東方聖夜祭①の続きですー
概要 魔理沙の思いつきでサンタクロースをする羽目に陥った霊夢。紅魔館でのひと悶着を終え、次に向かったのは永遠亭であった。
しゃんしゃん、と音を鳴らしながら、百鬼夜行のサンタクロースは竹やぶの中を進む。
門の前で待っていた萃香は、いつの間にか焼け焦げた門番と氷妖精を萃めていた。そいつらを適当に処置して(門番は門の中に、氷妖精は泉の中に放り投げた)紅魔館を後にした。
「気のせいか増えてる気がするんだけど、袋の中身」
ぼっこりと膨らんだ袋。紅魔館に行く前は無かったなにやら硬くて長方形の形をした紙の束が入っているように見える。
「そうか? 気のせいだぜ?」
「なんだかプレゼント渡しにいったのか泥棒しに行ったのかわかんないわね」
「だから気のせいだって」
白々しい。まあ、魔理沙はいつもやってるみたいなのでいまさらと言う気もするけれど。
「しかし、毎回思うが相変わらず長い竹林だな」
「そういえばあのときはここで戦ったんだっけ」
なかなか夜が明けなかった日のことだ。
「いつの間にか辿り着いてたんだよなぁ。しかしこんなところに家があるなんて長い間知らなかった」
その話の中に出てきた屋敷、永遠亭がようやく見えてきた。そこかしこで忙しそうに動き回るウサギたちの姿がある。
「今度はマスタースパーク使わないでよ。さすがに面倒なことになるから」
「判ってるって。今度はドラゴンメ」
「止めろって」
ごすん、と手刀で魔理沙の頭を叩いた。
「まだ何もやってないぜ?」
涙目で睨みつけてきた。
「やってからじゃ遅いでしょうが。とりあえず降りるわよ」
「へーい」
萃香を急かして永遠亭の前に着陸する。働いていたウサギたちは興味半分、怖さ半分で中途半端な距離を保って円を作っていた。
「サンタクロースのおでましだ。主人を出せ」
一斉に首を横に振るウサギたち。ここに主人は居ない、と言うことなのかそれとも駄目だ、という意味なのか。まさか魔理沙の格好に乗って首を振っているだけとか……?
「あー、博麗の巫女と黒助……と何これ」
その後ろから突然割って出てきた一匹が私たちを見て目を白黒させた。
「お、幸運だ」
「幸運ね。確かウサギの足はお守りになるんだっけ?」
「物騒なこと言うなー」
てゐはそう言うと早速逃げようとしている。
「封魔陣!」
その背中に向かって符を放つ。狙いは違わず、てゐの周囲に青白い光の柱が立ち上がる。
「げ、なによこれー、突然何するのよー」
「いや、逃げようとしたからつい」
あは、と笑いながらソリを降りる。
「そいつは仕方ないな。逃げるほうが悪いのは世の常だ」
むむむぅ、と頬を膨らまし、にらみあげるてゐ。そのそばに何を間違ったのか萃香が一匹封魔陣の中に居た。
「追いかけてるほうが悪いこともあるけどね」
「そういえば、何なのよこれ」
「んー、えーっと、鬼?」
「ちゃーっす。萃香でーす」
元気よく挨拶するちび萃香。
「そんなことより、折角だまくらかして逃げてきたのにー。早くこれ解いてよー」
「そいつは無理な相談だ。折角の幸運を逃すわけにはいかないからな」
「無視!? ねぇ、無視なの!?」
さらりと流される萃香と即座に否定する魔理沙。
「貴女がやってるんじゃないでしょ。ところで騙して逃げてきたって、何かあったの」
「今お客様が来ていて大忙しなのよー」
「あー、ようやく見つけたー! って霊夢と魔理沙じゃない、どうしたのその格好」
あ、ようやくまだまともに話が出来る相手が来た。鈴仙だ。その姿は普段のきびっとしたものではなく、なぜか頭から水をかぶっていた。全身水浸しで服がやばい感じに透けていたりする。
「貴女こそその格好はどうしたの?」
「いや、まあ……」
目を背ける鈴仙。たしかウサギって水をかぶると危ないとか聞いた覚えがあるんだけれど、月のウサギは大丈夫なのかしら。それ以前にこれだけ寒いのに良く外に出る気になったなぁ。
先ほどのてゐの言葉から察するに彼女の仕業ではあろうが…。鈴仙はウサギに渡された手ぬぐいを受け取り、髪の毛を拭いていた。
「てゐを捕まえてくれたの?」
「いいや、それはついでだ。メインはメリークリスマスだぜ。良い子にプレゼントを持ってきた」
「? まあ、いいんだけれどちょっと後にしてもらえる? 今修羅場になってて大変なの。とりあえずてゐ!」
「ひー、あんな中は御免だわ」
封魔陣を解くと、とたんに逃げ出すてゐと追いかける鈴仙。てゐはどさくさにまぎれてちび萃香を一匹連れて行ったような気がする。
「後に回す?」
「いや、折角来たことだしお邪魔しよう。客人が誰なのか大体想像つくし」
「あー。やっぱりアレかなぁ」
「アレだろ。まあ、なにより面白そうだし」
□■□■□■□
永遠亭の長い廊下をウサギに案内されて奥の部屋に着いた。ここでは長い間引きこもっていた姫様が、客人とともに居る筈だ。
なんの遠慮もなく襖を開け放つ魔理沙。
「メリークリスマス! おぉ、思ってたより大人しいな」
「やっと来たわね、魔法使い」
そう言ったのは銀髪の薬師だ。どうやらここに集まってたのも魔理沙の仕業らしい。いつもに増して白々しい嘘をついてない……?
「メリークリスマス、お邪魔するわ」
「一体どういうつもりかしら。私の家にこんな奴を呼ぶなんて」
「全くだ。何で私がこんなところに……」
妹紅と輝夜。開口一番いらっしゃいませも無し。まあ、仲がいいわけでもない相手と同席をさせられて気分がいいはずも無い。
「まあまあ、折角のクリスマスだ。どうせなら二人同時にプレゼントを渡そうと思ってな」
こいつと同時? とお互いがお互いを睨み合う二人。
「あら、貴女が物を配るだなんて珍しい。明日は雪でも降るのかしら?」
「おぉ、クリスマスに雪は付き物だからな」
魔理沙も永琳の皮肉を理解しているのかしていないのか、がさごそと袋の中を弄っていた。
「お、あったぜ。これだ」
そういって彼女が取り出したのはカラフルな色をした箱だった。
「なにこれ?」
一同がそれを見て口々に尋ねる。
「えーっと、何々。じんせいげーむ……?」
見た感じあちらの世界のものだろう。これも香霖堂からもってきたものに違いない。
「なんだか嫌な響きね。どういったものなのかしら」
「人間の人生の縮図を体感しながら進める双六みたいなもの、らしいぜ」
そういって箱の中からマスの入ったボードを取り出す。ほかに入っていたのは奇妙な材質をした四角い箱と棒がたくさん。
「ふーん。皮肉ね。あなたにユーモアのセンスがあるとは思わなかったわ」
そう言いながらも、永琳も興味はあるようだ。彼女たちは不死だ。そのために普通の人間の生活にあこがれる部分も多少はあるのだろう。
「折角だから勝負する?」
「へぇ。撃ち合いでは勝てないからってこっちで勝てると思わないほうが良いんじゃないか?」
「そうかしら? だったらこの双六の上であっても殺してあげようかしら? さすがに蘇生なんて無いわよね」
バチバチと火花を散らしあう二人。いや、下手をすれば本当に出火しかねないだけに冗談じゃない。
ぶんぶんと腕を振り回す妹紅に、全く動かず視線を向ける輝夜。
まさに準備は万端、と言ったところか。
「それじゃ始めましょうか? これがさいころ代わりね」
といって永琳は端に備えられた円盤を回転させた。
□■□■□■□
私たちは一回ほどゲームをしてから永遠亭を後にした。ウサギたちと戯れていたチビ萃香を集め、せきたてて次の目的地、白玉楼へと向かう。
「まったく、なんなのよあのサラリーマンって。どうしてあそこまで給料が安いの!?」
「さあな、きっと巫女みたいな仕事なんだろう」
なんだとう。それもで巫女よりは給料が良いんだぞー! ……ちょっと悲しくなってきた。
「普段なら思ったとおりに行けば上手くいくのに」
「そうそう上手くいくことも無いって奴だろう。それでも輝夜と妹紅に負けてないんだからすごいと思うぜ」
「あの二人と比べられても」
彼女たちは何かと競いあったために無駄に余計な挑戦をしては互いの足の引っ張り合いをしていたのだ。
二人以外の全員が上がった後でも終わらず、後から来たてゐと鈴仙が無理やり参加させられていた。
「さて、次は白玉楼か。やれやれ上空は寒そうだなぁ」
「ところで、プレゼントは何を用意してるの? 妖夢はともかく幽々子はちょっとしたものじゃ満足しそうに無い気がする」
「うーん、そうだな。そのあたりの夜雀でも焼いて持っていくか?」
「いい案だけど却下ね。探すのは面倒だわ。どうせまたなにかあるんでしょう?」
ちぇ、ばれてらと笑う。
「まあ、見てのお楽しみだぜ」
続く
概要 魔理沙の思いつきでサンタクロースをする羽目に陥った霊夢。紅魔館でのひと悶着を終え、次に向かったのは永遠亭であった。
しゃんしゃん、と音を鳴らしながら、百鬼夜行のサンタクロースは竹やぶの中を進む。
門の前で待っていた萃香は、いつの間にか焼け焦げた門番と氷妖精を萃めていた。そいつらを適当に処置して(門番は門の中に、氷妖精は泉の中に放り投げた)紅魔館を後にした。
「気のせいか増えてる気がするんだけど、袋の中身」
ぼっこりと膨らんだ袋。紅魔館に行く前は無かったなにやら硬くて長方形の形をした紙の束が入っているように見える。
「そうか? 気のせいだぜ?」
「なんだかプレゼント渡しにいったのか泥棒しに行ったのかわかんないわね」
「だから気のせいだって」
白々しい。まあ、魔理沙はいつもやってるみたいなのでいまさらと言う気もするけれど。
「しかし、毎回思うが相変わらず長い竹林だな」
「そういえばあのときはここで戦ったんだっけ」
なかなか夜が明けなかった日のことだ。
「いつの間にか辿り着いてたんだよなぁ。しかしこんなところに家があるなんて長い間知らなかった」
その話の中に出てきた屋敷、永遠亭がようやく見えてきた。そこかしこで忙しそうに動き回るウサギたちの姿がある。
「今度はマスタースパーク使わないでよ。さすがに面倒なことになるから」
「判ってるって。今度はドラゴンメ」
「止めろって」
ごすん、と手刀で魔理沙の頭を叩いた。
「まだ何もやってないぜ?」
涙目で睨みつけてきた。
「やってからじゃ遅いでしょうが。とりあえず降りるわよ」
「へーい」
萃香を急かして永遠亭の前に着陸する。働いていたウサギたちは興味半分、怖さ半分で中途半端な距離を保って円を作っていた。
「サンタクロースのおでましだ。主人を出せ」
一斉に首を横に振るウサギたち。ここに主人は居ない、と言うことなのかそれとも駄目だ、という意味なのか。まさか魔理沙の格好に乗って首を振っているだけとか……?
「あー、博麗の巫女と黒助……と何これ」
その後ろから突然割って出てきた一匹が私たちを見て目を白黒させた。
「お、幸運だ」
「幸運ね。確かウサギの足はお守りになるんだっけ?」
「物騒なこと言うなー」
てゐはそう言うと早速逃げようとしている。
「封魔陣!」
その背中に向かって符を放つ。狙いは違わず、てゐの周囲に青白い光の柱が立ち上がる。
「げ、なによこれー、突然何するのよー」
「いや、逃げようとしたからつい」
あは、と笑いながらソリを降りる。
「そいつは仕方ないな。逃げるほうが悪いのは世の常だ」
むむむぅ、と頬を膨らまし、にらみあげるてゐ。そのそばに何を間違ったのか萃香が一匹封魔陣の中に居た。
「追いかけてるほうが悪いこともあるけどね」
「そういえば、何なのよこれ」
「んー、えーっと、鬼?」
「ちゃーっす。萃香でーす」
元気よく挨拶するちび萃香。
「そんなことより、折角だまくらかして逃げてきたのにー。早くこれ解いてよー」
「そいつは無理な相談だ。折角の幸運を逃すわけにはいかないからな」
「無視!? ねぇ、無視なの!?」
さらりと流される萃香と即座に否定する魔理沙。
「貴女がやってるんじゃないでしょ。ところで騙して逃げてきたって、何かあったの」
「今お客様が来ていて大忙しなのよー」
「あー、ようやく見つけたー! って霊夢と魔理沙じゃない、どうしたのその格好」
あ、ようやくまだまともに話が出来る相手が来た。鈴仙だ。その姿は普段のきびっとしたものではなく、なぜか頭から水をかぶっていた。全身水浸しで服がやばい感じに透けていたりする。
「貴女こそその格好はどうしたの?」
「いや、まあ……」
目を背ける鈴仙。たしかウサギって水をかぶると危ないとか聞いた覚えがあるんだけれど、月のウサギは大丈夫なのかしら。それ以前にこれだけ寒いのに良く外に出る気になったなぁ。
先ほどのてゐの言葉から察するに彼女の仕業ではあろうが…。鈴仙はウサギに渡された手ぬぐいを受け取り、髪の毛を拭いていた。
「てゐを捕まえてくれたの?」
「いいや、それはついでだ。メインはメリークリスマスだぜ。良い子にプレゼントを持ってきた」
「? まあ、いいんだけれどちょっと後にしてもらえる? 今修羅場になってて大変なの。とりあえずてゐ!」
「ひー、あんな中は御免だわ」
封魔陣を解くと、とたんに逃げ出すてゐと追いかける鈴仙。てゐはどさくさにまぎれてちび萃香を一匹連れて行ったような気がする。
「後に回す?」
「いや、折角来たことだしお邪魔しよう。客人が誰なのか大体想像つくし」
「あー。やっぱりアレかなぁ」
「アレだろ。まあ、なにより面白そうだし」
□■□■□■□
永遠亭の長い廊下をウサギに案内されて奥の部屋に着いた。ここでは長い間引きこもっていた姫様が、客人とともに居る筈だ。
なんの遠慮もなく襖を開け放つ魔理沙。
「メリークリスマス! おぉ、思ってたより大人しいな」
「やっと来たわね、魔法使い」
そう言ったのは銀髪の薬師だ。どうやらここに集まってたのも魔理沙の仕業らしい。いつもに増して白々しい嘘をついてない……?
「メリークリスマス、お邪魔するわ」
「一体どういうつもりかしら。私の家にこんな奴を呼ぶなんて」
「全くだ。何で私がこんなところに……」
妹紅と輝夜。開口一番いらっしゃいませも無し。まあ、仲がいいわけでもない相手と同席をさせられて気分がいいはずも無い。
「まあまあ、折角のクリスマスだ。どうせなら二人同時にプレゼントを渡そうと思ってな」
こいつと同時? とお互いがお互いを睨み合う二人。
「あら、貴女が物を配るだなんて珍しい。明日は雪でも降るのかしら?」
「おぉ、クリスマスに雪は付き物だからな」
魔理沙も永琳の皮肉を理解しているのかしていないのか、がさごそと袋の中を弄っていた。
「お、あったぜ。これだ」
そういって彼女が取り出したのはカラフルな色をした箱だった。
「なにこれ?」
一同がそれを見て口々に尋ねる。
「えーっと、何々。じんせいげーむ……?」
見た感じあちらの世界のものだろう。これも香霖堂からもってきたものに違いない。
「なんだか嫌な響きね。どういったものなのかしら」
「人間の人生の縮図を体感しながら進める双六みたいなもの、らしいぜ」
そういって箱の中からマスの入ったボードを取り出す。ほかに入っていたのは奇妙な材質をした四角い箱と棒がたくさん。
「ふーん。皮肉ね。あなたにユーモアのセンスがあるとは思わなかったわ」
そう言いながらも、永琳も興味はあるようだ。彼女たちは不死だ。そのために普通の人間の生活にあこがれる部分も多少はあるのだろう。
「折角だから勝負する?」
「へぇ。撃ち合いでは勝てないからってこっちで勝てると思わないほうが良いんじゃないか?」
「そうかしら? だったらこの双六の上であっても殺してあげようかしら? さすがに蘇生なんて無いわよね」
バチバチと火花を散らしあう二人。いや、下手をすれば本当に出火しかねないだけに冗談じゃない。
ぶんぶんと腕を振り回す妹紅に、全く動かず視線を向ける輝夜。
まさに準備は万端、と言ったところか。
「それじゃ始めましょうか? これがさいころ代わりね」
といって永琳は端に備えられた円盤を回転させた。
□■□■□■□
私たちは一回ほどゲームをしてから永遠亭を後にした。ウサギたちと戯れていたチビ萃香を集め、せきたてて次の目的地、白玉楼へと向かう。
「まったく、なんなのよあのサラリーマンって。どうしてあそこまで給料が安いの!?」
「さあな、きっと巫女みたいな仕事なんだろう」
なんだとう。それもで巫女よりは給料が良いんだぞー! ……ちょっと悲しくなってきた。
「普段なら思ったとおりに行けば上手くいくのに」
「そうそう上手くいくことも無いって奴だろう。それでも輝夜と妹紅に負けてないんだからすごいと思うぜ」
「あの二人と比べられても」
彼女たちは何かと競いあったために無駄に余計な挑戦をしては互いの足の引っ張り合いをしていたのだ。
二人以外の全員が上がった後でも終わらず、後から来たてゐと鈴仙が無理やり参加させられていた。
「さて、次は白玉楼か。やれやれ上空は寒そうだなぁ」
「ところで、プレゼントは何を用意してるの? 妖夢はともかく幽々子はちょっとしたものじゃ満足しそうに無い気がする」
「うーん、そうだな。そのあたりの夜雀でも焼いて持っていくか?」
「いい案だけど却下ね。探すのは面倒だわ。どうせまたなにかあるんでしょう?」
ちぇ、ばれてらと笑う。
「まあ、見てのお楽しみだぜ」
続く