Coolier - 新生・東方創想話

もういちど、あなたと

2019/10/08 22:25:42
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私、マエリベリー・ハーンは死んだ。
厳密にいうならば「人間としての」マエリベリー・ハーンは死んだのだ。
死後、私は妖怪として生まれ変わったのだ。
どうして死んだのかと言うのはまた後で話すとして、私には一つだけ心残りがある。
それは相方である宇佐見蓮子と死別してしまったことだ。
私が死んだ理由にも関係があるのだが、死ぬ数日前に私は蓮子を怒らせてしまったのだ。
私生活が上手くいっていないというのは知っていたので、それを少しでも和らげる為に、と思った事が裏目に出てしまったみたいだ。
あれだけ切羽詰まった蓮子に私は声をかける事が出来ず、そのまま彼女と別れてしまったのだ。それが一生の別れになるとは知らずに。
その後私は一人で境界探しに出かけたのだがそれが間違いだったのだろう。
私は境界に飲み込まれてしまい、元の世界に戻れなくなってしまった。
その後の事はよく覚えていないが、気が付いたら妖怪になっていた。
今の妖怪としての生活がつまらないわけではないのだが、蓮子と過ごした時間も大事なものなので、せめて彼女が今何をしているかだけは知りたかった。
私は自身の能力「境界を操る」力で現実世界に干渉することにした。



§



元々人間だったので、人間の姿に化けるのは容易かった。
まずは大学へ行って情報収集をした。時間的には私が死んだという報告が大学に届いて数日後、といったところだろうか。
見覚えのある生徒達が居たので私は話しかけてみた。
「ねぇ、宇佐見蓮子さん知らないかしら?」
私が話しかけると彼女達はきょとんとしながらも答えてくれた。
「宇佐見蓮子?誰だっけその子……聞いたことある気がするんだけど」
「あれ?なんかニュースで気がする。ちょっと待ってね?」
そういいながら一人がスマートフォンで調べだした。ニュースで見た?一体どういう事だろう。
「あ、これだこれ……って」
そこにあったのは蓮子が自殺した、というニュースだった。
私はそれを聞き、慌ててその場を後にした。




「はぁ、はぁ……」
私がやってきたのは蓮子の死体が発見された川の上流にある崖だ。
どうやらここに蓮子の靴がおいてあったらしい。
「……これで、ずっとお別れなのね」
『お別れ?私達はずっと秘封倶楽部じゃない』
後ろから聞きなれた声がする。
私は慌てて後ろを見る。そこには人間だった頃の私、いや私の『死霊』が居た。
「貴女は?」
『やだなぁ、私は貴女よ。そんなこと、とっくにわかっているでしょう?』
意地悪そうに笑う彼女。
でも私はここにちゃんと存在している。なのに何故私の悪霊が存在するの?
『私は一人ぼっちになりたくなかった。蓮子と一緒にいたかったのよ』
「____まさか」
『そう‼私が蓮子を殺したのよ』
彼女がそう言い終える前に私は彼女の服を締めあげた。
『これが貴女の本心。私は貴女のやり残した事を代わりにやってあげ____』
そう言おうとした彼女を私は境界の彼方へ追放した。
「私は、私は……‼」
きっと彼女が私の死霊と言うのは正しいのだろう。
「私が、蓮子を殺したの?」
私はその場で泣き崩れてしまった。
だがそれを慰めてくれる人は誰一人としていないのだ。
もう蓮子はいない。





____いないのならば、作りだしてしまえばいいのだ。





§



これは、命への冒涜だ。そんなことはわかっている。
一度死んだ者を蘇らせるなど、閻魔が知ったら黙ってはいないだろう。
だが、それでも私はもう一度蓮子に会いたいのだ。
蓮子の髪を触媒として蓮子の魂を呼び出し、それを妖怪に被せる。一種の式神の様なものだ。最も蓮子は神ではないので式神という呼び方が正しいのかどうかはわからないが、それは後回しだ。
私は術式を整え蓮子を呼び出す詠唱を始めた。
____一瞬でもいい。貴女に謝りたい。
詠唱を終え、そこに居たのは紛れもない蓮子だった。
「蓮子‼」
私は彼女に駆け寄った。だが、彼女が発した第一声は私の希望を打ち砕くには十分なものだった。
「初めまして、紫様。これからは貴女様の式神として」
「どうしたの?蓮子よね?私、マエリベリー・ハーンよ?」
私は慌ててそう問いかけると彼女は首を傾げた。
「マエリベリー、ハーン?」
きっと魂を呼んだ際に記憶が飛んでしまったのかもしれない。
「貴女は宇佐見蓮子。そして私は貴女の友人のマエリベリー・ハーン。メリーって呼んでね」
「……メリー?」
メリーという単語に反応した。きっと彼女を呼び出すのは成功し____



「どうして私を殺したの?」



それからの事は殆ど覚えていない。
気が付けば実験場は更地となっていて目の前には博麗の巫女がいた。
「派手にやったね、紫さん?」
「……貴女には関係なくってよ」
「そっか。実験は結構だけど、幻想郷を壊すのだけは勘弁してよね」
彼女はそう言い残し、更地となった実験場を後にした。
術式の中心には蓮子の黒焦げになった髪が残されていた。
実験場に私の泣く声が響き渡る。
もう蓮子はいない、いないんだ。
私は黒焦げの髪の毛を持とうとしたが、触った瞬間に形を失ってしまった。
まるで、もう宇佐見蓮子は存在しないと言わんばかりに。
後編ですよろしくお願いします。(前編:http://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/225/1570449656)
書いてて辛い。無理…メリーも蓮子も可哀そう。
Twitter:https://twitter.com/Blue_ginger02
青生姜
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コメント



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1.100サク_ウマ削除
秘封民どうしてすぐ蓮メリを引き離したがるん……?
2.50奇声を発する程度の能力削除
個人的にはちょっと蛇足かなと思いました
3.80大豆まめ削除
ああ、後編だったのですね。前編を読まずに、こっちだけ読んでしまいました。
話の骨子はとても惹かれる内容で好きなのですが、若干の駆け足ぎみというか、ダイジェスト感のあるストーリー運びがもったいなかったなあ、と個人的には思いました。もっとじっくりやってほしかった。
このあと前編も読みますね
4.100ヘンプ削除
取り戻すことができないと、わかっているのに足掻くメリーが良かったです。
8.100終身削除
力を得てもどうにもならない罪悪感に苦しむメリーの内面が作品を通してよく表れていて心に残りました 最後の蓮子の髪が儚く消えていくのを終わりと重ね合わせている描写が良かったと思います