数年ぶりに、妹に会いました。
あの子は普段はフラフラと各地を放浪しているため、私も私のペットたちも、人づての目撃情報からしか足跡を追うことできなかったのですが…。
その妹が帰ってきたのです。
――申し遅れました。私の名前は古明地さとり。『覚』と呼ばれる妖怪で、普段は旧都の地霊殿で過ごしております。
妹の名前はこいし。古明地こいし。私達『覚』が持つ『第三の目』を閉ざし、人の心を読むことを、私たちのアイデンティティを拒んだ妖怪です。
こいしは第三の目を閉ざしたことで、心を読む力と引き換えに無意識を操る力を手に入れました。その力のせいなのか、あの子はフラフラと放浪するだけの理解できない妖怪になってしまったのです。
お恥ずかしながら、あまり姉妹仲が良いとは言えません。私は私なりに彷徨うだけのこいしを心配しているのですが、『覚』であることを捨てたこいしは、それを誇りとする私のことを憎んでいるようでした。あの子は、まるで『覚』に生まれてきたことを憎むかのような目で、まるで汚い『物』を見るような目で、私を見るのです。私にはそれが少し悲しくもあり、また、少しあの子をかわいそうだとも思っていました。この素晴らしい力が理解できないなんて――。
さて話が脱線しましたが、今。
こいしが、私の目の前に居ます。
ですが、若干様子がおかしいのです。
いえ、元々『覚』としては様子のおかしい子だったのですが、そういう種族的な違和感ではなく、この違和感は、もっと異質なものでした。
――第三の目が、開いている。
幾年ぶりに、妹の『目』が開いていました。ですが、やはりその様子がおかしいのです。
あの子の心が読めなくなった原因の『閉じた瞳』は開いているのに、相変わらず心が読めない。そして、最もおかしいのは――。
「あいつは殺す!!絶対に殺す!!許さない!!許さない!!許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない……!!」
大声で叫びながら、手当り次第物を破壊して回る紅い瞳をした金髪の少女。その背中には、宝石のようなものを八個ぶらさげた、不思議な羽根が生えている。普段は鮮やかな八色に輝くその羽根は、今の主の心を反映するかのように、全てが燃えるような真紅に染まっていた。
暴れる少女――吸血鬼、フランドール・スカーレットは顔の左半分を抑えた状態で、片っ端から自室の物という物を素手で破壊して回っていた。
フランドールは普段は屋敷の地下に幽閉されているため、多少暴れまわったところで全然誰も様子を見に来ない。忘れた頃に彼女の姉、レミリア・スカーレットが見に来たり、その従者の十六夜咲夜がおやつを運んできたりするだけだった。
だが、今日は少しばかり状況が異なる。癇癪を起こしやすいフランドールではあったが、流石に自室のものを片っ端から破壊するほどに荒れることは、ここ最近は全くなくなっていた。
あまりに久しぶりの事態に気づいたのか、程なくしてフランドールの自室…地下室に、姉のレミリアがやってきた。その隣には彼女の懐刀、咲夜の姿もある。
「おい、フランドール。やかましいぞ。暴れるなら昼間にやれ。部屋の鍵も壊しやがって。」
レミリアは部屋に入るなり尊大な態度で言い放った。
「お嬢様。昼間に暴れたら『眠れん、夜にやれ』と言いますよね?」
すかさず隣の咲夜が主に対してツッコミを入れる。
どうせ昼に暴れようが夜に暴れようが「やかましい」ということは変わらないのだから、何も言わなければいいのに…と咲夜は思っているようだった。
「どっちでもいいの。…とにかく。フラン、暴れすぎだ。」
主従がコメディのようなやりとりをしていると、暴れまわっていたフランドールは顔の左半分を抑えたまま、レミリアの方を向き直った。
「何よ何よ何よ!!主従漫才やるならあたしの居ないところでやれ!!」
「おい、お前。顔どうした?」
レミリアは怪訝な顔をする。怒り狂っているからだけではなく、明らかにフランドールの様子がおかしい。何故、顔の左半分を手で覆い隠している?
「うるさいあっちいけ!!お姉さまも咲夜も邪魔するなら殺してやる!!あいつだけは殺す!!絶対殺す!!私のこの手で殺してやらなきゃ気がすまない!!!」
フランドールは喚きながら右手でレミリアの襟首に掴みかかった。
――血が流れている。
掴みかかられたレミリアはフランドールの顔の左側を見つめる。一体何があったのだろうか。妹の言う『あいつ』とは一体誰のことだ?
フランドールの右手に力がこもり、レミリアが苦しそうに顔を歪める。
「妹様、失礼。」
それまで見ているだけだった咲夜は、太腿のレッグシースに納めた銀のナイフを瞬時に取り出し、フランドールの右腕を斬りつけた。
「―――――っ!!!!」
声にならない悲鳴。あまりの激痛に、フランドールはレミリアを掴んでいた手を離す。
開放されたレミリアは首をさすりながら従者のほうに向き直った。
「咲夜、あまり無理をしてくれるな。今の状態であんまり刺激すると『破壊』されるぞ。――ああ、対象は『物』だけなんだったか。まあいずれにせよ、吸血鬼のパワーで殴られたら即ホトケさんだよ。」
「ええ、承知しております。ですが主の危機に動かないような教育は受けておりませんので。」
咲夜は笑顔でしれっと言い放った。この従者は時折命知らずなことを平気でやる。
「まあいい。フランドール、左の顔を見せてみろ。」
レミリアは激痛に悶えるフランドールに近づき、顔の左半分を覆っていた手をどけた。その顔を見た瞬間――。
「まあ。」
「…。」
咲夜が目を丸くする。一方、レミリアは息を飲んだ。
フランドールの顔左半分はぐちゃぐちゃになっていた。血だらけの左半分の顔に、違和感がもう一つ。
――フランドールの目が、青い。
顔を半分潰されたフランドールの瞳は、明らかに何者かの手によって一度えぐられ、無理やりに青い瞳を嵌められていたのだ。
一体誰が――。
レミリアがそう考えた瞬間、フランドールが声を上げる。
「誰がやったかはわかってるんだ!!連れてきて!!あいつを殺さなきゃ気がすまない!!」
――何故、フランドールは今考えてることを当てられた?
レミリアはあまりに不可解な状況に我を忘れ、なんとか一言だけ発することが出来た。
「…誰だって…?」
――こいしの開いた瞳は、爛々と紅く輝き、瞳孔は開いたままで、血のような涙を流していました。
私は、恐る恐る妹に『目』のことを訊きました。
こいし、その『目』は一体どうしたの、と。
すると妹はこう答えたのです――。
「『交換』したんだぁー。フランドールの『目』と。」
崩れた顔を再び覆い隠しながら、フランドールは呻くように絞り出す。
「古明地…!古明地こいし…!あいつがあたしの目を持っていった…!!」
フランドールの顔が、憎悪に歪む。
古明地こいし。地下の覚妖怪の妹だ。そんなやつが一体何故フランドールの目を?
「…お嬢様。言われてみれば地下室の鍵は外側から破壊されていました。」
咲夜は顎に手を当て、神妙な面持ちで扉の方へと向き直る。入るときにはフランドールが暴れまくって壊したものだと思い切っていたが、今見直すと明らかに侵入者の形跡がある。
「…何故、妹様の『目』を持っていったんでしょうか…?」
「お姉ちゃんに問題です!今私は何を考えているでしょう!」
こいしが唐突なのは今に始まったことではないのですが、私はこの唐突さに少しうんざりしていました。考えていることが読めないことは、本当に面倒です。
「わかるわけないでしょ。あなたが瞳を閉じてから、私はあなたの心は読めないのだから。」
私がそう切り返すと、うっすらと笑っていたこいしは一気に冷めた顔になりました。まるで、奈落の底のような瞳を向けてくるのです。
「だよねー。人の心を読むだけで人のことをわかった気になって、人のことを全く理解しようとしないお姉ちゃんに分かるわけがないものね。だから私の心が読めない理由も、間違えたままなのよ。」
いくら身内とは言え、随分言いたい放題言ってくれます。それに、こいしの心が読めなくなった理由は間違っていません。あの子が瞳を閉じたから、あの子の心が読めなくなった。何が違うのでしょうか。
「…力って何に宿ると思う?」
こいしは、瞳孔の開いた紅い瞳をこちらに向けながら、再びにやにやと笑い出しました。
「私ね、ずーっと気になっていたの。」
こいしは私の周囲をゆっくりと歩き始め、こう語るのです。
「能力は何に宿ると思う?魂かな…?体の一部かな…?例えば、私達みたいに『目』で見ることで発動する力は、『目』を閉じたら使えないんだよね。おねえちゃんだって、『目』を閉じちゃえば――心なんて、読めないでしょ?まあ、私は心を閉ざしているからお姉ちゃんの『目』なんて関係ないけど。」
こいしはにたにたと笑いながら、値踏みするような目をこちらに向けてきました。心が読めればなんともないその行為は、私には不快で仕方がありません。
私が不快そうな顔をしたからなのか、こいしは満足そうに笑ったまま私から目をそむけ、再び私の周囲を歩きながら語り続けました。
「なら、私たちの力は目に宿るのかしらね…?もしそうだとしたら…。誰かと『目』を交換したら、能力は入れ替わるのかしら?…それとも、私たちって『目』という媒介を介しているだけで、『目』を交換しても同じ能力が使えるのかしら……?私、ずっと気になっていたの。どうなるんだろって。試してみたいなって。」
周囲を歩き回っていたこいしが私の正面に来ると、こいしは歩みを止め、ぐるんと私のほうに向き直りました。
「…視えるなぁ、おねえちゃんの『目』」
突如、私の視界に血しぶきが噴き上がりました。
真っ赤に染まる視界の先に、紅い三つ目の瞳を光らせたこいしが、狂気を孕んだ笑顔で笑っていたのです。
それが、私が最後に見た光景でした。
あの子は普段はフラフラと各地を放浪しているため、私も私のペットたちも、人づての目撃情報からしか足跡を追うことできなかったのですが…。
その妹が帰ってきたのです。
――申し遅れました。私の名前は古明地さとり。『覚』と呼ばれる妖怪で、普段は旧都の地霊殿で過ごしております。
妹の名前はこいし。古明地こいし。私達『覚』が持つ『第三の目』を閉ざし、人の心を読むことを、私たちのアイデンティティを拒んだ妖怪です。
こいしは第三の目を閉ざしたことで、心を読む力と引き換えに無意識を操る力を手に入れました。その力のせいなのか、あの子はフラフラと放浪するだけの理解できない妖怪になってしまったのです。
お恥ずかしながら、あまり姉妹仲が良いとは言えません。私は私なりに彷徨うだけのこいしを心配しているのですが、『覚』であることを捨てたこいしは、それを誇りとする私のことを憎んでいるようでした。あの子は、まるで『覚』に生まれてきたことを憎むかのような目で、まるで汚い『物』を見るような目で、私を見るのです。私にはそれが少し悲しくもあり、また、少しあの子をかわいそうだとも思っていました。この素晴らしい力が理解できないなんて――。
さて話が脱線しましたが、今。
こいしが、私の目の前に居ます。
ですが、若干様子がおかしいのです。
いえ、元々『覚』としては様子のおかしい子だったのですが、そういう種族的な違和感ではなく、この違和感は、もっと異質なものでした。
――第三の目が、開いている。
幾年ぶりに、妹の『目』が開いていました。ですが、やはりその様子がおかしいのです。
あの子の心が読めなくなった原因の『閉じた瞳』は開いているのに、相変わらず心が読めない。そして、最もおかしいのは――。
「あいつは殺す!!絶対に殺す!!許さない!!許さない!!許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない……!!」
大声で叫びながら、手当り次第物を破壊して回る紅い瞳をした金髪の少女。その背中には、宝石のようなものを八個ぶらさげた、不思議な羽根が生えている。普段は鮮やかな八色に輝くその羽根は、今の主の心を反映するかのように、全てが燃えるような真紅に染まっていた。
暴れる少女――吸血鬼、フランドール・スカーレットは顔の左半分を抑えた状態で、片っ端から自室の物という物を素手で破壊して回っていた。
フランドールは普段は屋敷の地下に幽閉されているため、多少暴れまわったところで全然誰も様子を見に来ない。忘れた頃に彼女の姉、レミリア・スカーレットが見に来たり、その従者の十六夜咲夜がおやつを運んできたりするだけだった。
だが、今日は少しばかり状況が異なる。癇癪を起こしやすいフランドールではあったが、流石に自室のものを片っ端から破壊するほどに荒れることは、ここ最近は全くなくなっていた。
あまりに久しぶりの事態に気づいたのか、程なくしてフランドールの自室…地下室に、姉のレミリアがやってきた。その隣には彼女の懐刀、咲夜の姿もある。
「おい、フランドール。やかましいぞ。暴れるなら昼間にやれ。部屋の鍵も壊しやがって。」
レミリアは部屋に入るなり尊大な態度で言い放った。
「お嬢様。昼間に暴れたら『眠れん、夜にやれ』と言いますよね?」
すかさず隣の咲夜が主に対してツッコミを入れる。
どうせ昼に暴れようが夜に暴れようが「やかましい」ということは変わらないのだから、何も言わなければいいのに…と咲夜は思っているようだった。
「どっちでもいいの。…とにかく。フラン、暴れすぎだ。」
主従がコメディのようなやりとりをしていると、暴れまわっていたフランドールは顔の左半分を抑えたまま、レミリアの方を向き直った。
「何よ何よ何よ!!主従漫才やるならあたしの居ないところでやれ!!」
「おい、お前。顔どうした?」
レミリアは怪訝な顔をする。怒り狂っているからだけではなく、明らかにフランドールの様子がおかしい。何故、顔の左半分を手で覆い隠している?
「うるさいあっちいけ!!お姉さまも咲夜も邪魔するなら殺してやる!!あいつだけは殺す!!絶対殺す!!私のこの手で殺してやらなきゃ気がすまない!!!」
フランドールは喚きながら右手でレミリアの襟首に掴みかかった。
――血が流れている。
掴みかかられたレミリアはフランドールの顔の左側を見つめる。一体何があったのだろうか。妹の言う『あいつ』とは一体誰のことだ?
フランドールの右手に力がこもり、レミリアが苦しそうに顔を歪める。
「妹様、失礼。」
それまで見ているだけだった咲夜は、太腿のレッグシースに納めた銀のナイフを瞬時に取り出し、フランドールの右腕を斬りつけた。
「―――――っ!!!!」
声にならない悲鳴。あまりの激痛に、フランドールはレミリアを掴んでいた手を離す。
開放されたレミリアは首をさすりながら従者のほうに向き直った。
「咲夜、あまり無理をしてくれるな。今の状態であんまり刺激すると『破壊』されるぞ。――ああ、対象は『物』だけなんだったか。まあいずれにせよ、吸血鬼のパワーで殴られたら即ホトケさんだよ。」
「ええ、承知しております。ですが主の危機に動かないような教育は受けておりませんので。」
咲夜は笑顔でしれっと言い放った。この従者は時折命知らずなことを平気でやる。
「まあいい。フランドール、左の顔を見せてみろ。」
レミリアは激痛に悶えるフランドールに近づき、顔の左半分を覆っていた手をどけた。その顔を見た瞬間――。
「まあ。」
「…。」
咲夜が目を丸くする。一方、レミリアは息を飲んだ。
フランドールの顔左半分はぐちゃぐちゃになっていた。血だらけの左半分の顔に、違和感がもう一つ。
――フランドールの目が、青い。
顔を半分潰されたフランドールの瞳は、明らかに何者かの手によって一度えぐられ、無理やりに青い瞳を嵌められていたのだ。
一体誰が――。
レミリアがそう考えた瞬間、フランドールが声を上げる。
「誰がやったかはわかってるんだ!!連れてきて!!あいつを殺さなきゃ気がすまない!!」
――何故、フランドールは今考えてることを当てられた?
レミリアはあまりに不可解な状況に我を忘れ、なんとか一言だけ発することが出来た。
「…誰だって…?」
――こいしの開いた瞳は、爛々と紅く輝き、瞳孔は開いたままで、血のような涙を流していました。
私は、恐る恐る妹に『目』のことを訊きました。
こいし、その『目』は一体どうしたの、と。
すると妹はこう答えたのです――。
「『交換』したんだぁー。フランドールの『目』と。」
崩れた顔を再び覆い隠しながら、フランドールは呻くように絞り出す。
「古明地…!古明地こいし…!あいつがあたしの目を持っていった…!!」
フランドールの顔が、憎悪に歪む。
古明地こいし。地下の覚妖怪の妹だ。そんなやつが一体何故フランドールの目を?
「…お嬢様。言われてみれば地下室の鍵は外側から破壊されていました。」
咲夜は顎に手を当て、神妙な面持ちで扉の方へと向き直る。入るときにはフランドールが暴れまくって壊したものだと思い切っていたが、今見直すと明らかに侵入者の形跡がある。
「…何故、妹様の『目』を持っていったんでしょうか…?」
「お姉ちゃんに問題です!今私は何を考えているでしょう!」
こいしが唐突なのは今に始まったことではないのですが、私はこの唐突さに少しうんざりしていました。考えていることが読めないことは、本当に面倒です。
「わかるわけないでしょ。あなたが瞳を閉じてから、私はあなたの心は読めないのだから。」
私がそう切り返すと、うっすらと笑っていたこいしは一気に冷めた顔になりました。まるで、奈落の底のような瞳を向けてくるのです。
「だよねー。人の心を読むだけで人のことをわかった気になって、人のことを全く理解しようとしないお姉ちゃんに分かるわけがないものね。だから私の心が読めない理由も、間違えたままなのよ。」
いくら身内とは言え、随分言いたい放題言ってくれます。それに、こいしの心が読めなくなった理由は間違っていません。あの子が瞳を閉じたから、あの子の心が読めなくなった。何が違うのでしょうか。
「…力って何に宿ると思う?」
こいしは、瞳孔の開いた紅い瞳をこちらに向けながら、再びにやにやと笑い出しました。
「私ね、ずーっと気になっていたの。」
こいしは私の周囲をゆっくりと歩き始め、こう語るのです。
「能力は何に宿ると思う?魂かな…?体の一部かな…?例えば、私達みたいに『目』で見ることで発動する力は、『目』を閉じたら使えないんだよね。おねえちゃんだって、『目』を閉じちゃえば――心なんて、読めないでしょ?まあ、私は心を閉ざしているからお姉ちゃんの『目』なんて関係ないけど。」
こいしはにたにたと笑いながら、値踏みするような目をこちらに向けてきました。心が読めればなんともないその行為は、私には不快で仕方がありません。
私が不快そうな顔をしたからなのか、こいしは満足そうに笑ったまま私から目をそむけ、再び私の周囲を歩きながら語り続けました。
「なら、私たちの力は目に宿るのかしらね…?もしそうだとしたら…。誰かと『目』を交換したら、能力は入れ替わるのかしら?…それとも、私たちって『目』という媒介を介しているだけで、『目』を交換しても同じ能力が使えるのかしら……?私、ずっと気になっていたの。どうなるんだろって。試してみたいなって。」
周囲を歩き回っていたこいしが私の正面に来ると、こいしは歩みを止め、ぐるんと私のほうに向き直りました。
「…視えるなぁ、おねえちゃんの『目』」
突如、私の視界に血しぶきが噴き上がりました。
真っ赤に染まる視界の先に、紅い三つ目の瞳を光らせたこいしが、狂気を孕んだ笑顔で笑っていたのです。
それが、私が最後に見た光景でした。
これはエントランスに嬉々として死体を飾る形のこいしちゃんですね。
とても良かったです。
斬新な発想だと思いました
パルスィが狙われなくてよかった
この設定をもっと広げたものが読みたいなぁと思います