Coolier - 新生・東方創想話

静物探し

2020/09/05 23:12:39
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 春の匂いが漂いはじめた頃、森近霖之助は拾った物を見て悦に入っていた。彼の右手には、小さいタイプのカメラがあった。外の世界では廃れたような、電源を入れるとレンズが飛び出すタイプの物である。
 まさに一昔前の代物で、決して風化したわけではないのだが、なにしろ現代人は写真を撮る時にはスマホを構えるようになった。だからこそ、こうしたカメラが流れ着くことも珍しくなくなってきたのだ。
「裏蓋がないな...それに、フィルムはどうやって入れるんだ?」
 見慣れないデジカメに悪戦苦闘する彼だが、この試行錯誤を彼は気に入っていた。これをやりたいがために拾い物をするようなものだ。
 カメラ弄りに熱中する霖之助だが、そんな事に関係なく店の扉が開く。
「お邪魔だぜー」
 来客は魔理沙だった。花弁を浮かび上がらせる風を引き連れて、彼女は入店した。
「やぁ、魔理沙か」
 ちらり、と視線をやって客の姿を確認した彼だが、すぐに手元のカメラに視線を戻した。
「今度は何だ?」
 カウンターに倒れるようにして、作業を覗き見る魔理沙。その時に、デジカメが音を出して起動した。
「お、どうにか点いたな。さて、試運転だ」
 天狗の新聞記者よろしく、デジカメを構える霖之助。最初は魔理沙を被写体にしようとして、レンズを向けたのだが。
「ほう、お前が撮影者か。ちゃんと撮ってくれよ」
 彼はデジカメを下げた。彼は静かな物を撮りたかったのである。




 それから彼は売り物や非売品を撮ろうとしたのだが、何となく違うように感じてはボタンを押さなかった。魔理沙は彼が何を撮るのかずっと見ていたのだが、一向に撮ろうとしない彼を前にいつしか眠ってしまった。そこには春の陽気も関係しているかもしれない。
「おや、寝てしまったのか」
 彼はカウンターに伏して寝る魔理沙を発見し、人形をそうするかのように椅子に座らせた。
 そして彼女の帽子に乗っていた花弁を払い、改めてデジカメを構えた。
「やはり、淑やかな花は映える」
 カチャ、と音を立て、デジカメは画像データを保存した。
#東方版深夜の真剣物書き60分一本勝負

頑張って40分くらいで仕上げたよ。
転箸 笑
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コメント



0.簡易評価なし
1.100終身削除
こういう事を何の気なしにさらっとやっちゃいそうなのが霖之助 道具の使い方が分からなくても物そのものだけじゃなくてそこも含めて喜びを感じているのになんだか大人らしい向き合い方と余裕があるみたいで良いなと思いました
2.90名前が無い程度の能力削除
「小さいタイプのカメラ」とか「人形をそうするかのように椅子に座らせた」など、細かい表現で少しテンポが悪くなっているかなと思いました。
たとえば「小さいタイプのカメラ」だったら「タイプ」が余計かなと。「タイプ」と読んだときに「どんなタイプだろう?」と考えてしまって、読み進めるのが少しストップしてしまうので。それに「タイプ」が無いほうが語呂もいいかな~と。細かくて申し訳ないですが。
お話とモチーフはとても素敵でしたので、残り20分で校正するとさらに完成度があがると思います。
3.無評価転箸 笑削除
>2.様

貴重なご意見、ありがとうございます。
書き方なのですが、大抵は意図してこのように書いています。これは僕の性分というか、回りくどい書き方が好みなことが原因です。
とはいえ、確かに自分でも読みにくいように思いますので、今後はこのような点に気をつけて書くようにします。
改めて、ありがとうごさいました。