雪です! 雪です! 豪雪です! それはもう所構わず積もっています!!
チルノが辺りを駆け回り、レティが生を謳歌しつつ、橙は炬燵に潜り込んでおります!
幻想郷の歴史古けりと言えども、これだけの積雪が観測されたのは正しく稀有であります!!
私、射命丸文文々。新聞特班員はこの不可思議なる常理を越えた現象に対し誠実に余すところなく調べ回し、完全なる情報を持って誠に正しい読者へと届けることが義務づけられているのであります! そうれはもう!!
さて!
古来より常日頃嘘を並び立てる輩は狼男と呼ばれ狼藉の関与無しに務所へぶち込まれるのは明白の理でありますが、もしその男が本当に正しい答弁を裁判にて行ったらみな何と言うでしょうか!
はい! はい、私、答えなさい!!
イエス! みなの反応は決まっているでしょう!
『あいつが本当のことを言うなんて雪が降るんじゃないだろうか』
これです!
きっとこの幻想郷においても、どこかのだれかがその身に合わぬ行為を赤恥さえ覚えず行ったに違いありません!!
そうです!
この豪雪の原因は、まさしく人災によるものなのです!
これは黙って置けません!
いったい誰の仕業なのでしょうね!!
誰彼構わず聞いてやれ!
突撃リポート射命丸文発進!!
☆
さて! ここは真っ赤な館、紅魔館のそびえる湖のほとりであります!
そこで皆様、左手の先をご覧ください!!
不可思議です! 誠に不可思議です!! アンビリーバボーと叫んでもらって全く問題はありません!!
動かぬ大図書館パチュリー・ノーレッジがお外を出歩いております!!
なんてことでしょうか! 信じられません!
彼女の唯一頑なに保っていた紫もやしの引きこもりというアイデンティティをかなぐり捨ててまでの外出です!
彼女の一歩は幻想郷にとってこれっぽっちも価値のない唾棄すべき怠慢な一歩でありますが、きっと彼女にとっては天国の階段十三段目にも等しい価値を持った一歩なのでしょう!!
珍しい! 非常に珍しい!!
まさに!
『雪でも降るんじゃない?』
さて、そんな動き回る移動図書館へと進化を遂げたパチュリー・ノーレッジさんに今の心境を聞いてみます!
「いや、魔理沙に貸してた本を返してって言ったら、『雪の中に埋めたぜ。探しだしてみな』って言ってたのよね……」
な
なな
なんですって!!??
皆さん聞きましたか!?
『魔理沙が本を返すと言った』そうです!!
多少語弊があるかもしれませんが日本語の八割くらいは正しいので問題ないでしょう!
まずい! これは非常にまずいことになりました!!
まさか魔理沙が、奪っていった本を存命中に返す意思表明をするなんて!!
『雪でも降るんじゃね?』
ゴーですGO!
魔理沙のところへレッツゴーインタビュー!!
「いや、暇なら手伝って欲しいのだけれど……ぐふっ」
倒れました! パチュリーさん倒れました!
やはり動かぬ大図書館が移動図書館へ成り代わることは難しかったのでしょう!!
さようなら! ありがとう!! セピア色の空に浮かぶ貴方の笑顔に乾杯!!
☆
所変わって魔理沙邸であります!
魔理沙さん! 魔理沙さん! いらっしゃいましたら返事をお願いします!
明るくチャーミングにデストロイトな射命丸文です! 訪問です!!
「あー、うるさいな……。なんだってんだ昼間から。私は魔女だぜ夜活動だぜ」
でたー! 魔女です! 非常に至極真っ当に普通です!!
今回の件について一言お願いします!
「あー、ありゃあ、埋めたのはミカンだぜ。本じゃないな。というかパチュリーのやつ私の嘘を真に受けたのか」
正に極悪非道!!
「永琳を呼んどくぜ。きっとあいつのことだから雪の中で行き倒れてんだろ」
追い討ち重視!!
「ミカンもなあ、いらないいらないって言ったのに霊夢のやつが大量にくれたんだよ。余って仕方ないからパチュリーで遊んだ」
な
なな
なんですって!!??
皆さん聞きましたか!?
『霊夢がミカンをくれた』そうです!!
日々の飲み水にさえ困っているような赤貧清貧極貧の極地を極めた例の巫女が他人に食料の施しを行ったそうです!!
『あー、これ間違いなく雪降るわ』
まずいです!!
私の推理によれば、まず間違いなく、この紅白巫女の行いが天の脇腹を突き雪を降らせたのでしょう!!
取材取材!
取材です!
リポートしてレポート書いてブロードキャストします!!
いざ巫女神社!!
☆
さあ、みなさん!!
宴もたけなわとなってまいりました!!
なぜか幻想郷の出来事はここに行き着くたどり着く!!
泣く子も裸足で空を飛ぶ博麗神社です! ついでに河流れ!!
「なによあんた。何か用事?」
でたぁー!! 巫女だー!!
腋出してますよ寒くないんですかね本当に!!
「うるさいわねえ。用がないなら凍って滑ってお帰りなさい」
いえいえ、お断りしておきましょう!!
本題! いっていいですかね!?
「どうぞ」
博麗霊夢さん!
貴方が他人に食料を与えるなんて珍しい行為をやってのけるから雪が降ってきちゃったじゃないですか! それも豪雪です!!
あやまれ! みんなにあやまれ! なんでもいいからあやまれ! ついでに私にもあやまれ! ごめんなさいと頭を下げるのです!!
「うるさいわねえ。別に私だってそこまで生活に困っているわけじゃないし、お裾分けくらいするわよ。……それよりあんた」
は! なんでしょう!!
「いつもは千里の双眼鏡で遠くから覗くのが趣味の癖に、今日に限ってやたら突撃取材ね。耳ばかり早くて表に出ない天狗がする行為としてはまさしく……」
「珍しいわ。雪が降るくらい」
ごめんなさい。
おもしろかたぁ
さっと軽く読めるショートストーリーはいいものです。
序破急構成、お見事でした。
お見事。
お見事です。
いろいろあさっての方向に飛びつつ最後はきれいにまとまっていてとても面白かったです。しかし題名は確かに気になる…。