注:少々壊霊夢です。
~ 一日 ~
「あ゛ー、冬はやっぱコタツよねぇ」
完膚なきまでにだらけきった身で、これまた情けない声を上げる。
我ながら情けない姿だけど、しょうがないじゃない。寒いものは寒いんだから。
大体この服が悪いのよ。
肩丸出しで脇全開だなんて普通じゃないわ。
何でこんなものが伝統になっているんだか。
夏は涼しいことは涼しいけど、日焼けがひどいし、冬なんて最悪よもう。
スキマ風ってレベルじゃない勢いで風が駆け抜けていくし。
あー、スキマ風なら紫を脅して、いや頼んで脇の両側に風を吸い込むようなスキマをつければいいんじゃないかしら。
駄目ね駄目ダメ。
なんか見た目が気持ち悪いし、けーねに何言われるかわかったものじゃない。
以前冬用の巫女服を考えようとした時に全力で禁止されちゃったもんねぇ。
「霊夢、確かに時とともに過去のものは失われていく。それは仕方がないことだ」
「だが、決して失われてはならないものもある。歴史を見てきた私にはよくわかる。お前の巫女服もそのようなもののひとつだ」
なーんて目に涙ためてまで力説されたらねぇ。
けーねがいってたって言われれば納得せざるを得ないし。
---------------------------------------------------------------
「うーん、暇ねぇ」
なんてことをつぶやくものの、実際に暇なわけではない。
外見上は暇に見えても思考は常にフル回転なのだ。
体を動かしていないという点では暇でも、生命活動そのものから見た場合むしろ下手に動くよりもずっと消耗している。
さっきだってほら、この冬を暖かく過ごすための案を考えながら最終的に歴史及び伝統の大切さまで思考を広げてたでしょ。
年がら年中暇人だとか、無重力巫女ってのは暇だから地に足をつけなくてもいいだとか、暇すぎて頭の中に花が咲き乱れてるだとか
散々な言われようだけど、実際は暇なんて単語が似合わないほど全力で活動してるのよ!
「おーっす霊夢、今日も元気に暇してるな」
ほら来たこういう輩が。
外見だけでしか判断を下せないような奴が高尚な精神活動など理解できるわけがない。
「あんたも暇そうね魔理沙。この寒い中わざわざこんなところまで出てくるくらいだし」
全く物好きな奴だと思う。
雪は降ってはいないもの外は刺すような冷気。
⑨みたいな奴でもない限りこんな日に外に出たいなんて思うわけがない。
………。
「つまり魔理沙って⑨並なのね」
「ちょっと待て!唐突に謎なことを口走ったかと思ったら、よりによってあんなのと同列にするのか!」
まぁ、ある意味同列よね。
考え無しに突っ込むところとか。
ってこいつ、我が聖域に侵入する気か。
「あー、魔理沙、一言だけ言っておくわ」
「なんだよ」
「コタツに風を入れたら刺す」
魔理沙ったら涙目になっちゃって可愛いんだから。
そんな状況で慎重にコタツに足を入れる様は何か間抜けねぇ。
まぁ、目玉の5mm手前くらいで針をちらつかせられれば魔理沙でもなくても大人しくなると思うけど。
ま、私も鬼じゃないから、その可愛さに免じてあげよう。
「いってーー!!!!風入れないようにしただろ!!」
「サンクチュアリに侵入する以上相応の洗礼は受けてもらうわ」
「だからといっていきなり刺すことはないだろう?」
「大丈夫よ、これでも針師の真似事くらい出来るわ。今刺したのはツボの一つよ」
「真似事っておい。すごく不安なんだが」
「本で読んでちゃんと完璧に習得したんだからね」
「さらに不安材料が増えたぜ…」
「うっさい。ちゃんと実験済みなんだから大丈夫よ」
これは本当の話だ。
妹紅相手に色々試してみたし。
こういうとき死なないってのは便利ねぇ。
思ったとおりの結果は出なかったけど。
「全くひどい奴だ。ちなみになんてところを刺したんだ?」
お約束のようにみかんをむきながら聞いてくる魔理沙
こいつ、貴重な食料に勝手に手をつけて。
うちの経済状況を知ってるくせに。
こういう不遜な輩にはいつかお灸を据えてやらないとならないわ。
「頭維」
「頭維?どういう効果があるんだ」
「指を抜いて3秒後にBOM!!よ」
「ちょっと待てぇええええええ!!!!」
うん、いい反応ね。
やっぱこうでないとつまらないわ。
でも魔理沙、みかんを握りつぶすのは感心できないわ。
「れ、霊夢!お前何の本を参考にしたんだ」
「ん?霖之助さんのところで見つけた絵巻物よ。北斗の何たらってやつ」
「死ぬ!マジで死ぬ!助けてよ霊夢!!私まだ死にたくない!!!!」
「死ぬわけないじゃん。大体もう3秒以上経ってるでしょ」
完璧に脱力して倒れこむ魔理沙。
この子もやっぱどっか抜けてるところあるわね。
ちょっと考えればツボにそんな効果あるわけないってわかるのに。
「そ、そういう冗談やめてくれ…」
涙目で見上げてくる。
あー、もう可愛いんだから。
こう、普段とのギャップというかなんと言うか。
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私の高度な精神活動は続く
例えば博麗としての私の存在だ。
中庸だの無重力だのあらゆる境界に属さないだの色々言われてるんだけど。
まぁ、なんていうかぶっちゃけ大きなお世話?
そりゃ博麗の巫女としての役割はこなすし、私がやらなきゃならないことはちゃんとやるわよ。
でも、それ以外は別に好きにしてていいと思わない?
なーんで中立だの何だので行動を束縛されなきゃならないのか。
私ゃ博麗の巫女である前に博麗霊夢って言う一個の存在だって。
そーんな鬱屈した日々送ってるわけだから、ちょっと結界飛び越えて外の世界へ遊びに行ったりしても怒られないよね?
まー、私と紫以外にそんなことが出来る奴なんていないわけだし、この世界にある以上博麗の巫女ってのは俺 is JUSTICE!!を貫くことが出来るわけで、文句なんて言わせないけど。
「んー、コタツっていいなぁ。私も1個ほしいところだぜ」
「あげないわよ」
全く、くだらないことでこちらの思考を中断させるんだから。
コタツがいいってのには同意だけど。
で、どこまで考えてたっけ。
ああ、そうそう、外の世界に遊びに行くことね。
外の世界ってのはなんつーか一言で言うと「汚い」?
灰色だらけで何か空気も汚いしうるさいし、よくまぁあんなところで生活できるものねぇ。
こんな格好してる人間もいないから目立つし。
気分転換くらいにはなるけど。
そういえばあっちの世界って、お店のもの持ってこうとするとやたら怒られるのね。
全く少しは霖之助さんを見習ったらどうなのかしら。
………霖之助さんも最初のうちは怒ってたような気がするわ。
たぶん記憶違いだけど。
そういやあんまりしつこいから夢想封印撃ったらちょっと洒落にならないことになったわねぇ。
アレは私でも思い出したくないって言うか。
うーん、せめて夢想妙珠くらいに抑えておくべきかな。
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「暇だー」
「暇なのは同意だけど、だったら何でここに来るのよ」
「んあ?暇なのもたまにはいいもんだぜ。コタツもあるし」
「結局コタツ目当てなのね」
そういや魔理沙って極度の寒がりだったわね。
今だってぶくぶくに着込んでその上コタツ。
……んー、こっちは肩出し脇出しの季節を半年ほど間違ったスタイルで我慢してるのに、こいつはこれだけ着込んだ上でさらに暖を求めるか。
もうちょっと肉付きがよければ少しはあったかいのかしらね。
まー、どんだけ胸元眺めたって急におっきくなるようなことがないのはわかってるんだけど。
そういえばこの間一緒に風呂に入った時に思ったけど、魔理沙って私より胸おっきいのよね。
やはり食生活の違いなのかしら。
「痛っ!何で突然叩くんだ!何もしてないだろ!?」
「デヴった魔理沙がなんとなく気に食わなかったのよ」
「で、デブって、私は太ってなんかないぞ!?」
「そんだけぶくぶくになって何言ってるのよ」
「これは単に着込んでるだけだろ」
「デーブデーブ魔理沙の太っちょ。そんだけ太ってるなら腹も太らせて太っ腹になりなさいよ」
「うぅ、今日の霊夢は何かひどいぜ」
あ、縮こまった。
やっぱ突っつくと面白いわこの子。
「なんだよ、そのニヤニヤした顔は」
「ん?魔理沙は可愛いなぁって」
「か!な、なななに言ってんだよ!」
「だから魔理沙は可愛いって」
「う………」
そうそう。
この打てば響く感じがもうね。
からかうには絶好の素材ね。
「何だよ全く。寂れた神社の数少ない客だろ?もう少し大事にしてくれよ」
「土産はおろかお賽銭も入れなきゃお祈りもしない、お茶とお茶菓子たかりに来るような者を客として定義するならね。もちろん私は定義してないわ」
「お祈りにお賽銭?そんな物好きが幻想郷にいるわけないじゃイッテーー!!グーで殴るなグーで!!」
全く、ここの住人の信心深さには涙があふれてくるわ。
去年も一昨年も正月と言う日にすら参拝客0ってどういうことよ。
外の世界もそんな感じなのかと思って視察に行ったら、どこの神社も人、人、人。
場所によっては、お賽銭箱の許容量越えるせいででっかい青い布なんか用意しちゃって。
しかも、みんな1円5円なんて額じゃなくて銀色の硬貨をぽんぽん投げてるなんて。
中にはお札まで投げ込んでる人がいるのよ?
とてもじゃないけど信じがたい光景だったわねあれは。
ここ最近は外の世界の住人の幻想が薄れてるとか何とか言われることもあるけど、こっちの住人よりよっぽど神とか信じてるじゃない。
あまりに悔しいから、思わず幾らかかっぱらってきちゃったわ。
でも、当面の生活資金にしようとしたら、外のお金は使えないとか言われちゃって。
仕方ないから霖之助さんのところに持っていったら、そこでも「これで買い物は出来ない」だって。
「全く、霖之助さんももう少し融通利かせてくれてもいいのにね」
「また、唐突になんだよ。こーりんは割と融通が利く奴だと思うけどなぁ」
「外のお金で商品売ってくれって言ったら、こっちで使えないもの貰っても困るって言われたのよ。お金には変わりないのに」
「いや…こっちで使えないならそれってただのゴミじゃないか…。そりゃそんなもの貰っても困るよなぁ」
「これまでのツケも全部払える金額だったのに。多分。まぁ、一応お金として払ったからちゃんと商品受け取っていったけどね」
「物を奪ってゴミを置いてくなんて……。なんて性質が悪いんだ」
「あんたも物奪ってるじゃない」
「私はちゃんと別の形で払ってるよ」
それは意外ね。
魔理沙のことだからどうせ大したことのないものなんでしょうけど。
まぁ、少なくともあっちではお金として通用してるものを払ったんだから、文句言われる筋合いはないけどね。
「というか、外の世界のお金なんてどうやって手に入れたんだ?」
「ん?神社のお賽銭を貰ってきただけよ」
「ちょっと待て!どこの世界に他の神社の賽銭泥棒をする巫女がいるんだ」
「目の前に」
あ、倒れた。
「お、お前なぁ。それは人々が願いを込めて神様に捧げたものじゃないか。神の使いとされる巫女が奪うなんて言語道断だぞ」
「あら?神の使いならなおさら受け取る権利があるでしょ?それに、そんなことしようがしまいが、かなう願いはかなうし、かなわぬ願いはかなわないなんて当たり前のことでしょ」
「巫女が言っていい台詞じゃないだろ、それは」
「要するに自己満足、自己暗示。これだけお金を払ったんだから願いはかなうんじゃないかなーって言う。つまり、賽銭箱に入れて祈ったと言う時点で彼らの目的は達成されてるの。なら後はそれをどう使おうが勝手でしょ。彼らにとっては対価を払ってまで祈ったと言う事実が大切なんだから。そうやって心の平安を買ってるだけよ」
「はぁ………そんな考え方してるようじゃそりゃ参拝客なんて来ないわなぁ…」
心底呆れたように言われてしまった。
やかましい。
願うだけで生きていけるならいくらでも願ってやるわよ。
日々サバイバルの私にとっては今そこに存在するものが全てよ。
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「はー、あったかーい」
「全く同感だぜ」
最初にコタツを考えた人って誰なのかしら。
なんというか、もう最高ね、この発想が。
冬は一生ここから出なくてもいいくらいだわ。
紫なんか冬眠してるから一生この良さはわからないのよねぇ。
あー、もったいないもったいない。
良さがわからないと言えば⑨ね。
折角コタツのすばらしさを教えてあげようと思ったのに、全力で拒否されたのよね。
まぁ、本気でやるつもりはなかったけど。
洒落にならなくなるし。
「ま、所詮⑨だし」
「また何だよ突然」
「ん?コタツの良さを教えてあげようと思ったら「あたいを殺す気か!」とか言われたのよ。全くひどい奴よね」
「お前のほうがひどいぜ………」
魔理沙が涙してる。
大袈裟ねぇ
実際に引きずり込んだわけでもないのに。
「そういえばこのコタツってどこで手に入れたんだ?」
「霖之助さんのところよ」
「と言うことは勝手に持ってきたのか…」
「まさか。一人でこんなもの運びたくないわよ。ちゃんと霖之助さんに持ってきてもらったわ」
「こーりんがか?珍しいな。一体何と引き換えに?」
「さっき言った外のお金よ」
「ん?こーりんはいらないって言ってたんだろ?」
「夢想封印で店を吹っ飛ばされるのと、素直にお金を受け取ってコタツを運ぶのとどっちがいいか聞いただけよ。快く応じてくれたわ」
「こーりん……強く生きろ………」
何か遠い目をしている。
まぁ、脅したのは事実だけど、魔理沙に攻められる筋合いはないわ。
「大体、あんただっていつも勝手に商品持っていってるじゃない。大差ないでしょ」
「だからさっきも言っただろ。私はちゃんと対価払ってるって」
「どうせ魔理沙のことだから、「私の笑顔が対価だぜ」とか言ってるんでしょ」
「こーりんはうちにある蒐集品を色々持っていってるんだよ。それにあいつのご飯作りに行ったりしてるし。乙女の料理は高いんだぞ」
何こいつ。
通い妻なんかしてる訳?
うーん、私の魔理沙にそんなことさせていたなんて、霖之助さんにはちょっときついお仕置きが必要ね。
あー、でもやりすぎるとお茶が手に入らなくなっちゃうわねぇ。
具体的な方法はゆっくり考えておこう。
---------------------------------------------------------------
「それにしても、これってどういう原理で動いてるんだ?これだけの熱を発生し続けるって私でも結構大変なんだが」
魔法使いらしい疑問ね。
別に形がどうであれちゃんと使えればいいと思うんだけど。
「んー。八卦炉のようなもので動かしてるって聞いたけど」
「え!?ってことはこれ使えばマスタースパークが撃てるのか!霊夢、ちょっと試さs」
「夢想封印」
「うぐぇ!!!!」
吹っ飛んでく魔理沙。
全く魔法のこととなると見境なくなるんだから。
そんなことに私の聖域を使わせるはずないって、少しでも考えればわかりそうなものなのに。
「次にくだらない事言ったら夢想天生」
「うぅ、魔法使いだって怪我したら死んじゃうんだぞ…」
泣きながらこっちに戻ってくる魔理沙。
あ。
「ぎゃーー!!!!」
問答無用でパスウェイジョン串刺し。
「痛い痛い!今度は何だよ!!」
「風を入れたら刺すって言ったわよね」
「はぅ…」
こてん、って音が似合いそうな感じで頭をコタツの上に乗せてる。
そんな格好でこっちを見上げる様子は、なんていうか、小動物?
んー、違うわね。
魔理沙は犬よ、犬。
自由奔放なところが猫っぽいって意見もあるけどそうじゃない。
あちこちちょろちょろ好き勝手に動いてる様子は、遊び盛りの子犬のそれと同じよ。
だから、飼い主に怒られるとこんな風に縮こまって。
そういう状態で相手の様子を伺う感じが犬そのもの。
あ、もちろん飼い主は私だけどね。
「ほら魔理沙。いつまでもそんな格好してないで、饅頭でも食べてなさい」
そう言って餌をあげると、
「あ、ああ。ありがとう霊夢」
すぐに元気になって尻尾を振る。
うん、本当に犬の本能に忠実ね。
よきかなよきかな。
犬、犬。
犬といえば咲夜ね。
アレはまんま忠犬って感じ。
レミリアは対照的に猫。
あれこそ猫っぽいわがままさを備えてるわねぇ。
犬と違って単独でも生きていけるし。
一旦飼われると寂しがりになるって点も猫ね。
多分アレはもう咲夜無しじゃ無理でしょ。
きっとベッドの中でも猫なんだわ。
猫以外に仕える主を知らない犬。
犬に頼りっぱなしになった猫
おーおー、お熱いこった。
この冬の寒さも全然関係ないんでしょうね。
「あんた、本当にうれしそうに食べるわねぇ」
「いや、この饅頭本当においしいぞ。お茶との相性もばっちりだ」
犬ね、やっぱ。
まぁ、これだけ素直に反応返してくれれば構ってやりたくもなるけど。
あ、もう一人いたわね犬が。
幽々子。
飼い主は妖夢で。
一見すると主従が逆転してるようだけど、しつけに失敗した犬と、それに翻弄される飼い主って観点から見れば
まさにあの二人の関係にジャストフィット。
ふふ、こういう視点でずばり本質を見抜ける辺り、やっぱ私は天才ね。
………うーん、虚しいわ。
別に天才じゃなくても困らないし。
やっぱやめ。
私は盆栽、じゃなくて凡才。
何かそれも悔しい。
こういうとき丁度いい言葉があるといいんだけどねー。
---------------------------------------------------------------
「あったかくて幸せぇ」
「だらしのない格好だな」
うるさい。
コタツ布団に潜り込んでだれるってのは、人類3大幸福のうちのひとつなのよ。
これに幸せを感じないなんて人間じゃないわ。
ちなみに後2つはお茶を飲むこととお賽銭を入れてもらうことよ。
うん、我ながら納得できる意見だわ。
でも、なんか足りないのよねー。
確かにこのままでも十分幸せなんだけど。
あー、わかったわかった。
枕がないんだ。
ここに極上の枕があればエデンが完成する。
でも、うちの枕って極上ってわけじゃないのよねぇ。
「ねぇ、魔理沙」
「あん?どうした?」
「極上の枕持ってきてよ」
「藪から棒になんだよ。いきなりそんなこと言われても無理だぜ」
ご主人様に逆らうとはダメな犬ね。
しかし困ったわ。
今すぐに手に入る極上枕………。
「お邪魔するよ。霊夢はいるか?」
「あら、藍じゃない?突然何よ」
「いや、紫様が寝ている間はどうしても暇な時間が増えるんでな。橙も遊びに行ってしまってるし。こういう時は暇な奴のところへ行くのが一番だ」
「あー、その気持ちわかるぜ。暇になったらとりあえずここに来ればいいしな」
「何よそれ。ここは神社であって寄り合い所じゃないわ」
「まぁまぁ、困った時はお互い様ってことで」
全くこいつも人を暇人扱いして。
大体暇だったらここに来るって何なのかしら。
そんなに暇なら尻尾の毛づくろいでもしてればいいのに。
尻尾?
「藍。ちょっとこっち来て私に背を向けて座って頂戴」
「ん?何だ一体?」
「いさせてあげるんだからそれくらいいでしょ?」
「よくわからんがこうか………きゃっ!!」
これよこれ。
極上枕。
「ちょ!何で尻尾に顔を突っ込んでるんだ!ってくすぐったいやめてくれ!」
この肌触り。
この暖かさ。
毛並みも抜群で最高ね。
すりすり。
「こ、こら!息を吹きかけるな!顔を擦り付けるな!」
いいなぁこれ。
パタパタ顔に当たるのがくすぐったいけど、ちょっと気持ちいいし。
「だからやめろって!突然何なひゃうっ!」
「枕よ枕。藍、喜びなさい。博麗の巫女があなたの尻尾を極上の枕として認定するわ」
「何だ霊夢。そんなにいいのかそれ。ちょっと私にもやらせてくれよ」
魔理沙も興味を持ったようだ。
まぁ、確かにこれは気持ちい……あ。
「うぎゃー!!!また刺さったぞ!!」
「だから、風を入れるなと言ったでしょ!学習能力無いのあんたは?」
一通りのたうちまわった後、のそのそこちらにやってくる魔理沙。
結構丈夫ね、この子も。
「おー、これは確かに快適だー。藍、これはいいものだぞ」
「でしょう?今までこれに気づかなかったとは全く不覚を取ったものだわ」
「二人ともホントやめてくれ。くすぐったくてかなわん!」
折角褒めてあげてるのにつれない奴ね。
でも、真っ赤になって身悶えてる藍ってのも新鮮ねぇ。
「じゃあやめるから、これ1本頂戴」
「ちょ、頂戴って何を言ってる!」
「いいじゃん9本もあるんだから1本くらい。どうせそのうちまた生えてくるでしょ」
「生えてこない生えてこない!!頼むから勘弁してくれ」
「こらこら暴れないの。魔理沙、引っこ抜くの手伝って頂戴」
「やめろって霊夢!さすがにそれはどうかと思うぞ!」
「何よ、あんたの分もちゃんと引っこ抜いてあげるわよ」
「そういう問題じゃないって!」
「紫様ー!!ちぇーーーーーーん!!!!助けてー!!!殺されるーーーー!!!!!!」
なんて人聞きの悪い。
別に尻尾引っこ抜いたくらいじゃ死なないわよ。
「うわぁああああぁぁあああぁああん!!!!」
あ、マジ泣きしちゃった。
さすがに悪乗りが過ぎたかしら。
「嘘よ、藍。ウソウソ。さすがにそこまでやらないわよ。ごめんね」
「いや、今のは本気に見えぐぁ!!」
「魔理沙は黙ってて。九尾の成り立ちくらい知ってるから、尻尾が再生しないのも知ってるわよ」
「ほ、ほんとに引っこ抜かない?」
部屋の隅っこで尻尾を抱えて丸まってる姿は妙にラヴリーだ。
天狗辺りなら「スクープゲットです!ハァハァ」なんて叫びながら激写しまくりでしょうね。
「ほんとだってば。悪かったと思ってるわ」
近づこうとすると、ビクっと後ろに下がる。
んー、これはちょっとまずいわね。
トラウマ残すようないぢり方は後に禍根を残すから良くないし。
仕方ない。
対藍用秘密兵器を使うか。
「わかった。反省してるって言う証拠を見せるわ」
えーっとあれは確か台所の棚の中だったわね。
うー、コタツ出てると寒いし、さっさととって来るか。
---------------------------------------------------------------
「はい、これあげるわよ」
戻ってくると二人してちゃっかりコタツに入ってる。
藍は一瞬ビクっとなったけど、さっきみたいに錯乱はしてないわね。
少しは落ち着いたのかしら。
「なんだそりゃ?」
「特殊な油揚げよ」
「油揚げ!?」
藍の目が輝いた。
こいつもわかりやすいわねぇ。
「特殊ってしなびてるようにしか見えないんだけど」
「まぁ、魔理沙の頭じゃぜんぜん想像つかないでしょうね」
「ひどい言い草だな」
魔理沙とやり取りしてる間も藍の目は黄色いそれに釘付けだ。
「これは水につけるとちゃんと元の形に戻るのよ。まぁ、鮮度は落ちるけどその代わりに長い間保存できるわ」
「そりゃ確かに特殊だな」
「それにこれは外のものよ。だから幻想郷にあるのはこれっきり。怖がらせたお詫びとしてこれをあげるわ。ごめんなさい」
言葉とともに頭を下げる。
さすがにあれだけ怯えさせたのはこちらの責任だしね。
「そ、そんな貴重なものを私に!?れ、霊夢ありがとう!!この恩は絶対に忘れない!!!」
い、いやまぁ。
目を潤ませて尻尾ブンブン振ってまで感激されると、こっちとしても対応に困るんだけどね。
いざとなったらまた取りに行けばいいんだし。
追っかけられるのが鬱陶しいけど。
しかし、こうしてみると藍も犬っぽいなぁ。
「霊夢が食料を、しかもそんな貴重なものをあげるなんて。こりゃ明日は槍でも降うぐぇえええええ!れ、霊夢やめっ!出ちゃう!魂出ちゃう!!」
目を丸くしてまで言うようなことか!
大体食料って言うならお茶菓子というものをちゃんと振舞ってるじゃない。
全く失礼しちゃう。
「うぇえ…げほっげほっ…はぁ、はぁ、全く、今日の霊夢は、激しいぜ…」
「それだけあんたが余計なこと言ってるってことでしょ」
「はぁ、私はいつもと、はぁ、大差ないぞ」
「どうだか」
ま、同じ事言われたとしてもその日の気分によって対応が変わるのは当然のことでしょ。
「なぁ、藍。ものは相談なんだが、私にもそれ1枚くれないか?」
「なっ!ダメだダメだ!これは私が貰ったものだ!」
「そこを何とか!外の食べ物ってどんなものなのか研究してみたいんだよ」
「いーやダメだ!他のものならともかくこれだけはダメだ」
「何だけちだなぁ。それだけあるなら1枚くらいいいじゃないか」
「ダメなものはダメ!」
餌をめぐって吼えあう2匹のわんこ。
見てて面白いけど、目の前でギャアギャアやられるのもちょっとね。
しょうがないわねぇ。
「魔理沙。今度何か手に入れたらあげるから今日は我慢なさい」
「ほ、ホントか霊夢!?」
「約束するわ」
「やったー!!!ありがとう霊夢」
目を輝かせて全身で喜びを表しちゃってまぁ。
見てて清々しいほどね。
「ぴぎゃーー!!!!!」
「だ・か・ら!風を入れるなと言ってるでしょ!」
ペナルティはきっちり受けてもらうけど。
---------------------------------------------------------------
「お、そろそろ橙も帰ってくる頃だからお暇させてもらうよ。夕食の支度もあるのでな」
「あら、もうそんな時間なのね」
外を見ると空は紅から黒へと変わり始めている。
なんだかんだで今日という日ももうそろそろ終わりね。
「んー、やっぱ暇をつぶすならここね。ここに来ても暇なはずなのになぜか時間があっさりと過ぎるし」
「そうだよなぁ。よくわからんがここにいると暇なのに退屈しないぜ」
それは暇じゃないってことじゃないの?
本当に暇なら時間が経つのが早いと感じることはないし。
というか、退屈しないならそれは暇じゃないってことじゃないの。
「なんだかものすごく失礼なこと言われてる気がするわ」
「気のせいじゃない?」
「気のせいだな」
ぬぅ。
2対1じゃ敵わないじゃない。
「それじゃ霊夢、油揚げありがとう。魔理沙も達者でな」
「応。また来いよ」
「なんであんたがそういう応え方してるのよ」
「細かいことは気にするなって。どうせ霊夢だって同じような事言うんだし」
「また来い、なんて言うわけ無いでしょ。そんな事言わなくたって勝手に来るんだし」
「ハハハ。じゃあな二人とも」
魔理沙を見て学習したのか、風を入れることなく立ち去っていった。
さすがにあの紫の式をしてるだけあるわね。
「んー、私もそろそろかな」
「ん?あんたも帰るの?」
「お腹もすいたしなぁ」
そういえば藍も夕食の支度って言ってたわね。
今日も一日中忙しかったせいで結構消耗しちゃったし。
それに、考えてみればここ最近まともに食事してなかったわねぇ。
折角だから魔理沙と一緒に食べるか。
うん、決めた。
「魔理沙、どうせならここで食べてきなさい。というかこれは命令。食べていけ」
「霊夢からお誘いとは珍しいな。まぁ、それならご一緒させてもらおうか」
「はい、決まったところでさっさとついて来る」
「待ってくれよ。せっかちな奴だなぁ」
「こういうのは早い方がいいのよ」
「そういうものか?………あれ、なんか方向が違わないか?」
「違ってないわ。あってるわよ」
「ってここってお前の寝室じゃないか。こんなところでご飯食べきゃぁああああああああああ!!」
いただきます。
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~ 一日 ~
「あ゛ー、冬はやっぱコタツよねぇ」
完膚なきまでにだらけきった身で、これまた情けない声を上げる。
我ながら情けない姿だけど、しょうがないじゃない。寒いものは寒いんだから。
大体この服が悪いのよ。
肩丸出しで脇全開だなんて普通じゃないわ。
何でこんなものが伝統になっているんだか。
夏は涼しいことは涼しいけど、日焼けがひどいし、冬なんて最悪よもう。
スキマ風ってレベルじゃない勢いで風が駆け抜けていくし。
あー、スキマ風なら紫を脅して、いや頼んで脇の両側に風を吸い込むようなスキマをつければいいんじゃないかしら。
駄目ね駄目ダメ。
なんか見た目が気持ち悪いし、けーねに何言われるかわかったものじゃない。
以前冬用の巫女服を考えようとした時に全力で禁止されちゃったもんねぇ。
「霊夢、確かに時とともに過去のものは失われていく。それは仕方がないことだ」
「だが、決して失われてはならないものもある。歴史を見てきた私にはよくわかる。お前の巫女服もそのようなもののひとつだ」
なーんて目に涙ためてまで力説されたらねぇ。
けーねがいってたって言われれば納得せざるを得ないし。
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「うーん、暇ねぇ」
なんてことをつぶやくものの、実際に暇なわけではない。
外見上は暇に見えても思考は常にフル回転なのだ。
体を動かしていないという点では暇でも、生命活動そのものから見た場合むしろ下手に動くよりもずっと消耗している。
さっきだってほら、この冬を暖かく過ごすための案を考えながら最終的に歴史及び伝統の大切さまで思考を広げてたでしょ。
年がら年中暇人だとか、無重力巫女ってのは暇だから地に足をつけなくてもいいだとか、暇すぎて頭の中に花が咲き乱れてるだとか
散々な言われようだけど、実際は暇なんて単語が似合わないほど全力で活動してるのよ!
「おーっす霊夢、今日も元気に暇してるな」
ほら来たこういう輩が。
外見だけでしか判断を下せないような奴が高尚な精神活動など理解できるわけがない。
「あんたも暇そうね魔理沙。この寒い中わざわざこんなところまで出てくるくらいだし」
全く物好きな奴だと思う。
雪は降ってはいないもの外は刺すような冷気。
⑨みたいな奴でもない限りこんな日に外に出たいなんて思うわけがない。
………。
「つまり魔理沙って⑨並なのね」
「ちょっと待て!唐突に謎なことを口走ったかと思ったら、よりによってあんなのと同列にするのか!」
まぁ、ある意味同列よね。
考え無しに突っ込むところとか。
ってこいつ、我が聖域に侵入する気か。
「あー、魔理沙、一言だけ言っておくわ」
「なんだよ」
「コタツに風を入れたら刺す」
魔理沙ったら涙目になっちゃって可愛いんだから。
そんな状況で慎重にコタツに足を入れる様は何か間抜けねぇ。
まぁ、目玉の5mm手前くらいで針をちらつかせられれば魔理沙でもなくても大人しくなると思うけど。
ま、私も鬼じゃないから、その可愛さに免じてあげよう。
「いってーー!!!!風入れないようにしただろ!!」
「サンクチュアリに侵入する以上相応の洗礼は受けてもらうわ」
「だからといっていきなり刺すことはないだろう?」
「大丈夫よ、これでも針師の真似事くらい出来るわ。今刺したのはツボの一つよ」
「真似事っておい。すごく不安なんだが」
「本で読んでちゃんと完璧に習得したんだからね」
「さらに不安材料が増えたぜ…」
「うっさい。ちゃんと実験済みなんだから大丈夫よ」
これは本当の話だ。
妹紅相手に色々試してみたし。
こういうとき死なないってのは便利ねぇ。
思ったとおりの結果は出なかったけど。
「全くひどい奴だ。ちなみになんてところを刺したんだ?」
お約束のようにみかんをむきながら聞いてくる魔理沙
こいつ、貴重な食料に勝手に手をつけて。
うちの経済状況を知ってるくせに。
こういう不遜な輩にはいつかお灸を据えてやらないとならないわ。
「頭維」
「頭維?どういう効果があるんだ」
「指を抜いて3秒後にBOM!!よ」
「ちょっと待てぇええええええ!!!!」
うん、いい反応ね。
やっぱこうでないとつまらないわ。
でも魔理沙、みかんを握りつぶすのは感心できないわ。
「れ、霊夢!お前何の本を参考にしたんだ」
「ん?霖之助さんのところで見つけた絵巻物よ。北斗の何たらってやつ」
「死ぬ!マジで死ぬ!助けてよ霊夢!!私まだ死にたくない!!!!」
「死ぬわけないじゃん。大体もう3秒以上経ってるでしょ」
完璧に脱力して倒れこむ魔理沙。
この子もやっぱどっか抜けてるところあるわね。
ちょっと考えればツボにそんな効果あるわけないってわかるのに。
「そ、そういう冗談やめてくれ…」
涙目で見上げてくる。
あー、もう可愛いんだから。
こう、普段とのギャップというかなんと言うか。
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私の高度な精神活動は続く
例えば博麗としての私の存在だ。
中庸だの無重力だのあらゆる境界に属さないだの色々言われてるんだけど。
まぁ、なんていうかぶっちゃけ大きなお世話?
そりゃ博麗の巫女としての役割はこなすし、私がやらなきゃならないことはちゃんとやるわよ。
でも、それ以外は別に好きにしてていいと思わない?
なーんで中立だの何だので行動を束縛されなきゃならないのか。
私ゃ博麗の巫女である前に博麗霊夢って言う一個の存在だって。
そーんな鬱屈した日々送ってるわけだから、ちょっと結界飛び越えて外の世界へ遊びに行ったりしても怒られないよね?
まー、私と紫以外にそんなことが出来る奴なんていないわけだし、この世界にある以上博麗の巫女ってのは俺 is JUSTICE!!を貫くことが出来るわけで、文句なんて言わせないけど。
「んー、コタツっていいなぁ。私も1個ほしいところだぜ」
「あげないわよ」
全く、くだらないことでこちらの思考を中断させるんだから。
コタツがいいってのには同意だけど。
で、どこまで考えてたっけ。
ああ、そうそう、外の世界に遊びに行くことね。
外の世界ってのはなんつーか一言で言うと「汚い」?
灰色だらけで何か空気も汚いしうるさいし、よくまぁあんなところで生活できるものねぇ。
こんな格好してる人間もいないから目立つし。
気分転換くらいにはなるけど。
そういえばあっちの世界って、お店のもの持ってこうとするとやたら怒られるのね。
全く少しは霖之助さんを見習ったらどうなのかしら。
………霖之助さんも最初のうちは怒ってたような気がするわ。
たぶん記憶違いだけど。
そういやあんまりしつこいから夢想封印撃ったらちょっと洒落にならないことになったわねぇ。
アレは私でも思い出したくないって言うか。
うーん、せめて夢想妙珠くらいに抑えておくべきかな。
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「暇だー」
「暇なのは同意だけど、だったら何でここに来るのよ」
「んあ?暇なのもたまにはいいもんだぜ。コタツもあるし」
「結局コタツ目当てなのね」
そういや魔理沙って極度の寒がりだったわね。
今だってぶくぶくに着込んでその上コタツ。
……んー、こっちは肩出し脇出しの季節を半年ほど間違ったスタイルで我慢してるのに、こいつはこれだけ着込んだ上でさらに暖を求めるか。
もうちょっと肉付きがよければ少しはあったかいのかしらね。
まー、どんだけ胸元眺めたって急におっきくなるようなことがないのはわかってるんだけど。
そういえばこの間一緒に風呂に入った時に思ったけど、魔理沙って私より胸おっきいのよね。
やはり食生活の違いなのかしら。
「痛っ!何で突然叩くんだ!何もしてないだろ!?」
「デヴった魔理沙がなんとなく気に食わなかったのよ」
「で、デブって、私は太ってなんかないぞ!?」
「そんだけぶくぶくになって何言ってるのよ」
「これは単に着込んでるだけだろ」
「デーブデーブ魔理沙の太っちょ。そんだけ太ってるなら腹も太らせて太っ腹になりなさいよ」
「うぅ、今日の霊夢は何かひどいぜ」
あ、縮こまった。
やっぱ突っつくと面白いわこの子。
「なんだよ、そのニヤニヤした顔は」
「ん?魔理沙は可愛いなぁって」
「か!な、なななに言ってんだよ!」
「だから魔理沙は可愛いって」
「う………」
そうそう。
この打てば響く感じがもうね。
からかうには絶好の素材ね。
「何だよ全く。寂れた神社の数少ない客だろ?もう少し大事にしてくれよ」
「土産はおろかお賽銭も入れなきゃお祈りもしない、お茶とお茶菓子たかりに来るような者を客として定義するならね。もちろん私は定義してないわ」
「お祈りにお賽銭?そんな物好きが幻想郷にいるわけないじゃイッテーー!!グーで殴るなグーで!!」
全く、ここの住人の信心深さには涙があふれてくるわ。
去年も一昨年も正月と言う日にすら参拝客0ってどういうことよ。
外の世界もそんな感じなのかと思って視察に行ったら、どこの神社も人、人、人。
場所によっては、お賽銭箱の許容量越えるせいででっかい青い布なんか用意しちゃって。
しかも、みんな1円5円なんて額じゃなくて銀色の硬貨をぽんぽん投げてるなんて。
中にはお札まで投げ込んでる人がいるのよ?
とてもじゃないけど信じがたい光景だったわねあれは。
ここ最近は外の世界の住人の幻想が薄れてるとか何とか言われることもあるけど、こっちの住人よりよっぽど神とか信じてるじゃない。
あまりに悔しいから、思わず幾らかかっぱらってきちゃったわ。
でも、当面の生活資金にしようとしたら、外のお金は使えないとか言われちゃって。
仕方ないから霖之助さんのところに持っていったら、そこでも「これで買い物は出来ない」だって。
「全く、霖之助さんももう少し融通利かせてくれてもいいのにね」
「また、唐突になんだよ。こーりんは割と融通が利く奴だと思うけどなぁ」
「外のお金で商品売ってくれって言ったら、こっちで使えないもの貰っても困るって言われたのよ。お金には変わりないのに」
「いや…こっちで使えないならそれってただのゴミじゃないか…。そりゃそんなもの貰っても困るよなぁ」
「これまでのツケも全部払える金額だったのに。多分。まぁ、一応お金として払ったからちゃんと商品受け取っていったけどね」
「物を奪ってゴミを置いてくなんて……。なんて性質が悪いんだ」
「あんたも物奪ってるじゃない」
「私はちゃんと別の形で払ってるよ」
それは意外ね。
魔理沙のことだからどうせ大したことのないものなんでしょうけど。
まぁ、少なくともあっちではお金として通用してるものを払ったんだから、文句言われる筋合いはないけどね。
「というか、外の世界のお金なんてどうやって手に入れたんだ?」
「ん?神社のお賽銭を貰ってきただけよ」
「ちょっと待て!どこの世界に他の神社の賽銭泥棒をする巫女がいるんだ」
「目の前に」
あ、倒れた。
「お、お前なぁ。それは人々が願いを込めて神様に捧げたものじゃないか。神の使いとされる巫女が奪うなんて言語道断だぞ」
「あら?神の使いならなおさら受け取る権利があるでしょ?それに、そんなことしようがしまいが、かなう願いはかなうし、かなわぬ願いはかなわないなんて当たり前のことでしょ」
「巫女が言っていい台詞じゃないだろ、それは」
「要するに自己満足、自己暗示。これだけお金を払ったんだから願いはかなうんじゃないかなーって言う。つまり、賽銭箱に入れて祈ったと言う時点で彼らの目的は達成されてるの。なら後はそれをどう使おうが勝手でしょ。彼らにとっては対価を払ってまで祈ったと言う事実が大切なんだから。そうやって心の平安を買ってるだけよ」
「はぁ………そんな考え方してるようじゃそりゃ参拝客なんて来ないわなぁ…」
心底呆れたように言われてしまった。
やかましい。
願うだけで生きていけるならいくらでも願ってやるわよ。
日々サバイバルの私にとっては今そこに存在するものが全てよ。
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「はー、あったかーい」
「全く同感だぜ」
最初にコタツを考えた人って誰なのかしら。
なんというか、もう最高ね、この発想が。
冬は一生ここから出なくてもいいくらいだわ。
紫なんか冬眠してるから一生この良さはわからないのよねぇ。
あー、もったいないもったいない。
良さがわからないと言えば⑨ね。
折角コタツのすばらしさを教えてあげようと思ったのに、全力で拒否されたのよね。
まぁ、本気でやるつもりはなかったけど。
洒落にならなくなるし。
「ま、所詮⑨だし」
「また何だよ突然」
「ん?コタツの良さを教えてあげようと思ったら「あたいを殺す気か!」とか言われたのよ。全くひどい奴よね」
「お前のほうがひどいぜ………」
魔理沙が涙してる。
大袈裟ねぇ
実際に引きずり込んだわけでもないのに。
「そういえばこのコタツってどこで手に入れたんだ?」
「霖之助さんのところよ」
「と言うことは勝手に持ってきたのか…」
「まさか。一人でこんなもの運びたくないわよ。ちゃんと霖之助さんに持ってきてもらったわ」
「こーりんがか?珍しいな。一体何と引き換えに?」
「さっき言った外のお金よ」
「ん?こーりんはいらないって言ってたんだろ?」
「夢想封印で店を吹っ飛ばされるのと、素直にお金を受け取ってコタツを運ぶのとどっちがいいか聞いただけよ。快く応じてくれたわ」
「こーりん……強く生きろ………」
何か遠い目をしている。
まぁ、脅したのは事実だけど、魔理沙に攻められる筋合いはないわ。
「大体、あんただっていつも勝手に商品持っていってるじゃない。大差ないでしょ」
「だからさっきも言っただろ。私はちゃんと対価払ってるって」
「どうせ魔理沙のことだから、「私の笑顔が対価だぜ」とか言ってるんでしょ」
「こーりんはうちにある蒐集品を色々持っていってるんだよ。それにあいつのご飯作りに行ったりしてるし。乙女の料理は高いんだぞ」
何こいつ。
通い妻なんかしてる訳?
うーん、私の魔理沙にそんなことさせていたなんて、霖之助さんにはちょっときついお仕置きが必要ね。
あー、でもやりすぎるとお茶が手に入らなくなっちゃうわねぇ。
具体的な方法はゆっくり考えておこう。
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「それにしても、これってどういう原理で動いてるんだ?これだけの熱を発生し続けるって私でも結構大変なんだが」
魔法使いらしい疑問ね。
別に形がどうであれちゃんと使えればいいと思うんだけど。
「んー。八卦炉のようなもので動かしてるって聞いたけど」
「え!?ってことはこれ使えばマスタースパークが撃てるのか!霊夢、ちょっと試さs」
「夢想封印」
「うぐぇ!!!!」
吹っ飛んでく魔理沙。
全く魔法のこととなると見境なくなるんだから。
そんなことに私の聖域を使わせるはずないって、少しでも考えればわかりそうなものなのに。
「次にくだらない事言ったら夢想天生」
「うぅ、魔法使いだって怪我したら死んじゃうんだぞ…」
泣きながらこっちに戻ってくる魔理沙。
あ。
「ぎゃーー!!!!」
問答無用でパスウェイジョン串刺し。
「痛い痛い!今度は何だよ!!」
「風を入れたら刺すって言ったわよね」
「はぅ…」
こてん、って音が似合いそうな感じで頭をコタツの上に乗せてる。
そんな格好でこっちを見上げる様子は、なんていうか、小動物?
んー、違うわね。
魔理沙は犬よ、犬。
自由奔放なところが猫っぽいって意見もあるけどそうじゃない。
あちこちちょろちょろ好き勝手に動いてる様子は、遊び盛りの子犬のそれと同じよ。
だから、飼い主に怒られるとこんな風に縮こまって。
そういう状態で相手の様子を伺う感じが犬そのもの。
あ、もちろん飼い主は私だけどね。
「ほら魔理沙。いつまでもそんな格好してないで、饅頭でも食べてなさい」
そう言って餌をあげると、
「あ、ああ。ありがとう霊夢」
すぐに元気になって尻尾を振る。
うん、本当に犬の本能に忠実ね。
よきかなよきかな。
犬、犬。
犬といえば咲夜ね。
アレはまんま忠犬って感じ。
レミリアは対照的に猫。
あれこそ猫っぽいわがままさを備えてるわねぇ。
犬と違って単独でも生きていけるし。
一旦飼われると寂しがりになるって点も猫ね。
多分アレはもう咲夜無しじゃ無理でしょ。
きっとベッドの中でも猫なんだわ。
猫以外に仕える主を知らない犬。
犬に頼りっぱなしになった猫
おーおー、お熱いこった。
この冬の寒さも全然関係ないんでしょうね。
「あんた、本当にうれしそうに食べるわねぇ」
「いや、この饅頭本当においしいぞ。お茶との相性もばっちりだ」
犬ね、やっぱ。
まぁ、これだけ素直に反応返してくれれば構ってやりたくもなるけど。
あ、もう一人いたわね犬が。
幽々子。
飼い主は妖夢で。
一見すると主従が逆転してるようだけど、しつけに失敗した犬と、それに翻弄される飼い主って観点から見れば
まさにあの二人の関係にジャストフィット。
ふふ、こういう視点でずばり本質を見抜ける辺り、やっぱ私は天才ね。
………うーん、虚しいわ。
別に天才じゃなくても困らないし。
やっぱやめ。
私は盆栽、じゃなくて凡才。
何かそれも悔しい。
こういうとき丁度いい言葉があるといいんだけどねー。
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「あったかくて幸せぇ」
「だらしのない格好だな」
うるさい。
コタツ布団に潜り込んでだれるってのは、人類3大幸福のうちのひとつなのよ。
これに幸せを感じないなんて人間じゃないわ。
ちなみに後2つはお茶を飲むこととお賽銭を入れてもらうことよ。
うん、我ながら納得できる意見だわ。
でも、なんか足りないのよねー。
確かにこのままでも十分幸せなんだけど。
あー、わかったわかった。
枕がないんだ。
ここに極上の枕があればエデンが完成する。
でも、うちの枕って極上ってわけじゃないのよねぇ。
「ねぇ、魔理沙」
「あん?どうした?」
「極上の枕持ってきてよ」
「藪から棒になんだよ。いきなりそんなこと言われても無理だぜ」
ご主人様に逆らうとはダメな犬ね。
しかし困ったわ。
今すぐに手に入る極上枕………。
「お邪魔するよ。霊夢はいるか?」
「あら、藍じゃない?突然何よ」
「いや、紫様が寝ている間はどうしても暇な時間が増えるんでな。橙も遊びに行ってしまってるし。こういう時は暇な奴のところへ行くのが一番だ」
「あー、その気持ちわかるぜ。暇になったらとりあえずここに来ればいいしな」
「何よそれ。ここは神社であって寄り合い所じゃないわ」
「まぁまぁ、困った時はお互い様ってことで」
全くこいつも人を暇人扱いして。
大体暇だったらここに来るって何なのかしら。
そんなに暇なら尻尾の毛づくろいでもしてればいいのに。
尻尾?
「藍。ちょっとこっち来て私に背を向けて座って頂戴」
「ん?何だ一体?」
「いさせてあげるんだからそれくらいいでしょ?」
「よくわからんがこうか………きゃっ!!」
これよこれ。
極上枕。
「ちょ!何で尻尾に顔を突っ込んでるんだ!ってくすぐったいやめてくれ!」
この肌触り。
この暖かさ。
毛並みも抜群で最高ね。
すりすり。
「こ、こら!息を吹きかけるな!顔を擦り付けるな!」
いいなぁこれ。
パタパタ顔に当たるのがくすぐったいけど、ちょっと気持ちいいし。
「だからやめろって!突然何なひゃうっ!」
「枕よ枕。藍、喜びなさい。博麗の巫女があなたの尻尾を極上の枕として認定するわ」
「何だ霊夢。そんなにいいのかそれ。ちょっと私にもやらせてくれよ」
魔理沙も興味を持ったようだ。
まぁ、確かにこれは気持ちい……あ。
「うぎゃー!!!また刺さったぞ!!」
「だから、風を入れるなと言ったでしょ!学習能力無いのあんたは?」
一通りのたうちまわった後、のそのそこちらにやってくる魔理沙。
結構丈夫ね、この子も。
「おー、これは確かに快適だー。藍、これはいいものだぞ」
「でしょう?今までこれに気づかなかったとは全く不覚を取ったものだわ」
「二人ともホントやめてくれ。くすぐったくてかなわん!」
折角褒めてあげてるのにつれない奴ね。
でも、真っ赤になって身悶えてる藍ってのも新鮮ねぇ。
「じゃあやめるから、これ1本頂戴」
「ちょ、頂戴って何を言ってる!」
「いいじゃん9本もあるんだから1本くらい。どうせそのうちまた生えてくるでしょ」
「生えてこない生えてこない!!頼むから勘弁してくれ」
「こらこら暴れないの。魔理沙、引っこ抜くの手伝って頂戴」
「やめろって霊夢!さすがにそれはどうかと思うぞ!」
「何よ、あんたの分もちゃんと引っこ抜いてあげるわよ」
「そういう問題じゃないって!」
「紫様ー!!ちぇーーーーーーん!!!!助けてー!!!殺されるーーーー!!!!!!」
なんて人聞きの悪い。
別に尻尾引っこ抜いたくらいじゃ死なないわよ。
「うわぁああああぁぁあああぁああん!!!!」
あ、マジ泣きしちゃった。
さすがに悪乗りが過ぎたかしら。
「嘘よ、藍。ウソウソ。さすがにそこまでやらないわよ。ごめんね」
「いや、今のは本気に見えぐぁ!!」
「魔理沙は黙ってて。九尾の成り立ちくらい知ってるから、尻尾が再生しないのも知ってるわよ」
「ほ、ほんとに引っこ抜かない?」
部屋の隅っこで尻尾を抱えて丸まってる姿は妙にラヴリーだ。
天狗辺りなら「スクープゲットです!ハァハァ」なんて叫びながら激写しまくりでしょうね。
「ほんとだってば。悪かったと思ってるわ」
近づこうとすると、ビクっと後ろに下がる。
んー、これはちょっとまずいわね。
トラウマ残すようないぢり方は後に禍根を残すから良くないし。
仕方ない。
対藍用秘密兵器を使うか。
「わかった。反省してるって言う証拠を見せるわ」
えーっとあれは確か台所の棚の中だったわね。
うー、コタツ出てると寒いし、さっさととって来るか。
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「はい、これあげるわよ」
戻ってくると二人してちゃっかりコタツに入ってる。
藍は一瞬ビクっとなったけど、さっきみたいに錯乱はしてないわね。
少しは落ち着いたのかしら。
「なんだそりゃ?」
「特殊な油揚げよ」
「油揚げ!?」
藍の目が輝いた。
こいつもわかりやすいわねぇ。
「特殊ってしなびてるようにしか見えないんだけど」
「まぁ、魔理沙の頭じゃぜんぜん想像つかないでしょうね」
「ひどい言い草だな」
魔理沙とやり取りしてる間も藍の目は黄色いそれに釘付けだ。
「これは水につけるとちゃんと元の形に戻るのよ。まぁ、鮮度は落ちるけどその代わりに長い間保存できるわ」
「そりゃ確かに特殊だな」
「それにこれは外のものよ。だから幻想郷にあるのはこれっきり。怖がらせたお詫びとしてこれをあげるわ。ごめんなさい」
言葉とともに頭を下げる。
さすがにあれだけ怯えさせたのはこちらの責任だしね。
「そ、そんな貴重なものを私に!?れ、霊夢ありがとう!!この恩は絶対に忘れない!!!」
い、いやまぁ。
目を潤ませて尻尾ブンブン振ってまで感激されると、こっちとしても対応に困るんだけどね。
いざとなったらまた取りに行けばいいんだし。
追っかけられるのが鬱陶しいけど。
しかし、こうしてみると藍も犬っぽいなぁ。
「霊夢が食料を、しかもそんな貴重なものをあげるなんて。こりゃ明日は槍でも降うぐぇえええええ!れ、霊夢やめっ!出ちゃう!魂出ちゃう!!」
目を丸くしてまで言うようなことか!
大体食料って言うならお茶菓子というものをちゃんと振舞ってるじゃない。
全く失礼しちゃう。
「うぇえ…げほっげほっ…はぁ、はぁ、全く、今日の霊夢は、激しいぜ…」
「それだけあんたが余計なこと言ってるってことでしょ」
「はぁ、私はいつもと、はぁ、大差ないぞ」
「どうだか」
ま、同じ事言われたとしてもその日の気分によって対応が変わるのは当然のことでしょ。
「なぁ、藍。ものは相談なんだが、私にもそれ1枚くれないか?」
「なっ!ダメだダメだ!これは私が貰ったものだ!」
「そこを何とか!外の食べ物ってどんなものなのか研究してみたいんだよ」
「いーやダメだ!他のものならともかくこれだけはダメだ」
「何だけちだなぁ。それだけあるなら1枚くらいいいじゃないか」
「ダメなものはダメ!」
餌をめぐって吼えあう2匹のわんこ。
見てて面白いけど、目の前でギャアギャアやられるのもちょっとね。
しょうがないわねぇ。
「魔理沙。今度何か手に入れたらあげるから今日は我慢なさい」
「ほ、ホントか霊夢!?」
「約束するわ」
「やったー!!!ありがとう霊夢」
目を輝かせて全身で喜びを表しちゃってまぁ。
見てて清々しいほどね。
「ぴぎゃーー!!!!!」
「だ・か・ら!風を入れるなと言ってるでしょ!」
ペナルティはきっちり受けてもらうけど。
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「お、そろそろ橙も帰ってくる頃だからお暇させてもらうよ。夕食の支度もあるのでな」
「あら、もうそんな時間なのね」
外を見ると空は紅から黒へと変わり始めている。
なんだかんだで今日という日ももうそろそろ終わりね。
「んー、やっぱ暇をつぶすならここね。ここに来ても暇なはずなのになぜか時間があっさりと過ぎるし」
「そうだよなぁ。よくわからんがここにいると暇なのに退屈しないぜ」
それは暇じゃないってことじゃないの?
本当に暇なら時間が経つのが早いと感じることはないし。
というか、退屈しないならそれは暇じゃないってことじゃないの。
「なんだかものすごく失礼なこと言われてる気がするわ」
「気のせいじゃない?」
「気のせいだな」
ぬぅ。
2対1じゃ敵わないじゃない。
「それじゃ霊夢、油揚げありがとう。魔理沙も達者でな」
「応。また来いよ」
「なんであんたがそういう応え方してるのよ」
「細かいことは気にするなって。どうせ霊夢だって同じような事言うんだし」
「また来い、なんて言うわけ無いでしょ。そんな事言わなくたって勝手に来るんだし」
「ハハハ。じゃあな二人とも」
魔理沙を見て学習したのか、風を入れることなく立ち去っていった。
さすがにあの紫の式をしてるだけあるわね。
「んー、私もそろそろかな」
「ん?あんたも帰るの?」
「お腹もすいたしなぁ」
そういえば藍も夕食の支度って言ってたわね。
今日も一日中忙しかったせいで結構消耗しちゃったし。
それに、考えてみればここ最近まともに食事してなかったわねぇ。
折角だから魔理沙と一緒に食べるか。
うん、決めた。
「魔理沙、どうせならここで食べてきなさい。というかこれは命令。食べていけ」
「霊夢からお誘いとは珍しいな。まぁ、それならご一緒させてもらおうか」
「はい、決まったところでさっさとついて来る」
「待ってくれよ。せっかちな奴だなぁ」
「こういうのは早い方がいいのよ」
「そういうものか?………あれ、なんか方向が違わないか?」
「違ってないわ。あってるわよ」
「ってここってお前の寝室じゃないか。こんなところでご飯食べきゃぁああああああああああ!!」
いただきます。
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言いたいことがたっぷりあるけどやっぱやめ。針食らいたくないし。
しかし正月に賽銭はいらないのはどうかと霊夢・・・?
と思ったところで最後の不意打っ! いい感じの変化球です。
後は、霊夢の垂れ流し状態の思考、繋ぎやまとめ方がとても上手いな~とも思ってみたり。
妹紅「うぐえ! ぐああ!」
霊夢「んー? 間違ったかな?」
と言うことですね。
或いはわんこを食べゲフン面白かったです。
巫女だからかなぁ…orz
まったりまったり。
たくさんのレス本当にありがとうございます。
今後の励みとさせていただきます。
小人閑居して不全を為すという言葉がありますが、よほどの大物でない限り暇な時間が増えるとそのうち変なことを考えそうな気がします。
そもそも大物なら暇な時間なんてないのではないかなー、と。
霊夢が大物か小物かはわかりませんけどね。
もっとも、彼女の場合暇な時は本当にただボーっと何も考えずにすごしてる可能性も高そうですけど。
お味は普通の魔法使い味?
って言うか霊夢COOLすぎるぜ!