「そろそろ蓮子とメリーをくっつけたいのよ」
唐突に何を言い出すかと思えばそんなことか。
私は教授のドヤ顔を当然のように無視し、作業に戻ろうとした。
「スルーされると傷つくわよちゆり」
少し悲しそうな顔をしているのは岡崎夢美。この大学の比較物理学教授だ。端的に紹介するなら「生まれてくる世界を間違えた奇人」である。別に倫理的に問題があるような事をするわけでは無いのだが、科学世紀のこのご時世に魔力がどうのこうのと言っているので、学会では異端児として扱われている模様。
そして私の名前は北白河ちゆり。岡崎教授の助手を務めている。
「彼女達、もう知り合って3年は経つのにお互いを仕事上のパートナーとしてしか見てないのよ?」
「彼女達」と言うのは宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーンの事だ。
私達は大学教授と助手という表の顔だけではなく、こちら側に迷い込んだ妖怪を元の世界「幻想郷」に返すという裏の顔もあるのだ。私と教授は作戦を考え、蓮子とマエリベリーが実際に動くという形だ。今までに色々な活動をしてきたが、それはまた話す機会があればにしよう。
「別にいいんじゃないか?」
実際、私は蓮子とマエリベリーがくっつこうがどうしようが関係ない。彼女たちの連携は完璧なので寧ろ、教授が何か余計な事をしてこじれるよりかは今のままの方がいい。
「そこで私は考えた。二人を部屋に閉じ込めて「ちゅっちゅしないと出られない」という縛りにすればいいのよ」
流石生まれてくる時代を間違えた奇人である。発想が常人の九十度上を行く。
「理論はわかるけど、そんな部屋どうやって作るんだい?」
「心配無用よちゆり、もう作ってあるから」
「わーお」
教授は奇人である上に、行動力もあるから余計にタチが悪い。その部屋を作るのにどれだけの金がかかったのかは、聞くのも恐ろしいので聞かないことにしよう。知らないほうがいいこともあるからな。うんうん。
「でも、二人をその部屋にどうやって入れるんだ?」
二つ返事で入ってくれるような二人ではない。少なくとも強引に入れる以外に他は無いだろう。
「ここにモニターがあるだろう?」
あっ。もう察しが付いてしまった。
「ポチっとな」
教授がモニターの電源を付けると、そこには白い部屋に閉じ込められた蓮子とマエリベリーが居た。
「……教授?」
「べっ、別に疲れ切った二人に出した労いの飲み物に睡眠薬を混ぜたりはしてないからね⁉」
先ほどの倫理的に問題があるような事をするわけでは無い、という言葉は取り消そう。この人は自分の為なら稀にこういう事をする人なのだ。学会で異端児扱いされている理由を今私は改めて理解した。
§
「どこよここ」
目が覚めるとそこは白い部屋だった。覚えている記憶をたどると、確か悪霊退治した後に岡崎教授から出された飲み物を飲んで……
「大方、教授の飲み物に何か入ってたのでしょうね」
隣でメリーが起き上がりながら言う。
壁には「ちゅっちゅしないと出られない部屋」と書いてあり唯一置いてある机にはポッキーが置かれている。
「何故ポッキー?」
「数世紀前に流行った遊びね。『ポッキーゲーム』だったかしら。二人で端から食べていくと最後はキスすることになる、って寸法よ」
メリーは相変わらず博識だ。
「下らないなぁ」
『下らないだと⁉』
突然部屋に岡崎教授の声が響く。やはりと言ったところだろうか、今きっと私はとても呆れた顔をしているに違いない。いい年して何をしているんだかあの人は。
『キスしないと二人とも出られないんだぞ⁉』
そういう教授に対してメリーは冷静そうな顔をして言う。
「……教授は一体何の為にこんなことを?」
我が相棒は博識ではあるが、鈍感である。「ちゅっちゅ」「ポッキーゲーム」これだけでもう教授は私たちをくっつけようとしているのが見え見えである。
『さぁ、ポッキーゲームをしてキスをするんだ!!』
「もうポッキー食べちゃったけど」
『えっ?』
岡崎教授が喋っている間にメリーはポッキーを食べてしまったようだ。甘い物が好きなメリーらしい。
『えーっと……その、キスしないと出られないからな!!』
そう捨て台詞を吐き、それ以来教授は喋らなくなった。
「さて、どうしたものか」
キスをして出るのは簡単なのだが、何となく私としては抵抗がある。
別にメリーが嫌いな訳ではない。だが、いざ見つめると中々綺麗なのだ。
胸も大きいし。私と比べるともう天と地の差だ。同性として妬ましいぐらいにね!!
今までは「相棒」として考えていたが、キスって「恋人」とかそういうのがするものでしょ?
べ、別に私とメリーはそういう関係じゃ……
「蓮子」
突然メリーが私を呼ぶ。
「どうしたのメ」
振り向きながら私は反応するが、私が喋り終わる前に私とメリーの唇が重なった。
……チョコの味がした。
キスをしてからすぐにドアの鍵が開く音がした。
「これで目的達成ね。出るわよ蓮子」
「……」
「蓮子?」
ファーストキスが女性、というのは中々驚きだ。そしてそれに何の恥じらいも見せないメリーにも驚きである。
鈍感というか、人の気も知らないというか……
「どうしたの?顔真っ赤にして」
「なっ、何でもない!!」
私は慌てて部屋を出ていった。
この後岡崎教授を私とメリーでボコボコにしたのだが、それはまた別のお話。
唐突に何を言い出すかと思えばそんなことか。
私は教授のドヤ顔を当然のように無視し、作業に戻ろうとした。
「スルーされると傷つくわよちゆり」
少し悲しそうな顔をしているのは岡崎夢美。この大学の比較物理学教授だ。端的に紹介するなら「生まれてくる世界を間違えた奇人」である。別に倫理的に問題があるような事をするわけでは無いのだが、科学世紀のこのご時世に魔力がどうのこうのと言っているので、学会では異端児として扱われている模様。
そして私の名前は北白河ちゆり。岡崎教授の助手を務めている。
「彼女達、もう知り合って3年は経つのにお互いを仕事上のパートナーとしてしか見てないのよ?」
「彼女達」と言うのは宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーンの事だ。
私達は大学教授と助手という表の顔だけではなく、こちら側に迷い込んだ妖怪を元の世界「幻想郷」に返すという裏の顔もあるのだ。私と教授は作戦を考え、蓮子とマエリベリーが実際に動くという形だ。今までに色々な活動をしてきたが、それはまた話す機会があればにしよう。
「別にいいんじゃないか?」
実際、私は蓮子とマエリベリーがくっつこうがどうしようが関係ない。彼女たちの連携は完璧なので寧ろ、教授が何か余計な事をしてこじれるよりかは今のままの方がいい。
「そこで私は考えた。二人を部屋に閉じ込めて「ちゅっちゅしないと出られない」という縛りにすればいいのよ」
流石生まれてくる時代を間違えた奇人である。発想が常人の九十度上を行く。
「理論はわかるけど、そんな部屋どうやって作るんだい?」
「心配無用よちゆり、もう作ってあるから」
「わーお」
教授は奇人である上に、行動力もあるから余計にタチが悪い。その部屋を作るのにどれだけの金がかかったのかは、聞くのも恐ろしいので聞かないことにしよう。知らないほうがいいこともあるからな。うんうん。
「でも、二人をその部屋にどうやって入れるんだ?」
二つ返事で入ってくれるような二人ではない。少なくとも強引に入れる以外に他は無いだろう。
「ここにモニターがあるだろう?」
あっ。もう察しが付いてしまった。
「ポチっとな」
教授がモニターの電源を付けると、そこには白い部屋に閉じ込められた蓮子とマエリベリーが居た。
「……教授?」
「べっ、別に疲れ切った二人に出した労いの飲み物に睡眠薬を混ぜたりはしてないからね⁉」
先ほどの倫理的に問題があるような事をするわけでは無い、という言葉は取り消そう。この人は自分の為なら稀にこういう事をする人なのだ。学会で異端児扱いされている理由を今私は改めて理解した。
§
「どこよここ」
目が覚めるとそこは白い部屋だった。覚えている記憶をたどると、確か悪霊退治した後に岡崎教授から出された飲み物を飲んで……
「大方、教授の飲み物に何か入ってたのでしょうね」
隣でメリーが起き上がりながら言う。
壁には「ちゅっちゅしないと出られない部屋」と書いてあり唯一置いてある机にはポッキーが置かれている。
「何故ポッキー?」
「数世紀前に流行った遊びね。『ポッキーゲーム』だったかしら。二人で端から食べていくと最後はキスすることになる、って寸法よ」
メリーは相変わらず博識だ。
「下らないなぁ」
『下らないだと⁉』
突然部屋に岡崎教授の声が響く。やはりと言ったところだろうか、今きっと私はとても呆れた顔をしているに違いない。いい年して何をしているんだかあの人は。
『キスしないと二人とも出られないんだぞ⁉』
そういう教授に対してメリーは冷静そうな顔をして言う。
「……教授は一体何の為にこんなことを?」
我が相棒は博識ではあるが、鈍感である。「ちゅっちゅ」「ポッキーゲーム」これだけでもう教授は私たちをくっつけようとしているのが見え見えである。
『さぁ、ポッキーゲームをしてキスをするんだ!!』
「もうポッキー食べちゃったけど」
『えっ?』
岡崎教授が喋っている間にメリーはポッキーを食べてしまったようだ。甘い物が好きなメリーらしい。
『えーっと……その、キスしないと出られないからな!!』
そう捨て台詞を吐き、それ以来教授は喋らなくなった。
「さて、どうしたものか」
キスをして出るのは簡単なのだが、何となく私としては抵抗がある。
別にメリーが嫌いな訳ではない。だが、いざ見つめると中々綺麗なのだ。
胸も大きいし。私と比べるともう天と地の差だ。同性として妬ましいぐらいにね!!
今までは「相棒」として考えていたが、キスって「恋人」とかそういうのがするものでしょ?
べ、別に私とメリーはそういう関係じゃ……
「蓮子」
突然メリーが私を呼ぶ。
「どうしたのメ」
振り向きながら私は反応するが、私が喋り終わる前に私とメリーの唇が重なった。
……チョコの味がした。
キスをしてからすぐにドアの鍵が開く音がした。
「これで目的達成ね。出るわよ蓮子」
「……」
「蓮子?」
ファーストキスが女性、というのは中々驚きだ。そしてそれに何の恥じらいも見せないメリーにも驚きである。
鈍感というか、人の気も知らないというか……
「どうしたの?顔真っ赤にして」
「なっ、何でもない!!」
私は慌てて部屋を出ていった。
この後岡崎教授を私とメリーでボコボコにしたのだが、それはまた別のお話。
あっさり味蓮メリちゅっちゅごちそうさまでした。
ちゆりちゃんは一回くらいパイプ椅子で教授をぶったたいておいた方がいいかもしれない。