――最強の炎の魔術――
666と並べばサタンだ。893と並べば足してブタだ。
では623は何なのだろう。
これは今まで私が見た事も無い論理、方程式から炎を繰り出す魔術だ。
「信じられない……。
使い方さえ間違えれなければ、これはどうみても最強じゃない!」
初歩にして基礎の属性『火』の魔術。
理論としてこの魔術は完全無敵であり、発動を止める手段は無いとのことだ。
発動後の若干のリスクさえあるものの相手に決まれば勝利は揺ぎ無い。
香霖堂にて手に入れたこの魔導書は、元は外の世界の物。
当然その全てが理解できるわけも無く、また用意する事も出来ない。
それらを埋め合わせるために、パチュリーは研究をしなければいけない。
独自の論理、方程式を用いて代替コストを見つけ実現させるために。
図書館が静寂を保つ中、無常に時は過ぎていく。
パチュリーはカリカリと筆を滑らせ式を完成させていった。
小悪魔が用意してくれた紅茶に目もくれず、ひたすらに没頭していた。
そして完成した――筆をおき、目の前の現状に懸念を示す。
這い蹲る無数の蟻のような、紙に書かれた式は
どれ一つが欠けても成立しない複雑さと、実行における正確さを表していた。
実戦で一度試行しないことには習得したとは言えない重みがあった。
「パチュリー様、宜しいでしょうか」
ふと声のしたほうに目をやると、メイド長の咲夜が申し訳なさそうに立っていた。
「何?」
「いよいよ明日には例のイベントが開催されますゆえ、
出来ればパチュリー様に段取りの方、協力願いたいとお嬢様が……」
「くどいわね、私は興味無いから」
「……左様ですか、失礼しました」
「……! ちょっと待って!」
このイベントにはレミリアもパチュリーも参加しない。
それ以外の者が頂点を競う毎年恒例のイベントになっている。
頂点――純粋な戦力としての、だ。
「私も出るわ」
その時の咲夜の表情は、今までに見たことも無い面白い顔だったという。
* * *
「パチェが本当にそう言ったの?」
「ええ、ただしハンデとして片手のみ使用、火の魔術しか使わない、との事です」
「それはいいんだけど……パチェが……」
パチュリーは強い、この紅魔館ではレミリアと並んで最強格と言える。
今回が初参加となる咲夜はおそらくその次に並ぶ実力の持ち主。
優勝も間違いないとレミリアは予想していたが、
まさかパチュリーが出るとは、そんな運命は全く視えなかったのだ。
流石に片手で、さらに合成魔術も使わない大きなハンデを背負った状態では
咲夜を倒すまでには至らないだろうし、イベントを番狂わせはしないだろう。
――理由だ。
パチュリーがこんな事に興味を示さないことは当然知っている。
何を以ってこの大会に挑むのか、レミリアには皆目検討も――
「……ちょっと出てくる。咲夜は留守番よ」
えっ、と声を出し戸惑いの表情を無視しレミリアは飛び出す。
咲夜に聞こえなかったであろう、その音の元に向かって。
そこにはレミリアの予想通り、パチュリーが居た。
満月の夜に響いたその音の正体は、パチュリーが独りで試し打ちしたものだろう。
「感心しないわね。
どんな魔法か知らないけどあまり夜中に――」
レミリアの声が突然止まる。
パチュリーの魔力は強大だ、だからその場の惨事がどんなものでも驚かない。
そう思っていたにもかかわらず、その場を見て、戦慄してしまったのだ。
「あら、レミィ居たの? ふふふ……魔力を抑えているのにこれよ」
のんびりした紅茶の時間に解けすぎたのだろうか。
目の前のパチェを見ると、背筋に冷たいものが走る。
レミリアの体に緊張が走る、その禍々しいオーラに圧倒されているのだ。
「引退したわけじゃないんでしょ? 慢心せずたまには腕を磨くことね」
パチュリーはそれだけ言ってその場を立ち去った。
後に残されたレミリアはその場の惨状を見ながら立ち尽くす。
目の前の木々は跡形も無く、空の雲はぽっかりと穴を開けている。
その場の地面にも恐ろしい負荷がかけられていることも読み取れた。
レミリアはハッキリとこの魔術の正体が分かってしまったのだ。
これは――パチュリーの弱点も完全に補う、最強の魔術だと。
* * *
涼しい風が吹き荒ぶ中、その広大な草原では着々と準備が行われていた。
イベントはトーナメントでの一対一の対戦方式。
勝った者が先に進み、最後まで進んだものが優勝――頂点となる。
「ちなみに咲夜とパチェは最後まで当たらないわ。念のため、ね」
このイベントは個々の戦力を見ると共に、
その者の戦力を皆にしっかり知らしめるという意図がある。
咲夜がどの程度強いのかレミリア自身は理解しているが、
このイベントは初参加ということもあり、ここで魅せてもらいたかった。
しかしパチュリーまで出るとは。
かなりのハンデを背負ってるとはいえ、この二人の対戦の結果は予測できない。
昨日の惨状を思い起こす、あの魔術一つの存在がなんて強大なのか。
間違いなくこの大会はこの二人の争いになるとレミリアは確信していた。
「それじゃあ……各々始めて頂戴」
二つの枠が敷かれ分けられた二つの場で、それぞれの試合が進行する。
細かい進行は全てメイド達に任せ、レミリアは独り紅茶を飲みながら眺める。
咲夜とパチュリーも自分の番以外はその側で優雅に待機する。
番が来れば席を離れ、一瞬で勝負を決め戻ってくる繰り返しだった。
そう、何も問題が無い――筈だったのだ。
パチュリーが準決勝を勝利し戻ってきた。
後に控えるのは決勝のみとなる。
「お疲れ様パチェ、……余裕そうね」
「ええ、しかし次の咲夜は強敵なのは間違い無いわ。
……でも負けないと思うけどね……ふふふ」
「え、ええ……頑張って」
レミリアの背筋がゾクリとする。
これほどまでに熱く、戦闘に燃えたパチュリーを見たのは初めてではないだろうか。
間違いなくあの魔術は咲夜に必ず打たれる。
今のパチュリーは手加減をするようにも思えない、レミリアは咲夜の安否を気遣った。
そういえば咲夜は――そう思った刹那。
――ドォォォォォォォン!!
耳を貫く衝撃の音が響く中、メイド服を着た人間の体が舞い上がる。
レミリアは、目の前に吹き飛んできたソレを見ると――
それは紛れも無く見慣れた顔、咲夜であった。
「さ……咲夜? そ、そんな、一体誰が!?」
粉塵巻き起こる中、そこに佇む勝者の姿を見つめる。
「発ァァァァァッ!!
油断しましたね! これが中国拳法の力です!」
その場に居合わせた者全てが声を失った。
あの鬼のように恐ろしく強いメイド長、そしてそれに逆らえない弱い門番。
その両者を知っている者が驚愕を隠せるわけは無かった。
門番は毎日の鍛錬を欠かすことは無かった。
そして裏では必殺技の訓練を重ね、習得していたのだ。
そう、奥義――
「天翔龍拳(あまかけるりゅうのこぶし)……」
「咲夜? 意識が戻ったのね」
「はい……申し訳ございません。
私は彼女のあの技の前に……時を止める間も無く敗れてしまいました」
「……一体どういうことなの?」
咲夜は渾身の力を込め立ち上がり、パチュリーの方に向き直った。
「パチュリー様、あの技は恐ろしい速さの――もはや神速と言えるでしょう――
その神速の踏み込みを以って飛び込む強力な突撃技です。
……発せられた場合、反応する事は不可能でしょう……。
ですが一つだけ、直前の予備動作いわば隙があります……それを衝ければ」
「……隙?」
「左足です」
「左足?」
「はい。彼女は常に両足を交互にステップを踏みリズムを取っています。
ですが当然踏み込みになるとそのステップが崩れます。
そして一番最初に――小さな変化ですが――現れるのが左足です」
「なるほど、左足が異なる動きを刻んだときが奥義の直前ね。
十分だわ……それさえ分かれば負ける要素は無いわ」
パチュリーは自らの勝利を確信した余裕の表情と笑みで、試合場へ向かう。
咲夜が心配する中、レミリアはやはり余裕の表情だった。
「お嬢様……お言葉ですが、パチュリー様は勝てません」
「どうしてそう思う?」
「パチュリー様は遠距離特化の戦闘スタイルかと思います。
加えて対戦相手の彼女は近接戦闘スタイル……。
試合が開始されたときの距離では遠距離というには不十分でしょう。
パチュリー様の魔力を知って易々距離を取らせてくれるとも思えません。
そしてあの奥義の前には……おそらく詠唱前に潰されます。
相手を寄せ付けないことで完璧な勝利を得るパチュリー様には、
おそらく勝ち目は……無いでしょう」
「咲夜」
「はい」
「なら、パチェが……破壊力のある“零距離魔術”を身に付けていたとしたら――どうする?」
「えっ……!」
パチュリーと門番が対峙する。
「パチュリー様、決着を付けましょう!
偉大なる中国拳法の前には、オカルト魔術は通用しないことを!
拳こそが戦闘の全てだと教えて差し上げます!」
「ずいぶんとはしゃいで……やれやれね」
決勝戦。
周りからメイド達、咲夜が見守るなか二人は睨みあう。
嵐の前の静けさか、怖いくらいに静まり返る中、レミリアが言葉を発す。
「決勝戦……はじめ!」
レミリアの言葉は二人に確かに聞こえていたにも関わらず、
両者共に動く気配は無かった。
門番はステップを繰り返しリズムを刻み込み自分のペースを守る。
対してパチュリーは左手に本を構え、前のめりになり相手をじっと睨みつける。
(そんなばかな!)
門番は焦っていた。
パチュリーは必ず距離を取ってくることを予測していたからだ。
それならば間合いを詰めればいいだけだし、
相手が不十分な間合いで詠唱準備をするようなら奥義で突貫すればいいだけのこと。
しかしパチュリーは間合いを離すどころか、前ににじり寄っているのだ。
おかしい、おかしい、門番は頭がおかしくなりそうだった。
重圧をかけるのはこっちのはずだったのに何故逆転してしまっているのだろうか、
あの細い体のどこからそんなオーラが滲み出しているというのか。
まずい、と脳裏で気づき冷静になる。
何をしてくるか分からない相手に対して受けに回って対応するのは自殺行為だ。
こちらから攻めなければいけない、どうせ対応なんて出来ないのだ。
打つしかない、奥義――
――パチュリーはじっとその時を待っていた。
門番の決め手は所詮一つしかない、だがこちらは多数の魔術を繰り出せる。
『火』属性しか使えないという制限こそ付けたが、それでも手数はこちらが多い。
ならば相手はこちらの行動を絞る術は絶対に無いのだ。
ならば相手は最高、最速の奥義を以って真っ向から先手を取るしかない。
そう推理をすれば、相手の心理などいくらでも読める。
こうやって重圧をかければ相手は必ず焦る、表情にさえ出てしまうだろう。
ならばこちらも、その時を待つ。
最高の、衝撃を与えることの出来るこの魔術を以って、全てを打ち破る。
トン、トン
パチュリーは門番の足にだけ全身全霊を注いだ。
相手を睨み、じりじりと前に滲み寄る。
間合いを詰め重圧を与え、その時を待ち腰を落とす心構えを取る。
トン、トン、トン
必ず来る。確信の思いで身体の底から魔力を吸い上げる。
――大地の底より目覚めしアグニの火竜よ――
トン、トン、トン、ト…
左 足 !!!
見えた、決して逃さない。
――業火を以ってその憤怒を打ちつけよ!――
「な……!?」
気づいたときには既に遅い。
術式は完全に了し、パチュリーの目の前に飛び込んだ門番に放たれる。
ドゴォォォォォォォォォォォ!!!!!!!
「!!!???」
言葉にならない叫びも、完全に轟音とかきけされ、門番は虚空へと打ち上げられた。
「見なさい咲夜、パチェは赤く燃えている」
「略してパチェ燃えですわ、お嬢様」
ストン、とパチュリーは華麗に着地した。
皆がパチュリーの勝利を理解し、見つめている。
パチュリーは勝者として、あの魔導書に習い、その台詞でこの場を締めた。
「小足見てから昇竜余裕でした」
でも現状を鑑みるに、私はこう思います。
いつでもどこでもぶっ放推奨。すなわち――パチェ萌え、と。
このパチュリーならきっと未来永劫斬全段ブロッキングとか
そんな感じの奇跡を起こしてくれると心から信じられまする。
まさかあの決め台詞を東方、しかもパチェで拝めるとはっ!
623の秘法を知った時の戦慄! 正に衝撃!
ひっさびさに腹抱えて笑かせて貰いました。
このパチュリーならきっと某炎の蓬莱人すらも即死焼夷弾で消し去ってくれると思う。
つまり何が言いたいかっていうと、ぱちぇ萌ってうわ何をqいおhるえf;づd(大乱零舞)
一瞬の駆け引き、ブラフで相手の隙を作ってからの大技、そして勝利と敗北の味。
つまりは――パチェ萌えだ。
次は崩山彩極砲を全段ブロッキングお願いします。
うわ何かと思えば剣心の奥義なんですか……微妙に変えてる辺りが……
…………
すいませんギルティギア全然わかりませんorz
たぶん他にもこんな人は…………え、私だけ?
まさかそれだとは思わなかったorz
わたしゃ214を多用してますよ~
スラッシュの623(HS)は確かに最強です。
こんな無茶なネタでくるとは思いませんでしたが・・・。
そしてパチェ萌(菜派ー無出酢)
「ヴォルカニックヴァイパー!!!」
っておいw
ひたすらやりこんだ人間としては苦労した623(+HS)ですが、スラッシュで少し落ち着いてきたようなのでうれしい限り。
でもさ、パチェにやらすのはどうかと思うけど・・・w
鳳翼扇全部ブロッキングしたあのお方が!
…ウメハ○知ってる人って多いんだなぁ。
確かに最強だわw
追加で叩き落として欲しかった!
ウメ○ラかわいいよ かわいいよ○メハラ
まで連想した。
◆パチュリー名言集1
「よくがんばりましたね」
紅魔館の大会で決勝選手への一言。この後決勝戦をしてちゃんと勝つ。
素晴らしかったですほむほむ。
パチェ「もっと知らない人と闘いたかった」
GJ!!
着眼点がGJ
吹いた。
623。なるほど、納得(ォ
ttp://bernerd.hp.infoseek.co.jp/623res.txt
楽しんでいただいた方も、そうでない方も、
読んでいただき本当に有難うございました。
このような高得点を頂き嬉しいです、やはりウメハラは偉大なんですね。
これからも世界が良きパチェ萌えでありますように。
咲夜がパチュリーに教えたんだから、せめてレミリアが美鈴に忠告ぐらいするべきだったのではないかと
確かにパチュリーはレミリアの親友として贔屓は多少あるにしろ、ありすぎ
と思うのですよ
まさか旦那の技が出るとはww