例大祭への感情などがあります」)を見てもう一度読み、哀愁と切なさに締め付けられました。どうか月の都が滅びませんように。良かったです。
6.100名前が無い程度の能力削除
よかったです。
9.100名前が無い程度の能力削除
情景の表現が凄まじくて良かったです
12.100めそふらん削除
比喩と表現が凄まじい…
13.100水十九石削除
紺珠伝本編中の凍り付いた月の都の中、停滞の色を示し続けるその周囲の状況に飲み込まれざるを得ないその描写の積み重ねがやけに目に残って印象的でした。
氷砂糖を口の上で転がして舐めては他者の残り香に身を委ねるしかないサグメの心情が、夢という別次元の世界においてその思い出を美化して埋もれたいと思っているかの様に赤裸々に突出してきているこの感じ。寂寥に身を置き続けると昔への回顧や口惜しさすらも覚えてくるのが犇々と触れてくるかのようで。
最後ドレミーともう一度会話して、残った氷砂糖を全部紅茶に溶かしたみたいにゆっくりと感情が解れていくのも良かったです。ありがとうございました。
14.100モブ削除
暗く冷たい、それって想像は出来ても中々、体感することって少ないと思うのです。それはきっと私たちが科学の光を身近に感じているからで。だからこそ作中二人(人間ではありませんが)とか兎とかに、このラストを見てもなお、どこか人間と違うものを感じました。ご馳走様でした。面白かったです。
17.100名前が無い程度の能力削除
「私は立ち上がって水を汲み、火にかけた。湯気の匂いが心地良かった。湯呑みの底が抜けるのが怖くて、しばらく湯が沸かせなかったのだ。」
硬かったり、暗くて寒かったりするような時間を過ごした後で、熱いお茶を人と飲めるのはとても良い体験だろうと思いました。
確かに氷砂糖製の湯呑みではそれは飲めないだろうという筋もあり、良かったです。