Coolier - 新生・東方創想話

こちら地下より、感度良好

2020/09/09 20:46:26
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 その日も夜遅くまで仕事が続き、ベッドにもぐったのは日付が変わる頃だった。いっそ泥になってしまおうと思って眠りについたのだが。
「ん......」
 なにやら物音が部屋の中でするので、目が覚めてしまった。枕元に置いていた腕時計で時刻を確かめると、二時にならないくらいだ。ひどく重い瞼をむりやり開き、半身を起こした。
「これも大きい...もっと奥ね」
 城主の妹が、自室のクローゼットを漁っているのが辛うじて見えた。自らの体にメイド服を重ね、ぴったりのサイズを測っている。
「フラン様、何を...なされて...」
 言葉を吐く途中で、あくびが出てきてしまった。噛み殺そうとしていたが、抑えきれなかったのだ。
「あら咲夜、お早う。メイド服を借りてもいいかしら?」
「ええ、構いませんが...起こしてくれても良かったのに」
「大した用事でもないのに、そんな事しないわ」
 そう言って、またメイド服が引き出された。


 クローゼットの奥から小さなメイド服を引っ張り出す。自分が幼かった時に着ていた物で、処分しようと思っていたのだが、忙しくて先延ばしにしていた。こんな形で役立つとは思ってもみなかった。
「これでいいの?」
「よくお似合いですよ」
「あら、私ってば給仕の服が似合うのね」
「そう言い換える事も可能ですね」
 背中の部分に鋏をいれて、翼を出せる穴を開けた。どうせ捨てる予定だったので、大胆に切ってある。
「それじゃ、行くわよ」
「どちらに?」
「あいつの部屋に決まっているでしょう」
 どうやら城主の部屋に行くようだ。着替えさせてすぐ寝ようとしていたのだが、そういう訳にもいかないようだった。付き添う形で部屋を出る。
 城主の妹はかなり機嫌がいいようだ。手の中にある何かを、お気に入りの玩具かのように転がしている。それは小さく、黒い色をしている。また、機械的なものに見えた。
「フラン様、それは?」
「盗聴機」
「何処でお拾いに?」
「退屈だったから作ったの」
 退屈だったから作った。その一言は盗聴機という存在とはかなり離れているように思えた。うまく言葉が飲み込めなかったが、そんな事もあるだろうと考え直す。
「フラン様、それをどうされるおつもりで?」
「ウォーターゲートに決まってるでしょう?」
 まぁ、盗聴機の用途など一つしかない。そのうちに、城主の部屋の扉が見えてきた。
「いないわね」
「その様ですね」
 部屋の中は真っ暗だった。棺桶の蓋は床に落とされ、中身は空だった。図書館か、または屋上にでも行ったのだろう。
 その隙にと、盗聴機はベッドの近くの壁に埋め込まれた。魔法でも使ったのか、跡などは一切無かった。少なくとも、見るだけでは此処に盗聴機があると気づけないだろう。
「帰るわよ」
「心得ました」




 風にあおられたカーテンの隙間から、太陽光が射しこんだ。私はそれを顔に感じて、本日二度目の覚醒を迎えた。いちおう、業務に支障が出ないくらいには眠れただろう。私はメイド服に着替えた。
「咲夜、ちょっと訊きたいのだけれど」
「何でしょうか?」
「昨日...いえ今日の夜、私の部屋から見覚えの無いメイドが出てきたの。何か知らないかしら?」
 私は悟られぬように動揺した。まさか、見られていたのか。だが、まだそれがフラン様だと決まったわけではない。
 しかしもし全てが筒抜けなのだとしたら、ごまかす事は適わない。くだらない嘘だと一瞬で看破されるだろう。
「いいえ、知りませんね」
「そう」
 お嬢様はそれだけ答えて、紅茶を啜った。








――コンコン、コンコン
 城主の部屋から音が鳴っている。硬質な音だ。
――コンコン、コンコン
 壁をノックしているかのような音だ。どこからも寸分違わず同じ音が鳴っている。
――コンコン、タンタン
 ベッド付近の壁から、違う音が鳴った。壁越しに異物があるような、何かが壁に付いているかのような音だ。
――さてはここか。
 にやり、と彼女は笑みを浮かべた。そして幼き城主は、その場所に自らの口を近づけ――




 その声が受信機越しに聴こえた時、妹もまた笑みを浮かべた。それだけに止まらず、喜びを全身で示すかのように飛び跳ねた。
 しばらく跳躍し、そしてそれが落ち着いたあと、彼女はベッドに跳び乗った。枕の近くの石壁に、口を近づけ――
すこしだけ居なくなります。
もしかしたら60分勝負とかは出すかもしれないけど。
転箸 笑
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コメント



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1.100めそふらん削除
可愛い!!!
お互い分かっててやってるのが信頼の証なのかなって思いました。
2.100サク_ウマ削除
タイトル回収良き。妙に通じ合ってる二人の関係性が、色々想像できて素敵ですね。
3.100終身削除
やり取りにユーモアがあって面白かったです 咲夜にも秘密というかなんだか知らないと言わせているみたいでしがらみや立場に縛られないような姉妹の話ができる場のような気がしてほっこりしました
4.100スカーレット削除
レミフラはやっぱ可愛い。
6.100熱燗ロック削除
悪戯をする妹を、一枚上回る姉! よきかな。よきかな。
7.100南条削除
面白かったです
レミリアがノリのいいお姉ちゃんしててよかったです
8.100モブ削除
もっと長いお話を読みたいなあ、というのが正直な感想でした。それを願いたくなるほど、とても読みやすい文体でした。ご馳走様でした
9.90名前が無い程度の能力削除
良かったです。甘みがいい
10.100水十九石削除
純粋で蕩けそうなレミフラでした。
会話劇の浮かれ具合や、シチュエーションの可愛らしさ等、短い部分に詰め込めるだけ詰め込んだこの熱量が良い感じ…。
11.100ふにゃん削除
いやあいい姉妹ですねぇ❗