「ガラス玉をここに引っ掛けるんですぅ」
「そうしないとビー玉が口元をふさいじゃうんだよ。見てて、こうやるんだよ」
ゴクゴクッゴク
「うん、分かった!」
ゴクッゴクゴク
「「できたね~ じょーず!」」
「ぷぱ~~~! 冷たくて美味しい~」
フランちゃんの満足顔にシロちゃんも小ちゃんも嬉しそうです。
「けぷっ」
小さなおくび(ゲップ)をしたフランちゃんが慌てて口を抑えます。レディとしてはバッドですから。
「あはは、それでいーんだよ!」
「そうですよ~ ラムネにげっぷはつきものですぅ」
夏の昼下がり。
ここは駄菓子屋『香霖堂』。
古ぼけたベンチに座ってラムネを飲む仲良し幼女三人組。
【フランちゃん】ことフランドール・スカーレットさん。
【シロちゃん】ことリリーホワイトさん。
そして
【小(しょう)ちゃん】こと大妖精三姉妹の末妹。小さな大妖精さん。
今は幼精二人がラムネの正しい飲み方を妹吸血鬼さんにレクチャーしているところでした。
「ワタシ、駄菓子屋って初めて」
「フランちゃんって、あんまりお外に出ないですからね~」
「私は来たことあるよー」
わいわいキャイキャイと楽しそうな三人組でした。
―――†―――†―――†―――
今より半刻ほど前のことです。
小ちゃんとシロちゃんが紅魔館の門前にいます。
門番の紅美鈴は取次無用と聞いていますからニコニコと佇んでいるだけです。
「「フランちゃーん! あーそーびーまーしょっ!!」」
「はーーーい」
大きな玄関扉が勢いよく開いてフランちゃんが出てきます。
「フランドール様! 帽子をお忘れでーす!」
フランちゃんの後を追いかけてきたメイド妖精がツバ広の白い帽子を差し出しました。
「あっ いっけなーい。これがなくっちゃダメよねー」
某天才図書館魔女が太陽光線というエネルギーのベクトル(力の向き)を自動で反射する一方通●な魔導術式を開発したのです。
その術式を組み込んだ帽子を被ることで日中堂々と闊歩できるようになった吸血鬼さんなのです。
そんな様子を心配そうにみていた美鈴。
「本当にお一人で大丈夫ですか? 私がお供しますが?」
「へーき、へーき、シロちゃんと小ちゃんが一緒なんだからさ」
「しかし」
「もぉー 美鈴は心配しすぎだよ」
受け取った帽子をしっかり被り、美鈴の言葉を待たずに妖精二人に駆け寄りました。
「それじゃっ 行ってきまーす」
そんなこんなで飛び立つ三人組。
この様子をお屋敷の窓から見つめている人影がありました。
「ふう」
「ご心配ですか?」
「さ、咲夜! いつからそこにいたのよ?」
誰もいないと思った室内で、後ろから声をかけられてビックリです。
「私はいつでもお嬢様のおそばにおります」
美麗にして優雅、可憐であり高貴。ただ存在するだけで周囲を圧倒する主従二人。
皆さまお待ちかね! 永遠に紅い幼き月、レミリア・スカーレット卿&超弩級万能メイド、十六夜咲夜です!
「いつもおそばにって……咲夜アナタ、私のストライカーじゃないの?」
「強打者ではありませんし、シュートを放つわけでもありません。ましてや打撃中心の格闘家でもありません」
「あれ? えっと、ストレッチャーだっけ?」
「それは多くの場合、移動用車輪付き簡易ベッドのことです」
「うーん……あっ ストレイカーなのね?」
「それは謎の円盤を迎撃する組織の沈着冷静な最高司令官です」
相変わらずのトンデモ会話のキャッチボールですが、十六夜咲夜はお嬢様の暴投を一球たりとも逸らさず受け止めます。メイドの鑑ですね。
正解はストーカーです。
「フランドール様がお出かけです。万が一に備え、影から美鈴をつけましょうか?」
「何を言っているの。フランは私、紅魔館当主レミリア・スカーレットの妹なのよ。微塵も心配していないわ」
「左様ですか。では御心のままに」
さすがの度量を示された御当主様です。腕組みのまま堂々としています。でも、お目目は上下左右にせわしなく動いています。
「……少し出かけてくるわ」
「どちらへお出かけで? お供をしますが」
「ちょ、ちょっとそこまでよ。 一人で行くから、ついてこなくていいわ」
「フラン――」
「ち、ち、違うわよ!」
「――スパンを焼こうと思っております、今日はバタールをランチに添えようかと」
「え? そ、そうね! わ、悪くないわね」
「ふむ。かしこまりました。ところで、少し外に出てよろしいでしょうか?」
「外に? どうしたの?」
「お嬢様にはお見せできない醜態を晒すからです」
「は? なにそれ?」
「お腹を抱えて大笑いしたいのです」
「…………笑いたいならここで笑いなさいよ!」
うむうむ。主従とは、かく有りたいですね。
―――†―――†―――†―――
「とーーちゃあーーく…………いまっ!」
すたたたん
三人ほぼ同時に着弾・・・もとい、着地です。
練習したかいがありましたね。
どこで覚えたのか、自衛隊の砲撃演習が妖精たちの間で流行っているようです。
教えたのは、あの緑の髪の巫女さんでしょうね。
間違いない!
てくてくと人里を歩く三人。
「おや、リリーちゃーん、今日は水ようかんの出来がいいよ~ 寄ってかない?」
「また今度ですぅ」
春を運んでくる(と勝手に人々に思われている)春告精は、里の人々の人気者です。あちこちから声をかけられます。
人里には三人以外にも妖精や小妖怪が、普通に出歩いています。
博麗の巫女のおかげ(主に腕力)で人に害をなさない妖怪、妖精は自由に人里を出入りできるようになりました。
また天狗と人との協定ができ、白狼天狗が人里を24時間パトロールするようになってから治安は格段に良くなったんですね。
人里の出入り口には天狗の駐在所まであります。
――― 閑話休題 ―――
「ここでぇ~すぅ!」
古ぼけたお店の看板には『香霖堂』とあります。
「なにここ?」
「「駄菓子屋ですぅ・だよ」」
フランちゃんは少し不安そうです。いかにも怪しげな店構えですから。
「「こんにちはー!!」」
元気よく店に入るシロちゃんと小ちゃん、そのあとを恐る恐るついて行くフランちゃん。
「いらっしゃ~い」
「あれー? 魔理沙?」
「おや、珍しいお客さまだぜ」
「なにしてるの?」
「なにって、店番だぜ。香霖に頼まれたんだ」
お店にいたのは霧雨魔理沙でした。フランちゃんビックリです。
妖精たちは慣れたもので魔理沙が店番をしていても気にならないようです。
「お前こそ何してんだ? チビ妖精たちと一緒に?」
「「わたし達はお客よ。チビ妖精じゃない」」
「へいへい、いらっしゃいませお客さま~」
ぶーぶー文句を言う妖精たちを軽くあしらう魔理沙ですが、妖精たちもさして気にしていないようでさっさとセレクトに入りました。
「私、ビッ●リマンチョコにしよ」
「わたしも~」
ビック●マンチョコを選ぶ妖精二人。
「フランちゃんはなににする?」
「んーと……ワタシも同じにする」
「へい毎度! ビックリマ●チョコは三十万円だぜ」
「ええーー!! そんなにするの?」
「フランちゃ~ん。 駄菓子屋ジョークですぅ」
「だがしやじょーく?」
「駄菓子屋さんでは何でも大げさに言うんだよ」
そう言って小ちゃんは三十円を払いました。
「ふーん、分かった。 じゃぁこれで」
フランちゃんが差し出したのは金ピカの小さなカード。
「おまっ! ここじゃ、それは使えないぜ」
「そうなの? これがあれば人里で何でも買えるってお姉さまが」
「んー さすがお嬢様だなー」
駄菓子屋でアメッ●ス・ゴールドカードとは。
「「なーにそれ?」」
妖精二人は綺麗なカードに興味津々のようです。
「んんー……多分お前らには一生縁のないシロモノだからなぁ……とりあえずフラン、そいつはしまえ」
この場で唯一説明が出来そうな魔理沙でしたが面倒くさくなったようです。
「それじゃ、これでいい?」
今度は一万円札を出したフランちゃん。
「あーもぉ…… おまえなぁー」
駄菓子屋で万札は×でしょうねぇ。
駄菓子屋と同人イベントでは万札は、現金だけに厳禁です!
「現金だけに厳禁です!」(重要なので二度言いました)
とりあえず小銭を用意しましょう。
ただしTeam東方不敗は撤収間際なら、先着1名様に限り万札OKです(むしろウエルカム)
「はぁ、しょうがない。今日のところはフランの分は私が奢ってやるよ」
魔理沙が自分のお財布から三十円をチャリチャリとお店の小銭入れに放りました。
いつも堂々とかっぱらいをするくせに変なところ律儀なんですよね、この魔法使いさん。
「良いの?」
「ああ、その代わり今度お前んちで夕食を奢ってくれよ?」
駄菓子屋の買物で紅魔館のディナーを釣るとは抜け目ありませんね。
妖精二人が「やった! レアだ!」「うえー カブった!」などとはしゃいでいますが、ビックリマンシールの二頭身キャラに心が踊らないフランちゃん。
だって【悪魔vs天使】と言いながら悪魔が今ひとつだからです。
だって比較対象が紅魔館の面々なんですよ?
綺麗で可愛くてカッコイイ(そのどれもが標準の遥か上)悪魔の軍団に囲まれて暮らしているのですからこの大雑把にデフォルメされたシールの良さがピンと来ないようです。
それでも微笑を浮かべてなんとか二人に合わせています。
がんばれフランちゃん!
ビックリマンチョ●本体のチョコレートをはさんだウエハースをサクサク食べてラムネに挑戦してきなこ棒を咥えて三人は大満足のようです。
そんな様子を笑って見ていた魔理沙が問いかけました。
「あのさー、こいつら(妖精たち)はいいけど、フランお嬢様がこんな汚い店に来ていいのか?」
「え? それは―――」
「汚い店で悪かったな」
落ち着いた男性の声が割って入りました。
店の入り口に現れたのは店主の森近霖之助です。
「これでも毎日掃除はしてるけどね」
「おう、お帰り~ 早かったじゃないか」
悪びれる様子もなく、さっさと店番の席を離れる魔理沙。
「お駄賃代わりにコレもらうぜ」
返事を待たずに袋を開けてお菓子をかじりました。
「な~にそれ?」
フランちゃんが興味深そうにそのお菓子を見ています。
「う●い棒シイタケ味だぜっ 一口どうだ?」
魔理沙が差し出したう●い棒をじぃ~っと見つめるフランちゃん。
「フランちゃん、それやめたほうがいいよ」
「おいしくないから~」
「なんだよー お前ら」
「シイタケ味なんて信じらんない!」
「う●い棒じゃなくて●ずい棒だよ~」
「妖精はお子ちゃま舌だからな。この大人の味が分からないのさ。なぁ、香霖」
霖之助に同意を求める魔理沙ですが―――
「魔理沙以外に買っていく人はいないな」
「な、なんだってー!」
「それは僕のセリフだろ」
魔理沙に薦められて店に置いてみたけれど、まったく売れない。不良在庫ってやつですねw
実際、う●い棒にはコンポタ、めんたい、チーズなどの人気定番に隠れて『冒険に出たけど還ってこなかった』フレーバーも多いです。なっとう味、やきとり味、牛タン塩味……合掌。
「あ、それ知ってる!」
魔理沙が次に食べている菓子袋を見て小ちゃんが声を上げました。
「お、ライ●ースナック知ってるのか? ちっちゃいくせに通だなあ」
「この前、中姉(なかねえ)が買ってた。ぜんぜん、おいしくなかったよ」
「ああ、確かに旨くないな、でもな―――」
「うちはスナックを食べきる約束をしないとカードは渡さないことにしているんだよ」
中途半端に甘くて塩っぱい。パンチの緩い薄味でスカスカしていて『やめられる止められる』スナック菓子。ロングセラーな名作【かっぱえ●せん】を世に送り出したメーカーとは思えない当時の子供をナメきったシロモノでした。(カ●ビーさん、ごめんなさい)
袋ごと捨てるのは当たり前、悪い子は中身を道端にぶちまけるといったありさまで社会問題になったくらいですから。親に怒られても、先生に怒られても、それでも捨てていました。それほどヒドい味だったんです!
しかしこのスナックに当時の子供たちが熱狂したのはオマケとして付いていたラ●ダーカードの存在でした。
「カードはキノコモルグだったから、中姉残念がってたよ」
「なんだと!!」
小ちゃんの言葉に、食いつく魔理沙。
「毒キノコのエキスに一週間浸かって生まれた猛毒怪人キノコモルグか!!」
「お前のねーちゃんに旧1号ライダーと交換しないか言っといてくれ。桜島の激レアもんだぜ」
「えー 中姉は一文字ライダー派だよ?」
「ん~分かった。じゃあ2号ライダーで」
「中姉に言っとくねー」
「よし! 交渉成立だぜ」
カード表面に仮面ライ●ーや怪人がプリントされ、裏面にはデータが記されていました。
劇中では明らかにされなかった怪人のプロフィールが図鑑のように閲覧でき、集めるほどに蒐集欲が煽られるのです。また、同様に集めている友達がたくさんいたので交換・懸賞の対象になり、レアカードを持っていることはステイタスでもありました。
キバ男爵が初登場した当時、すかさずツバサ大僧正を引き当てた黒沢君は学校で英雄扱いでしたね。
そしてラッキーカードと呼ばれるものが存在し、カ●ビーの係宛に送ると仮面●イダーアルバムなるカードホルダーケースがもらえたのです。
箱買いしてアルバムを見せびらかす地主のボンボンが腹立たしかったですね。
――― 閑話休題 ―――
ぴーぴーぴー
楽しそうに口から笛の音を出している魔理沙。
「魔理沙ってそんなに口笛うまかったっけ?」
ぴぴーぴー
「ワタシ口笛できない」
ぴぴぴぴぴぴー
「私もー 中姉が得意なんだけどねー」
ぴーぴーぴーぴぴ
「「魔理沙すごーい」」
「ふたりとも違いますぅ。フエラムネですぅ」
「「フエラムネ?」」
シロちゃんがが魔理沙のポッケに手を入れて白いアメのようなものが貼りつた小さな板を引っ張り出しました。
「ぴっー! あ、こら!」
「これですぅ」
フエラムネは真ん中に穴が空いていて、唇に挟んで息をすると口笛のような高音が響く玩具要素のある駄菓子です。大体八個入りでコーラやパイン味などもありますが、白いラムネ味が主流です。クッ●ーラムネなどとは違い、溶けにくいのが特徴でしょうか。
「「ぴーぴーぴーぴー」」
シロちゃんと小ちゃんは気持ちよくフエラムネを鳴らしていますが、フランちゃんは苦戦しています。
「お前、下手だな~」
「なによ! (ガリリッ)あっ!」
牙があるせいかどうしても引っ掛かって噛み砕いてしまうのです。
「あっはっはっは、ドンマイ、もう一個やるぜ」
―――†―――†―――†―――
「もう、なにしてんのよ。 あのコは」
少し離れた場所で店の中をうかがっているお姉さん吸血鬼がいました。
「魔理沙も魔理沙よ。あんなに笑うことないのに!」
いらいらするレミリアに帽子より大きな影がかかりました。
思わず振り返ると日傘をかざした咲夜がいました。
「咲夜! ついてきたの?」
「いいえ、駄菓子なる世俗のスゥーツに興味がありましたのでここまで来たまでです。お嬢様こそ何故ここに?」
「わ、私も、たまたまここを通っただけよ」
「たまたま、ですか……左様ですか、ふむふむ」
「何よ! 言いたいことがあるなら言いなさいよ!」
この妙に察しの良い従者にはバレバレと見て開き直っちゃいましたね。
その従者さんはお嬢様イジりに飽きたようで、駄菓子屋をちらりと見て言いました。
「しかし、駄菓子屋で買い食いとは高貴なスカーレット家のご令嬢として相応しくございませんね。お連れしてきましょう」
「咲夜! 待って!」
「いかがなさいましたか?」
「あんなに楽しそうに笑うフラン…… 止めるなんて野暮はやめましょう。帰るわよ」
「よろしいので?」
「魔理沙もいるし。あの妖精たちなら安心してフランを任せられるわ」
心配性のお姉さんですが、妹の楽しみや可能性は閉ざしたくないのです。何かあれば自分が全力でフォローすると覚悟を決めているのですから。
そして帰路に就く主従。
「美鈴に聞いたのだけれど、この先に評判の良いお団子茶屋があるそうよ。寄っていきましょうか?」
「お団子茶屋ですか?」
「スカーレット家にはふさわしくないかしら?」
「いえ。和菓子もたまには良いかと」
「そういえば、美鈴は和菓子が好きなようね。アナタ、お土産に買っていってあげたら?」
「それは……わかりました、お許しをいただけるのなら」
「苦しゅうないわ、ふふ」
―――†―――†―――†―――
「でねでね、そのラムネっていうのがシュワシュワしてとってもおいしかった~」
ここは紅魔館の広大なリビングです。
ちょっとした冒険をこなしてきた妹の話を一見鷹揚に聞いているお姉さん。
「そう、それはよかったわね」(ラムネ? 聞いたことはないわ。 シュワシュワ? スパークリングワインの一種かしら? でも子供にアルコールは……)
「飲むラムネと笛になるラムネ、小さな粒で噛むとシュワーってなるラムネ! いろいろあるんだよ!」
(は? 笛? 粒? ラムネがいっぱい? さっぱり分からないわ!)
「駄菓子屋、面白かった~ 美味しかったし~」
満足げに語るフランの話を聞いて、駄菓子屋に興味を持つレミリアさん。
(私も行ってみたいわね……でも)
壁際には咲夜と美鈴が控えています。
ちらりと咲夜を見る。
(「妹様はともかく、紅魔館当主がそんな怪し気な店に行くなど許容できません」って言うわよね)
「ねえ、お姉さま~ また行ってもいいでしょう?」
(そうだ! フランに一緒に行こうって言わせれば、咲夜も折れるはず)
「一人では危ないわ。ここは―――」
「私がお供します」
おっと、美鈴が口を挟みました。
(はぁ!?)
「私がお供すれば心配ありません。それに、フランドール様のお話を聞くと、私も行ってみたくなりました!」
(美鈴! なに言ってるのよ! お前空気読めよ!)
この時ばかりは気が読めない美鈴でしたw
「やったぁ! お姉さま、美鈴が一緒ならいいでしょ?」
「そ、そうね。……咲夜はどうかしら?」
「問題ないかと―――(プッ)」
(咲夜! 今、笑ったわね? アナタ全て分かったうえで笑ったわね!?)
「ぐぐっ……美鈴が一緒ならばいいわよ」
「お姉さま! ありがとー!」
―――†―――†―――†―――
「パッチェ~、人里に付き合ってよ~」
その夜。
大図書館にまでやってきて長年の親友パチュリー・ノーレッジ相手にくだをまくレミリアさん。
「いやよ。めんどくさい」
「そんなこと言わないで、親友でしょ~」
「レミィ、何があったの?」
「ん~ 実はね―――」
さてさて、レミリアお嬢様は駄菓子屋に行くことができるんでしょうか?
――― おしまい ―――
次回
「レミィとパッチェの初めてのおつかい(人里編)。ふたりは無事に香霖堂にたどり着くのか!? の巻」につづく
(つづきません! 作者註)
「そうしないとビー玉が口元をふさいじゃうんだよ。見てて、こうやるんだよ」
ゴクゴクッゴク
「うん、分かった!」
ゴクッゴクゴク
「「できたね~ じょーず!」」
「ぷぱ~~~! 冷たくて美味しい~」
フランちゃんの満足顔にシロちゃんも小ちゃんも嬉しそうです。
「けぷっ」
小さなおくび(ゲップ)をしたフランちゃんが慌てて口を抑えます。レディとしてはバッドですから。
「あはは、それでいーんだよ!」
「そうですよ~ ラムネにげっぷはつきものですぅ」
夏の昼下がり。
ここは駄菓子屋『香霖堂』。
古ぼけたベンチに座ってラムネを飲む仲良し幼女三人組。
【フランちゃん】ことフランドール・スカーレットさん。
【シロちゃん】ことリリーホワイトさん。
そして
【小(しょう)ちゃん】こと大妖精三姉妹の末妹。小さな大妖精さん。
今は幼精二人がラムネの正しい飲み方を妹吸血鬼さんにレクチャーしているところでした。
「ワタシ、駄菓子屋って初めて」
「フランちゃんって、あんまりお外に出ないですからね~」
「私は来たことあるよー」
わいわいキャイキャイと楽しそうな三人組でした。
―――†―――†―――†―――
今より半刻ほど前のことです。
小ちゃんとシロちゃんが紅魔館の門前にいます。
門番の紅美鈴は取次無用と聞いていますからニコニコと佇んでいるだけです。
「「フランちゃーん! あーそーびーまーしょっ!!」」
「はーーーい」
大きな玄関扉が勢いよく開いてフランちゃんが出てきます。
「フランドール様! 帽子をお忘れでーす!」
フランちゃんの後を追いかけてきたメイド妖精がツバ広の白い帽子を差し出しました。
「あっ いっけなーい。これがなくっちゃダメよねー」
某天才図書館魔女が太陽光線というエネルギーのベクトル(力の向き)を自動で反射する一方通●な魔導術式を開発したのです。
その術式を組み込んだ帽子を被ることで日中堂々と闊歩できるようになった吸血鬼さんなのです。
そんな様子を心配そうにみていた美鈴。
「本当にお一人で大丈夫ですか? 私がお供しますが?」
「へーき、へーき、シロちゃんと小ちゃんが一緒なんだからさ」
「しかし」
「もぉー 美鈴は心配しすぎだよ」
受け取った帽子をしっかり被り、美鈴の言葉を待たずに妖精二人に駆け寄りました。
「それじゃっ 行ってきまーす」
そんなこんなで飛び立つ三人組。
この様子をお屋敷の窓から見つめている人影がありました。
「ふう」
「ご心配ですか?」
「さ、咲夜! いつからそこにいたのよ?」
誰もいないと思った室内で、後ろから声をかけられてビックリです。
「私はいつでもお嬢様のおそばにおります」
美麗にして優雅、可憐であり高貴。ただ存在するだけで周囲を圧倒する主従二人。
皆さまお待ちかね! 永遠に紅い幼き月、レミリア・スカーレット卿&超弩級万能メイド、十六夜咲夜です!
「いつもおそばにって……咲夜アナタ、私のストライカーじゃないの?」
「強打者ではありませんし、シュートを放つわけでもありません。ましてや打撃中心の格闘家でもありません」
「あれ? えっと、ストレッチャーだっけ?」
「それは多くの場合、移動用車輪付き簡易ベッドのことです」
「うーん……あっ ストレイカーなのね?」
「それは謎の円盤を迎撃する組織の沈着冷静な最高司令官です」
相変わらずのトンデモ会話のキャッチボールですが、十六夜咲夜はお嬢様の暴投を一球たりとも逸らさず受け止めます。メイドの鑑ですね。
正解はストーカーです。
「フランドール様がお出かけです。万が一に備え、影から美鈴をつけましょうか?」
「何を言っているの。フランは私、紅魔館当主レミリア・スカーレットの妹なのよ。微塵も心配していないわ」
「左様ですか。では御心のままに」
さすがの度量を示された御当主様です。腕組みのまま堂々としています。でも、お目目は上下左右にせわしなく動いています。
「……少し出かけてくるわ」
「どちらへお出かけで? お供をしますが」
「ちょ、ちょっとそこまでよ。 一人で行くから、ついてこなくていいわ」
「フラン――」
「ち、ち、違うわよ!」
「――スパンを焼こうと思っております、今日はバタールをランチに添えようかと」
「え? そ、そうね! わ、悪くないわね」
「ふむ。かしこまりました。ところで、少し外に出てよろしいでしょうか?」
「外に? どうしたの?」
「お嬢様にはお見せできない醜態を晒すからです」
「は? なにそれ?」
「お腹を抱えて大笑いしたいのです」
「…………笑いたいならここで笑いなさいよ!」
うむうむ。主従とは、かく有りたいですね。
―――†―――†―――†―――
「とーーちゃあーーく…………いまっ!」
すたたたん
三人ほぼ同時に着弾・・・もとい、着地です。
練習したかいがありましたね。
どこで覚えたのか、自衛隊の砲撃演習が妖精たちの間で流行っているようです。
教えたのは、あの緑の髪の巫女さんでしょうね。
間違いない!
てくてくと人里を歩く三人。
「おや、リリーちゃーん、今日は水ようかんの出来がいいよ~ 寄ってかない?」
「また今度ですぅ」
春を運んでくる(と勝手に人々に思われている)春告精は、里の人々の人気者です。あちこちから声をかけられます。
人里には三人以外にも妖精や小妖怪が、普通に出歩いています。
博麗の巫女のおかげ(主に腕力)で人に害をなさない妖怪、妖精は自由に人里を出入りできるようになりました。
また天狗と人との協定ができ、白狼天狗が人里を24時間パトロールするようになってから治安は格段に良くなったんですね。
人里の出入り口には天狗の駐在所まであります。
――― 閑話休題 ―――
「ここでぇ~すぅ!」
古ぼけたお店の看板には『香霖堂』とあります。
「なにここ?」
「「駄菓子屋ですぅ・だよ」」
フランちゃんは少し不安そうです。いかにも怪しげな店構えですから。
「「こんにちはー!!」」
元気よく店に入るシロちゃんと小ちゃん、そのあとを恐る恐るついて行くフランちゃん。
「いらっしゃ~い」
「あれー? 魔理沙?」
「おや、珍しいお客さまだぜ」
「なにしてるの?」
「なにって、店番だぜ。香霖に頼まれたんだ」
お店にいたのは霧雨魔理沙でした。フランちゃんビックリです。
妖精たちは慣れたもので魔理沙が店番をしていても気にならないようです。
「お前こそ何してんだ? チビ妖精たちと一緒に?」
「「わたし達はお客よ。チビ妖精じゃない」」
「へいへい、いらっしゃいませお客さま~」
ぶーぶー文句を言う妖精たちを軽くあしらう魔理沙ですが、妖精たちもさして気にしていないようでさっさとセレクトに入りました。
「私、ビッ●リマンチョコにしよ」
「わたしも~」
ビック●マンチョコを選ぶ妖精二人。
「フランちゃんはなににする?」
「んーと……ワタシも同じにする」
「へい毎度! ビックリマ●チョコは三十万円だぜ」
「ええーー!! そんなにするの?」
「フランちゃ~ん。 駄菓子屋ジョークですぅ」
「だがしやじょーく?」
「駄菓子屋さんでは何でも大げさに言うんだよ」
そう言って小ちゃんは三十円を払いました。
「ふーん、分かった。 じゃぁこれで」
フランちゃんが差し出したのは金ピカの小さなカード。
「おまっ! ここじゃ、それは使えないぜ」
「そうなの? これがあれば人里で何でも買えるってお姉さまが」
「んー さすがお嬢様だなー」
駄菓子屋でアメッ●ス・ゴールドカードとは。
「「なーにそれ?」」
妖精二人は綺麗なカードに興味津々のようです。
「んんー……多分お前らには一生縁のないシロモノだからなぁ……とりあえずフラン、そいつはしまえ」
この場で唯一説明が出来そうな魔理沙でしたが面倒くさくなったようです。
「それじゃ、これでいい?」
今度は一万円札を出したフランちゃん。
「あーもぉ…… おまえなぁー」
駄菓子屋で万札は×でしょうねぇ。
駄菓子屋と同人イベントでは万札は、現金だけに厳禁です!
「現金だけに厳禁です!」(重要なので二度言いました)
とりあえず小銭を用意しましょう。
ただしTeam東方不敗は撤収間際なら、先着1名様に限り万札OKです(むしろウエルカム)
「はぁ、しょうがない。今日のところはフランの分は私が奢ってやるよ」
魔理沙が自分のお財布から三十円をチャリチャリとお店の小銭入れに放りました。
いつも堂々とかっぱらいをするくせに変なところ律儀なんですよね、この魔法使いさん。
「良いの?」
「ああ、その代わり今度お前んちで夕食を奢ってくれよ?」
駄菓子屋の買物で紅魔館のディナーを釣るとは抜け目ありませんね。
妖精二人が「やった! レアだ!」「うえー カブった!」などとはしゃいでいますが、ビックリマンシールの二頭身キャラに心が踊らないフランちゃん。
だって【悪魔vs天使】と言いながら悪魔が今ひとつだからです。
だって比較対象が紅魔館の面々なんですよ?
綺麗で可愛くてカッコイイ(そのどれもが標準の遥か上)悪魔の軍団に囲まれて暮らしているのですからこの大雑把にデフォルメされたシールの良さがピンと来ないようです。
それでも微笑を浮かべてなんとか二人に合わせています。
がんばれフランちゃん!
ビックリマンチョ●本体のチョコレートをはさんだウエハースをサクサク食べてラムネに挑戦してきなこ棒を咥えて三人は大満足のようです。
そんな様子を笑って見ていた魔理沙が問いかけました。
「あのさー、こいつら(妖精たち)はいいけど、フランお嬢様がこんな汚い店に来ていいのか?」
「え? それは―――」
「汚い店で悪かったな」
落ち着いた男性の声が割って入りました。
店の入り口に現れたのは店主の森近霖之助です。
「これでも毎日掃除はしてるけどね」
「おう、お帰り~ 早かったじゃないか」
悪びれる様子もなく、さっさと店番の席を離れる魔理沙。
「お駄賃代わりにコレもらうぜ」
返事を待たずに袋を開けてお菓子をかじりました。
「な~にそれ?」
フランちゃんが興味深そうにそのお菓子を見ています。
「う●い棒シイタケ味だぜっ 一口どうだ?」
魔理沙が差し出したう●い棒をじぃ~っと見つめるフランちゃん。
「フランちゃん、それやめたほうがいいよ」
「おいしくないから~」
「なんだよー お前ら」
「シイタケ味なんて信じらんない!」
「う●い棒じゃなくて●ずい棒だよ~」
「妖精はお子ちゃま舌だからな。この大人の味が分からないのさ。なぁ、香霖」
霖之助に同意を求める魔理沙ですが―――
「魔理沙以外に買っていく人はいないな」
「な、なんだってー!」
「それは僕のセリフだろ」
魔理沙に薦められて店に置いてみたけれど、まったく売れない。不良在庫ってやつですねw
実際、う●い棒にはコンポタ、めんたい、チーズなどの人気定番に隠れて『冒険に出たけど還ってこなかった』フレーバーも多いです。なっとう味、やきとり味、牛タン塩味……合掌。
「あ、それ知ってる!」
魔理沙が次に食べている菓子袋を見て小ちゃんが声を上げました。
「お、ライ●ースナック知ってるのか? ちっちゃいくせに通だなあ」
「この前、中姉(なかねえ)が買ってた。ぜんぜん、おいしくなかったよ」
「ああ、確かに旨くないな、でもな―――」
「うちはスナックを食べきる約束をしないとカードは渡さないことにしているんだよ」
中途半端に甘くて塩っぱい。パンチの緩い薄味でスカスカしていて『やめられる止められる』スナック菓子。ロングセラーな名作【かっぱえ●せん】を世に送り出したメーカーとは思えない当時の子供をナメきったシロモノでした。(カ●ビーさん、ごめんなさい)
袋ごと捨てるのは当たり前、悪い子は中身を道端にぶちまけるといったありさまで社会問題になったくらいですから。親に怒られても、先生に怒られても、それでも捨てていました。それほどヒドい味だったんです!
しかしこのスナックに当時の子供たちが熱狂したのはオマケとして付いていたラ●ダーカードの存在でした。
「カードはキノコモルグだったから、中姉残念がってたよ」
「なんだと!!」
小ちゃんの言葉に、食いつく魔理沙。
「毒キノコのエキスに一週間浸かって生まれた猛毒怪人キノコモルグか!!」
「お前のねーちゃんに旧1号ライダーと交換しないか言っといてくれ。桜島の激レアもんだぜ」
「えー 中姉は一文字ライダー派だよ?」
「ん~分かった。じゃあ2号ライダーで」
「中姉に言っとくねー」
「よし! 交渉成立だぜ」
カード表面に仮面ライ●ーや怪人がプリントされ、裏面にはデータが記されていました。
劇中では明らかにされなかった怪人のプロフィールが図鑑のように閲覧でき、集めるほどに蒐集欲が煽られるのです。また、同様に集めている友達がたくさんいたので交換・懸賞の対象になり、レアカードを持っていることはステイタスでもありました。
キバ男爵が初登場した当時、すかさずツバサ大僧正を引き当てた黒沢君は学校で英雄扱いでしたね。
そしてラッキーカードと呼ばれるものが存在し、カ●ビーの係宛に送ると仮面●イダーアルバムなるカードホルダーケースがもらえたのです。
箱買いしてアルバムを見せびらかす地主のボンボンが腹立たしかったですね。
――― 閑話休題 ―――
ぴーぴーぴー
楽しそうに口から笛の音を出している魔理沙。
「魔理沙ってそんなに口笛うまかったっけ?」
ぴぴーぴー
「ワタシ口笛できない」
ぴぴぴぴぴぴー
「私もー 中姉が得意なんだけどねー」
ぴーぴーぴーぴぴ
「「魔理沙すごーい」」
「ふたりとも違いますぅ。フエラムネですぅ」
「「フエラムネ?」」
シロちゃんがが魔理沙のポッケに手を入れて白いアメのようなものが貼りつた小さな板を引っ張り出しました。
「ぴっー! あ、こら!」
「これですぅ」
フエラムネは真ん中に穴が空いていて、唇に挟んで息をすると口笛のような高音が響く玩具要素のある駄菓子です。大体八個入りでコーラやパイン味などもありますが、白いラムネ味が主流です。クッ●ーラムネなどとは違い、溶けにくいのが特徴でしょうか。
「「ぴーぴーぴーぴー」」
シロちゃんと小ちゃんは気持ちよくフエラムネを鳴らしていますが、フランちゃんは苦戦しています。
「お前、下手だな~」
「なによ! (ガリリッ)あっ!」
牙があるせいかどうしても引っ掛かって噛み砕いてしまうのです。
「あっはっはっは、ドンマイ、もう一個やるぜ」
―――†―――†―――†―――
「もう、なにしてんのよ。 あのコは」
少し離れた場所で店の中をうかがっているお姉さん吸血鬼がいました。
「魔理沙も魔理沙よ。あんなに笑うことないのに!」
いらいらするレミリアに帽子より大きな影がかかりました。
思わず振り返ると日傘をかざした咲夜がいました。
「咲夜! ついてきたの?」
「いいえ、駄菓子なる世俗のスゥーツに興味がありましたのでここまで来たまでです。お嬢様こそ何故ここに?」
「わ、私も、たまたまここを通っただけよ」
「たまたま、ですか……左様ですか、ふむふむ」
「何よ! 言いたいことがあるなら言いなさいよ!」
この妙に察しの良い従者にはバレバレと見て開き直っちゃいましたね。
その従者さんはお嬢様イジりに飽きたようで、駄菓子屋をちらりと見て言いました。
「しかし、駄菓子屋で買い食いとは高貴なスカーレット家のご令嬢として相応しくございませんね。お連れしてきましょう」
「咲夜! 待って!」
「いかがなさいましたか?」
「あんなに楽しそうに笑うフラン…… 止めるなんて野暮はやめましょう。帰るわよ」
「よろしいので?」
「魔理沙もいるし。あの妖精たちなら安心してフランを任せられるわ」
心配性のお姉さんですが、妹の楽しみや可能性は閉ざしたくないのです。何かあれば自分が全力でフォローすると覚悟を決めているのですから。
そして帰路に就く主従。
「美鈴に聞いたのだけれど、この先に評判の良いお団子茶屋があるそうよ。寄っていきましょうか?」
「お団子茶屋ですか?」
「スカーレット家にはふさわしくないかしら?」
「いえ。和菓子もたまには良いかと」
「そういえば、美鈴は和菓子が好きなようね。アナタ、お土産に買っていってあげたら?」
「それは……わかりました、お許しをいただけるのなら」
「苦しゅうないわ、ふふ」
―――†―――†―――†―――
「でねでね、そのラムネっていうのがシュワシュワしてとってもおいしかった~」
ここは紅魔館の広大なリビングです。
ちょっとした冒険をこなしてきた妹の話を一見鷹揚に聞いているお姉さん。
「そう、それはよかったわね」(ラムネ? 聞いたことはないわ。 シュワシュワ? スパークリングワインの一種かしら? でも子供にアルコールは……)
「飲むラムネと笛になるラムネ、小さな粒で噛むとシュワーってなるラムネ! いろいろあるんだよ!」
(は? 笛? 粒? ラムネがいっぱい? さっぱり分からないわ!)
「駄菓子屋、面白かった~ 美味しかったし~」
満足げに語るフランの話を聞いて、駄菓子屋に興味を持つレミリアさん。
(私も行ってみたいわね……でも)
壁際には咲夜と美鈴が控えています。
ちらりと咲夜を見る。
(「妹様はともかく、紅魔館当主がそんな怪し気な店に行くなど許容できません」って言うわよね)
「ねえ、お姉さま~ また行ってもいいでしょう?」
(そうだ! フランに一緒に行こうって言わせれば、咲夜も折れるはず)
「一人では危ないわ。ここは―――」
「私がお供します」
おっと、美鈴が口を挟みました。
(はぁ!?)
「私がお供すれば心配ありません。それに、フランドール様のお話を聞くと、私も行ってみたくなりました!」
(美鈴! なに言ってるのよ! お前空気読めよ!)
この時ばかりは気が読めない美鈴でしたw
「やったぁ! お姉さま、美鈴が一緒ならいいでしょ?」
「そ、そうね。……咲夜はどうかしら?」
「問題ないかと―――(プッ)」
(咲夜! 今、笑ったわね? アナタ全て分かったうえで笑ったわね!?)
「ぐぐっ……美鈴が一緒ならばいいわよ」
「お姉さま! ありがとー!」
―――†―――†―――†―――
「パッチェ~、人里に付き合ってよ~」
その夜。
大図書館にまでやってきて長年の親友パチュリー・ノーレッジ相手にくだをまくレミリアさん。
「いやよ。めんどくさい」
「そんなこと言わないで、親友でしょ~」
「レミィ、何があったの?」
「ん~ 実はね―――」
さてさて、レミリアお嬢様は駄菓子屋に行くことができるんでしょうか?
――― おしまい ―――
次回
「レミィとパッチェの初めてのおつかい(人里編)。ふたりは無事に香霖堂にたどり着くのか!? の巻」につづく
(つづきません! 作者註)
3人組がとてもかわいらしかったです