むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんとおばあさんは、まぁ、ちょっぴり貧乏でしたが、普通に暮らしていました。
輝夜「普通が一番ね。普通が。」
永琳「ええ。普通が一番です。」
ある日のことです。
おじいさんとおばあさんがいつもの様にのんびりとしていると、屋根裏から音が聴こえてきました。
輝夜「何かしら?」
永琳「はて、何でしょうね?」
不思議に思った二人は、屋根裏へ向かいました。
美鈴「はっけよ~い!」
鈴仙「のこった!」
二匹のネズミが、相撲をとっていたのです。
片方のネズミは、太っていますが背が高く良い体格で、どっしりとしていました。
もう片方のネズミは、身体が細く痩せていて、何となく頼りなさげでした。
美鈴「ていっ!」
鈴仙「ああ!」
勝負は、太ったネズミが勝ちました。
痩せたネズミは投げ飛ばされ、尻餅をついてしまいました。
鈴仙「いたたたた……。」
美鈴「接近戦なら、私に一日の長があるわね。」
痩せたネズミは、よっこらせと腰をあげて、立ち上がりました。
太ったネズミに比べて、やっぱり頼りなさそうな気がします。
痩せたネズミは、太ったネズミに訊ねました。
鈴仙「どうして、そんなにいい体格になれるの?」
美鈴「それはもう、普段の鍛錬と、美味しい御飯…………?」
鈴仙「?」
美鈴「………美味しい……?」
鈴仙「もしもし?」
美鈴「……………ごはん………?」
鈴仙「もしも~し?」
美鈴「う…………うう……しくしく………。」
鈴仙「と、とにかく、普段の鍛錬が大切なのね!参考にします!しますから泣かないで~!」
太ったネズミは、勝ったのに何故か泣きながら帰ってしまいました。
痩せたネズミは帰ることなく、屋根裏に居たまんまです。
鈴仙「でも鍛錬て言っても、一日でどうにかなるわけじゃないし。地道にやるしか無いのかな。」
痩せたネズミは腕立て伏せなどを始めたのですが、余り続きません。
そこまで見ていたおじいさんとおばあさんは、部屋に戻って話し合いました。
永琳「きっと、あのネズミはうちの屋根裏に住んでるネズミですね。」
輝夜「じゃあ、泣きながら帰っていった、太って地味なネズミは?」
永琳「あの体格から察するに、良い物を食べてる、庄屋さんの家のネズミでしょう。」
痩せたネズミは、おじいさんとおばあさんの家のネズミで、
太ったネズミは、庄屋さんの家のネズミのようでした。
なるほど、庄屋さんの家のネズミは、良い物を食べているから、あんなに良い体格をしているのでしょう。
永琳「う~ん。庄屋さんの家は、良い物食べてるんでしょうね。」
輝夜「でも、何とかうちの子に花を持たせてやりたい親心。」
永琳「では、お餅でも作ってやりましょうか。力がつきますよ。」
輝夜「それは良い考えね。早速作ってやって頂戴。永琳の好きなように。」
永琳「畏まりました。」
屋根裏に住んでいるネズミが、庄屋さんの家のネズミに負けないよう、
おばあさんは、ネズミのために餅を作ってやりました。
そしてそれを、神棚に飾っておきました。
永琳「明日、災いと混沌が支配する世界に恐怖の大王が降りてきますように……。」
不吉なお願いをしつつ、痩せたネズミの勝利を祈りました。
そして、次の日のことです。
また、屋根裏から音が聴こえてきました。
輝夜「あら、またやってるわね。」
永琳「では、実験体の観察を……。」
二人は屋根裏を覗きました。
すると昨日のように、痩せたネズミと太ったネズミが、相撲をとっていました。
鈴仙「せいや~っ!」
美鈴「えぇぇ~!?」
昨日とは打って変わって、痩せたネズミが太ったネズミを投げ飛ばしたのです!
美鈴「いった~……。」
鈴仙「か、勝っちゃった……。」
美鈴「昨日と全然違うじゃない。一体なにがあったの?」
鈴仙「実は、今朝神棚を見たらお餅が供えてあって、それを食べてみたの。」
美鈴「お餅!う、羨ましい………。」
鈴仙「そしたら力がみなぎってきて、本当、今までの自分じゃ無いみたい。」
美鈴「いいなぁ。うちの人たちはケチだから、お餅なんて出してくれないだろうし。」
鈴仙「……貴方、いつも何食べてるの?」
美鈴「………………………………………………………………………………しくしく。」
鈴仙「あ~、悪かった。私が悪かったから泣かないで。」
太ったネズミは痩せたネズミに慰められた後、とぼとぼと帰って行きました。
痩せたネズミが勝ったと言うことで、二人は喜びました。
輝夜「勝ったのね。良い子良い子。」
永琳「実験は成功。以後、経過を見ることとする、と。」
輝夜「実験だったの?だったら、あっちのネズミにもお餅分けてあげたら?」
永琳「そうですね。モルモットは多い方が良いですし……。」
おばあさんはその夜、二匹分のお餅を作ってあげました。
・
・
・
さて、こちらは庄屋さんの家です。
咲夜「………と、言うことです。」
レミリア「ふうん。うちのネズミが、庶民のネズミにねえ。」
庄屋さんが、配下の忍者から、おじいさんの家であった出来事を話していました。
何で庄屋さんが、忍者なんか使っているのかは、分かりませんが。
パチュリー「ネズミのことなんて、どうでも良いんじゃないの?」
レミリア「そうはいかないわ。うちのネズミたるものが、貧乏なお家の
痩せこけたネズミ如きにやられたとあっては、うちの威厳に関わる。
そう。それが例え、ドーピングをした結果であっても、ね。」
パチュリー「そんなもんかしら。」
咲夜「そんなもんなのですよ、きっと。」
負けず嫌いな庄屋さんは、自分の家のネズミが負けたことに、我慢できないようです。
咲夜「それと、もう一つ。」
レミリア「何?」
咲夜「あの二人、うちのネズミにもお餅を分けるとか相談してました。」
レミリア「………そうはいかない!」
咲夜「お嬢様……じゃなくて、旦那様?」
庄屋さんは、激昂しました。
レミリア「貧乏なお家から施しを受けるですって?ネズミのこととは言え、
そんなこと許されないわ。うちはうちで、何か力のつくものを用意するのよ!
ネズミが勝てば、ネズミのことだけでなく、料理の面でも勝つことになるわ。」
咲夜「は、はぁ。わかりました。」
レミリア「と、言うことでパチェ。何とかならないかしら?」
パチュリー「そうね。こっちも何か出してみる?」
レミリア「例えば?」
パチュリー「そうね。余り得意では無いけど、あれとこれとそれを調合した……七草粥でも作ってみるわ。」
レミリア「勝てるなら何でもいいわ。よろしくね。」
パチュリー「まかせて。」
庄屋さんの嫁さんは、家に居るであろう太ったネズミのために、お粥を作ってやりました。
そして、それを神棚に供えました。
パチュリー「無病息災。泥棒とかゴキブリが湧きませんように。」
とりあえず家の安全を願って、嫁さんは寝ました。
・
・
・
次の日のこと。
おじいさん、おばあさんの家では、また、屋根裏から、どったんばったんと音がしています。
輝夜「あらあら、またやってるわね。」
永琳「うちのネズミは、どうなっているのでしょうねえ。」
どれどれと、二人は屋根裏を覗きました。
すると、
美鈴「どっせ~い!」
鈴仙「うわわわわ!」
何と、お餅を食べて力をつけたはずの痩せたネズミが、太ったネズミに投げ飛ばされてしまったのです。
痩せたネズミは一昨日のように尻餅をついてしまいました。
鈴仙「いたたたた……。ど、どうしたの?昨日とは全然力が違う…。」
美鈴「ふ、ふふふふふ………。うう、ぐすっ…。」
鈴仙「え、ちょ、ちょっと!私また何か言った?」
美鈴「違うの……。お米が。」
鈴仙「お米?」
美鈴「昨日神棚を見たら、お粥が……。七草粥がぁああああ!」
太ったネズミは、泣いて喜んでいます。
痩せたネズミは、何があったのか理解が出来ませんでした。
美鈴「美味しかった!物凄く美味しかったのよ!ええ、この世の物では無い味だった!」
鈴仙「あ~、でも、七草粥はこの世の物だから。……あの世にもあるだろうけど。」
どうやら太ったネズミは、庄屋さんの嫁さんが作った七草粥を食べて、力をつけたようです。
普段何を食べてるのか知りませんが、太ったネズミは彩光乱舞…もとい、狂喜乱舞しています。
痩せたネズミは、『ああ、良かったね』と思いつつ、やっぱり負けたので悔しく思いました。
影から見ていた庄屋さんちの忍者は、庄屋さんに報告に帰りました。
咲夜「お嬢様……じゃなくて、旦那様。今日は勝ちました。」
パチュリー「あら、勝ったのね。」
レミリア「うんうん。それでこそ、我が家のネズミだね。」
庄屋さんは、その結果に大満足です。
輝夜「うちの子、負けちゃったわ。」
永琳「むう。どうやら、あっちはあっちで、何か別のものを食べてきたようですね。」
輝夜「あら本当。お餅が一匹分、残ったままね。」
永琳「ふふふ。どうやら、あちらは勝負を挑んできたようです。」
輝夜「…面白いわね。ええ、実に面白い。永琳、負けることは許さないわ。」
永琳「はっ。」
おばあさんはまた、痩せたネズミのためにお餅を作りました。
永琳「あ、姫。そのかっぱ○びせん、少しいただけませんか?」
輝夜「(ぽりぽり)あら、永琳も食べる?」
永琳「いえ。お餅に入れます。やめられない止まらない、ちょっと中毒性のある、
そんなお餅じゃないと、ネズミと言えどいずれ飽きて、食べなくなりますから。」
おばあさんは、何処から調達したのかよくわからない、
謎の液体とかっぱえ○せんを混ぜつつ、ぺったんぺったんとお餅をつきます。
そして出来上がったお餅を、神棚に供えたのです。
で、次の日。
美鈴「ぶぅっ!」
太ったネズミは、痩せたネズミから張り手を喰らって、ぶっ飛ばされてしまいました。
鈴仙「よし!天国のおじいさん、おばあさん、私は勝ちましたよ!」
永琳「死んでないけどね。」
輝夜「まぁ、家は天国のようなものだけど。」
この日は、痩せたネズミが勝ったのです。
同日、庄屋さんの家では
レミリア「負けた?」
咲夜「はい。また何か、食べたみたいです。」
レミリア「……パチェ。もっと強力なのを。」
パチュリー「ええ、分かってるわ。……こうなったら徹底抗戦ね。」
庄屋さんの嫁さんは、大釜にどっから採ってきたのかわからない、名称不明の薬草を
大量にぶちこみ、それにお米を入れて、かき混ぜ、炊き上げました。
少し塩を入れて、美味しい美味しい、七草粥の出来上がりです。
それを神棚に供えて、こちらも必勝祈願です。
で、次の日。
美鈴「ドスコイ!」
鈴仙「うおあ…うおあ……ぅぉぁ………!」
この日太った方は、痩せたネズミに向かって地上に対し水平に飛んで行き、頭からぶつかりました。
思わぬ一撃を喰らった痩せたネズミは、壁にぶつかるくらいの勢いで吹っ飛んでしまいました。
鈴仙「そ、それって相撲の技なの?」
美鈴「あいや、どっかの歌舞伎メイクのお相撲さんが使ってたから間違いないと思うヨ。」
鈴仙「ほんとかなぁ……。」
美鈴「ワタシのうちにアル本に、そういうこと書いてたわヨ。」
鈴仙「?」
美鈴「どうしたノ?」
鈴仙「いや、何か、違和感が……。」
美鈴「変な兎……じゃなくて、ネズミネ。」
太ったネズミに何となく違和感を感じましたが、特に何事も無く、今日の試合は終わったようです。
輝夜「むむ。あちらも中々、やるみたいね。」
永琳「う~ん、それじゃあ、これをこうして………。」
輝夜「はい、かっ○えびせん。今日は梅味で。」
永琳「ああ、これはどうも。」
おばあさんはまた、ネズミのためにお餅を作って、神棚に供えました。
で、次の日。
鈴仙「ハアハアハアハアハア!!」
美鈴「ぶべべべべべべべべべ!!}
痩せたネズミは、目にも留まらぬ速さで張り手を繰り出し、太ったネズミを攻撃しています。
防御をしても体力がどんどんと削られて行き、太ったネズミはとうとう倒れてしまいました。
鈴仙「よし、一本とったウサ!」
美鈴「ひ、酷い……。今時削り殺されるナンて、ありえないヨ。」
鈴仙「でも、勝ちは勝ちねウサ。」
美鈴「?」
鈴仙「どうしたウサ?」
美鈴「何か、変じゃない?ほら、語尾とかネ。」
鈴仙「そうかしらウサ。私は何も感じないウサけどねえ。」
美鈴「う~ん、気のせいなのかナ?」
で、庄屋さんの家では。
咲夜「今日はあちらの勝ちです。」
レミリア「きー、貧乏人のくせに!パチェ!」
パチュリー「じゃあ、次はアレとコレと……もう、七草じゃなくて十五くらいになってるわね。」
庄屋さんは大層悔しがったので、嫁さんはまた、お粥を作りました。
その次の日は太ったネズミが勝ち、痩せたネズミはまたお餅を食べ、
その次の日は痩せたネズミが勝ち、太ったネズミはまたお粥を食べ、
その次の日は太ったネズミが勝ち、痩せたネズミはまたお餅を食べ
その次の日は痩せたネズミが勝ち、太ったネズミはまたお粥を食べ……………。
そんな日が、繰り返されました。
美鈴「アイヤー、キョウハワタシノカチアルネー。」
鈴仙「ウサ~、くやしいウサ。もっとお餅たべるウサ。もっとちからをつけるウサ。」
美鈴「ソレジャワタシモ七草粥タベルヨ。」
鈴仙「お餅おいしいウサ。やめられないウサ。止まらないウサ。」
美鈴「アナタニハマケナイヨロシ。」
鈴仙「わたしも負けないウサよ。ウサウサ。」
痩せたネズミは、来る日も来る日もおばあさんのお餅を食べて力をつけ、
太ったネズミもそれに負けじと、来る日も来る日も来る日もお粥を食べました。
二匹とも、それを食べるごとに力をつけて行ったのです。
しかし、その力を得る代償が、余りに大きかったことを、二匹が気付くことは、遂に無かったのです。
・
・
・
二匹がそれぞれ、お餅や七草粥を食べ初めてから、二十日くらいが過ぎました。
おじいさんとおばあさんの家の屋根裏から、いつもの様に、相撲をとる音が聞こえてきました。
輝夜「さて、今日はどっちに軍配が上がるのかしら?」
レミリア「うちのネズミに、紅茶一袋。」
永琳「それじゃあ私は、うちのネズミに、バファ○ン一錠。」
輝夜「かっ○えびせん小袋一つ。」
レミリア「ケチね。」
永琳「うちは貧乏ですから。」
パチュリー「物は言いようね。」
輝夜「美味しいのにね。」
何時の日からか、庄屋さん夫婦が直々に、試合を観戦しに来ていたのです。
四人は屋根裏を覗きました。
鈴仙「UUUSAA……SISHOOOO………。」
痩せたネズミは、耳が12本に増え、その目は紅く、鋭い眼光を放ち、
前歯には、巨大な熊ですら一撃で倒してしまう、強力な毒が分泌されています。
美鈴「U……UOOOO……。AIYAA………。」
太ったネズミは、元々体格が良かったのですが、その身体はさらに大きくなり、
口には牙が、頭には角が生え、鬼と言ってもよい姿となってしまっています。
二匹とも、鳴き声ではなく、唸り声を発しています。
輝夜「う~ん、立派に進化したわね。」
レミリア「普段もこれくらい気合入れてたら、少しは物の役にも立つと思うんだけどねぇ。」
永琳「実験体の進化は留まる所を知らず。力比類無く、並びうる生物無し。
されど理性は最早砕け、有るのはただ、破壊の衝動のみ………と。」
パチュリー「ふぅ。何事も、本みたくはいかないものね。」
永琳「日記はここで終わっている………。よし、完成。」
四人はネズミのその姿を、頼もしそうに見ています。
鈴仙「USAA……USAUSA………!」
美鈴「AIYAA………!HOOOOU!」
二匹が、お互いの存在を敵と認め、殺気をぶつけ合います。
二匹は身構え、相手の出方を伺い、攻撃をする機会を待っているのです。
美鈴「HOACHAAAAAAAAA!!」
鈴仙「USAAAAAAAAAA!!!」
二匹は同時に飛びかりました!
二匹のネズミの力がぶつかり合います。
美鈴「HOOOOOOOU!」
鈴仙「USASAAAAA!」
がっしりと組み合う二匹!
一瞬でも力を抜けば殺られる。
本能でそう感じている二匹は、さらに力を入れます。
力の均衡は、崩れる気配がありません。
パチュリー「大地が揺れてるわ。」
レミリア「大地と言うか、揺れてるのはこの家ね。大丈夫なの?」
永琳「地震で崩れるほど、柔な家じゃあないわ。」
輝夜「まぁ、崩れたら燃やして『壊れたのは地震じゃなくて火事のせいです』
って言って誤魔化せば、きっとみんな納得してくれるわ。」
レミリア「新手のアレね。」
その力が大きすぎるせいか、家が揺れ始めました。
おじいさんおばあさんと、庄屋さん夫婦は、少し不安になりましたが、
可愛い我が家のネズミの応援を、やめたくはありませんでした。
鈴仙「U………SAAAAAA!USAUSAAAAAA!!!」
美鈴「HOOOUAAAAA!!CHAAAAAAAAA!!!」
組み合う二匹からは、火花が散っています。
永琳「いけない!」
レミリア「ん?」
輝夜「どうしたの?」
パチュリー「お餅とお粥で強化された二人の力が、外部に漏れてる。」
火花の正体は、お餅やお粥で増幅された、二匹のネズミの力だったのです。
それがとても危険だと言う事に、おばあさんは気付きました。
パチュリー「あの二匹の力は、自らの限界を超え、飽和状態になっている。
それは、普段は少しずつ、そして今、大量に、外部へと漏れている。」
永琳「そして、屋根裏と言う、狭くて密閉された空間。ここに、力が充満している。」
パチュリー「力は空気。屋根裏は風船。空気を入れすぎた風船って、どうなる?」
レミリア「……ぱんっ。」
パチュリー「正解。」
輝夜「はい、賞品のかっぱえびせ○。」
レミリア「ありがと。」
屋根裏には二匹から溢れた力が充満し、今にも爆発しそうになっているのです!
このままでは、おじいさんもおばあさんも、庄屋さんもその嫁さんも、皆吹っ飛んでしまいます!
鈴仙「USAAAAAAAA!!」
美鈴「IYAAAAAAAA!!」
二匹から発せられる火花が、さらに強くなりました。
レミリア「不味いじゃない。」
輝夜「かっぱえび○んが?」
レミリア「状況が。早く逃げなきゃ。」
永琳「ああ、もう手遅れよ。」
輝夜「既に出口は塞いだわ。貴方たちも、私たちと一緒に死ぬのよ!あははははは!」
レミリア「あんたらは死なないでしょ!ああもう、まだ500年しか生きてないのに~。」
パチュリー「あ、もう限界ね。」
レミリア「はぁ。さよならこの世。」
空気が震え、火花は屋根裏中で発生するようになりました。
二匹が、最後の力を振り絞り、組み合った瞬間!
どっかぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~ん!!!
家が、大爆発を起こしました。
おじいさん、おばあさんの家を中心に、庄屋さんの家をはじめ、村中のあらゆる物が、一瞬で吹き飛びました。
この日、一つの村が、地図からその姿を消したのでした………。
輝夜「ぷふぅ~。あ~、死ぬかと思った。」
レミリア「だから死なないでしょ。まぁ、私も生きてるけどさぁ。ええと、日傘は……。」
咲夜「はい、どうぞ。」
レミリア「何処行ってたのよ?まったく。咲夜がアレを防がないから、服が黒こげじゃない。もう。」
永琳「過ぎたるは及ばざるが如し。やり過ぎは良くないのよ。何事も。」
パチュリー「そうね。貴重な経験をしたわ。」
鈴仙「う………さ………。」
美鈴「あ…い………やー……。」
おしまい
キャスト
痩せたネズミ ・・・ 鈴仙・U・イナバ
太ったネズミ ・・・ 紅 美鈴
おじいさん ・・・ 蓬莱山 輝夜
おばあさん ・・・ 八意 永琳
庄屋さん ・・・ レミリア・スカーレット
庄屋の嫁さん ・・・ パチュリー・ノーレッジ
忍者 ・・・ 十六夜 咲夜
おじいさんとおばあさんは、まぁ、ちょっぴり貧乏でしたが、普通に暮らしていました。
輝夜「普通が一番ね。普通が。」
永琳「ええ。普通が一番です。」
ある日のことです。
おじいさんとおばあさんがいつもの様にのんびりとしていると、屋根裏から音が聴こえてきました。
輝夜「何かしら?」
永琳「はて、何でしょうね?」
不思議に思った二人は、屋根裏へ向かいました。
美鈴「はっけよ~い!」
鈴仙「のこった!」
二匹のネズミが、相撲をとっていたのです。
片方のネズミは、太っていますが背が高く良い体格で、どっしりとしていました。
もう片方のネズミは、身体が細く痩せていて、何となく頼りなさげでした。
美鈴「ていっ!」
鈴仙「ああ!」
勝負は、太ったネズミが勝ちました。
痩せたネズミは投げ飛ばされ、尻餅をついてしまいました。
鈴仙「いたたたた……。」
美鈴「接近戦なら、私に一日の長があるわね。」
痩せたネズミは、よっこらせと腰をあげて、立ち上がりました。
太ったネズミに比べて、やっぱり頼りなさそうな気がします。
痩せたネズミは、太ったネズミに訊ねました。
鈴仙「どうして、そんなにいい体格になれるの?」
美鈴「それはもう、普段の鍛錬と、美味しい御飯…………?」
鈴仙「?」
美鈴「………美味しい……?」
鈴仙「もしもし?」
美鈴「……………ごはん………?」
鈴仙「もしも~し?」
美鈴「う…………うう……しくしく………。」
鈴仙「と、とにかく、普段の鍛錬が大切なのね!参考にします!しますから泣かないで~!」
太ったネズミは、勝ったのに何故か泣きながら帰ってしまいました。
痩せたネズミは帰ることなく、屋根裏に居たまんまです。
鈴仙「でも鍛錬て言っても、一日でどうにかなるわけじゃないし。地道にやるしか無いのかな。」
痩せたネズミは腕立て伏せなどを始めたのですが、余り続きません。
そこまで見ていたおじいさんとおばあさんは、部屋に戻って話し合いました。
永琳「きっと、あのネズミはうちの屋根裏に住んでるネズミですね。」
輝夜「じゃあ、泣きながら帰っていった、太って地味なネズミは?」
永琳「あの体格から察するに、良い物を食べてる、庄屋さんの家のネズミでしょう。」
痩せたネズミは、おじいさんとおばあさんの家のネズミで、
太ったネズミは、庄屋さんの家のネズミのようでした。
なるほど、庄屋さんの家のネズミは、良い物を食べているから、あんなに良い体格をしているのでしょう。
永琳「う~ん。庄屋さんの家は、良い物食べてるんでしょうね。」
輝夜「でも、何とかうちの子に花を持たせてやりたい親心。」
永琳「では、お餅でも作ってやりましょうか。力がつきますよ。」
輝夜「それは良い考えね。早速作ってやって頂戴。永琳の好きなように。」
永琳「畏まりました。」
屋根裏に住んでいるネズミが、庄屋さんの家のネズミに負けないよう、
おばあさんは、ネズミのために餅を作ってやりました。
そしてそれを、神棚に飾っておきました。
永琳「明日、災いと混沌が支配する世界に恐怖の大王が降りてきますように……。」
不吉なお願いをしつつ、痩せたネズミの勝利を祈りました。
そして、次の日のことです。
また、屋根裏から音が聴こえてきました。
輝夜「あら、またやってるわね。」
永琳「では、実験体の観察を……。」
二人は屋根裏を覗きました。
すると昨日のように、痩せたネズミと太ったネズミが、相撲をとっていました。
鈴仙「せいや~っ!」
美鈴「えぇぇ~!?」
昨日とは打って変わって、痩せたネズミが太ったネズミを投げ飛ばしたのです!
美鈴「いった~……。」
鈴仙「か、勝っちゃった……。」
美鈴「昨日と全然違うじゃない。一体なにがあったの?」
鈴仙「実は、今朝神棚を見たらお餅が供えてあって、それを食べてみたの。」
美鈴「お餅!う、羨ましい………。」
鈴仙「そしたら力がみなぎってきて、本当、今までの自分じゃ無いみたい。」
美鈴「いいなぁ。うちの人たちはケチだから、お餅なんて出してくれないだろうし。」
鈴仙「……貴方、いつも何食べてるの?」
美鈴「………………………………………………………………………………しくしく。」
鈴仙「あ~、悪かった。私が悪かったから泣かないで。」
太ったネズミは痩せたネズミに慰められた後、とぼとぼと帰って行きました。
痩せたネズミが勝ったと言うことで、二人は喜びました。
輝夜「勝ったのね。良い子良い子。」
永琳「実験は成功。以後、経過を見ることとする、と。」
輝夜「実験だったの?だったら、あっちのネズミにもお餅分けてあげたら?」
永琳「そうですね。モルモットは多い方が良いですし……。」
おばあさんはその夜、二匹分のお餅を作ってあげました。
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さて、こちらは庄屋さんの家です。
咲夜「………と、言うことです。」
レミリア「ふうん。うちのネズミが、庶民のネズミにねえ。」
庄屋さんが、配下の忍者から、おじいさんの家であった出来事を話していました。
何で庄屋さんが、忍者なんか使っているのかは、分かりませんが。
パチュリー「ネズミのことなんて、どうでも良いんじゃないの?」
レミリア「そうはいかないわ。うちのネズミたるものが、貧乏なお家の
痩せこけたネズミ如きにやられたとあっては、うちの威厳に関わる。
そう。それが例え、ドーピングをした結果であっても、ね。」
パチュリー「そんなもんかしら。」
咲夜「そんなもんなのですよ、きっと。」
負けず嫌いな庄屋さんは、自分の家のネズミが負けたことに、我慢できないようです。
咲夜「それと、もう一つ。」
レミリア「何?」
咲夜「あの二人、うちのネズミにもお餅を分けるとか相談してました。」
レミリア「………そうはいかない!」
咲夜「お嬢様……じゃなくて、旦那様?」
庄屋さんは、激昂しました。
レミリア「貧乏なお家から施しを受けるですって?ネズミのこととは言え、
そんなこと許されないわ。うちはうちで、何か力のつくものを用意するのよ!
ネズミが勝てば、ネズミのことだけでなく、料理の面でも勝つことになるわ。」
咲夜「は、はぁ。わかりました。」
レミリア「と、言うことでパチェ。何とかならないかしら?」
パチュリー「そうね。こっちも何か出してみる?」
レミリア「例えば?」
パチュリー「そうね。余り得意では無いけど、あれとこれとそれを調合した……七草粥でも作ってみるわ。」
レミリア「勝てるなら何でもいいわ。よろしくね。」
パチュリー「まかせて。」
庄屋さんの嫁さんは、家に居るであろう太ったネズミのために、お粥を作ってやりました。
そして、それを神棚に供えました。
パチュリー「無病息災。泥棒とかゴキブリが湧きませんように。」
とりあえず家の安全を願って、嫁さんは寝ました。
・
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次の日のこと。
おじいさん、おばあさんの家では、また、屋根裏から、どったんばったんと音がしています。
輝夜「あらあら、またやってるわね。」
永琳「うちのネズミは、どうなっているのでしょうねえ。」
どれどれと、二人は屋根裏を覗きました。
すると、
美鈴「どっせ~い!」
鈴仙「うわわわわ!」
何と、お餅を食べて力をつけたはずの痩せたネズミが、太ったネズミに投げ飛ばされてしまったのです。
痩せたネズミは一昨日のように尻餅をついてしまいました。
鈴仙「いたたたた……。ど、どうしたの?昨日とは全然力が違う…。」
美鈴「ふ、ふふふふふ………。うう、ぐすっ…。」
鈴仙「え、ちょ、ちょっと!私また何か言った?」
美鈴「違うの……。お米が。」
鈴仙「お米?」
美鈴「昨日神棚を見たら、お粥が……。七草粥がぁああああ!」
太ったネズミは、泣いて喜んでいます。
痩せたネズミは、何があったのか理解が出来ませんでした。
美鈴「美味しかった!物凄く美味しかったのよ!ええ、この世の物では無い味だった!」
鈴仙「あ~、でも、七草粥はこの世の物だから。……あの世にもあるだろうけど。」
どうやら太ったネズミは、庄屋さんの嫁さんが作った七草粥を食べて、力をつけたようです。
普段何を食べてるのか知りませんが、太ったネズミは彩光乱舞…もとい、狂喜乱舞しています。
痩せたネズミは、『ああ、良かったね』と思いつつ、やっぱり負けたので悔しく思いました。
影から見ていた庄屋さんちの忍者は、庄屋さんに報告に帰りました。
咲夜「お嬢様……じゃなくて、旦那様。今日は勝ちました。」
パチュリー「あら、勝ったのね。」
レミリア「うんうん。それでこそ、我が家のネズミだね。」
庄屋さんは、その結果に大満足です。
輝夜「うちの子、負けちゃったわ。」
永琳「むう。どうやら、あっちはあっちで、何か別のものを食べてきたようですね。」
輝夜「あら本当。お餅が一匹分、残ったままね。」
永琳「ふふふ。どうやら、あちらは勝負を挑んできたようです。」
輝夜「…面白いわね。ええ、実に面白い。永琳、負けることは許さないわ。」
永琳「はっ。」
おばあさんはまた、痩せたネズミのためにお餅を作りました。
永琳「あ、姫。そのかっぱ○びせん、少しいただけませんか?」
輝夜「(ぽりぽり)あら、永琳も食べる?」
永琳「いえ。お餅に入れます。やめられない止まらない、ちょっと中毒性のある、
そんなお餅じゃないと、ネズミと言えどいずれ飽きて、食べなくなりますから。」
おばあさんは、何処から調達したのかよくわからない、
謎の液体とかっぱえ○せんを混ぜつつ、ぺったんぺったんとお餅をつきます。
そして出来上がったお餅を、神棚に供えたのです。
で、次の日。
美鈴「ぶぅっ!」
太ったネズミは、痩せたネズミから張り手を喰らって、ぶっ飛ばされてしまいました。
鈴仙「よし!天国のおじいさん、おばあさん、私は勝ちましたよ!」
永琳「死んでないけどね。」
輝夜「まぁ、家は天国のようなものだけど。」
この日は、痩せたネズミが勝ったのです。
同日、庄屋さんの家では
レミリア「負けた?」
咲夜「はい。また何か、食べたみたいです。」
レミリア「……パチェ。もっと強力なのを。」
パチュリー「ええ、分かってるわ。……こうなったら徹底抗戦ね。」
庄屋さんの嫁さんは、大釜にどっから採ってきたのかわからない、名称不明の薬草を
大量にぶちこみ、それにお米を入れて、かき混ぜ、炊き上げました。
少し塩を入れて、美味しい美味しい、七草粥の出来上がりです。
それを神棚に供えて、こちらも必勝祈願です。
で、次の日。
美鈴「ドスコイ!」
鈴仙「うおあ…うおあ……ぅぉぁ………!」
この日太った方は、痩せたネズミに向かって地上に対し水平に飛んで行き、頭からぶつかりました。
思わぬ一撃を喰らった痩せたネズミは、壁にぶつかるくらいの勢いで吹っ飛んでしまいました。
鈴仙「そ、それって相撲の技なの?」
美鈴「あいや、どっかの歌舞伎メイクのお相撲さんが使ってたから間違いないと思うヨ。」
鈴仙「ほんとかなぁ……。」
美鈴「ワタシのうちにアル本に、そういうこと書いてたわヨ。」
鈴仙「?」
美鈴「どうしたノ?」
鈴仙「いや、何か、違和感が……。」
美鈴「変な兎……じゃなくて、ネズミネ。」
太ったネズミに何となく違和感を感じましたが、特に何事も無く、今日の試合は終わったようです。
輝夜「むむ。あちらも中々、やるみたいね。」
永琳「う~ん、それじゃあ、これをこうして………。」
輝夜「はい、かっ○えびせん。今日は梅味で。」
永琳「ああ、これはどうも。」
おばあさんはまた、ネズミのためにお餅を作って、神棚に供えました。
で、次の日。
鈴仙「ハアハアハアハアハア!!」
美鈴「ぶべべべべべべべべべ!!}
痩せたネズミは、目にも留まらぬ速さで張り手を繰り出し、太ったネズミを攻撃しています。
防御をしても体力がどんどんと削られて行き、太ったネズミはとうとう倒れてしまいました。
鈴仙「よし、一本とったウサ!」
美鈴「ひ、酷い……。今時削り殺されるナンて、ありえないヨ。」
鈴仙「でも、勝ちは勝ちねウサ。」
美鈴「?」
鈴仙「どうしたウサ?」
美鈴「何か、変じゃない?ほら、語尾とかネ。」
鈴仙「そうかしらウサ。私は何も感じないウサけどねえ。」
美鈴「う~ん、気のせいなのかナ?」
で、庄屋さんの家では。
咲夜「今日はあちらの勝ちです。」
レミリア「きー、貧乏人のくせに!パチェ!」
パチュリー「じゃあ、次はアレとコレと……もう、七草じゃなくて十五くらいになってるわね。」
庄屋さんは大層悔しがったので、嫁さんはまた、お粥を作りました。
その次の日は太ったネズミが勝ち、痩せたネズミはまたお餅を食べ、
その次の日は痩せたネズミが勝ち、太ったネズミはまたお粥を食べ、
その次の日は太ったネズミが勝ち、痩せたネズミはまたお餅を食べ
その次の日は痩せたネズミが勝ち、太ったネズミはまたお粥を食べ……………。
そんな日が、繰り返されました。
美鈴「アイヤー、キョウハワタシノカチアルネー。」
鈴仙「ウサ~、くやしいウサ。もっとお餅たべるウサ。もっとちからをつけるウサ。」
美鈴「ソレジャワタシモ七草粥タベルヨ。」
鈴仙「お餅おいしいウサ。やめられないウサ。止まらないウサ。」
美鈴「アナタニハマケナイヨロシ。」
鈴仙「わたしも負けないウサよ。ウサウサ。」
痩せたネズミは、来る日も来る日もおばあさんのお餅を食べて力をつけ、
太ったネズミもそれに負けじと、来る日も来る日も来る日もお粥を食べました。
二匹とも、それを食べるごとに力をつけて行ったのです。
しかし、その力を得る代償が、余りに大きかったことを、二匹が気付くことは、遂に無かったのです。
・
・
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二匹がそれぞれ、お餅や七草粥を食べ初めてから、二十日くらいが過ぎました。
おじいさんとおばあさんの家の屋根裏から、いつもの様に、相撲をとる音が聞こえてきました。
輝夜「さて、今日はどっちに軍配が上がるのかしら?」
レミリア「うちのネズミに、紅茶一袋。」
永琳「それじゃあ私は、うちのネズミに、バファ○ン一錠。」
輝夜「かっ○えびせん小袋一つ。」
レミリア「ケチね。」
永琳「うちは貧乏ですから。」
パチュリー「物は言いようね。」
輝夜「美味しいのにね。」
何時の日からか、庄屋さん夫婦が直々に、試合を観戦しに来ていたのです。
四人は屋根裏を覗きました。
鈴仙「UUUSAA……SISHOOOO………。」
痩せたネズミは、耳が12本に増え、その目は紅く、鋭い眼光を放ち、
前歯には、巨大な熊ですら一撃で倒してしまう、強力な毒が分泌されています。
美鈴「U……UOOOO……。AIYAA………。」
太ったネズミは、元々体格が良かったのですが、その身体はさらに大きくなり、
口には牙が、頭には角が生え、鬼と言ってもよい姿となってしまっています。
二匹とも、鳴き声ではなく、唸り声を発しています。
輝夜「う~ん、立派に進化したわね。」
レミリア「普段もこれくらい気合入れてたら、少しは物の役にも立つと思うんだけどねぇ。」
永琳「実験体の進化は留まる所を知らず。力比類無く、並びうる生物無し。
されど理性は最早砕け、有るのはただ、破壊の衝動のみ………と。」
パチュリー「ふぅ。何事も、本みたくはいかないものね。」
永琳「日記はここで終わっている………。よし、完成。」
四人はネズミのその姿を、頼もしそうに見ています。
鈴仙「USAA……USAUSA………!」
美鈴「AIYAA………!HOOOOU!」
二匹が、お互いの存在を敵と認め、殺気をぶつけ合います。
二匹は身構え、相手の出方を伺い、攻撃をする機会を待っているのです。
美鈴「HOACHAAAAAAAAA!!」
鈴仙「USAAAAAAAAAA!!!」
二匹は同時に飛びかりました!
二匹のネズミの力がぶつかり合います。
美鈴「HOOOOOOOU!」
鈴仙「USASAAAAA!」
がっしりと組み合う二匹!
一瞬でも力を抜けば殺られる。
本能でそう感じている二匹は、さらに力を入れます。
力の均衡は、崩れる気配がありません。
パチュリー「大地が揺れてるわ。」
レミリア「大地と言うか、揺れてるのはこの家ね。大丈夫なの?」
永琳「地震で崩れるほど、柔な家じゃあないわ。」
輝夜「まぁ、崩れたら燃やして『壊れたのは地震じゃなくて火事のせいです』
って言って誤魔化せば、きっとみんな納得してくれるわ。」
レミリア「新手のアレね。」
その力が大きすぎるせいか、家が揺れ始めました。
おじいさんおばあさんと、庄屋さん夫婦は、少し不安になりましたが、
可愛い我が家のネズミの応援を、やめたくはありませんでした。
鈴仙「U………SAAAAAA!USAUSAAAAAA!!!」
美鈴「HOOOUAAAAA!!CHAAAAAAAAA!!!」
組み合う二匹からは、火花が散っています。
永琳「いけない!」
レミリア「ん?」
輝夜「どうしたの?」
パチュリー「お餅とお粥で強化された二人の力が、外部に漏れてる。」
火花の正体は、お餅やお粥で増幅された、二匹のネズミの力だったのです。
それがとても危険だと言う事に、おばあさんは気付きました。
パチュリー「あの二匹の力は、自らの限界を超え、飽和状態になっている。
それは、普段は少しずつ、そして今、大量に、外部へと漏れている。」
永琳「そして、屋根裏と言う、狭くて密閉された空間。ここに、力が充満している。」
パチュリー「力は空気。屋根裏は風船。空気を入れすぎた風船って、どうなる?」
レミリア「……ぱんっ。」
パチュリー「正解。」
輝夜「はい、賞品のかっぱえびせ○。」
レミリア「ありがと。」
屋根裏には二匹から溢れた力が充満し、今にも爆発しそうになっているのです!
このままでは、おじいさんもおばあさんも、庄屋さんもその嫁さんも、皆吹っ飛んでしまいます!
鈴仙「USAAAAAAAA!!」
美鈴「IYAAAAAAAA!!」
二匹から発せられる火花が、さらに強くなりました。
レミリア「不味いじゃない。」
輝夜「かっぱえび○んが?」
レミリア「状況が。早く逃げなきゃ。」
永琳「ああ、もう手遅れよ。」
輝夜「既に出口は塞いだわ。貴方たちも、私たちと一緒に死ぬのよ!あははははは!」
レミリア「あんたらは死なないでしょ!ああもう、まだ500年しか生きてないのに~。」
パチュリー「あ、もう限界ね。」
レミリア「はぁ。さよならこの世。」
空気が震え、火花は屋根裏中で発生するようになりました。
二匹が、最後の力を振り絞り、組み合った瞬間!
どっかぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~ん!!!
家が、大爆発を起こしました。
おじいさん、おばあさんの家を中心に、庄屋さんの家をはじめ、村中のあらゆる物が、一瞬で吹き飛びました。
この日、一つの村が、地図からその姿を消したのでした………。
輝夜「ぷふぅ~。あ~、死ぬかと思った。」
レミリア「だから死なないでしょ。まぁ、私も生きてるけどさぁ。ええと、日傘は……。」
咲夜「はい、どうぞ。」
レミリア「何処行ってたのよ?まったく。咲夜がアレを防がないから、服が黒こげじゃない。もう。」
永琳「過ぎたるは及ばざるが如し。やり過ぎは良くないのよ。何事も。」
パチュリー「そうね。貴重な経験をしたわ。」
鈴仙「う………さ………。」
美鈴「あ…い………やー……。」
おしまい
キャスト
痩せたネズミ ・・・ 鈴仙・U・イナバ
太ったネズミ ・・・ 紅 美鈴
おじいさん ・・・ 蓬莱山 輝夜
おばあさん ・・・ 八意 永琳
庄屋さん ・・・ レミリア・スカーレット
庄屋の嫁さん ・・・ パチュリー・ノーレッジ
忍者 ・・・ 十六夜 咲夜
>レミリア「……パチェ。もっと協力なのを。」
それはそれとして……歯止め無く競い合った先にはこのような悲劇しか生まぬ
のか。科学は、文明は、宗教は、社会は、資本主義は……人類は。
そんな人の業(カルマ)について思いを馳せる……
なんてこたーなく、ただ只管に面白かったです♪
Pikoさんの書く紅魔組好き好き~
おかげでケーキ噴いちゃったじゃないですかっ(エ
昔話にしても爆発オチにしても(ぇ)原点のようなものは安心して読めて楽しいです。