メリー・クリスマス!
お祝いの声が聞こえる。
どいつもこいつもおつむが足りない、今日は何の日? クリスマス!
だからそいつは何なのさ?
んなこた誰も気にしない。
皆でわいわいドンチャン騒ぎ、飲むもの飲んで食うもの食って、
それで楽しきゃいいじゃない!
~~
「おこんち~」
「卑猥な・・・塩撒こうかしら」
「無駄無駄、私らにそんな東の迷信は通用しないよ」
「厄介な角つきねぇ。って、今日はまた何の用?」
「ほら、もう忘れてる。だから止めようって言ったんですよぅ」
「ええ。霊夢なら忘れてると思いましたわ」
「あー、珍しい奴が来たわね。どうしたの?」
「それが、うちの子がまた風邪引いてねぇ」
「本当に躰が弱いのに、今年は絶対行くんだって、息巻いてるんですよ」
「それで?」
「ほら、もう忘れてる。巫女なんかに頼むの、止めません?」
「駄目よ、私行きたくないもの」
「だからって他人に頼むな」
「いいえ、貴女はきっと今年も頼まれてくれるわ」
「それは」
「何を根拠に」
「こんな簡単で、人に感謝される仕事は、普通無いからよ」
「まぁ、私の武勇伝は何故だか情報隠蔽されてるしねぇ、全く」
「うちの大将みたいに、もっと人間と触れ合えばいいじゃん」
「駄目よヨハネ。まるで判ってないのねぇ、巫女の事を。
霊夢だって好き好んで日がな一日ぐうたらしてるわけじゃないの」
「いや、好きだけど」
「暇だと怒るくせに」
「いや、怒るけど。別にいいじゃない、どうせ私は巫女らしいこととか、してないし」
「でも貴女のそういう所は、神職にあるものとしてそう外れているわけではない」
「あのー奥様。そんなお深い話をしに来たんじゃなくてー」
「ああそうだった。で、やってくれるのよね?」
「どうも紫といい幽香といいアンタといい、巫女の事を勘違いしすぎよ。
レミリアは行き違い、幽々子は食い違い、咲夜は筋違い、魔理沙やアリスなんかはお門違いだわ。
私は巫女で、何でも屋なんだから、何でもする」
「えー、嘘ー」
「当然よ。何でも屋なんだから、自分の仕事は選ぶに決まってるわ」
「ほら、やってくれるって。良かったわねぇヨハネ」
「うーん、大将、悔しがるでしょうさー」
「親としては、たまにあの子のそういう所も見たいものよ」
「他人としては、物凄く断りたいんだけど、まぁいいわ。
どうせニコニコ笑って、ソリに乗ってるだけでしょ? 楽勝よ、そんなの」
「それと、今年は人頭税を払ってもらうわ」
「何でよ。仕事なんでしょ」
「仕事だからよ」
「さっきから態度でかいぞー、シャーマンの分際で奥様に楯突く気?」
「態度がでかいのはアンタよ。畜獣の分際で人の話に横槍入れる気?」
「酷っ」
「冗談よ」
「まぁ獣の言う事は気にしないで良いわ。どう?」
「酷っ」
「税は絶対払わないわ」
「冗談よ」
「あー、じゃあ、やってもいいけど。
願わくば、去年と同じトナカイを連れてきて欲しいわ」
「あら、良かったわねぇヨハネ。お暇が出されたわよ」
「え、あいつだけは止めた方が・・・まぁ、巫女のお付きには丁度いいかもしれないけど」
「あーあ。うちの神社も免罪符でも配ろうかしらねぇ」
~~
「――隆道。お夕飯、食べないの?」
「・・・あ、ああ」
「隆道? どうしたの? 入るわよ?」
「あ、・・・ああ、お袋か。いいよ、どうぞ」
「なんだ、居るんじゃない。どうぞじゃなくて、ご飯いらないの?」
「いや、食べるけど、ちょっと」
「? 何か言ったかしら。よく聞こえないわ」
「えーっと、その、なんというか」
「聞こえません。入るよ」
「ああ待った待った! ちょい待って! すぐ行くから、ちょっとだけ!」
「・・・はぁ。恥ずかしがる気持ちもわかるけど、寂しいものよねぇ・・・」
「あーそういうんじゃなくって、っつーか、そだな」
「隆道? 何か言った?」
「隠すようなことじゃないかって言ったの! 入っていいよ」
「何なのよもう。んしょ・・・げ」
「まぁ、見てのとおりなわけで」
「何、これ」
「ほらやっぱ、お袋怖い顔する。だから嫌だったんだよなぁ」
「怒ってません。これは何?」
「見ての通りだって。窓が割れてて、変なものが落ちてる」
「・・・言いたいことはそれだけかしら」
「勘違いしてるよ、って言っても信じないよなぁ・・・」
「あなた、お母さんを馬鹿にしてるでしょ。
きちんと話して御覧なさい。納得のゆく説明が聴きたいわ」
「いや、その、この状況を一番信じられないのは俺なわけで」
「はぐらかさない!」
「ハイ! 包み隠さず全部言います!
俺はさっきまで勉強しているという方便を使って部屋で不貞寝してました!」
「それで?」
「え、予想済み? えっと、それで。
布団でうつらうつらしてたら、窓が割れてそれが転がってきました!」
「それで?」
「以上! 嘘なし!」
「怒るわよ」
「本当だって! このぱっつんぱっつんの靴下に包まれた箱が、ガシャーンって!」
「月末に、とんだへまをしたわね、隆道。
お小遣い査定が楽しみだわお母さん」
「うわー完全に嘘扱いなんだ。信用の無い自分が悲しい瞬間26.5%」
「あからさまに嘘じゃないの。窓が割れる音ぐらい、下にいて聞こえないと思ってるの?」
「え、そんな馬鹿な。そっちこそ、そりゃないんじゃない?
あんなにでかい音、気づかない方がおかしいって。耳遠くなってるよ、お袋」
「あら、素敵なお言葉を賜ったわね。
そう言う隆道は、今、自分のお年玉が無くなった音が聞こえたかしら」
「うああ、薮蛇かつ泥沼」
「楽しいお正月になりそうね。取り敢えず、寒いから雨戸でも閉めたら?」
~~
「ちょっと! 何考えてるのよ、馬鹿!」
「つーん。知りません。あと、鹿じゃありませんよぅ」
「じゃあ馬トナカイ」
「トナカイですよ。それに、窓ガラスの一枚や二枚ぐらい、いいじゃん」
「割るなら先に言えっていう話よ。配るのは私でしょう?」
「巫女は乱暴だなぁ」
「間一髪で結界張ったからいいものの、こんな時間なのに。
外の世界で騒ぎを起すなんて、妖怪じゃないんだから」
「残念、私は妖怪。いい子は好きだけど、誰も食べないなんて言ってない」
「あーもう、どうしてあんたなのよ。
去年の奴連れて来いって言ったでしょうに」
「あいつは性格が曲ってるから、今年は不在。盂蘭盆におから焚いてましたよ」
「なかなか筋の通った奴ね」
「信教の自由なんて信じる奴はトナカイ失格です」
「トナカイだって、皆が皆あんた達と同じ宗教ってわけでもないでしょ?
幻想郷には信じられないようなものばっかりじゃない。何も信じてないようなのもいるわ」
「それは・・・そんなのと付き合える人間がいるようになった事が、私には嘆かわしい」
「ほら、獣の癖に、生き物を悲嘆しないの。
もっと適当に狩猟してればいいじゃない。第一、誰に仕えてるつもりよ」
「そうなんですよねぇ、とほ。何でだろう?」
「そのままでいいぐらいが、幻想郷らしさじゃない?」
「私は曲ったことが嫌いでして」
「私もひねた奴は嫌いよ、好きだけど」
「まぁ、さっさとお仕事済ませましょうか」
「さっさとって、もう寝た子も起きるような時間ね。
去年は、もっと早く仕事納めだった気がするけど」
「イスカリオテは気が早い上に飽きっぽい。子供の笑顔だけ見て満足したんでしょ」
「だらだら残業してるよりいいような・・・まぁ、人それぞれか」
「失礼な。より多くの子供たちを喜ばせるのが使命なのです。
この国と言わず、可能ならどこまでも配りに行くところですよ」
「違った。獣それぞれね。そういうのは外の人間に任せればいいじゃない」
「冷たい巫女ねぇ、まぁでも」
「?」
「一応、まだ今日のうちに言っておかないと」
「何?」
「メリークリスマス、極東の神子」
「はいはいめりーくりすます、西方の使徒」
「さぁ、決め台詞の後は迅速な決着です。
マリア奥様が起きる前に、全部まわってしまいましょう!」
「そうねぇ。でさぁ、前から訊こうと思ってたんだけどぉ」
「何か?」
「今日って何の日なの?」
「ただの誕生日。ただ、自分だけ幸せなのが嫌だから、って仰います、大将は」
裏読みできる人じゃないと辛いですね、これは。
でも好き。
ここでマグダラのお母さんあたり出てきて嫁舅の大激戦、図らずも宗教形而上論争まで発展してくれたらもう、思い残すことはありません。あ、いえ、ありました。日曜日、日曜日です。つまりは明日ですね。殺生ですか? 殺生ですか。しょぼん。
>レミリアは行き違い、幽々子は食い違い、咲夜は筋違い、魔理沙やアリスなんかはお門違いだわ。
行き違いどころかすれ違い。通り越しての勘違い。打ち違って掛け違って、挙げ句の果てには思惑違いの心得違い。そんな氏の書かれる幻想郷がたまらない。
それではそれでは、後少しということなので、いつまでもどこまでも、つつがなく果てしなくお待ちしております。柏手打って精霊棚に幣をお供えして、北にウリエル東にラファエル、富士山麓にシッダールタ。
あれ?
> 続きが、ようやく書き終わりそうです
ひ、ひょっとしてパチェの曜日シリーズですかっ!?
そうだとしたら、ただただ歓喜。お待ちしております。
誕生日なナザレの息子さんおめでとう。
八百万の神が住まう島々へようこそ。
わけわからんくらい宗教混ざってますが気にしないで下され。
考えてみればアレも一地方神から出発したんですよね。
こーんな寒い夜に、紅白の人は大変ですね。
私のもとに紅白の人が来なくなってからもう随分と経ちますが、
それでも良い子の元へ幸せのお裾分けが届きますように……
心から祈ります。
イブの夜に、部屋で一人酒飲んでくだまきながら。
うん、大殿のクロスオーバーっぷりときたらスケールがはんぱないよね。
おっけーね!b(ぇ