わかさぎ姫は退屈だった。
ずっと同じ景色しか見ていないからだ。
湖の中はほとんど探検し尽くしたし、水から出ても霧しか見えない。
私はずっとこんな場所で一生を終えるのかと思うと人魚に生まれたこの身を恨みたくなるのだ。
影狼や赤蛮奇が羨ましい。
霧の湖から出たいとは思う。
でも、わがまま言って二人を困らせるのは嫌だ。
だから人魚の彼女は羨望の眼差しをしながらも二人の話を黙って聞くだけ。
それ以上のことは言いもせず、態度にも示さなかった。
いつものように影狼と赤蛮奇がやってきた。
三人の集合場所はいつもここ、霧の湖。
井戸端会議の最初はわかさぎ姫が遠方からやってくる二人に深く礼をして始まる。
二人は仰々しいからやめろと言うが、私がこんな体のせいで二人に負担を強いているのだと申し訳なさでいっぱいなのだ。
会話でも姫は二人との溝を感じる。
二人は里でのできごと、竹林でのできごとを面白おかしく話してくれるが、自分にはそんなエピソードを持ち合わせていない。
せいぜい「こんな変なものが捨てられていたよ」ぐらいである。
そんなことなら話さなくてもいいかと思っていたところ、
「姫さあ、博麗神社の池に行かない?」
という影狼の声がした。
突然の話のフリに対応しきれずしどろもどろ。
彼女がなんと言ったのかも飲み込めず適当に返事しようとすると、今度は赤蛮奇が
「あの神社の裏にある池ってお賽銭がいっぱい沈んでるんだって」
と言う。
「へぇ……。そうなんだ……」
「私達は霊夢が来ないか見張ってるからちょっともらっていきましょうよ。どうせ霊夢も拾おうとしないんだから」
「ふぅん……」
状況もよくわからず、はいともいいえとも取れない返事を繰り返してたらどうも神社行きが決定した。
二人は姫の体を抱え込み、東の方角へ向かう。
わかさぎ姫は初めて地上へと上がった。
地上の景色は興奮であまり覚えていない。
あっという間に「博麗神社」の鳥居が見えた。
三人は神社裏に潜入し、二人がかりで静かに姫を池に放流した。
二人の言う通り、池の底には大量の硬貨が沈んでいたが、池の視界が悪く、迷ってしまいそうだ。
それでも霧の湖とは違うというだけで姫の心は高ぶっていた。
藻にまみれたコインを集めつつ、池を探索する。
この沈んだ貨幣というのも、今まで一度も見たことのない色や模様をしている。
金色の大きなコイン、穴の空いたコイン、小さなコイン、全部コレクションにしたいくらい輝いていた。
これなら二人に自慢できるかなと思うとヒレも軽くなってくる。
姫の心には早く見せて帰りたい気持ちともっと珍しいものを探して見たいという気持ちしかなかった。
「見てー!こんなに見つけたよー!」
と戻って見せた頃には地上の二人は倒れていた。
お祓い棒の矛先が自分に向いたとき、姫は今持っているものを手放すことを覚悟した。
しかし、姫はもう夢想封印でもってしても彼女の身から引き剥がせないものを持っていた。
ずっと同じ景色しか見ていないからだ。
湖の中はほとんど探検し尽くしたし、水から出ても霧しか見えない。
私はずっとこんな場所で一生を終えるのかと思うと人魚に生まれたこの身を恨みたくなるのだ。
影狼や赤蛮奇が羨ましい。
霧の湖から出たいとは思う。
でも、わがまま言って二人を困らせるのは嫌だ。
だから人魚の彼女は羨望の眼差しをしながらも二人の話を黙って聞くだけ。
それ以上のことは言いもせず、態度にも示さなかった。
いつものように影狼と赤蛮奇がやってきた。
三人の集合場所はいつもここ、霧の湖。
井戸端会議の最初はわかさぎ姫が遠方からやってくる二人に深く礼をして始まる。
二人は仰々しいからやめろと言うが、私がこんな体のせいで二人に負担を強いているのだと申し訳なさでいっぱいなのだ。
会話でも姫は二人との溝を感じる。
二人は里でのできごと、竹林でのできごとを面白おかしく話してくれるが、自分にはそんなエピソードを持ち合わせていない。
せいぜい「こんな変なものが捨てられていたよ」ぐらいである。
そんなことなら話さなくてもいいかと思っていたところ、
「姫さあ、博麗神社の池に行かない?」
という影狼の声がした。
突然の話のフリに対応しきれずしどろもどろ。
彼女がなんと言ったのかも飲み込めず適当に返事しようとすると、今度は赤蛮奇が
「あの神社の裏にある池ってお賽銭がいっぱい沈んでるんだって」
と言う。
「へぇ……。そうなんだ……」
「私達は霊夢が来ないか見張ってるからちょっともらっていきましょうよ。どうせ霊夢も拾おうとしないんだから」
「ふぅん……」
状況もよくわからず、はいともいいえとも取れない返事を繰り返してたらどうも神社行きが決定した。
二人は姫の体を抱え込み、東の方角へ向かう。
わかさぎ姫は初めて地上へと上がった。
地上の景色は興奮であまり覚えていない。
あっという間に「博麗神社」の鳥居が見えた。
三人は神社裏に潜入し、二人がかりで静かに姫を池に放流した。
二人の言う通り、池の底には大量の硬貨が沈んでいたが、池の視界が悪く、迷ってしまいそうだ。
それでも霧の湖とは違うというだけで姫の心は高ぶっていた。
藻にまみれたコインを集めつつ、池を探索する。
この沈んだ貨幣というのも、今まで一度も見たことのない色や模様をしている。
金色の大きなコイン、穴の空いたコイン、小さなコイン、全部コレクションにしたいくらい輝いていた。
これなら二人に自慢できるかなと思うとヒレも軽くなってくる。
姫の心には早く見せて帰りたい気持ちともっと珍しいものを探して見たいという気持ちしかなかった。
「見てー!こんなに見つけたよー!」
と戻って見せた頃には地上の二人は倒れていた。
お祓い棒の矛先が自分に向いたとき、姫は今持っているものを手放すことを覚悟した。
しかし、姫はもう夢想封印でもってしても彼女の身から引き剥がせないものを持っていた。