最近、夢を見なくなった。どれだけ深く寝ても、逆にどれだけ浅くても夢が見れないのだ。これは由々しき事態だった。つまり、私は幻想郷に行く手段を失ってしまったのだ。
最初は誰かが意図して邪魔しているのかと思った。賢者の人とか獏とかが。でも、少しだけ納得いかないのだ。今更というのと、少しは接触があってもいいのではないか、ということ。別にヘマをしたりはしていない。むしろどんどん馴染んでいっていたように感じるし、外の世界の誰からも怪しまれはしなかった。
だから多分、第三者の介入ではない。あくまで私と幻想郷の間だけで、なのだ。
だからこそ打つ手が無かった。私だって幻想郷は好きだけど、成り立ち方や詳しい仕組みまでは知らないのだから。いったん拒絶されれば、はいサヨナラ。近寄ることも許されない。
———
幻想郷に行けなくなってから、次第に私は無気力になっていった。元々やる気が無かった学校は別としても、普通に過ごしていても脱力する事が増えてしまった。
これがいわゆる幻想郷ロスか、などと強がってみたものの、やがて無視できないほどにそれは強くなっていく。このままでは拙いと直感した私は、日本の何処かに幻想郷に通じる道がないかと探し始めた。それから、度々小遣いをねだっては、もしかしたらと思えるような田舎に行ってみた。学校なんて物はサボって。
———
鈍行で揺れること十何分か、私はいかにも古臭い木造の駅に到着した。誰も人のいない狭いホームを出ると、そこは遠くに山を望む寂れた町だ。
街のような背の高い建物などまるで無い。駅前には壁と見紛うほどに切り立った建物が並んで、どことなく排他的な感じがした。とりあえず私は朝ごはんをコンビニで買い、レジ袋をぶら下げたまま腰を据える場所を探した。出来るだけ町から離れるように歩くと、ある地点から切り替わるように土の道になった。
立ち止まって先を見ると、それは今までのそれよりもずっと田舎臭かった。だが、これこそ私が望んでいたものだ。嬉々として歩を進めると、道の分かれ目あたりにちっちゃな神社を見つけた。境内が公園になっていて、まだ座れそうなベンチがある。ここで朝ごはんを食べることにした。
———
幻想郷への入り口を探すといっても、ただただ歩くだけだ。こういう田舎を。
だって、私の超能力では何も出来ないのだ。結界を感知することも、あまつさえ向こう側へ行くことも。だから、私はただ運命を信じて歩くだけだ。
道の端に、大きな木があった。樹齢が何百年かありそうなほどの。一番上まで見上げてみて、それから元に戻すと、なんといつの間にか女の人が立っていた。
「すいません」
女の人は私に気づいて、声をかけてきた。かなり古い服を着た人だ。いくら田舎といえども、着物を着て生活するような人がいるものだろうか。
「お腹が、空いているのですが…何か売っていただけないでしょうか」
少し怪しく感じたが、私はさっき食べきれなかったおにぎりをあげることにした。思わぬ臨時収入も貰えることだし。
「あぁ、ありがとうございます。では、これで」
差し出されたのは、これまたとびきり古い穴開き銭だった。いやにぴかぴかだが、どう考えても今の時代では使えないものだ。文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、女の人は一瞬で姿を消していた。
———
本当に腹立たしい。いやまぁ、食べれなかった分をあげただけなんだけど。
騙すくらいなら、最初からタダでくださいって言えよ。まったく、期待した私がバカみたいではないか。一応財布に入れてはいるが、どう考えても支払いには使えないだろう。
怒りで狭くなった視界に、今にも潰れてしまうのではないかと思える家が映った。いや、家じゃない。それは開け放たれていた。
覗いてみると、どうも駄菓子屋のようだ。ガラスケースの中にいっぱいのラムネが冷えていた。暑くなってきて喉が渇いていたし、一本買おう。
「すいませーん。ラムネいくら?」
呼びかけると、店の奥からバタバタという音がした。客なんて来ないとでも思っていたのか、店主らしきお爺さんが慌てて出てきた。いや、お爺さんというには少し若いか。ちょっと老けてるおじさんといった風情だ。
「ラムネはね、一本110円」
「やっす」
思わず突っ込みながら、私は財布の小銭ポケットを確かめた。銀色を一枚と茶色を一枚探していると、さっきの古銭が目についた。もうそれだけで何となく癪だったが、どうせならと確かめてみた。
「おじさん、これ使える?」
「どれかな?」
差し出した古銭をしげしげと眺めるおじさん。もしかしたら、などと甘い期待をしてしまうが、どうせ使えないのは判りきっているのである。
「かなり古いねぇ。何処で手に入れたのこんなの」
「なんか、さっき渡されたんですよ」
私はおにぎり被奪取事件のあらましを話した。おじさんは相槌を打ちながら話を聞き、私が話し終えた所で息を吐いた。
「なるほど、お嬢ちゃんはあの人に逢ったわけね」
「あの人?」
あの女の人は有名だったりするのか。まさか泥棒する事で有名、なんて言わないだろうな。何かを思い出すかのように、おじさんは訥々と話し始めた。
———
おじさんの話を要約したらしたらこうだ。
なかなか古い時代の事だが、あの大きな木の近くで逢引をしている男女がいたのだという。殆ど毎晩のように逢瀬しては、知り合いの者が冷やかしていたと。
だが、どうも男の方は女の資産目当てに付き合っていたらしい。というのも、ある日男は女の金を全部持って行って、姿を眩ませた。それから、女は一人で木の下に立ち続けた。まさか男を待っているでもあるまいに。
そして今日のような暑い日の夜に、女が首を吊っているのが見つかった。それ以来、女は木の下に現れるようになり、先のように飯を買ったりしているという。
まず、あれが幽霊だったのに驚いた。幻想郷では、あんな人の形をとる幽霊は(幽々子さんを除いて)いなかったから。しかも、飯を買う。普通の幽霊はご飯を食べなかったはずだが、どういう事だ。
どうも、コッチの幽霊は幻想郷の幽霊よりも人間臭いようだ。というより、幻想郷より人間と怪異の境界が曖昧というべきか。
「うん、じゃあラムネの代金これでいいよ」
「え?」
古銭をかざしておじさんはそう言った。せっかく手に二枚の硬貨を握っていたのに。でもまぁ、タダでラムネが買えるわけだし、断る理由は無かった。
私は冷え冷えのラムネを取り出して、まず一口飲んだ。喉が渇いていたから、よけいに美味い。すぐに飲み終え、何に使うでもないビー玉を回収してからごみ箱に捨てた。
それから私は一日中ここらを探索したのだが、特に何もなかった。幻想郷への入り口は、終ぞ見つかることはなかった。それでも、思わず怪異に触れることは出来たが。
———
そして、私が家に帰って何日か経った後のこと。あの田舎に行ってから、まだ何処にも行っていない。次の目的地を探している時に、ポストに私宛ての手紙が届いていた。
「お嬢ちゃんへ…って」
いったい誰だ、こんな事をする奴は。少なくとも、私が知ってる奴に私宛てに手紙を出すような奴はいない。というか、手紙の宛先にお嬢ちゃんとか書く知り合いは普通いない。
明らかに怪しすぎる手紙に困惑する。しかも便箋は妙に古めかしく、なにか変な宗教の勧誘とかだろうか。でも開けないままにするのも嫌だったから、とりあえず読んでみた。
———
拝啓、あの時のお客様へ。
いきなりこのような手紙をもらって、さぞ困惑された事でしょう。本来なら老いぼれの得意とする訥った喋り方をするのですが、手紙ということもあり、この様な堅い話し方で失礼させていただきます。
さて、私が書かせていただくのは、あの古銭のことです。そうです、ラムネの代わりに貴女からもらった物です。私はあの時、妙にその古銭の輝きを気に入ってしまい、思わずこれでいいと言ってしまいました。
あの古銭なのですが、実の所、今の私の手元にはありません。とある学者先生に見せたところ、君、是はどうした事だ、こんなに古い型の銭なのに、なぜこの様に新しいのだ、とまくしたてられ、貰った物だからと言い出せず、つい渡してしまったのです。その時に、少しだけですが貴女様のことも話してしまったのです。なので、近い内に学者先生がそちらに向かうと思われます。
私の思慮が足りぬ行いのせいで、貴女様に無用な迷惑を掛けてしまうことを、紙面ながらお詫び申し上げます。
———
読み終えた所で、まず一つの疑問がわいた。なぜあのおじさんは、私に手紙を送れたのだろうか。勿論、私は郵便番号も住所も教えていない。教えるわけがない。なのに、手紙は狂いなく私の家のポストに投げ込まれていた。これはどうした事だろう。
そして、もう一つ。手紙にあった、「近い内に学者先生がそちらに向かうと思われます」とは、どういう意味だろうか。一つ目の疑問にもつながるが、それはつまり、おじさんが私の家の住所を知っていて、それを教えたという事に他ならないではないか。一体、何が起こっているのだろう。今までに見たどんな悪夢より恐ろしく思える。あのおじさんは、何者だ。
そして、私は今までの幻想郷から何も学んでいなかった事が判った。怪異なんて、その息遣いが聴こえるほど近い場所にいるのだ。それこそ、迷い込んでも気づかない程に。
恐らく、道が切り替わった所からだろう。その時から、私は何か別の場所へと迷い込んでいたのだ。奇しくもそこは幻想郷ではなかったが。
「フフフ…」
思わず、笑いがこぼれた。このままいけば、幻想郷に行ける日だって遠くないはずだ。自然と胸がときめいていくのを感じる。
そうなると、やって来るという学者先生にも興味がわく。怪異の世界から、私の所までやって来るのだ。いったいどんな者なのか、今から楽しみでならない。必死になって興奮を抑えていると、呼び鈴が鳴った。今日は私以外誰も家にいないから、私が応対するしかないのだ。急いで玄関まで向かうと、ドアの向こうから声が聴こえた。
「すみませーん、私、学者の岡崎というんですがー。少々お話を伺いに来ましたー」
最初は誰かが意図して邪魔しているのかと思った。賢者の人とか獏とかが。でも、少しだけ納得いかないのだ。今更というのと、少しは接触があってもいいのではないか、ということ。別にヘマをしたりはしていない。むしろどんどん馴染んでいっていたように感じるし、外の世界の誰からも怪しまれはしなかった。
だから多分、第三者の介入ではない。あくまで私と幻想郷の間だけで、なのだ。
だからこそ打つ手が無かった。私だって幻想郷は好きだけど、成り立ち方や詳しい仕組みまでは知らないのだから。いったん拒絶されれば、はいサヨナラ。近寄ることも許されない。
———
幻想郷に行けなくなってから、次第に私は無気力になっていった。元々やる気が無かった学校は別としても、普通に過ごしていても脱力する事が増えてしまった。
これがいわゆる幻想郷ロスか、などと強がってみたものの、やがて無視できないほどにそれは強くなっていく。このままでは拙いと直感した私は、日本の何処かに幻想郷に通じる道がないかと探し始めた。それから、度々小遣いをねだっては、もしかしたらと思えるような田舎に行ってみた。学校なんて物はサボって。
———
鈍行で揺れること十何分か、私はいかにも古臭い木造の駅に到着した。誰も人のいない狭いホームを出ると、そこは遠くに山を望む寂れた町だ。
街のような背の高い建物などまるで無い。駅前には壁と見紛うほどに切り立った建物が並んで、どことなく排他的な感じがした。とりあえず私は朝ごはんをコンビニで買い、レジ袋をぶら下げたまま腰を据える場所を探した。出来るだけ町から離れるように歩くと、ある地点から切り替わるように土の道になった。
立ち止まって先を見ると、それは今までのそれよりもずっと田舎臭かった。だが、これこそ私が望んでいたものだ。嬉々として歩を進めると、道の分かれ目あたりにちっちゃな神社を見つけた。境内が公園になっていて、まだ座れそうなベンチがある。ここで朝ごはんを食べることにした。
———
幻想郷への入り口を探すといっても、ただただ歩くだけだ。こういう田舎を。
だって、私の超能力では何も出来ないのだ。結界を感知することも、あまつさえ向こう側へ行くことも。だから、私はただ運命を信じて歩くだけだ。
道の端に、大きな木があった。樹齢が何百年かありそうなほどの。一番上まで見上げてみて、それから元に戻すと、なんといつの間にか女の人が立っていた。
「すいません」
女の人は私に気づいて、声をかけてきた。かなり古い服を着た人だ。いくら田舎といえども、着物を着て生活するような人がいるものだろうか。
「お腹が、空いているのですが…何か売っていただけないでしょうか」
少し怪しく感じたが、私はさっき食べきれなかったおにぎりをあげることにした。思わぬ臨時収入も貰えることだし。
「あぁ、ありがとうございます。では、これで」
差し出されたのは、これまたとびきり古い穴開き銭だった。いやにぴかぴかだが、どう考えても今の時代では使えないものだ。文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、女の人は一瞬で姿を消していた。
———
本当に腹立たしい。いやまぁ、食べれなかった分をあげただけなんだけど。
騙すくらいなら、最初からタダでくださいって言えよ。まったく、期待した私がバカみたいではないか。一応財布に入れてはいるが、どう考えても支払いには使えないだろう。
怒りで狭くなった視界に、今にも潰れてしまうのではないかと思える家が映った。いや、家じゃない。それは開け放たれていた。
覗いてみると、どうも駄菓子屋のようだ。ガラスケースの中にいっぱいのラムネが冷えていた。暑くなってきて喉が渇いていたし、一本買おう。
「すいませーん。ラムネいくら?」
呼びかけると、店の奥からバタバタという音がした。客なんて来ないとでも思っていたのか、店主らしきお爺さんが慌てて出てきた。いや、お爺さんというには少し若いか。ちょっと老けてるおじさんといった風情だ。
「ラムネはね、一本110円」
「やっす」
思わず突っ込みながら、私は財布の小銭ポケットを確かめた。銀色を一枚と茶色を一枚探していると、さっきの古銭が目についた。もうそれだけで何となく癪だったが、どうせならと確かめてみた。
「おじさん、これ使える?」
「どれかな?」
差し出した古銭をしげしげと眺めるおじさん。もしかしたら、などと甘い期待をしてしまうが、どうせ使えないのは判りきっているのである。
「かなり古いねぇ。何処で手に入れたのこんなの」
「なんか、さっき渡されたんですよ」
私はおにぎり被奪取事件のあらましを話した。おじさんは相槌を打ちながら話を聞き、私が話し終えた所で息を吐いた。
「なるほど、お嬢ちゃんはあの人に逢ったわけね」
「あの人?」
あの女の人は有名だったりするのか。まさか泥棒する事で有名、なんて言わないだろうな。何かを思い出すかのように、おじさんは訥々と話し始めた。
———
おじさんの話を要約したらしたらこうだ。
なかなか古い時代の事だが、あの大きな木の近くで逢引をしている男女がいたのだという。殆ど毎晩のように逢瀬しては、知り合いの者が冷やかしていたと。
だが、どうも男の方は女の資産目当てに付き合っていたらしい。というのも、ある日男は女の金を全部持って行って、姿を眩ませた。それから、女は一人で木の下に立ち続けた。まさか男を待っているでもあるまいに。
そして今日のような暑い日の夜に、女が首を吊っているのが見つかった。それ以来、女は木の下に現れるようになり、先のように飯を買ったりしているという。
まず、あれが幽霊だったのに驚いた。幻想郷では、あんな人の形をとる幽霊は(幽々子さんを除いて)いなかったから。しかも、飯を買う。普通の幽霊はご飯を食べなかったはずだが、どういう事だ。
どうも、コッチの幽霊は幻想郷の幽霊よりも人間臭いようだ。というより、幻想郷より人間と怪異の境界が曖昧というべきか。
「うん、じゃあラムネの代金これでいいよ」
「え?」
古銭をかざしておじさんはそう言った。せっかく手に二枚の硬貨を握っていたのに。でもまぁ、タダでラムネが買えるわけだし、断る理由は無かった。
私は冷え冷えのラムネを取り出して、まず一口飲んだ。喉が渇いていたから、よけいに美味い。すぐに飲み終え、何に使うでもないビー玉を回収してからごみ箱に捨てた。
それから私は一日中ここらを探索したのだが、特に何もなかった。幻想郷への入り口は、終ぞ見つかることはなかった。それでも、思わず怪異に触れることは出来たが。
———
そして、私が家に帰って何日か経った後のこと。あの田舎に行ってから、まだ何処にも行っていない。次の目的地を探している時に、ポストに私宛ての手紙が届いていた。
「お嬢ちゃんへ…って」
いったい誰だ、こんな事をする奴は。少なくとも、私が知ってる奴に私宛てに手紙を出すような奴はいない。というか、手紙の宛先にお嬢ちゃんとか書く知り合いは普通いない。
明らかに怪しすぎる手紙に困惑する。しかも便箋は妙に古めかしく、なにか変な宗教の勧誘とかだろうか。でも開けないままにするのも嫌だったから、とりあえず読んでみた。
———
拝啓、あの時のお客様へ。
いきなりこのような手紙をもらって、さぞ困惑された事でしょう。本来なら老いぼれの得意とする訥った喋り方をするのですが、手紙ということもあり、この様な堅い話し方で失礼させていただきます。
さて、私が書かせていただくのは、あの古銭のことです。そうです、ラムネの代わりに貴女からもらった物です。私はあの時、妙にその古銭の輝きを気に入ってしまい、思わずこれでいいと言ってしまいました。
あの古銭なのですが、実の所、今の私の手元にはありません。とある学者先生に見せたところ、君、是はどうした事だ、こんなに古い型の銭なのに、なぜこの様に新しいのだ、とまくしたてられ、貰った物だからと言い出せず、つい渡してしまったのです。その時に、少しだけですが貴女様のことも話してしまったのです。なので、近い内に学者先生がそちらに向かうと思われます。
私の思慮が足りぬ行いのせいで、貴女様に無用な迷惑を掛けてしまうことを、紙面ながらお詫び申し上げます。
———
読み終えた所で、まず一つの疑問がわいた。なぜあのおじさんは、私に手紙を送れたのだろうか。勿論、私は郵便番号も住所も教えていない。教えるわけがない。なのに、手紙は狂いなく私の家のポストに投げ込まれていた。これはどうした事だろう。
そして、もう一つ。手紙にあった、「近い内に学者先生がそちらに向かうと思われます」とは、どういう意味だろうか。一つ目の疑問にもつながるが、それはつまり、おじさんが私の家の住所を知っていて、それを教えたという事に他ならないではないか。一体、何が起こっているのだろう。今までに見たどんな悪夢より恐ろしく思える。あのおじさんは、何者だ。
そして、私は今までの幻想郷から何も学んでいなかった事が判った。怪異なんて、その息遣いが聴こえるほど近い場所にいるのだ。それこそ、迷い込んでも気づかない程に。
恐らく、道が切り替わった所からだろう。その時から、私は何か別の場所へと迷い込んでいたのだ。奇しくもそこは幻想郷ではなかったが。
「フフフ…」
思わず、笑いがこぼれた。このままいけば、幻想郷に行ける日だって遠くないはずだ。自然と胸がときめいていくのを感じる。
そうなると、やって来るという学者先生にも興味がわく。怪異の世界から、私の所までやって来るのだ。いったいどんな者なのか、今から楽しみでならない。必死になって興奮を抑えていると、呼び鈴が鳴った。今日は私以外誰も家にいないから、私が応対するしかないのだ。急いで玄関まで向かうと、ドアの向こうから声が聴こえた。
「すみませーん、私、学者の岡崎というんですがー。少々お話を伺いに来ましたー」
謎の提示とさあここから何かが始まる、というのを、私達の物語はここからだ的に〆ておりちゃんと作品として終わらせていてよかったです。
とはいえ長く展開して物語としてもっと読みたかったのは有りました。
有難う御座いました。
面白かったです。
それであってこのラムネ売りのおじさんから手紙が来て急転直下、そして最後のオチ。幻想郷とは別方向で幻想を抱くその始まりの開闢という展開がまさにと言わざるを得ません。面白かったです。
好きです。
読めば読むほど謎が深まるばかりで、怪異の恐ろしさに触れた様な気がしました。
最後のオチも個人的にはすごく好きで、読み終わった後怪異が近づいてきた衝撃の余韻に浸れました。
幻想を求めて突き動かされる董子に、秘封倶楽部の魂を見ました
全然怪しくないのに急に刺してきた謎のおじさんがとてもよかったです
怪異が怪異を呼ぶ。こうなると、菫子こそが幻想郷の入口なのかも知れないですね。
幻想郷にいけなくなった董子の現代怪異のプロローグとして
非常に引き込まれる作りになっていたと思います。