「さーて、今日も朝ごはんを作りましょうか」
そう言いながら白玉楼の大きな台所に立つは魂魄妖夢。スコココと心地の良い音で朝ごはんとなる材料を切っていく。
半霊を上手く使って全て把握してある台所の材料や調理器具を持ってくる。フライパンやボウル、大根に人参、八雲藍から貰った味噌など……朝ごはんと言えば白いご飯。それにお味噌汁。あと卵焼き。小物に漬物があれば最高だ。それと時々、幽々子様がしたがる卵かけご飯。妖夢はそれは邪道だと思っている節はあるが今は省略する。
ふんふんふん〜♪
そんな鼻歌が聞こえる台所だったがお味噌汁を作り終わり、ご飯を炊き始めた頃に歌はやんだ。
「どうしましょうこれ……」
しかめっ面の妖夢が見るは赤玉の立派な卵。加工されていない生卵だ。新鮮なようにも見えるが妖夢はこの卵で鼻歌を忘れる程に頭を悩ませていた。
これは昨日に人間の里に買い物に来ていた時の事の話。いきなり魔理沙に声をかけられたと思えば袋に入った卵を押し付けてきたのだ。妖夢が「これは?」と聞くと魔理沙は「里に言われて妖怪退治したんだけどその時のお礼で貰ったんだ」と答えた。
妖夢は困惑した。何故お礼に貰った物を私に渡すのかと。それを魔理沙に伝えると地面に平伏して無理やり貰ってくれと懇願されたのだ。顔を上げろと言っても貰ってくれるまで頭を上げない、だから上げて欲しかったら貰えと脅されたので貰っておいた。
良い笑顔で頭を上げたと思ったら魔理沙はとんでもないことを抜かした。
「あ、それ三日前に貰ったやつだから早く食えよ」
は?と妖夢が怒る前に魔理沙は瞬く間に空に消えていった。
話を戻そう。今日は幽々子様が卵かけご飯を所望する日。そして今、白玉楼にあるのはこの卵のみ。しかしきちんと出さないと妖夢が殺されかけるのでシャレにならない。そんな危険すぎる事態、妖夢は嫌だった(誰でも嫌だろう)。
妖夢は決めた。この生卵を出してしまおうと。少し日々の鬱憤が溜まっているから仕返ししても良いだろうと。咲夜も言っていた、主人に仕返ししたっていいだろうと。
そう決めた妖夢はさっさと料理を盛り付けて、幽々子様のところに持っていく。台所から出る前に時計を見て時間を確認したが、いつも出す十分前だったので余程卵だけで悩んでいたんだろう。いつもなら予定の二十分前に出すのに!
~~~~~
「あらあら、とても美味しそうじゃない」
妖夢の前の席に座る幽々子様は何も知らないのでとても笑顔だ。
「どうぞ召し上がれ」
すべて隠した無表情のような、微笑のような妖夢の顔は間抜けだった。
それに気が付かない幽々子様は手を合わせてから食べ始めた。小皿に割った卵を瞬く間にご飯にかけて混ぜている。妖夢はと言うと三日前の卵だということを知っているせいか卵かけご飯を用意しなかった。なんと用意周到なのだろうか。
「……? 妖夢は卵かけご飯を食べないの?」
「昨日は卵を買い忘れてしまったので。最後の一つだったので幽々子様がどうぞ」
どの顔がひょうひょうと言うのか。
納得した幽々子様は朝ごはんを食べ始めた。妖夢も食べ出す。
妖夢の体感で十分程経っただろうか。幽々子様が話す。
「この卵、少し味が違うんじゃないかしら〜」
ギクリと身体を固める妖夢。
「そ、その卵は赤玉だからでは無いでしょうか?」
「そう? なら良いんだけれど……」
丸々と騙されてくれた幽々子様はむしゃむしゃと食べている。妖夢はさっさと食べ終わって幽々子様が食べ終わるのを待つだけだ。
「妖夢、妖夢。少しこちらに来なさないな」
「なんでしょう幽々子様?」
お盆に片付けていた食器を置いてから幽々子様の隣に行く妖夢。
すると幽々子様はスプーンに卵かけご飯をすくった。妖夢の頭はよく分からないようで?マークを浮かべている。
「少しこれを食べてみなさいな。少し味が違うのが妖夢でも分かるはずだから」
「ゆ、ゆゆゆ、幽々子様!? 一体なにを!」
言葉が震えまくる妖夢。隠しきったはずだったのにそれでボロを出すのか妖夢よ。
幽々子様はおそらくいつもと違う妖夢に勘づいていたのだろう、卵の味が違う時から既に疑っていたのだ。
「どおしてそんなに声が震えているのかしら?」
「い、いい、いや何も無いです」
妖夢さんや、隠せてませんぞ。
「とりあえず食べてみなさい」
そう言うと幽々子様は妖夢の頭を掴んですくったスプーンを口まで持っていく。妖夢は必死に抵抗した。
「ゆ、幽々子様! おやめ下さい!」
「なら、食べなさい」
ふんぎぎ! とスプーンを持つ幽々子様とそれを嫌がる妖夢の絵面。
勝ったのは幽々子様だった。妖夢の脇腹にスキマから出た手がくすぐったのだ。「ひゃあ!?」と驚いたせいで力が抜け、口の中に卵かけご飯が入ったのだ。スキマから出てきた紫とハイタッチをしている。
もぐもぐ、ごっくん。
「なんですかこれ……幽々子様が醤油入れ忘れただけじゃないですか。なんで私のせいにするんですか!」
「あらあら、そうだったのね。妖夢、お醤油取ってきなさいな」
バレたのかと心配したのもつかの間、妖夢は安心していた。取ってきた醤油を幽々子様に渡して朝ごはんは終わった。
#####
次の日、妖夢が腹を壊したのは言うまでもないだろう。
「うぎぎ……お腹いたーい!」
白玉楼に妖夢の叫び声が上がった。
自業自得だね。ドンマイ! 妖夢!
そう言いながら白玉楼の大きな台所に立つは魂魄妖夢。スコココと心地の良い音で朝ごはんとなる材料を切っていく。
半霊を上手く使って全て把握してある台所の材料や調理器具を持ってくる。フライパンやボウル、大根に人参、八雲藍から貰った味噌など……朝ごはんと言えば白いご飯。それにお味噌汁。あと卵焼き。小物に漬物があれば最高だ。それと時々、幽々子様がしたがる卵かけご飯。妖夢はそれは邪道だと思っている節はあるが今は省略する。
ふんふんふん〜♪
そんな鼻歌が聞こえる台所だったがお味噌汁を作り終わり、ご飯を炊き始めた頃に歌はやんだ。
「どうしましょうこれ……」
しかめっ面の妖夢が見るは赤玉の立派な卵。加工されていない生卵だ。新鮮なようにも見えるが妖夢はこの卵で鼻歌を忘れる程に頭を悩ませていた。
これは昨日に人間の里に買い物に来ていた時の事の話。いきなり魔理沙に声をかけられたと思えば袋に入った卵を押し付けてきたのだ。妖夢が「これは?」と聞くと魔理沙は「里に言われて妖怪退治したんだけどその時のお礼で貰ったんだ」と答えた。
妖夢は困惑した。何故お礼に貰った物を私に渡すのかと。それを魔理沙に伝えると地面に平伏して無理やり貰ってくれと懇願されたのだ。顔を上げろと言っても貰ってくれるまで頭を上げない、だから上げて欲しかったら貰えと脅されたので貰っておいた。
良い笑顔で頭を上げたと思ったら魔理沙はとんでもないことを抜かした。
「あ、それ三日前に貰ったやつだから早く食えよ」
は?と妖夢が怒る前に魔理沙は瞬く間に空に消えていった。
話を戻そう。今日は幽々子様が卵かけご飯を所望する日。そして今、白玉楼にあるのはこの卵のみ。しかしきちんと出さないと妖夢が殺されかけるのでシャレにならない。そんな危険すぎる事態、妖夢は嫌だった(誰でも嫌だろう)。
妖夢は決めた。この生卵を出してしまおうと。少し日々の鬱憤が溜まっているから仕返ししても良いだろうと。咲夜も言っていた、主人に仕返ししたっていいだろうと。
そう決めた妖夢はさっさと料理を盛り付けて、幽々子様のところに持っていく。台所から出る前に時計を見て時間を確認したが、いつも出す十分前だったので余程卵だけで悩んでいたんだろう。いつもなら予定の二十分前に出すのに!
~~~~~
「あらあら、とても美味しそうじゃない」
妖夢の前の席に座る幽々子様は何も知らないのでとても笑顔だ。
「どうぞ召し上がれ」
すべて隠した無表情のような、微笑のような妖夢の顔は間抜けだった。
それに気が付かない幽々子様は手を合わせてから食べ始めた。小皿に割った卵を瞬く間にご飯にかけて混ぜている。妖夢はと言うと三日前の卵だということを知っているせいか卵かけご飯を用意しなかった。なんと用意周到なのだろうか。
「……? 妖夢は卵かけご飯を食べないの?」
「昨日は卵を買い忘れてしまったので。最後の一つだったので幽々子様がどうぞ」
どの顔がひょうひょうと言うのか。
納得した幽々子様は朝ごはんを食べ始めた。妖夢も食べ出す。
妖夢の体感で十分程経っただろうか。幽々子様が話す。
「この卵、少し味が違うんじゃないかしら〜」
ギクリと身体を固める妖夢。
「そ、その卵は赤玉だからでは無いでしょうか?」
「そう? なら良いんだけれど……」
丸々と騙されてくれた幽々子様はむしゃむしゃと食べている。妖夢はさっさと食べ終わって幽々子様が食べ終わるのを待つだけだ。
「妖夢、妖夢。少しこちらに来なさないな」
「なんでしょう幽々子様?」
お盆に片付けていた食器を置いてから幽々子様の隣に行く妖夢。
すると幽々子様はスプーンに卵かけご飯をすくった。妖夢の頭はよく分からないようで?マークを浮かべている。
「少しこれを食べてみなさいな。少し味が違うのが妖夢でも分かるはずだから」
「ゆ、ゆゆゆ、幽々子様!? 一体なにを!」
言葉が震えまくる妖夢。隠しきったはずだったのにそれでボロを出すのか妖夢よ。
幽々子様はおそらくいつもと違う妖夢に勘づいていたのだろう、卵の味が違う時から既に疑っていたのだ。
「どおしてそんなに声が震えているのかしら?」
「い、いい、いや何も無いです」
妖夢さんや、隠せてませんぞ。
「とりあえず食べてみなさい」
そう言うと幽々子様は妖夢の頭を掴んですくったスプーンを口まで持っていく。妖夢は必死に抵抗した。
「ゆ、幽々子様! おやめ下さい!」
「なら、食べなさい」
ふんぎぎ! とスプーンを持つ幽々子様とそれを嫌がる妖夢の絵面。
勝ったのは幽々子様だった。妖夢の脇腹にスキマから出た手がくすぐったのだ。「ひゃあ!?」と驚いたせいで力が抜け、口の中に卵かけご飯が入ったのだ。スキマから出てきた紫とハイタッチをしている。
もぐもぐ、ごっくん。
「なんですかこれ……幽々子様が醤油入れ忘れただけじゃないですか。なんで私のせいにするんですか!」
「あらあら、そうだったのね。妖夢、お醤油取ってきなさいな」
バレたのかと心配したのもつかの間、妖夢は安心していた。取ってきた醤油を幽々子様に渡して朝ごはんは終わった。
#####
次の日、妖夢が腹を壊したのは言うまでもないだろう。
「うぎぎ……お腹いたーい!」
白玉楼に妖夢の叫び声が上がった。
自業自得だね。ドンマイ! 妖夢!
妖夢も完全霊体だったらイケてた!
気になるじゃんかよ
気になって眠れないよ
ドンマイだよ
なぜでしょう
幽々子様なら絶対にお腹など下さないという強い確信がありました