今日も素敵…だった紅魔館。
満月の夜になって、お気に入りの瀟洒な従者と共におくつろぎになっていたレミリア様。
優雅に月を見つつ、手にしたワイングラスを傾けたその時でした。
「お姉さまっ!」
「ぶっ!」
なんてことでしょう。
レミリア様は突然の大声と、廊下をドタドタと走ってくる足音に驚き、ワイングラスに顔面を突かれてしまいました。
でも大丈夫!吸血鬼なので3秒ぐらいで再生できます。ラッキーですね。
さて、レミリア様の部屋の扉を勢いよく開かれると、そこにはへn…素敵な羽を持った少女が嬉しそうな表情で立っていました。
「な、何?そんな嬉しそーな顔して…」
鼻を押さえながら、レミリア様はその少女に言いました。
その少女は何と、レミリア様の妹だったのです。驚きですね。
彼女の名はフランドール。
全てを破壊しつくす破滅の化身、と言っても過言ではありません。
「あのね、あのね、さっき新しいスペルカードが完成したの!」
「そ、そう、良かったわね、ねえ咲夜?」
「そうですねお嬢様。真に喜ばしい限りですわ」
レミリア様は困りました。
このままでは紅魔館がこの妹の魔力のせいで潰れてしまうかもしれなかったからです。
肝心の瀟洒な従者も機械のような返事を返してくれやがりました。
困ったレミリア様は、とりあえずこう聞きました。
「ねえフラン、一体どんなスペルなの?」
するとフランは言いました。
「私のスペルでフォーオブアカインドってあったでしょ、アレを改良したの。
その名も」
「ああ、『多重影分身の術』ですわね」
瀟洒な従者はつまらないボケをかましてくれました。
満月のせいか、ちょっとおかしくなってしまってるようです。
「咲夜、何それ?」
「有名な童話ですわ」
「…で、何て名前なの?」
話が脱線しかけた所を、レミリア様が元に戻しました。
「あ、ああ名前のことね。その名もフォーオブアカインド改!」
そのまんまでした。
「じゃあ早速見せてあげる!」
呆気に取られていたレミリア様達が、フランの一言で我に返りました。
「まま待って!やるんだったら自分の部屋で、ね?」
レミリア様は耐久度バツグンのフランの部屋なら被害が及ばないだろう、と考え、言いました。
瀟洒な従者も機械のようにうなずきました。
「ちぇー、しょうがないなぁ」
フランはスペルカードをしまい、言いました。
「じゃあ、なるべく早く来てね!」
そう言うと、また嬉しそうに走り去っていきました。
レミリア様と咲夜は顔を見合わせ、ため息をつきました。
さて、ここはフランの部屋。
フランの膨大な魔力を外に出さないように作られたこの部屋なら、フランが暴れても問題ありません。
「じゃ、早速見せてくれる?」
「うん!」
フランはスペルカードを取り出し、こう宣言しました。
「スペルカード!フォーオブアカインド改!」
フランの手に掲げられたカードが輝きだし、フランの体も光に包まれました。
そして、光が消えると――そこには普段と変わらず、4人に分身したフランがいました。
「あれ、特にお変わりになってないのでは?」
咲夜が言いました。しかし、レミリア様は頭を振って、
「いいえ咲夜、表情が違うわ」
「え?表情?」
咲夜は改めて分身達を見ました。
一人は喜びで顔をほころばせていて、
一人は何だか怒ったような顔をしていて、
一人は何が悲しいのか今にも泣き出しそうな顔をして、
もう一人は立ったまま寝てました。
「…感情よ、フランの喜怒哀楽の感情が分裂したのよ」
「……つまり、今までのフォーオブアカインドは3人はダミーだったけど、今回のは4人とも実体?」
「そう言うことになるわね」
冷静にフランのカインド改を分析する2人でしたが、彼女らの脳裏にはある事がよぎりました。
(弱体化してないか、それ…?)
そう思っていると、突然、寝ているフランを除いた3人のフランが、レミリア様の周りを囲みました。
「な、何?」
「ねーぇ おねーさまぁー?レームの事、どう思ってるわけ~?」
フラン(喜)が、レミリア様をからかいはじめました。
「な、何よ、霊夢なんかただの食料に決まってるんじゃない」
「キャーッ お姉さまってば~ 素直じゃないんだからぁ~」
フラン(喜)は、勝手に頬を赤らめました。
レミリア様が戸惑っていると、突然、ものすごい力で襟首をつかまれました。
フラン(怒)が、レミリア様をものすごい形相で睨んでました。
「ちょっと、離してよ!」
「うるさい!やい姉貴!よくも私を永い間こんなせまっくるしい場所に閉じ込めてくれやがったな!」
「それはアナタが危ないからよ!」
「危ない?あたしが?どこが危ないってんだよ、姉貴とは言え、答えによっちゃブン殴るよ!」
フラン(怒)がレミリア様の顔面めがけ拳を振り上げました。
「ほら、喧嘩は止めてください!」
事態を重くみた咲夜が、2人を強引に引き離しました。
しかし、その時の咲夜の手が、フラン(哀)にぶつかってしまいました。
フラン(哀)の目に涙が浮かび、こぼれました。
「う…うわぁぁん!咲夜が、咲夜がぶったぁぁ!」
フラン(哀)は大粒の涙を流しながら泣き叫び始めやがりました。
「え、あ、えと…」
咲夜は困惑しました。
同時に、フラン(怒)の怒りの矛先が咲夜に向かいました。
「おいてめぇ!私をいじめると承知しないよ!」
「わーん、さくやが、さくやがー!」
「キャハハハ! なかした、泣かしたー!」
フラン3人が口々に咲夜を責め始めました。
「うるさーい!いい加減にしなさい!」
ついに堪忍袋の緒が切れたレミリア様が、大声で怒鳴りました。
すると、さっきまでの騒動が嘘のように治まりました。
「もうそのスペルは騒がしいから禁止!早いとこ元に戻りなさい!」
レミリア様はフラン達に向かって怒鳴りました。
しかし、フラン達は元に戻ろうとしませんでした。
「ねーねーフランちゃーん、元に戻る方法知ってるぅ?」
「ああ!?そんなことあたしに聞くな気持ち悪い!おい、お前はどうなんだよ!」
「うっ、うっ…、わ、私も知らないよぅ… ねぇ、あなたはどぉなの…?」
「zzz…」
なんと、全員が元に戻る方法を知らなかったのです。
そして、フラン達は恐るべき事を提案しました。
「じゃー 元に戻る方法が見つかるまでの間さー 幻想郷中を飛び回るどーぉ?」
「おっ、そりゃいいな!このやり場のない怒りを発散させるのには一番だ」
「私も、そ、それに賛成ぃ…」
「zzzzz…」
あまりに一方的に会話が進んでいくので、レミリア様も入り込む余地がありませんでした。
しかし、外に出るのは断固阻止しなければなりません。
「ちょっと!外に出るなんて、許さないんですからね!」
レミリア様と咲夜が部屋の出口に立ちはだかりました。
「うぇーん、姉さま達が邪魔するよぅ」
「私におまかせっ!カタディオプトリック!」
フラン(喜)の眼がキランと輝きました。
すると、
「ブッ!」
「!?さ、さくやぁ!?」
咲夜は盛大な鼻血を拭いて倒れてしまいました。
「さくや、さくや、傷は浅いわよ!」
「お嬢様…私、幸せでした…ガクッ」
「咲夜ぁぁー!」
咲夜は至福の表情で気絶しました。
「おい、一体何したんだ?」
「えーとねー、相手の目に入る光の屈折率をいじっちゃうの。するとぉ、私の事がその人が一番大事な人の一番見たい姿に見えるってわけ」
「じゃ、じゃあ咲夜はよっぽどヒドいことを姉様に望んでたのね、ひどいよぉ…グスッ エグッ…」
「zzz…」
レミリア様が立ち上がり、4人を睨みました。
「あなた達…もう許さないんだからね!」
「お姉さまにも見せてあげる!カタディオプトリック!」
「ブフッッ!」
哀れレミリア様は、咲夜と同じ量の鼻血を噴出してあっさりと倒れてしまいました。
「キャーッ、私ってぇ とってもすごいのかもぉ!」
「クソッ こいつ消し飛ばしたくなってきた…!」
「あの、ぼ、暴力はいけないよぅ…」
「さ、行きましょ! 満月が明けちゃうわ」
こうしてフラン達は夜空に飛び立っていったのでした。
ただ一人、寝ているフラン(楽)を残して――
続く………かも
満月の夜になって、お気に入りの瀟洒な従者と共におくつろぎになっていたレミリア様。
優雅に月を見つつ、手にしたワイングラスを傾けたその時でした。
「お姉さまっ!」
「ぶっ!」
なんてことでしょう。
レミリア様は突然の大声と、廊下をドタドタと走ってくる足音に驚き、ワイングラスに顔面を突かれてしまいました。
でも大丈夫!吸血鬼なので3秒ぐらいで再生できます。ラッキーですね。
さて、レミリア様の部屋の扉を勢いよく開かれると、そこにはへn…素敵な羽を持った少女が嬉しそうな表情で立っていました。
「な、何?そんな嬉しそーな顔して…」
鼻を押さえながら、レミリア様はその少女に言いました。
その少女は何と、レミリア様の妹だったのです。驚きですね。
彼女の名はフランドール。
全てを破壊しつくす破滅の化身、と言っても過言ではありません。
「あのね、あのね、さっき新しいスペルカードが完成したの!」
「そ、そう、良かったわね、ねえ咲夜?」
「そうですねお嬢様。真に喜ばしい限りですわ」
レミリア様は困りました。
このままでは紅魔館がこの妹の魔力のせいで潰れてしまうかもしれなかったからです。
肝心の瀟洒な従者も機械のような返事を返してくれやがりました。
困ったレミリア様は、とりあえずこう聞きました。
「ねえフラン、一体どんなスペルなの?」
するとフランは言いました。
「私のスペルでフォーオブアカインドってあったでしょ、アレを改良したの。
その名も」
「ああ、『多重影分身の術』ですわね」
瀟洒な従者はつまらないボケをかましてくれました。
満月のせいか、ちょっとおかしくなってしまってるようです。
「咲夜、何それ?」
「有名な童話ですわ」
「…で、何て名前なの?」
話が脱線しかけた所を、レミリア様が元に戻しました。
「あ、ああ名前のことね。その名もフォーオブアカインド改!」
そのまんまでした。
「じゃあ早速見せてあげる!」
呆気に取られていたレミリア様達が、フランの一言で我に返りました。
「まま待って!やるんだったら自分の部屋で、ね?」
レミリア様は耐久度バツグンのフランの部屋なら被害が及ばないだろう、と考え、言いました。
瀟洒な従者も機械のようにうなずきました。
「ちぇー、しょうがないなぁ」
フランはスペルカードをしまい、言いました。
「じゃあ、なるべく早く来てね!」
そう言うと、また嬉しそうに走り去っていきました。
レミリア様と咲夜は顔を見合わせ、ため息をつきました。
さて、ここはフランの部屋。
フランの膨大な魔力を外に出さないように作られたこの部屋なら、フランが暴れても問題ありません。
「じゃ、早速見せてくれる?」
「うん!」
フランはスペルカードを取り出し、こう宣言しました。
「スペルカード!フォーオブアカインド改!」
フランの手に掲げられたカードが輝きだし、フランの体も光に包まれました。
そして、光が消えると――そこには普段と変わらず、4人に分身したフランがいました。
「あれ、特にお変わりになってないのでは?」
咲夜が言いました。しかし、レミリア様は頭を振って、
「いいえ咲夜、表情が違うわ」
「え?表情?」
咲夜は改めて分身達を見ました。
一人は喜びで顔をほころばせていて、
一人は何だか怒ったような顔をしていて、
一人は何が悲しいのか今にも泣き出しそうな顔をして、
もう一人は立ったまま寝てました。
「…感情よ、フランの喜怒哀楽の感情が分裂したのよ」
「……つまり、今までのフォーオブアカインドは3人はダミーだったけど、今回のは4人とも実体?」
「そう言うことになるわね」
冷静にフランのカインド改を分析する2人でしたが、彼女らの脳裏にはある事がよぎりました。
(弱体化してないか、それ…?)
そう思っていると、突然、寝ているフランを除いた3人のフランが、レミリア様の周りを囲みました。
「な、何?」
「ねーぇ おねーさまぁー?レームの事、どう思ってるわけ~?」
フラン(喜)が、レミリア様をからかいはじめました。
「な、何よ、霊夢なんかただの食料に決まってるんじゃない」
「キャーッ お姉さまってば~ 素直じゃないんだからぁ~」
フラン(喜)は、勝手に頬を赤らめました。
レミリア様が戸惑っていると、突然、ものすごい力で襟首をつかまれました。
フラン(怒)が、レミリア様をものすごい形相で睨んでました。
「ちょっと、離してよ!」
「うるさい!やい姉貴!よくも私を永い間こんなせまっくるしい場所に閉じ込めてくれやがったな!」
「それはアナタが危ないからよ!」
「危ない?あたしが?どこが危ないってんだよ、姉貴とは言え、答えによっちゃブン殴るよ!」
フラン(怒)がレミリア様の顔面めがけ拳を振り上げました。
「ほら、喧嘩は止めてください!」
事態を重くみた咲夜が、2人を強引に引き離しました。
しかし、その時の咲夜の手が、フラン(哀)にぶつかってしまいました。
フラン(哀)の目に涙が浮かび、こぼれました。
「う…うわぁぁん!咲夜が、咲夜がぶったぁぁ!」
フラン(哀)は大粒の涙を流しながら泣き叫び始めやがりました。
「え、あ、えと…」
咲夜は困惑しました。
同時に、フラン(怒)の怒りの矛先が咲夜に向かいました。
「おいてめぇ!私をいじめると承知しないよ!」
「わーん、さくやが、さくやがー!」
「キャハハハ! なかした、泣かしたー!」
フラン3人が口々に咲夜を責め始めました。
「うるさーい!いい加減にしなさい!」
ついに堪忍袋の緒が切れたレミリア様が、大声で怒鳴りました。
すると、さっきまでの騒動が嘘のように治まりました。
「もうそのスペルは騒がしいから禁止!早いとこ元に戻りなさい!」
レミリア様はフラン達に向かって怒鳴りました。
しかし、フラン達は元に戻ろうとしませんでした。
「ねーねーフランちゃーん、元に戻る方法知ってるぅ?」
「ああ!?そんなことあたしに聞くな気持ち悪い!おい、お前はどうなんだよ!」
「うっ、うっ…、わ、私も知らないよぅ… ねぇ、あなたはどぉなの…?」
「zzz…」
なんと、全員が元に戻る方法を知らなかったのです。
そして、フラン達は恐るべき事を提案しました。
「じゃー 元に戻る方法が見つかるまでの間さー 幻想郷中を飛び回るどーぉ?」
「おっ、そりゃいいな!このやり場のない怒りを発散させるのには一番だ」
「私も、そ、それに賛成ぃ…」
「zzzzz…」
あまりに一方的に会話が進んでいくので、レミリア様も入り込む余地がありませんでした。
しかし、外に出るのは断固阻止しなければなりません。
「ちょっと!外に出るなんて、許さないんですからね!」
レミリア様と咲夜が部屋の出口に立ちはだかりました。
「うぇーん、姉さま達が邪魔するよぅ」
「私におまかせっ!カタディオプトリック!」
フラン(喜)の眼がキランと輝きました。
すると、
「ブッ!」
「!?さ、さくやぁ!?」
咲夜は盛大な鼻血を拭いて倒れてしまいました。
「さくや、さくや、傷は浅いわよ!」
「お嬢様…私、幸せでした…ガクッ」
「咲夜ぁぁー!」
咲夜は至福の表情で気絶しました。
「おい、一体何したんだ?」
「えーとねー、相手の目に入る光の屈折率をいじっちゃうの。するとぉ、私の事がその人が一番大事な人の一番見たい姿に見えるってわけ」
「じゃ、じゃあ咲夜はよっぽどヒドいことを姉様に望んでたのね、ひどいよぉ…グスッ エグッ…」
「zzz…」
レミリア様が立ち上がり、4人を睨みました。
「あなた達…もう許さないんだからね!」
「お姉さまにも見せてあげる!カタディオプトリック!」
「ブフッッ!」
哀れレミリア様は、咲夜と同じ量の鼻血を噴出してあっさりと倒れてしまいました。
「キャーッ、私ってぇ とってもすごいのかもぉ!」
「クソッ こいつ消し飛ばしたくなってきた…!」
「あの、ぼ、暴力はいけないよぅ…」
「さ、行きましょ! 満月が明けちゃうわ」
こうしてフラン達は夜空に飛び立っていったのでした。
ただ一人、寝ているフラン(楽)を残して――
続く………かも
1週間くらい。