Coolier - 新生・東方創想話

美鈴の家出~女はつらいよ離別編~

2005/12/16 06:00:55
最終更新
サイズ
26.64KB
ページ数
1
閲覧数
4006
評価数
23/168
POINT
8610
Rate
10.22
 それは、まぁ、いつものことと言えばいつものことだった。

「ち、ちょっと! 紅魔館は、アポイントのない人は立ち入り禁止です!」
 湖の上を突っ切って――多数の防衛部隊をめっためたのぎったぎたにして――やってきた、箒に乗った魔女相手に、紅魔館防衛部隊の部隊長――らしい。多分――、紅美鈴(くれないみすずではない)が叫ぶ。
「あ~ん? 聞こえんな~」
「いや、何悪ぶってるんですか!? そんな、鞭用意したどっかの監獄の獄長みたいなセリフ言わないでくださいよ!」
「……何で知ってるんだ?」
「いえ……何となく……」
 よくわからないやりとりを繰り広げた後、とりあえず、ぶるぶると、美鈴は頭を左右に振ると、
「と、ともかく! 立ち入り禁止は立ち入り禁止です! いかに顔見知り、いかに魔理沙さんとはいえ、ここから先には……」
「いいじゃないか、中国。私とお前の仲だろ?」
「誰が中国ですか! 私の名前は……!」
「あーっと。こんな事してる場合じゃないんだ。借りていた本の帯出期限が今日まででな。これを過ぎると、まーたパチュリーにどやされるから。
 手っ取り早くマスタースパーク!」
「ちょ……!」
 問答無用の閃光が美鈴を直撃する。そのまま、彼女は、黒こげになって、ひるるる~、ぽて、と地面に落下。ぴくぴくする。
「しかし、あいつも、毎度毎度、よくもまぁ、私のマスタースパークの直撃食らって復活してくるもんだぜ……」
 その、不死身の生命力に畏敬の念を表明すると、彼女はそのまま、門を飛び越え、赤い屋敷へと向かっていってしまった。後に残るのは、無惨にも黒く焦げた美鈴と、「うう……またおしかりを受けるのね……」「頑張って、くじけちゃダメよ!」と泣いたり笑ったり励ましあったりみそをなめたりする防衛部隊の彼女たちのみ。
 かくして、今日も紅魔館の平和は保たれているのだった。


 ……本気にしないように。

「さて」
 時刻は過ぎて。
 傍若無人な振る舞いをしてくれた乱入者も、今は満足して家に戻り――どうせ、数日後にまたやってくるだろうが――、夜のとばりが落ちる頃。
「今回の件について、説明してくれるかしら?」
 じろり、という擬音つきで、ずたぼろの防衛部隊面々をにらみつけるのは、紅魔館のメイド長。華奢な体と、女であるという身分、さらには、人間の身の上に過ぎないという存在価値しか持たない彼女であるが、その類い希なる才能のおかげで、この悪魔の館にて高い身分を与えられている彼女の視線に抗うことなど出来るはずもなく。
『……ごめんなさい』
 しゅんとなって、一同、頭を下げた。
 はぁ、とメイド長――十六夜咲夜女史はため息をつくと、
「謝ってすむ問題なら、警察も、閻魔様もいらないのよ」
 全くその通りです、と言う声がどこかから聞こえてきたような気もするが、それは完全な気のせいである。気にしてはいけませんよ、そこの死神。
「全く、ふがいない。相手はいつもいつも、大抵、固定されているのだから……」
「でも、大火力の前には、いくら竹槍持っていてもかないませんよ……」
「……その気持ちはわからなくもないけれど」
 その意見については、とりあえず、異論はないらしい。しかし、『いやいや』と首を左右に振ると、
「それで納得が出来ると思って?」
 一瞬、納得しかけたことは忘却の彼方に置いてきたらしい。
 再び、ぎろりと一同をねめつける。
「全く。
 美鈴、あなたも何か、意見しなさい。あなたが、この部隊を率いる指揮官である以上、部下の失態は指揮官の失態でもあるわ。あなたも、ついでに言えば、彼女にこっぴどくやられたのだしね」
「……返す言葉もありません」
 しゅんとなった美鈴は、見ていてかわいそうなくらいに肩をすぼめてしまう。
 そんな彼女を見て、「ああ、かわいそうな美鈴さま」「代わることが出来たら代わってあげたいわ」「でも、殺人ドールは勘弁ね」などと囁きあう、上司思いなのか、自己保身優先なのかよくわからないセリフをつぶやく防衛部隊一同。
「防衛に関してのシフト、戦略、戦術。何か、相手に対して、少しでも勝るものがあるのなら、それを利用するのがあなたの指揮官としての務めでしょう」
「……はい」
「幸い、物量ではこちらが勝っているのだから――」
 くどくどと始まる、咲夜のお説教。
 これが始まると長いのだ。ついでに言うと、こうなったら、美鈴以外のもの達に対してのおとがめの時間は終わったと考えていい。コソコソと、他の、怒られていたもの達が逃げ出していく。それでいいのかと誰もが思うのだが、お説教と懲罰は別問題である。役目を果たせなかったことについては、後日、しっかりとおとがめがあるから、何も問題はなかったりする。
「……あら? 他のがいないわね。まぁ、いいわ」
 メイド長からして、この程度の認識であることだし。
「ともあれ。
 今後も、彼女の侵入を許すようならば、あなたの立場も考えて、少し、私としても、考えを変えなくてはならないわね」
「……それって、クビってことですか?」
「さすがにそこまではいかないだろうけど、少なくとも、配置転換はしないといけないかしら。
 幸い、あなたの場合、あれこれと気が回るから、再就職先はいくらでもあることだし」
 美鈴の技能は貴重よ、と何か違うところをほめてから、
「けれど、しょせん、左遷は左遷。そんなの、あなたもいやでしょう?」
「あう……」
 左遷とは、すなわち、自身の無能を認められてしまうことである。希に、怨恨などが絡んできて、その一言ではすまない場合もあるのだが、こと、それがここの問題である場合はそういうことなどとは無縁である。そもそも、怨恨、と言う言葉自体、この世界にあるのかどうかも疑わしい。
 それに、美鈴も、こうして魔理沙にはずったぼろにやられてはいるものの、それ以外の相手に関してなら、それなりに優秀である。俗に言う、『相手が悪かった』というやつだ。問題は、その『悪い相手』が連日押しかけて来るということなのだが。
「色々と便宜を図ってはみるけれど。もしも左遷となったら、やっぱり、一介のメイドとしてしか、最初はやることがないでしょうね」
「……思いっきり使いっ走りですね」
「まぁ、そうね」
 それについては否定しない。ずばりと言い切られ、美鈴が、だー、と涙を流す。
「……本当にもう。
 かわいそうだけれど、今後のあなたのために、厳しく言っておくとね? あなたにだって、それなりのプライドと実力があるのだから、それを踏み荒らすものに対しては厳しく出る必要があるでしょう。それなのに、あなたと来たらいつもいつも」
「うぅ……」
 もはや、完全に、『失敗をした子供を叱る小言ママ』状態である。本来なら、年齢的なものを考えると立場は逆であるはずなのだが。
「門番というのはね? 有事において、外から攻めて来るであろう相手に対して真っ先に相対する立場でもあるのよ? 過去、西欧の諸国では、その国の騎士団長とも言える人間が門番に立ったこともあるわ。あなたは期待されているのよ。スキルに見合うだけの立場を与えられているの。それなのにこのていたらく。あなたは、期待しているもの達全ての期待を裏切っていることに等しいの。わかる?」
 こくん、と情けなくうなずく。
 全く、覇気がないこと甚だしい。こんな感じであるから、いつもいつも、役目を果たすことが出来ないのだ。
「全くわかっていないようね。
 お仕置きをすることが物事の改善に必要であるとは思わないけれど。古来より、叱って伸ばすよりはほめて伸ばす方が、子供でも何でも、成長がいいと聞くわ。
 だけど、あなたの場合は、無駄にほめるよりも、強烈なお叱りの方が効果的なのかしら」
「あう……それはその……」
「だったら。もう少し、しゃきっとしなさい。せっかく、三面ボスの地位を与えられているというのに」
「……あの、何の話ですか?」
「忘れてちょうだい」
 よくわからないことを喋る咲夜にツッコミを入れる美鈴。つつっと頬に汗を一筋流しながら、咲夜があさっての方向を向く。
「……こほん。
 ともかく、栄えある紅魔館の一員として、もっと頑張りなさい。わかった?」
「……はい」
「そんなだから、中国中国、って言われるのよ。存在感とか、物体そのものの価値観というのは外見的なものから固定されてしまうの。世の中、第一印象なんだからね?
 わかった? 中国――」
「……え?」
「――なんて、私に言われるのはいやでしょう?」
 そう、続けたつもりだったのだが。
 どうやら、美鈴には、そのようには聞こえなかったらしい。
「うぅ……」
「……美鈴?」
 雰囲気が変わった。
 咲夜が、思わず、彼女を覗き込む。美鈴はうつむき、ふるふると肩を震わせ、ぽたぽたと雫を、膝の上で握った拳の上へと落として、
「……咲夜さんまで……」
「あの……美鈴? ちょっと、あなた、何か重要なことを勘違いして……」
「咲夜さんだけは信じてたのにーっ!」
 叫ぶと同時に立ち上がり、彼女は右手を思いっきり振るった。
「咲夜さんの……バカぁぁぁぁぁぁっ!」
「……へっ!?」
 直後、展開される虹色の猛烈な弾幕。
「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 もはや、一ドットの隙間どころか画面全部を埋め尽くすそれをよけることなど出来るはずもなく、撃ち出されたそれの中に飲み込まれて咲夜が吹っ飛ばされていく。
「うわぁぁぁぁぁ~ん!」
 咲夜をぶっ飛ばし、美鈴はドアを蹴り開け、そのまま泣きながら駆け出していく。
「……こ……こんな技があるなら……使いなさいよ……」
 壁にめり込み、全身ぼろぼろになった咲夜が、がくりと、いまわの際に一言を残して気を失った。無論、そんな技使われたら誰もがクリアを投げ出してしまうので、採用されないのは言うまでもない。
 ――閑話休題。
 部屋を飛び出した美鈴は、そのまま、泣きながら紅魔館の廊下を駆け抜けていく。
「あ、美鈴さま。お疲れでしたね。今……きゃあぁぁぁぁっ!?」
 屋内で働くメイドが気を利かせ、美鈴にお茶を用意しようとした瞬間、彼女は美鈴に突撃されて宙を舞った。盛大に回転を加えながら宙を飛んだ彼女は、着地できたら金メダル間違いなしの華麗な姿となって紅魔館の人々の目に焼き付いたという。
「あ、美鈴さま。あの、先日、教えてもらった……って、ちょっとぉぉぉぉぉっ!?」
 何やら、手にしたものを美鈴に渡そうとしたメイドの一人が、やっぱり美鈴にショルダータックルを食らって廊下の彼方に吹っ飛んでいった。「ラグビーを学んでおけばよかった」とは彼女の辞世の句である。
「あ、美鈴だ。ねーねー、めいりーん。お菓子食べた……」
 たまたま、メイド達に連れられて通りがかったフランドールは華麗にスルーした。さすがに彼女に突撃したら、己の命が危ないと悟ったのだろうか。
「……あれ~?」
 自分の用件を告げる前に、その主が疾風のごとき速さで突っ走っていったことに、状況判断と認識がついて行かず、フランドールが小首を可愛らしくかしげて、美鈴を見送った。
「め、美鈴さま、どこへ!?」
「ちょっと、美鈴さま、その扉、今直したばっかり……!」
 とどめに、紅魔館入り口の大扉を美鈴は跳び蹴りで破壊し、そのまま、夜の闇に向かって飛んでいく。扉を直していたメイド達は『美鈴さまのバカーっ!』と、声をそろえて叫んだという。

 こうして、十六夜咲夜女史の心ない一言によって、紅魔館の門番は、家出してしまったのだった。


「ひっく……えぐっ……咲夜さんのバカぁ……」
 ふわふわと空を飛びながら、服の袖で目元をぬぐう。
「中国言わなくてもいいじゃないですかぁ……」
 名前というのは、個人を固定化する、重要なファクターである。このアイデンティティを失った場合、大抵、その人物は、この世に存在しなくなる。希に、それ以外の形でこの世に名前を残すこともあるのだが、彼女の場合は、そうなってしまうと、非常にアレだ。
 自分という人物を、全く不本意なものへと還元され、それをよしとして受け入れなくては存在することすら許されなくなる。それは、悲しくて辛いことでもある。
 それに、ただでさえ、周りからは『中国中国』言われ、自分という個を失いかけているというのに。
「うぇ~ん……」
 また思い出したのか、涙があふれてくる。
 紅魔館のメンツだけは信じていた。仲間として。特に、色々と世話を焼いてくれる、紅魔館そのものの主や咲夜といったものだけは、自分に対して、そのような仕打ちをしないと信じていたのに。その信頼が裏切られてしまえば、感情のままに突っ走ってしまったとしても、何ら悪いことではないだろう。
「うぅ~……」
「おねーちゃん、どーしたの?」
 横手から、いきなり声がした。
 涙目で振り向けば、そこには黒の衣装を身にまとった少女が一人。
「あ……ルーミアちゃん……」
「美鈴おねーちゃん、どーしたの? 泣かない泣かない~」
 よしよし、と頭をなでてくれる少女――ルーミア。
「……ごめんね」
 目の前の、幼い少女――実際の年齢は知らないのだが――にすら心配させてしまっているという、今の状況を思って、美鈴は無理矢理に涙をぬぐって止めると、にこっと微笑んだ。それは、多分にぎこちない笑みだったのだが、それでルーミアは納得したらしい。
「こんなところにいるなんて、珍しいね」
 こんなところ、と言われて辺りを見回す。
 ……はて、ここはどこだろう。
 夜という世界においても、ある程度、夜目が利くとはいえ、さすがに周りが森やら川に覆われているだけの空間というのは、位置を特定しづらい。泣きながら、闇雲に飛んできたため、自分の位置感覚すら失ってしまったらしい。
「……あはは。お姉ちゃん、ちょっと色々あって……」
「そーなのかー」
 よしよし、とまた美鈴の頭をなでてくる。
「はぁ……。ルーミアちゃんはいい子だね」
「……?」
 今度は、その言葉の意味がわからなかったのか、ルーミアが小首をかしげる。
 だが、何かに結論をつけたのか、
「これから、わたし、ご飯を食べに行くんだけど。一緒に来る?」
「……ご飯」
「うん。あ、人間じゃないよ?」
「あれ? そうなの?」
 珍しい、とばかりに問いかける。
 うん、とうなずいたルーミアが、ふわふわふよふよと飛んでいく。少々頼りない飛び方だが、彼女にしてみれば、これが自分にとって当たり前の姿なのだろう。その後を、彼女を追い越さないようについて行く。
「お腹が空いた時って悲しくなるよね」
「……ああ、それは」
 思い出したら、お腹が切ない悲鳴を上げた。
 そう言えば、今日は、お昼ご飯も晩ご飯も食べてないなぁ、などと思いながらため息をつくと、ますます、その情けなさが胃袋にしみてくる。
「あそこ」
 しばし飛んだ先でルーミアが指さしたのは、一軒の赤提灯。こんな森の中で、何で赤提灯の屋台が? と首をかしげる美鈴はそっちのけで、ルーミアが下降していく。
 とりあえず、といった形で、美鈴はそれについて、高度を下げていくと、
「こんばんはー」
「はーい、こんばんはー。って、あれ? 見慣れないお客さんが」
「……えーっと……ミスティアさん?」
「いえす・まむ~」
 そう言えば、何かで読んだっけ、と思いながら、美鈴は目の前の屋台の主を見た。
 彼女、ミスティアは、手にした串を手慣れた手つきでひょいひょいとひっくり返しながら、
「いやぁ、すっかり寒くなっちゃったからさぁ。この頃は、八目鰻も手に入らなくて」
「そーなのかー」
「だから、もっぱら、鰻の串焼きに品物は変化してます」
 何だか、楽しそうにそう言うと、二人の前に、よく焼けた串焼きを差し出してくる。
「白焼きなんだ」
「タレとかは、作ってみたことは作ってみたんだけど、なかなかこれが上手に出来なくて。今、ちょっとしたお師匠について勉強中」
 さて、そのお師匠というのが何者なのか。
 それについては、美鈴は追求せず、屋台に用意されていた椅子を引き出してそれに腰掛け、ぱくりと串焼きにかじりつく。味付けは塩のみ。だが、素材がいいのか、その味はかなりのもの。
「はふはふ……」
「ルーミアちゃん。食べるのはいいけれど、今日はツケ、払ってくれるよね?」
「うん。今日は一杯、持ってきたよ」
 そう言って彼女が差し出すのは、川魚やら貝やら野菜やら。一体、どこに隠し持っていて、ついでに言うなら、どこから仕入れてきたのかは謎であるが、ミスティアはそれを受け取ると、『よしよし』とうなずいた。どうやら、この屋台では、金銭の類以外に、お勘定は物々交換でもいいらしい。
「じゃ、今、この鮭を焼いてあげるからね」
「わーい」
「……慣れてるんだね」
「まぁ、物事、やるからには完璧を目指せ、ですから」
 うぐ、とその一言に呻く。少しだけ、自分の境遇について釘を刺されたような気がしたからだ。
 ミスティアは、包丁など取り出すことなく、鋭く伸びた自分の爪を構えた。そして、手にした、立派な鮭を空中に放り投げると「とうっ!」とかけ声と同時に両手の爪を一閃。次の瞬間には、ばらばらに解体された鮭が、彼女が用意していた大皿の上に落ちていく。
「すごいすごい!」
「ふっ。奥義、両爪一閃!」
 何かよくわからない技の名前を誇らしげに宣言すると、彼女はそれにこなれた手つきで串を刺し、炭の上にくべていく。
「えーっと……美鈴さん、だっけ?」
「あ、は、はい」
「お勘定はある?」
「……実は、文無しで」
 と言うか、着の身着のままで飛び出してきたのだから、先立つものを持っていなくても当たり前である。ただでさえ、紅魔館は重労働であるのに給金が少なめであるのだから。
 ふぅん、とミスティアはうなずいた後、屋台の片隅に置かれていた一升瓶を取り上げると、
「それじゃ、今夜は私のおごりで。お客さんには、末永くおつきあいしてもらわないといけませんから」
 とくとくと、置かれたコップへと、透明な液体が注がれていく。
「今年のお酒は熱燗が美味しいんですけどねぇ。まぁ、まずはお冷やでどうぞ」
「……ありがとう」
 注がれたそれを一口して、口の中に広がる芳醇な香りと甘さを堪能。続けて、喉から胃袋までを下っていく、灼けるような熱さに顔をしかめつつも、満足して息を吐き出す。
「あったかいねぇ」
「冬は、私たちにとっては鬼門の季節だから。
 それでも、ぽっと点る赤提灯があるなら、それに暖を求めて飛び込んでしまっても責められることじゃないでしょう」
 彼女は、取り出した一升瓶を燗しつつ、照れくさそうに笑って答えた。
「へぇ……」
「それって、飛んで火にいる夏の虫、って言うんだよね」
 いきなり、美鈴の背中側から声。同時に、ひやっとした感覚があった。思わず背筋をすくめて振り返ると、そこには、いたずらっぽい笑みを浮かべて可愛らしい少女が一人。
「むっ。出たな、我らの敵」
「敵って何さー」
 むくれる少女――チルノは、美鈴の横に、勝手に椅子を取り出すと、座った。
「ジュースと鰻ー」
「はいはい。その前に、お代は?」
「ツケ!」
「チルノさん。ツケがたまってますぜ?」
「いいじゃーん」
「やれやれ。あとで、大妖精のお姉ちゃんにたっぷり叱ってもらうから覚悟しときなっ」
「ええ~?」
 にぎやかに、和やかに、そんなやりとりを繰り返した後、チルノの前にはオレンジジュースと鰻の白焼きが置かれた。何だかんだで、彼女たちにとっては、ここが交流の場であるらしい。その、ふれあいの場において、金銭だの何だののどろどろしたやりとりは不要なのだろうか。
「めーりんねーちゃん、おひさー」
「……こんばんは。チルノちゃん、いつも元気だね」
「うん。あたいはいつも元気元気。
 この前、あの大蝦蟇とケンカして、またこっぴどくやられたんだよね。だから、ミスティアねーちゃんの鰻を食べて、体力回復!」
「そーなのかー。
 チルノちゃん、大変だねー」
「あー、ルーミア! この前、あたいから取った串焼き返せー!」
「やだよー」
「じゃ、その、美味しそうなお魚でいい!」
「これは、わたしが持って来たんだもーん」
「あー、こらこら。ケンカするな、二人とも。ケンカするなら追い出すよ」
 取っ組み合いに発展しそうになった二人をミスティアが諫め、チルノの前にも、ルーミアが持ってきた鮭の切り身を出した。それで機嫌を直したのか、あっさりとケンカはおしまい。二人そろって、はふはふと、笑顔でお食事開始。
「にぎやかなんだね」
「いつものことですよ、と。
 でも、紅魔館だってにぎやかじゃない。一杯、色んな人がいて」
「あたいは、あの、銀髪のねーちゃんは嫌いだけどね。何かっていうと、すぐにナイフ投げてきて。危ないったら」
「それは、チルノちゃんが、いきなりつらら投げつけるのが悪いんじゃない?」
「あたいは悪くないもーん」
 ふんだ、という具合に答えて、
「めーりんねーちゃんは大変だね。あんなところで働いていて」
「ああ……うん。大変だよ。
 でも、大変だけど、毎日、楽しいよ」
 お酒をまた一口。その一口で、グラスの中身は空っぽになってしまった。だが、それを見計らったかのように、熱燗に仕上がった日本酒がとくとくと注がれていく。
「……でもね。お姉ちゃんも、大変なんだ」
「うんうん。ねーちゃんは偉い!」
 ぽんぽん、とチルノが彼女の肩を叩く。慰めているつもりらしい。
「……ううっ……」
「……ねーちゃん?」
「美鈴おねーちゃん?」
「どうかしたの?」
 その途端、昼間のことが思い返されたらしい。
 思わず涙を流す彼女を見て、チルノとルーミアが真っ先に顔色を変えた。
「私……もう、紅魔館に帰れないのかなぁ……」
「ど、どうして?」
「……あのね、お姉ちゃん、紅魔館を飛び出してきたの」
「そーなのかー……って、どうしてなの?」
「……ちょっと、ケンカしちゃって」
 あれを、果たしてケンカというのかどうかはわからないのだが。
 しかし、一方的な意思の決裂をケンカというのなら、それもケンカとされてしまうのだろう。
「……そっかぁ。ねーちゃん、おうち、ないんだ……」
「……そーなのかー」
「はぁ……。私、ダメだよねぇ……」
 こんな子供に慰められたり、同情されるなんて、と。
 内心で自嘲しながら、ぐいっと熱燗を飲み干していく。
「お客さん、ピッチが早いよ」
「……いいもん。どうせ、私なんて……」
 今度は自虐モードである。
 しかし、ミスティアも手慣れたもの。伊達に屋台を経営してはいないらしい。そんな彼女にも、黙って酒を差し出す辺りはさすがだ。
「ねーちゃんは悪くないよ。ねーちゃんは、あたい達にも優しいし」
「うんうん」
「ねーちゃんを泣かせたの、誰? あたいが徹底的にいじめてやる!」
「わたしも協力する! だから、美鈴おねーちゃん、泣かないで」
 そんな風に慰めてもらうのは嬉しいのだが、逆に惨めな気持ちになるのも事実だった。美鈴は、差し出されている白焼きを食べ尽くして、串で、だんっ、と屋台の枠を叩くと、
「私だって、一生懸命、頑張ってるのにぃ!」
 いきなり大声で叫んだ。びくっ、と少女二人が身をすくめる。
「そうですよ! 第一、咲夜さんだって、いっつもいっつも、最終的には魔理沙さんとかに負けたりしてるくせに! どうして、私ばっかり、怒られないといけないんですか!」
「……あの……ねーちゃん?」
「お酒、お代わり!」
「はいはい」
「おねーちゃんが壊れた……」
 酔っぱらいというものがいかなるものであるか、どうやら、この二人は知らなかったらしい。まぁ、外見的なものに年齢と精神が縛られるのだとしたら、この二人はお酒など飲んだことがないだろうから、当たり前と言えば当たり前か。
「結果の如何はともかくとして、過程を認めてくれたっていいじゃないですか! 私だって苦労してるんですよ! 毎日毎日、激務に耐えながら、あっちから来る侵入者、こっちから来る侵入者を撃退して、それで疲れて疲れて、夜の二時三時就寝は当たり前なのに! なのになのに、咲夜さんは全然、私の苦労なんて認めてくれないっ!」
「まぁ、世の中ってのはそういうもんですからねー。
 私も、屋台を経営してみてわかったことはといえば、どれだけ苦労しても、売り上げに直結しなけりゃどうしようもないってことでさぁ。そん時は、世の中に恨み言を言いたくもなりましたよ」
「絶対におかしいですよね!? 人生……って、私たちは妖怪だから人間じゃないけど、ともあれとして、過程が全て結果に結びつくって限らないのと同時で、結果が全て過程の産物じゃないっていうのに!」
「全くですよ。いやはや、でもさ、その分、何とかして結果を出そうとするもんですよねぇ」
 美鈴のグラスにお酒をつぎつつ、ミスティア。
 ちらりと、彼女は、チルノとルーミアに視線をやった。それを受けて、二人は、うん、とうなずくと、そっと席を離れていく。
「うぅ……私の努力は足りないんですね……」
「まぁ、努力が全てとは言いませんけどね。けれど、才能でカバーできない分は、どうにかして、それ以外のことでカバーしないといけないもんですよ。
 それを、才能で全部カバーできちゃう人たちは、わからないんですよねぇ」
 うんうん、と美鈴はうなずきながら、
「下手に才能を持ち過ぎちゃう人ってのも苦労はわかりますけど。でも、その人達の苦労だって、同じ苦労なら、私たちの苦労を理解してくれてもいいですよねぇ?」
「しかしさぁ、美鈴さん。
 思うに、苦労ってのは、全部に等価値じゃないんじゃないかなぁ。見た目、苦労してないように見える人だって苦労していたりするんですよ。陰では。
 その苦労を悟られないように、今日もにっこり笑顔でスマイル、なんて。私たちにゃ、出来ない事ですよ」
 そうなのかなぁ、と美鈴。
 差し出される鰻の白焼きかじりつつ、
「笑顔ってのを作るにしても、苦労は必要なんですよ。常日頃から笑っていなきゃいけない職業なんて、私は就きたくないですねぇ。疲れた時には酒飲んでくだ巻いて、次の日には、また心機一転、頑張れる職業の方が楽じゃないですか」
「……そうですよねぇ。そう言う人たちは、お酒に頼ることも出来ないんですもんねぇ」
「その分、何か他のことでストレスってのを軽減させようとしても、あながち、悪い事じゃないですよ」
 うん、とうなずきつつ。
 はいどうぞ、とばかりに美鈴の手元には、先ほどルーミアが持ってきた野菜がほどよく焼けた状態で差し出された。
「頼られてるってのはいいことですけど、たまにゃ、頼らせてあげてもばちは当たりませんよ」
「はぁ……。
 でもね、咲夜さん、ひどいんですよ……。私のこと、中国、って……。私は美鈴なのに……」
「うっかり口が滑ったか、もしくは、何か他の事でも言いたかったんじゃないですかね。早とちり、とか」
 つきあいが長いと、そういうこともよくあるよ、と。
 彼女は美鈴を慰めながら、いい音を立てて焼けていく串焼きをひっくり返していく。
「けれど、口が滑った、ってこともありえないことかもしれませんねぇ。ほら、つきあいが長いほど、お互いの悪いところはよく見えるというか。やっぱり、早とちりじゃないですか?
 人が気にしていることは、つきあいが長くて、相手のことをよく理解している人なら、絶対に触れませんよ」
「……うぅ……咲夜さぁん……」
「人生ってのは短いもんでさ。あっちこっち曲がりくねった道を歩きながら、目の前にある障害にへこんだり、落とし穴に落ちたり、たまにはでっかい獣とかに追いかけられて、死ぬ目に遭いながら。それでも、一歩一歩、前に進んでいくもんですよ。
 一つや二つのトラブルは、生きる上でのスパイスみたいなもんですよ」
 ほい、と次に差し出されたのは、ほどよく焼けた、大きなお肉。
「私が捕まえた、イノシシの肉ですよ。うまいですよー」
「イノシシですか……結論、豚肉」
「あっはっは。お客さん、うまいうまい」
 ぱちぱちと手を叩いて美鈴をおだてつつ、でもね、と口調を変える。
「ちょっとでも、生きる環境が違えば、全く別のものになっちゃうんですよ」
 少しだけ神妙な声色を含めて、彼女は言った。
 差し出されるイノシシの肉をつまみつつ、美鈴は、へぇ、とうなずく。実際、普段、自分が食べたりする豚肉とは味がだいぶ違った。
「それが人生ってもんですよ。だから、今、こうして生きていることには感謝しなきゃ。何かが違ったら、今のお客さんもいないんですし」
「……咲夜さんに逢えたのも偶然じゃないですよねぇ」
「偶然ってのは、偶然って形を装った必然ですよ」
「でも……私……」
 うう、と涙ぐむ。
「まぁ、諍いもぶつかり合いも、よくあるもんですよ。たまにゃ、どーんと言っちゃって、それで思いっきり後悔して。そんで、仲直りするのがいいんじゃないですか?」
「……人生、山あり谷ありですかねぇ」
「上も下もあるから、人生面白いんですよ。平坦な人生なんてつまんないもの、私は送りたくないですねぇ。
 あ、お客さん。お酒の追加、どうぞ」
「……ありがとうございます」
「いえいえ」
 手にしたグラスに瞳を映して、小さくため息。
「……咲夜さんのバカ……」
 そのつぶやきに、何やら、満足そうにミスティアが微笑んだのが、視界の片隅に見えたような――そんな気がした。


「……ミスティアねーちゃん。ねーちゃんは?」
「おねむよ」
 お酒が回ってしまったのか、美鈴はカウンターに突っ伏して寝息を立てていた。
 時間をおいて戻ってきたチルノとルーミアは、そんな彼女をぽんぽんと、慰めるように肩を叩きながら、
「ねーちゃん、頑張れー」
「おねーちゃん、ファイトー」
「しかし、この人も、ちみっこに好かれてるねぇ」
「むっ。それ、どういう意味」
「そーだそーだ」
「ん~……それは……」
「簡単よ。子供は、優しい人のことを、本能的にわかってしまうものだから」
 唐突に響く、第三者の声。
 ゆっくりと、夜をかき分けて歩いてきたのは、
「……あ、レティ」
「はいこんばんは。ミスティアちゃん、これ。頼まれていたもの」
「わお。これは生きのいい八目鰻!」
「探すの大変だったんだよ」
 夜がゆらりと揺らめいて現れる、蛍の妖怪、リグル。彼女は、やれやれと肩をすくめつつ、
「この時期、本当に、冬眠してない奴を捜すのは一苦労」
「ご苦労様。リグル。
 ところで、この人、どうしましょうか?」
「寝かせておいてあげなさいな。
 生きている間には、色々あるもの」
 どこか、優しい眼差しをたたえて、レティは美鈴を見つめると、その横に腰を下ろす。その膝の上に、ルーミアがちょこんと座った。
「さて、ミスティアちゃん。せっかくだから、私にも何か食べさせてちょうだいな。
 冬が近づいて、こちらとしても、力を蓄えないといけない頃合いだから」
「はいよー。美味しいものなら山ほどありますよー、っと」
「あたいが持ってきたやつは?」
「かき氷なんて、いつ出せと」
「ぶぅ」
 ミスティアの容赦ないツッコミに、チルノが唇をとがらせた。
 リグルは「私は美味しい水があれば」と控えめにコメントして――しかし、決して拒否はせずに、むしろ要求する辺り、したたかである。
「けれど、ミスティアちゃんも大したものね。酔っぱらいの愚痴を聞くのって、疲れるでしょう」
「いやぁ、慣れてますから」
「レティは?」
「私? 私は……そうねぇ。苦手かも」
 早速、用意されていく料理を口にしながら。
「元々、他人の人生なんて我関せずだからねぇ。
 けれど、長く生きていれば、辛いことだって悲しいことだって、何だってあるもんよ。まっすぐに、何の苦労もせずに育ってきた奴は、使えないもの」
「面白くもないしね」
 と、コメントするのはリグル。何やら、よくわかったような一言である。
 そうそう、とそれに同意するチルノは、全くわかってない様子で首だけを縦に振っている。そんな彼女の後頭部を、ぺし、とレティは叩いて、
「そんなんだから、バカって言われるのよ」
「何だよー、いいじゃんかー」
「だーめ。女の子は、ちゃんと、物事に対して精通した、成人でなければね」
「あたいは子供だしー」
「そうやって開き直るうちは、まだまだね」
「何だよー」
 むぅ~っとほっぺた膨らまして、レティに抗議する。
 そんな彼女をしたたかにあしらいながら、
「少し静かにしましょうか。せっかく、眠っている人もいることだし」
「……むぅ」
「チルノちゃんは、相変わらず、レティおねーさんやら美鈴おねーちゃんやらには弱いんだね」
「うるさーい。ルーミアに言われたくなーい」
「ほんと、同類項」
「何だとリグルー」
「あー、静かに静かに! 静かにしてないと、ご飯、取り上げるぞ?」



「くすん……咲夜さん……」
「あら?」


 その流れの中で、何とはなしに発せられた一言だったのだろうが。
 きちんとそれを聞きとがめたレティは、『全くもう』と言わんばかりの顔で、そっと、美鈴の頭をなでてやったのだった。
私の中では、美鈴は、ルーミアやチルノと言った、いわゆる「子供」にはやたら好かれる部類の人間(?)だったりします。
みすちーが真面目なことを言ってますが、勘弁してください。
屋台のマスター=世話焼き面倒見のいい粋な人、なので。

それでは
第二話へ~続く(声:キー○ン山○)
haruka
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.6580簡易評価
8.90ななし削除
やべwみすちーかっこいいw
10.80nanasi削除
みすちーの赤提灯オヤジっぷりが板についててもうw
たまには言いたい愚痴を聞いてくれる人っていいですよね..
12.無評価名前が無い程度の能力削除
うはwwwみすちーがなんかカッコヨスwww
13.80名前が無い程度の能力削除
点忘れー_| ̄|○
14.80名前?知らんなそんなモノは削除
大人な意見を言うみすちーって珍しいなw
続きが楽しみっす。頑張ってくださいな~w
19.90名前が無い程度の能力削除
1面2面大集合と思ったら、橙がぁー大妖精がぁー
でもこういう雑魚ボス(って言うと失礼だが)の絡みっていいですね
20.80銀の夢削除
ああもう氏の優しい語り口が大好きだーこんちくしょー!!
続きが楽しみです本当。言いたいことはもう大概言われてしまっているのでもう、それだけしか添えられませんが、がんばってください。
23.90CCCC削除
暖かいなあ、この屋台w
子供もお姉さんも皆優しくて癒されます。
続き楽しみにしてますよー
32.80名前が無い程度の能力削除
みすちーのイメージが最近こんな感じなので無問題
40.90ちょこ削除
いつかこんな屋台に行ってみたい…
42.80名前もない削除
めーりんがさぁ………かわいいんだよ…(ぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼた ←鼻血
48.90無名剣削除
優しいお話ですね。ほんわかほんわかと。
美鈴がなんだかんだで愛されキャラというのは、私も好きです。
二話目、待ってます(´ヮ`)b∑
53.90名前が無い程度の能力削除
タイトル見たときはギャグかと思ったが誰もが優しいいい話です。
55.80HK削除
こういう優しい雰囲気大好きです。
こんなみすちーの歌なら耳を傾けたい……。
80.90名前が無い程度の能力削除
みすちーが粋な経営者だ。新鮮です げ ぇ
めーりんとかちょっとほろりときた
113.100時空や空間を翔る程度の能力削除
美鈴さんは皆から愛されている事を
改めて実感した話でした。
116.100名前が無い程度の能力削除
みすちーいいねぇ。
子供キャラが可愛いw
118.80名前が無い程度の能力削除
みすち~に惚れそうです……
なんですかこの、人生の機微を知った見事な主はw
酒は弱いですが、こんな屋台があったら是非行ってみたい。
そして美鈴がんばれ……
119.100名前が無い程度の能力削除
みすちーが素敵にかっこいい!
美鈴がんばれ!
122.80下手なコメントを書く程度の能力削除
みすちーいい娘だなぁwww
あと、レティさんもいいお姉さんだwwww
123.80名前が無い程度の能力削除
こういうミスチーもいいなぁ。つうか、この屋台行きてえ
142.100名前が無い程度の能力削除
レティのセリフがかっこよすぎ!!
149.100名前が無い程度の能力削除
めーりん可愛いよめーりん
161.100名前が無い程度の能力削除
なんかゴスペルとか演歌が上手そうなみすちーだw