藤原妹紅と蓬莱山輝夜は、今日も今日とて殺し合っている。よくもまぁ、二人ともそんなに元気あるなと呆れるくらいに殺し合っている。二人とも不老不死なため、例え死んでもすぐリザレクションするので尚更たちが悪いし、きりがない。しかも二人が暴れる度に永遠亭や竹林が被害を受けてしまうので、巻き込まれる方は本当にいい迷惑である。
この間は、里から帰ってきた鈴仙が運悪く爆発に巻き込まれ、その前は竹林を散歩していた鈴仙が運悪く爆発に巻き込まれてしまった。単に彼女の運が悪すぎるだけなのかもしれないが、それでも周りに被害が及んでいることに違いはない。
見かねた八意永琳は、殺し合いを終えて家に帰ってきた輝夜に話しかける。
「姫様。そんなに喧嘩してよく飽きないものですね」
すると輝夜が迷惑そうに答える。
「あいつがふっかけてくるのよ! 私はそれに応じてるだけよ。降りかかる火の粉は払わなければならないでしょ」
「なるほど……では、こうしてみてはどうでしょう」
と、永琳は輝夜に耳打ちをする。それを聞いた輝夜は不敵な笑みを浮かべて呟くように言う。
「……へえ。面白そうじゃない。早速明日やってみましょうか」
◆
次の日、いつもと同じように輝夜と妹紅は対峙している。
輝夜が彼女に告げる。
「妹紅。今日は、いつもと違うやり方であなたをやっつけてやるわ!」
「……ほう、やれるもんならやってみなよ。一体どんな方法だ?」
「いつもは殺し合ってばかりしてるから今日は逆のことをやってみようと思うの」
「……逆のこと?」
怪訝そうな表情で彼女が尋ねると、輝夜は不敵な笑みを浮かべて答える。
「殺し合いの逆よ」
「殺し合いの逆……。っていうと?」
「生かし合いよ!」
「生かし合い?」
「そう、生かし合いよ」
「なんだそりゃ。一体何をする気だ?」
「こうするのよ!」
と、言いながら輝夜はどこからともなく、コップに入った白い液体を取り出す。
「さあ。これを飲みなさい!」
「ん……? なんだこれは」
「いいから飲みなさいよ!」
「毒でも入ってるんじゃないだろうな……?」
と、言いながらも彼女はその液体を飲み干す。
「どうせ毒なんて効かないでしょ。それよりどう? 味は」
「ああ……爽やかだな。ほどよい酸味が効いてて普通に美味い。なんだこれは?」
「永琳特製のすむぅじいってやつよ。よくわかんないけど健康にいいそうよ」
「へぇ……そうなのか」
と言いながら、妹紅はそのすむぅじいをぐいっと飲み干す。
「どう? 健康になった気がするでしょ?」
「まあね……?」
「次はあなたの番よ」
「え?」
「あなたの番よ!」
「私もやるのか?」
「当たり前でしょ! こっちはまだまだネタはあるんだからね! それとも怖じ気づいちゃった? あんな飲み物ごときで怖じ気づくなんてあなたもお子様ねー!」
輝夜の挑発を受けて妹紅は、目くじらを立てて彼女に言い返す。
「まさか! お前なんかに私が怖じ気づくわけあるか。いいだろう! そこまで言うなら乗ってやるよ! 健康マニアを名乗る私の力をとくと思い知れ!」
そう言うと彼女は、近くにあった竹を引っこ抜くと縄で組み、物干しのようなものを作り出すと輝夜に言う。
「さあ、これにぶら下がってみろ」
「え? これに?」
「そうだよ。早くしろ! 言っておくけど空飛ぶなよ?」
輝夜は怪訝そうにそれにぶら下がる。すかさず妹紅が言う。
「どうだ? 何か体に変化ないか?」
「え? うーん。そうね。心なしか肩と背中の筋肉がほぐれてきてるような気がするわ」
「そうだろ? ぶら下がり健康法ってやつさ!」
「へぇーこんな健康法あるのね」
と、言いながら輝夜は面白そうにぶら下がっていたが、はっとして飛び降りる。
「……や、やるわね! 思わず、ずっとぶら下がっていたくなっちゃったじゃない」
「なんならそのまま永遠にぶら下がっていても良かったんだぞ?」
「そうはいかないわ! 次は私ね! 音楽スタート!」
「音楽……?」
すると次の瞬間どこからともなく軽快なピアノの曲が流れ始めたかと思うと、朗らかな男の人の声で「腕を前に伸ばし背伸びの運動からー……」と聞こえてくる。
「さあ! これに合わせて体を動かすのよ!」
「この音楽に?」
「そうよ! それともまさかついて行けないのかしら?」
「そんなわけあるか! こんなの余裕だ!」
二人は一通り、体操をやりきると息を弾ませながら地面に座り込む。
「……はぁはぁ。どうよ。これが外の世界のらじお体操ってやつよ……!」
「な、なるほど……! たしかに……体の筋肉がほぐれた気がするよ。……にしても長かったな」
「……3番まであるから全部やると結構時間かかるのよ……」
「……じゃあ、次は私の番だなっ!」
「さあ、かかってきなさい……!」
という調子で二人はその後も生かし合いをしていた。
その様子を木の陰から見守っていた永琳はレコードプレイヤーを片手に笑顔で思わず何度も頷いた。
◆
次の日も生かし合いをするために輝夜は、大量の健康グッズを携えて家を出て行く。
永琳は、微笑ましい表情で彼女を見送る。
そもそも彼女らは、不死の薬の影響で、健康にも病気にもなれない体になっている。少しくらい体にいいことをやったところで本人達にとっては毒にも薬にもならない。それを承知で永琳はこの『生かし合い』を勧めたのだ。
これなら誰にも迷惑かけず、周りに被害を及ぼすことなく二人がずっとやりあっていられる。
まさにしてやったりと、永琳が自画自賛をしながら家の掃除をしようとしていると、突然竹林の方から爆発音と弾幕の発射音が聞こえてくる。
「何事か」と、驚いた彼女が急いで竹林に行ってみると、そこで妹紅と輝夜が派手に暴れていた。慌てて二人に永琳は尋ねる。
「二人とも! 生かし合いはどうしたんですか!?」
すると妹紅が苦笑を浮かべながら答える。
「……いやー。昨日体にいいことばかりやったせいか、お互いいつもより元気になっちゃったんだよねー!」
「そうそう! その発散のために弾幕合戦しようって! と、いうわけで行くわよ!! 妹紅!」
「ふん。来いよ! 倍返しにしてやるさ!」
と、唖然とする永琳の前で、いつにも増して生き生きとした表情の二人が弾幕を放ち合うと、いつにも増して巨大な爆風が巻き起こり、永遠亭はおろか、竹林もろとも吹っ飛んだ。意味も分からないまま吹き飛ぶうどんげ達と共に、永琳は思うのだった。
思い込みほど怖いものはないわね。と。
この間は、里から帰ってきた鈴仙が運悪く爆発に巻き込まれ、その前は竹林を散歩していた鈴仙が運悪く爆発に巻き込まれてしまった。単に彼女の運が悪すぎるだけなのかもしれないが、それでも周りに被害が及んでいることに違いはない。
見かねた八意永琳は、殺し合いを終えて家に帰ってきた輝夜に話しかける。
「姫様。そんなに喧嘩してよく飽きないものですね」
すると輝夜が迷惑そうに答える。
「あいつがふっかけてくるのよ! 私はそれに応じてるだけよ。降りかかる火の粉は払わなければならないでしょ」
「なるほど……では、こうしてみてはどうでしょう」
と、永琳は輝夜に耳打ちをする。それを聞いた輝夜は不敵な笑みを浮かべて呟くように言う。
「……へえ。面白そうじゃない。早速明日やってみましょうか」
◆
次の日、いつもと同じように輝夜と妹紅は対峙している。
輝夜が彼女に告げる。
「妹紅。今日は、いつもと違うやり方であなたをやっつけてやるわ!」
「……ほう、やれるもんならやってみなよ。一体どんな方法だ?」
「いつもは殺し合ってばかりしてるから今日は逆のことをやってみようと思うの」
「……逆のこと?」
怪訝そうな表情で彼女が尋ねると、輝夜は不敵な笑みを浮かべて答える。
「殺し合いの逆よ」
「殺し合いの逆……。っていうと?」
「生かし合いよ!」
「生かし合い?」
「そう、生かし合いよ」
「なんだそりゃ。一体何をする気だ?」
「こうするのよ!」
と、言いながら輝夜はどこからともなく、コップに入った白い液体を取り出す。
「さあ。これを飲みなさい!」
「ん……? なんだこれは」
「いいから飲みなさいよ!」
「毒でも入ってるんじゃないだろうな……?」
と、言いながらも彼女はその液体を飲み干す。
「どうせ毒なんて効かないでしょ。それよりどう? 味は」
「ああ……爽やかだな。ほどよい酸味が効いてて普通に美味い。なんだこれは?」
「永琳特製のすむぅじいってやつよ。よくわかんないけど健康にいいそうよ」
「へぇ……そうなのか」
と言いながら、妹紅はそのすむぅじいをぐいっと飲み干す。
「どう? 健康になった気がするでしょ?」
「まあね……?」
「次はあなたの番よ」
「え?」
「あなたの番よ!」
「私もやるのか?」
「当たり前でしょ! こっちはまだまだネタはあるんだからね! それとも怖じ気づいちゃった? あんな飲み物ごときで怖じ気づくなんてあなたもお子様ねー!」
輝夜の挑発を受けて妹紅は、目くじらを立てて彼女に言い返す。
「まさか! お前なんかに私が怖じ気づくわけあるか。いいだろう! そこまで言うなら乗ってやるよ! 健康マニアを名乗る私の力をとくと思い知れ!」
そう言うと彼女は、近くにあった竹を引っこ抜くと縄で組み、物干しのようなものを作り出すと輝夜に言う。
「さあ、これにぶら下がってみろ」
「え? これに?」
「そうだよ。早くしろ! 言っておくけど空飛ぶなよ?」
輝夜は怪訝そうにそれにぶら下がる。すかさず妹紅が言う。
「どうだ? 何か体に変化ないか?」
「え? うーん。そうね。心なしか肩と背中の筋肉がほぐれてきてるような気がするわ」
「そうだろ? ぶら下がり健康法ってやつさ!」
「へぇーこんな健康法あるのね」
と、言いながら輝夜は面白そうにぶら下がっていたが、はっとして飛び降りる。
「……や、やるわね! 思わず、ずっとぶら下がっていたくなっちゃったじゃない」
「なんならそのまま永遠にぶら下がっていても良かったんだぞ?」
「そうはいかないわ! 次は私ね! 音楽スタート!」
「音楽……?」
すると次の瞬間どこからともなく軽快なピアノの曲が流れ始めたかと思うと、朗らかな男の人の声で「腕を前に伸ばし背伸びの運動からー……」と聞こえてくる。
「さあ! これに合わせて体を動かすのよ!」
「この音楽に?」
「そうよ! それともまさかついて行けないのかしら?」
「そんなわけあるか! こんなの余裕だ!」
二人は一通り、体操をやりきると息を弾ませながら地面に座り込む。
「……はぁはぁ。どうよ。これが外の世界のらじお体操ってやつよ……!」
「な、なるほど……! たしかに……体の筋肉がほぐれた気がするよ。……にしても長かったな」
「……3番まであるから全部やると結構時間かかるのよ……」
「……じゃあ、次は私の番だなっ!」
「さあ、かかってきなさい……!」
という調子で二人はその後も生かし合いをしていた。
その様子を木の陰から見守っていた永琳はレコードプレイヤーを片手に笑顔で思わず何度も頷いた。
◆
次の日も生かし合いをするために輝夜は、大量の健康グッズを携えて家を出て行く。
永琳は、微笑ましい表情で彼女を見送る。
そもそも彼女らは、不死の薬の影響で、健康にも病気にもなれない体になっている。少しくらい体にいいことをやったところで本人達にとっては毒にも薬にもならない。それを承知で永琳はこの『生かし合い』を勧めたのだ。
これなら誰にも迷惑かけず、周りに被害を及ぼすことなく二人がずっとやりあっていられる。
まさにしてやったりと、永琳が自画自賛をしながら家の掃除をしようとしていると、突然竹林の方から爆発音と弾幕の発射音が聞こえてくる。
「何事か」と、驚いた彼女が急いで竹林に行ってみると、そこで妹紅と輝夜が派手に暴れていた。慌てて二人に永琳は尋ねる。
「二人とも! 生かし合いはどうしたんですか!?」
すると妹紅が苦笑を浮かべながら答える。
「……いやー。昨日体にいいことばかりやったせいか、お互いいつもより元気になっちゃったんだよねー!」
「そうそう! その発散のために弾幕合戦しようって! と、いうわけで行くわよ!! 妹紅!」
「ふん。来いよ! 倍返しにしてやるさ!」
と、唖然とする永琳の前で、いつにも増して生き生きとした表情の二人が弾幕を放ち合うと、いつにも増して巨大な爆風が巻き起こり、永遠亭はおろか、竹林もろとも吹っ飛んだ。意味も分からないまま吹き飛ぶうどんげ達と共に、永琳は思うのだった。
思い込みほど怖いものはないわね。と。
研鑽派の輝夜(保護者の七光ともいう)と野生派の妹紅みたいな健康法にも2人の性格がでてる具合が面白かったです 元は保護者の親心でも宿命の対決に横入りするだけ野暮だったんですね…
思い込みでパワーアップしちゃう妹紅たちに笑いました
あとがきにはもっと笑いました
あとがきに吹いてしまった……