「椛は可愛いわね」
「えっ?」
暑い哨戒の休憩中に影で涼んで座っていたらいきなり隣に立って、はたてさんはそういった。いきなり過ぎて呆けたような声しか出ない。
「椛は可愛いってお話よ」
「は、はあ……?」
パチンと私に向かってウィンクしてくる。可愛いのは、はたてさんなのでは?そんなことを思ったけれど言ったら機嫌を損ねそうだったので口を封じる。ゆっくり私の隣に座って言葉を続けていく。
「椛が可愛いのはねー……まずは触り心地の良い耳でしょ? それに可愛いしっぽ。階級が下の子にも優しくて。あと、頼りになるところ。それにー……」
「ちょっと待ってください!」
聞いていて恥ずかしくなってしまって大声を出してしまう。なに! 耳とかしっぽって! 下の子にも優しい!? そんなはずは無いのに! 頼りになるってなに! とてもとても恥ずかしい!
はわわと私は恥ずかしくなって草に転がった。あああ! なに、なんなの! はたてさんは何を言っているの!
ゴロゴロとはたてさんから離れるように転がっていく。
「もーそんなに恥ずかしがらないでいいじゃない。椛のいい所なんだから。可愛いのにそんなに赤い顔にならないの」
そう言って私のところに来ようとしているのか歩いてきていた。
一つ良い提案が思いついた。
私はガバッと草から起き上がる。それに驚いたはたてさんは軽く空に飛び上がる。
「わっ、なに椛」
「はたてさん! デートしましょう!」
起き上がった勢いで私は、はたてさんの両手を握る。
「へっ、へぁっ!?」
顔を真っ赤にするはたてさん。私から顔を逸らしていて、ツインテールが横に揺れた。ああ、顔を真っ赤にしているのもとても可愛いな。
「どうですか!」
手をブンブンと振って聞いてみる。あーだとかうーだとか。はたてさんは悩んでいるようだった。
「……いいわよ。デート、しましょうか」
顔を真っ赤にしたまま、はたてさんは小さな声で言った。ふふ、やった!
「ええ! 楽しみましょうね!」
そのまま私ははたてさんの手を引いて歩きだした。
*
いつも待機しているの滝の前まで来る。部下の白狼天狗達は上司の鴉天狗か現れて大騒ぎしている。……ここじゃそもそもデートになんか向かないところだったな。
「涼しいわね……ここは椛が待機してる場所?」
「ええ、そうですよ。……ってコラっ! そこ、姫海棠様のことを悪く言わない!」
部下達がコソコソと集まって話している中ではたてさんの悪口まで入ってきたのが気に食わない。そりゃあ鴉天狗は嫌だけど。……特に一名。でも本人目の前にして悪口を言わなくていいでしょうに。
「そりゃないですよ犬走様。休憩に行くって言っていきなり上司連れてこられたら私らも怖くなりますって……」
一回怒鳴ってやろうかと思って体が動いたけれど誰かに肩を掴まれた。
「ごめんね、仕事の邪魔しちゃって。少し椛を借りていくけれど大丈夫かしら」
はたてさんだった。意図せず私の肩を掴んだんだろうか。それは分からないけれど。
「え、ええ、大丈夫ですよぉ。侵入者が来たら流石に戻ってきて欲しいですけど」
猫撫で声のような……部下がこんな声が出るなんて知りたくなかった。ああ。あとから特訓させよう。私はこんな根性無しに育てた覚えはないって。
「そう、なら椛を借りていくわ。ほら行きましょ」
はたてさんはそう言って私の手を握った。ちょ、部下の前で……
部下はニヤニヤしていた。この根性無しどもめ!
「お前らあとから特訓だー! 覚えておきなさいよ!」
飛び上がる中で叫んで、部下たちの顔を見ると青ざめていたのが爽快だった。
山を抜けて空に飛び上がっているとはたてさんはふと飛ぶのを止めた。
「どうしたんですか?」
「いや、少し空がみたいなって」
手を繋がったままはたてさんはそう言った。繋いだ手をキュッと力強く握る。
「なら少し二人で見ませんか?」
「ふふ、椛も言うね。ならもう少しだけ一緒に飛んでいこうよ」
また手を引かれて二人で空を飛ぶ。楽しくて笑う。楽しそうに笑うはたてさんがとても可愛くて。
「はたてさんー! 可愛いですよー!」
「へあっ、椛も可愛いわよ!」
また笑うはたてさんを隣に一緒に空を飛んで行った。
「えっ?」
暑い哨戒の休憩中に影で涼んで座っていたらいきなり隣に立って、はたてさんはそういった。いきなり過ぎて呆けたような声しか出ない。
「椛は可愛いってお話よ」
「は、はあ……?」
パチンと私に向かってウィンクしてくる。可愛いのは、はたてさんなのでは?そんなことを思ったけれど言ったら機嫌を損ねそうだったので口を封じる。ゆっくり私の隣に座って言葉を続けていく。
「椛が可愛いのはねー……まずは触り心地の良い耳でしょ? それに可愛いしっぽ。階級が下の子にも優しくて。あと、頼りになるところ。それにー……」
「ちょっと待ってください!」
聞いていて恥ずかしくなってしまって大声を出してしまう。なに! 耳とかしっぽって! 下の子にも優しい!? そんなはずは無いのに! 頼りになるってなに! とてもとても恥ずかしい!
はわわと私は恥ずかしくなって草に転がった。あああ! なに、なんなの! はたてさんは何を言っているの!
ゴロゴロとはたてさんから離れるように転がっていく。
「もーそんなに恥ずかしがらないでいいじゃない。椛のいい所なんだから。可愛いのにそんなに赤い顔にならないの」
そう言って私のところに来ようとしているのか歩いてきていた。
一つ良い提案が思いついた。
私はガバッと草から起き上がる。それに驚いたはたてさんは軽く空に飛び上がる。
「わっ、なに椛」
「はたてさん! デートしましょう!」
起き上がった勢いで私は、はたてさんの両手を握る。
「へっ、へぁっ!?」
顔を真っ赤にするはたてさん。私から顔を逸らしていて、ツインテールが横に揺れた。ああ、顔を真っ赤にしているのもとても可愛いな。
「どうですか!」
手をブンブンと振って聞いてみる。あーだとかうーだとか。はたてさんは悩んでいるようだった。
「……いいわよ。デート、しましょうか」
顔を真っ赤にしたまま、はたてさんは小さな声で言った。ふふ、やった!
「ええ! 楽しみましょうね!」
そのまま私ははたてさんの手を引いて歩きだした。
*
いつも待機しているの滝の前まで来る。部下の白狼天狗達は上司の鴉天狗か現れて大騒ぎしている。……ここじゃそもそもデートになんか向かないところだったな。
「涼しいわね……ここは椛が待機してる場所?」
「ええ、そうですよ。……ってコラっ! そこ、姫海棠様のことを悪く言わない!」
部下達がコソコソと集まって話している中ではたてさんの悪口まで入ってきたのが気に食わない。そりゃあ鴉天狗は嫌だけど。……特に一名。でも本人目の前にして悪口を言わなくていいでしょうに。
「そりゃないですよ犬走様。休憩に行くって言っていきなり上司連れてこられたら私らも怖くなりますって……」
一回怒鳴ってやろうかと思って体が動いたけれど誰かに肩を掴まれた。
「ごめんね、仕事の邪魔しちゃって。少し椛を借りていくけれど大丈夫かしら」
はたてさんだった。意図せず私の肩を掴んだんだろうか。それは分からないけれど。
「え、ええ、大丈夫ですよぉ。侵入者が来たら流石に戻ってきて欲しいですけど」
猫撫で声のような……部下がこんな声が出るなんて知りたくなかった。ああ。あとから特訓させよう。私はこんな根性無しに育てた覚えはないって。
「そう、なら椛を借りていくわ。ほら行きましょ」
はたてさんはそう言って私の手を握った。ちょ、部下の前で……
部下はニヤニヤしていた。この根性無しどもめ!
「お前らあとから特訓だー! 覚えておきなさいよ!」
飛び上がる中で叫んで、部下たちの顔を見ると青ざめていたのが爽快だった。
山を抜けて空に飛び上がっているとはたてさんはふと飛ぶのを止めた。
「どうしたんですか?」
「いや、少し空がみたいなって」
手を繋がったままはたてさんはそう言った。繋いだ手をキュッと力強く握る。
「なら少し二人で見ませんか?」
「ふふ、椛も言うね。ならもう少しだけ一緒に飛んでいこうよ」
また手を引かれて二人で空を飛ぶ。楽しくて笑う。楽しそうに笑うはたてさんがとても可愛くて。
「はたてさんー! 可愛いですよー!」
「へあっ、椛も可愛いわよ!」
また笑うはたてさんを隣に一緒に空を飛んで行った。
恥ずかしがり屋な椛も、それを分かっていながら連れまわすはたてもとっても可愛い、素敵な作品でした。