Coolier - 新生・東方創想話

蓮子とメリーが別れる話

2019/11/01 18:46:55
最終更新
サイズ
1.96KB
ページ数
1
閲覧数
1591
評価数
6/11
POINT
760
Rate
13.08

分類タグ



私がこの手紙を書いているのは、誰かに読んで欲しいわけじゃない。
けれども、もしなんらかの理由で誰かが読んでしまった時のために前もって書いておくと、私は私のために、つまり、気持ちの整理のためにこの手紙を書き始めたのであって、誰かに共感や解決や同意や反省を促している訳では決してない。まあ、読まれないとは思うのだけれど。
事の発端は私がこの大学を選んだことにあった。勘違いしないように付け加えておくと、一般的な日本人は大学は一つ卒業するわけで、つまり凡庸な私も他の一般的な日本人と同様に一つの大学を卒業しようとしている。だから『この』大学というのは私の期待と後悔の表れなのであって、二つめの大学であるわけではない。
選んだのが間違いだった。そう今なら確信を持って言うことが出来る。田舎から出られるって希望と私の興味とそのための環境とが奇跡的に組み合わさった最高の大学だと思って受けたし、受かったし、入学した。しかしながら、それはつまりは恋と同じだったのよ。
私、自分が惚れっぽいタイプだって目の前に破綻が現れるまで分からなかった。
破綻というのは私の目の前に広がる状況で私が筆を取った理由で、私の心が掻き乱された最大の理由でナウでイングな状況な訳だけどね。
それはつまりテーブルに突き刺さった包丁という象徴的な作品から始まるインスタレーションであり、私と彼女が写るフォトフレームは液晶が叩き割られ、お揃いで揃えたマグカップは無残にも砕かれて、一緒に買った家電や家具にはことごとく刃物が突き立てられていた。
ここを一般開放したら、わりと良いアトラクションになるんじゃないかしら?
もちろん、それは冗談。
自分の惚れっぽさっていうのは実は私自身嫌いじゃなかった。新しいことにどんどん興味を持って熱くなって、解って、使って。
だから同年代の子からどこでそんなこと覚えたのって言われるような些細な自慢もできない特技ってのがあったの。
そんなことすら布石に思える。
私の今まで。生まれ落ちてからの経験、趣味嗜好、生育環境全てがこの破綻と破局のためにお膳立てされたものかと疑ってしまう。
テレビで見た格闘家に憧れて習った合気道。
それは私の身体に血肉となって流れていて。
彼女は血の海で安らかに眠っている。
まあ、思い出したかのように足が跳ねるのは医学書の通りね。
私っていつ死ぬのかしら。

ねえ、どこで寝たい?
なんで……どうして……
ルミ海苔
[email protected]
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.250簡易評価
1.90奇声を発する程度の能力削除
ゾッとしました
2.80大豆まめ削除
また蓮メリはバッドエンド迎えてるー、んもー
手紙形式の蓮子の独白から、這い寄ってくるような恐怖描写がどきどきしました。
あれ、蓮子だよな……書いてないけど……(不安になってきた)
3.80青生姜削除
怖い…でもそれがいいです!!
4.90サク_ウマ削除
かなり、現実を直視できずにいるというか、本質的なところには全く触れることができずにいますよねこの手紙。相当にショックが大きくて、直視することができなかったんだろうなあって感じます。
良い心象スケッチでした。
6.70封筒おとした削除
イメージが流れます
10.100終身削除
もう考える限り最悪の状態っていう感じなんだろうけどそれでもまだ言葉を選んでるようなどこか不安定な感じが印象に残りました どうやってこうなったのか全部は分からないけどきっとそれは蓮子?も同じなのかなと思いました